
ウミガメと美波町の未来を、新しいフレンズと共に
かつてヒトは、自然の中に日々の糧を求め、ときには自然の変化に翻弄されながら、その一部として生きてきました。同じようにウミガメも、自らに備わった能力を頼りに、長い年月を生き抜き、命をつないできました。
ヒトの暮らしが自然と深く結びついていた頃、海辺で暮らす人々にとって、ウミガメは砂浜を共有する隣人のような存在だったのかもしれません。
暖かい季節になると、どこからともなく砂浜に現れ、涙を流しながら産卵する大きなウミガメ。そして、砂の中から這い出し、一目散に海へと向かう小さな子ガメたち。その姿を目にした人々は、さまざまな思いを寄せたことでしょう。
ヒトもウミガメも、長い進化の歴史の中で、それぞれの環境に適した体と生き方を獲得してきました。ウミガメは、海での生活に適応した体を獲得し、今日まで命をつないできたのです。
生きものが進化によって姿や生き方を変えるには、長い年月が必要です。しかし、ヒトは進化の過程で獲得した知恵や能力を生かし、自らを取り巻く環境を大きく変えるようになりました。そして、他の生きものとは異なる繁栄の道を歩み始めたのです。
その結果、ヒトの暮らしは豊かになり、自然の変化による影響を、ある程度は自らの力で抑えることができるようになりました。一方で、自らも自然の一部であるという意識は、次第に薄れてきたように思います。
そんなヒトにとって、ウミガメは長い間、謎の多い生きものでした。
戦後の混乱がまだ残る日和佐の町で、一頭のアカウミガメの死をきっかけに、ウミガメをもっと知ろうとする小さな活動が、地元の中学校の教師と生徒たちによって始まりました。
それは、中学生らしい素朴な疑問と探究心から生まれた活動でした。しかし、その取り組みは長い年月を経て大きな意義を持つようになり、海外の研究者からも高く評価されることとなりました。
やがて、その活動を受け継ぐ形で日和佐うみがめ博物館が設立され、国内のウミガメ保全活動の広がりにもつながっていきました。そして、ウミガメを知りたい、守りたいと願う多くの仲間が集まるようになったのです。
近年、研究の進展によって、ウミガメの生態は少しずつ明らかになってきました。それは、ヒトが持つ知恵と探究心によって得られた成果です。
一方で、ウミガメの数が大きく減少していることも明らかになってきました。そして皮肉にも、その大きな原因が、私たちヒトの活動にあることも分かってきたのです。
ウミガメが進化によって環境の変化に適応するには、長い年月を要します。しかし、現在の自然環境は、ウミガメが進化によって適応することが難しいほどの速さで変化しています。
一方、ヒトは知恵と探究心によって、自らを取り巻く環境を大きく変えてきました。そして、その同じ能力を生かして、自らの行動を変えることもできるのです。
私は、ヒトの活動が自然環境に与える影響は、ヒト自身の知恵と行動によって減らすことができると信じています。
しかし、それは決して一人で成し遂げられることではありません。かつて日和佐の中学生たちがウミガメに関心を寄せ、その活動が多くの人々による保全活動へと広がっていったように、一人ひとりの関心と行動、そして多くの仲間の協力が不可欠です。
このたび、日和佐うみがめ博物館友の会が呼びかけてくださったクラウドファンディング「日和佐うみがめ博物館カレッタ|ウミガメと美波町の未来を、新しいフレンズと共に!」には、大変多くの皆様から温かいご賛同とご支援をいただいております。
新たに多くのフレンズをお迎えできたことを、大変心強く、また、ありがたく感じております。皆様の温かいお気持ちに、心より感謝申し上げます。
友の会によるクラウドファンディングも、まもなく終了を迎えます。最後まで温かいご支援を賜りますようお願い申し上げますとともに、この取り組みを一つのきっかけとして、これからもウミガメと私たちを取り巻く自然環境に関心を寄せていただければ幸いです。
かつて日和佐の中学生たちが抱いた小さな疑問が、多くの人々の思いをつなぎ、今日のカレッタへと受け継がれてきたように、皆様との新たなつながりが、ウミガメと美波町の未来を支える大きな力になることを願っております。
今後とも、日和佐うみがめ博物館カレッタの活動にご理解とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
日和佐うみがめ博物館カレッタ館長 平手 康市



