「愛は、病気なのかもしれない。」

これは、アルゼンチンの作家
Gustavo Nielsen
による小説『El amor enfermo』を読むとき、私たちの中に浮かび上がる問いです。
情熱でもない。
ロマンでもない。
愛は感染し、
歪み、拡大し、
時に人を壊す。
静かで、冷たい熱を持った物語。

ラテンアメリカ文学という言葉から、魔術的リアリズムを思い浮かべる人もいるかもしれません。
しかしニールセンの作品世界は、都市の日常、身体、欲望、人間関係を独特の感覚で描きます。
都市の日常、
身体、
欲望、
人間関係の歪みを、独特の感覚で描く作家。
建築家でもある彼は、
文学と建築という二つの領域で創作を続けています。
その文学を、
私たちはいま、日本語で読み直そうとしています。
30年前、私はニールセンに会った
30年前、私はブエノスアイレスで、まだ若かったGustavo Nielsenと出会いました。
初めて会ったその日に、私は彼にお願いしました。
「あなたの小説を日本語で出版する権利をください。」
彼は『Flor Azteca』にサインをしてくれました。
日本に帰国してから、私は辞書を片手に、一冊の小説を少しずつ日本語にしていきました。
そして何とか日本語版を作り、Amazonの電子書籍として出版しました。
しかし、今振り返れば、それは決して満足できる翻訳ではありませんでした。
自分の中では、ずっと心に引っかかっていました。
「本当に、ニールセンが書いたものを日本語にできたのだろうか。」
それから30年。
時代は大きく変わりました。
いまではAIに文章を渡せば、外国語の小説でさえ、短時間で日本語にすることができます。
30年前、私は辞書を片手に一文ずつ翻訳していました。
今はAIが翻訳してくれる。
では――
AIに翻訳させれば、それで文学を理解したことになるのでしょうか。
この疑問から、今回の公開実験を思いつきました。
そして私は、30年前に出会ったGustavo Nielsenに、この企画について相談しました。
Gustavo Nielsen(グスタボニールセン)
Gustavo Nielsenは、アルゼンチン・ブエノスアイレスの作家・建築家です。
私は30年前、ブエノスアイレスで彼と出会い、彼の小説『Flor Azteca』を日本語で出版したいと本人に申し出ました。
今回の実験で取り上げる『El amor enfermo』も、彼の作品の一つです。
私にとってNielsenは、単に「今回取り上げるアルゼンチンの作家」ではありません。
30年前に、私が初めて「外国文学を日本語に届けたい」と思わせてくれた作家です。
そして30年後のいま、私は再び彼の作品を前にしています。
ただし、今度は辞書ではなくAIを使って。
だからこそ、今回の実験を彼に相談しました。
しかし――
ここに、ひとつの問いがあります。
当時、ラテンアメリカ文学作品を日本語にするには、
スペイン語学の権威と呼ばれる大学教授が、
長年の研究と経験を背負い、
時間をかけて訳すしかありませんでした。
翻訳とは、
人生を通過した言葉だけが触れられる領域だった。
言葉の裏にある文化。
行間に沈んだ沈黙。
書き手の癖。
時代の匂い。
それらを自分の身体に通し、
迷い、
削り、
また書き直す。
だから遅かった。
だから重かった。
だから尊かった。

いま。
ノートパソコンを開き、
AIに原文を貼り付ける。
数秒。
整った日本語が表示される。
苦労はありません。
逡巡もありません。
汗も、沈黙もありません。
迷わなくても、答えは出る。
では――
それは本当に、
物語を理解していると言えるのでしょうか。
ビジネス文書なら、
意味が正確に伝われば十分です。
契約書に魂は不要です。
しかし、小説は違う。
AIは、文法的にも自然な日本語を、
驚くほど短時間で提示します。
もっとも“無難な正解”。
正しいかもしれない。
けれどそこに、
原作者の震えはあるのか。
翻訳者が一晩悩み抜いた迷いはあるのか。
言葉を何度も削り、戻し、また削った夜の時間はあるのか。
その問いから、
このプロジェクトは始まりました

このプロジェクトで実現したいこと
AIによる翻訳と、私たちがその文章を読んで行った解釈を並べます。
優劣を決めるためではありません。
AIの翻訳が、読者の解釈や原作者の意図とどこまで一致するのかを“可視化”するためです。
そして今回、原作者Gustavo Nielsen氏本人に、AIによる翻訳と解釈を確認してもらいます。
AIが訳した言葉、人間が選び直した言葉——
それが本当に自分の意図と一致しているかを、作家本人に語ってもらう。
これは単純な「答え合わせ」ではありません。
AIによる翻訳と解釈が、原作者の意図とどこまで一致し、どこでズレるのかを記録する実験です。
やり方はこうです。
1AIが訳した一節を、イラストにします
2そのイラストと解説を、原作者ニールセン氏本人にスペイン語で見てもらいます
3「これは、あなたが書きたかったことと合っていますか?」と本人に確認してもらいます
4一致していた部分、ズレていた部分——その両方を記録します
これは、AIと人間の翻訳を比べて優劣を決める実験ではありません。AIによる翻訳と、そこから生まれた私たちの解釈が、原作者の意図とどこまで一致するのかを、本人の言葉によって検証する実験です。

これは作品発表ではなく、
公開実験です。
私たちはいま、分岐点にいる
数年後、
AI翻訳が完全に日常になったとき、
振り返れば2026~2027年は
時代のターニングポイントだったと言われるかもしれない。
創作とは何か。
翻訳とは何か。
人間の迷いは、無駄なのか。
それとも、
唯一残る価値なのか。
この瞬間に、
あなたは観客でいますか?
それとも立会人になりますか?
立ち上げの背景
私はこれまで、
ラテンアメリカ文学を日本語に紹介する活動を続けてきました。
文学は売れない。
翻訳は儲からない。
そう言われ続けながらも、
言葉の力を信じてきました。
けれど、AIの登場は
否応なく問いを突きつけてきました。
「それでも、人間は必要ですか?」
逃げずに向き合うことにしました。
だから、このプロジェクトを立ち上げました。
Gustavo Nielsen氏は、まだ日本ではほとんど知られていません。 この実証実験を、彼の名前と作品を日本に届ける最初の一歩にしたいと思っています。
準備状況
原作はすでにOCR化済み。AI翻訳の一次稿も完成。 *原作者Gustavo氏から本プロジェクトの承認済み。
AI訳をもとにしたシーンのイラストを制作し、原作者本人による確認・解説のプロセスを進行中です。
小さく始めて、実証する。
机上の理論ではなく、
実験として。
この実験は、ここで終わりません
今回のプロジェクトは、私たちが考えている実証実験の第1段階です。
まずは『El amor enfermo』を題材に、AIによる翻訳・解釈と、原作者本人の確認を通して、
AIは文学作品の「意味」だけでなく、「作者が込めた意図」まで捉えることができるのか。
その可能性と限界を探ります。
そして、この実験への反応を見ながら、次の段階では広く多くの方々にも参加してもらい、AIによる翻訳と人間による翻訳を比較する、より本格的な公開実証実験へ発展させたいと考えています。
今回のクラウドファンディングは、そのための最初の一歩です。

リターンについて
文学実験の証人
— この実験が存在したことを、記録する側になる —
歴史の証人
— この実験を未来に残す —
・朗読会参加権
・限定解説動画視聴権
・限定冊子
・クレジット掲載
あなたは支援者ではなく、
この実験の共同立会人です。
スケジュール
2026年
10月:クラウドファンディング募集期間
11月:翻訳・イラスト検証、ニールセン氏との解説動画収録、「立会人」募集終了
2027年
1月:朗読会開催
2月:記録映像の配信、冊子の配布
一段ずつ、
確実に。
最後に
ラテンアメリカ文学は、
常に時代の歪みを描いてきました。
いま歪んでいるのは、
言語そのものです。
この実験が成功するかどうかは分かりません。
でも、
この瞬間に立ち会わなければ、
あとで語ることはできない。
ページをめくるのは、
あなたです。



