
「お天道農園ってこんな農園なんだ」と知って頂きたく、プロジェクトページ本文に書ききれなかった、当農園のこれまでの取り組みをいくつか紹介させていただきます。今回は当農園の従業員の雇用育成について、です。
山形の農業の雇用形態
山形の農業の雇用について、
家族経営+繁忙期に短期アルバイトを雇用
という形態が大半です。これは、以下2点が背景にあります。
①山形は特に果樹農家が多く、月によって必要な労働力がかなりバラつく。
例えばさくらんぼだと、3月下旬-6月下旬は相当忙しいですが、それ以外の月の労働時間は殆どありません。
②冬は農作業がほとんどない。
年にもよりますが、12月下旬から3月上旬まで畑は雪で閉ざされ、基本的に畑作業がありません。農家は冬季はゆっくり休むか、冬季限定のアルバイト(除雪、スキーインストラクター、酒蔵等)で収入を得ています。
人件費を効率的に運用するためには、人手の必要が無い時期に人を雇わず、人手が必要な収穫期にのみ短期アルバイトを雇用する、という選択が最も合理的です。しかし、以下の様な難しさもあります。
・短期アルバイトの方に任せられる仕事は限定される。
短期アルバイトの方は、毎回同じ方に来てもらえるか、毎年同じ方に来てもらえるか、がその時その時で変わります。1週間毎や1日毎に来る人が変わる、という事も当然起こります。収穫や箱詰め等の単純作業に近い仕事を任せることはできますが、農作物の管理作業や、農業機械を使用した複雑な業務を任せることはできません。
・短期アルバイトの方の側に必ず管理者を置かないといけない。
管理者が側にいて、作業指示通りに作業が進んでいるか、作業速度は問題が無いか、等を確認して、必要に応じて指導する必要があります。本来雇った人に仕事を任せて、経営者は自分しかできない仕事をする、という事が効率的で理想ですが、それをする事が難しいです。
・人材育成コストが都度かかる。
上述の通り、短期アルバイトの方は、毎回同じに方に来てもらえるかがその時その時で変わります。人が変わる都度同じことを教えて、その進捗を管理しなければならず、雇う側の負担が大きくなります。
当農園では常勤の従業員の他に、繁忙期は短期アルバイトを雇用しており、これまで300人以上雇用してきました。その経験を通して、上記の様な難しさがあるなと感じています。かけた人件費に対して、生産性が上がりづらく、合理的に見えて合理的ではないという実感があります。
お天道農園の雇用形態
正社員1名とアルバイト(フルタイム)2名の計3名を常勤、シフト制で雇用しています。開業2年目から常勤雇用をしており、今年で3年目になります。閑散期および冬期間も週4-5で出社してもらっています。この雇用形態を維持するため、1年間売上と作業が途切れない様に、当農園では主力のさくらんぼ、とうもろこし以外に季節の野菜を生産しています。
・3-6月:さくらんぼの管理、出荷作業 / とうもろこしの管理作業
・7-8月:とうもろこしの収穫作業 / 秋冬野菜の植え付け
・9-11月:秋冬野菜の管理、出荷作業(ブロッコリー、小松菜等)
・12月-3月:秋冬野菜の出荷作業(白菜、キャベツ、大根)
今回のプロジェクトでさくらんぼ、すもも、たらの木を植えることによって、
今後は以下の様な生産スケジュールに変わっていきます。
・3-6月:さくらんぼの管理、出荷作業 /すももの管理作業
・7-10月:すももの出荷作業
・11月-3月:たらの芽の出荷作業
常勤雇用をすることで、以下の利点があります。
・単純作業に加えて複雑な作業を任せることができる。
・常に側にいて確認や指示を行う必要が無い。(任せている間、自分が他の仕事をできる)
・人材への育成・投資ができる。
・給料を上げることができる。
農業の雇用において、以下の様な慣習というか、通例の様なものがあります。
・アルバイトや社員に任せる仕事を限定する。(大事な仕事は農園主やその家族だけでやる...等)
・性別や年齢で任せる仕事を限定する。(女性には機械を使わせない...等)
*これは誰が悪い、という話をしたいのではなく、「ただ昔から皆そうだったから、今もそう」というだけです。
当農園では、
・従業員に任せる仕事を限定しません。従業員1人1人と定期的に面談して、個々人のやる気、適性、ライフステージを考慮しながらですが、少なくとも現場での農作業においては、経営者の自分と同じ事ができるようになる様に育成をしています。
・性別や年齢で任せる仕事を限定しません。これも従業員1人1人と定期的に面談して諸々考慮しながらですが、「女性だから」「若いから」「高齢だから」という理由で制限を設けません。
お天道農園の雇用の取り組み
当農園で現在雇用している3名は全員女性です。全員お子さんを持つお母さんです。3名の内2名は農業未経験者です。3年前に、1番最初に雇用した従業員は、雇用時点では農業は完全未経験、鍬も鎌も持った事がないという状態でした。現在は耕運機、トラクター、乗用草刈り機、スピードスプレイヤー(果樹園に農薬を散布する機械)、農薬散布機等、様々な農業機械を使いこなしています。何なら自分より操作は上手です。ひとつひとつOJTで使い方を教えて、1人で作業を完遂できる様になりました。
他の2名にも同様に、まずは農業機械の操作をOJTで教えています。2027年までには全員が主な農業機械を操作して、自分と同じ以上のレベルで農作業ができる状態になっていると思います。
また農業機械の操作だけでなく、農場を管理していくのに必要な知識や判断基準を教えていく予定です。作業スケジュールの組み方、作業指示の出し方、各作物の生理生態の知識とその管理の仕方、農薬や肥料の選び方...etc 。最終的には1人前の農家と遜色ないレベルの能力(できること、考えられること、判断できること)を身に着けてもらいたいと考えています。
従業員の能力が向上することで、
・農園としての生産性が格段に上がります。今回のプロジェクトで耕作放棄地に新たな苗木を植えていきます。つまり管理する農地の面積が格段に増えていくのですが、これは生産性を上げなければ対応できません。自分と同じことができる従業員がいることで、今回のプロジェクトの実行が可能になります。
・従業員の給料を上げていくことができます。正直、利益率・利益額が低い農業という産業において、無条件に従業員の給料を上げていく、という事は現実的ではありません。従業員が、生産性という観点で、自分の能力で自分の給料を稼げる状態であれば問題なく給料を上げていく事ができます。給料が上がれば、従業員の生活、人生が良くなっていくと思います。また自分が成長した分、それがちゃんと給料に反映されていく職場は、働いていて希望が持てると思います。1番最初に雇用した従業員は、現在の時給が雇用当初、3年前の時給の約1.5倍になっています。まだまだ能力に伸びしろがあるので、引き続き能力を伸ばして、給料も上げ続けていきます。
・これから地方はどんどん仕事が無くなっていきます。人口が減り、市場が減り、企業が無くなっていきます。今は人手不足ですが、今後人手よりも雇用先が少なくなってしまう状況が起こる事は可能性として低くありません。その時に、職を得るうえで、「人材としていかに能力が高いか、できる事が多いか、経験が多いか」という事がとても大事になります。あれば職を選ぶ立場になれますし、なければ選ぶ立場になれず、また選ばれることも難しくなります。最悪の場合、職が必要なのに見つけることができない、という状態になります。自分は仮にお天道農園が潰れて無くなってしまっても、自分の従業員が職に困らない様になって欲しいと思っています。その為にも、勝手な願いかもしれませんが、従業員には自分の能力を向上させて欲しいと思っています。地方において農業は最後まで無くならない仕事だと思いますし、一端の農家と同じレベルで仕事ができる従業員は中々いません。少なくとも農業界においては、職には困らない能力を持つ人材に育てたいと思っています。
常勤の従業員が居て、彼ら彼女らの成長によって農園の生産性が向上する。生産性が向上すれば利益が増え、従業員の給与が増える。給与が増えれば生活や人生が良くなる。また成長した分だけ自分に返ってくる(給与が増える)という希望を持って働けるようになる。優秀な従業員ができるだけ長く勤めてくれることで、農園の生産性が向上し、稼げる農業経営を実現できるように、この様な雇用形態を採用しています。



