借金が返せない。また来年も同じことを繰り返すしかない。
炎天下の中、重い芋を掘り起こし、切り、荷台へ運ぶ。1年間かけて育てた作物の対価が、月収換算でわずか1,700円。それでも他に選択肢がないからやるしかない。そうやって時間だけが過ぎていく。
これが、私が暮らしているタイ東北部イサーンの農村の現実です。

このプロジェクトの詳しい背景や、キャッサバとバナナの収入の違いについては、第一弾のプロジェクトページに詳しく書いています。ぜひ合わせてご覧ください。
【タイ農村の現実】農業が発展しない根本問題
なぜ、この地域の農業はこれほど厳しいのか。その根本には、いくつかの構造的な問題があります。
① ひとつは、作物の問題です。
この地域では長年、キャッサバが唯一の選択肢でした。キャッサバは年に1回の収穫のため、収穫までの長い間、現金収入がほぼ途切れます。その間も生活は続くため、借金をするしかなくなり、返せないまま積み重なっていく。本来、暮らしの基盤であるはずの資産が、少しずつ失われていく現実があります。
② もうひとつは、水の問題です。
バナナ栽培において、水は最も重要な要素のひとつです。本来であれば、灌漑用水路などのインフラが整っていれば、安定して農業ができます。しかしタイ東北部イサーン地方では、灌漑インフラの整備が長年にわたって遅れています。100年以上にわたって改善が試みられてきたにも関わらず、水不足は今もこの地域の農業における最重要課題のひとつです。
東北タイは水源が乏しく灌漑率は10%弱で、不安定な雨水に頼らなければならない地域です。政府もダムの建設やため池の整備に取り組み始めていますが、農村の隅々まで恩恵が届くにはまだまだ時間がかかります。
そしてこの灌漑インフラの問題は、農業の問題だけにとどまりません。イサーンの農業の大部分は不安定な降水に依存する天水田で行われており、その収量は低くかつ不安定で、イサーンはタイでも最も貧困な地区とされてきました。水が確保できないから安定した収入が得られない。収入が得られないから貧困から抜け出せない。その悪循環がこの地域に長年根付いているのです。
水の問題は、この地域の農業が発展しない大きな原因のひとつ。そして貧困の根本にもつながっています。
親の収入が低いことで起こる、子どもたちへの影響
農業収入の低さは、農家だけの問題ではありません。その影響は、子どもたちの未来にまで及びます。
先日、この村の現実を改めて突きつけられる出来事がありました。近所の家族に呼ばれて参席したのは、14歳の女の子の結婚の儀式でした。正式な式場も、華やかな装飾もありません。両家族が集まって簡単な儀式を行い、一緒に食事をする。お金がないから、それが精一杯の形なのです。相手も同じ14歳。式の間、周りの大人は誰一人として止めませんでした。
これは、紛れもない児童婚です。タイでは法律上、18歳未満の結婚は認められていません。しかしこのような農村では、「児童婚」という概念自体が広く認知されていないのが現実です。止めなかったのではなく、それが問題であるという認識自体がなかったのかもしれません。
なぜ、このような選択がされるのか。
世界では多くの女の子たちが幼いまま結婚を強いられ、学校へ行くことも、将来の夢を描くこともできずにいます。この村でも同様で、周りに将来の可能性を示してくれる大人もおらず、外の世界を知る機会もなく、この農村で生きていくための数少ない選択肢のひとつとして、それが選ばれたのです。
経済的な背景もあります。収入が乏しい中で、2つの家庭が一緒になることで生活を支え合える。農作業も、家事も、子育ても、助け合いながら乗り越えていける。厳しい農村の暮らしの中では、それが合理的な選択として長年機能してきた側面があります。
しかし、14歳同士がこれから子どもを持った場合、どうやって育てていくのか。児童婚は貧困等の家庭内問題と深く結びついており、その連鎖を生みやすい構造があります。問題は個人の選択ではなく、選択肢のなさそのものにあります。
この問題は、この村だけの話ではありません。家計の不安定さが子どもの就学継続を妨げており、子どもたちは早い段階から「生きていくための選択」を迫られます。
この村でも、そういった現実があります。たとえば、幼い頃から踊りの才能がある子は、早い段階から舞台やイベントで踊ってお金を稼ぐ道を促されることがあります。才能を活かして収入につなげようとする親心は理解できます。同時に学業にも専念できれば理想的ですが、経済的な現実がそれを難しくしている場合も多い。
大切なのは、選択肢があるかどうかです。
これがこのプロジェクトをやり続ける理由だと、あらためて感じました。親の収入が変われば、子どもの選択肢が変わる。それは単なる言葉ではなく、この村では切実な現実です。
収入が増えれば、できることが増えます。新しい体験や機会が生まれます。大人だって、本当はもっといろんなことをしたいはずです。でもお金がなく、できることが限られている現状が長年続いてきた。
そしてその大人が、さまざまな体験をし、視野が広がることで、子どもたちにも自然と影響していきます。親が挑戦する姿を見て、子どもも挑戦できる。親が外の世界を知ることで、子どもにも新しい可能性を見せてあげられる。
収入の問題は、一家族の問題ではなく、次の世代の未来にまでつながっているのです。
私がこの村でしてきたこと
2022年、夫の故郷であるタイ東北部イサーンの村に嫁ぎました。初めてこの村を訪れたとき、異世界に来たような感覚でした。豊かな自然、温かい人々。経済的に厳しい場所だとわかっていても、この場所で子供を育てたいと思いました。
毎朝の日課は、ヤモリ、鶏、牛たちのフンを掃き掃除することから始まります。停電や断水は日常茶飯事。赤ちゃんのミルクを買うのも一苦労。笑えるけど、これが毎日のリアルです。それでも村人は皆、家族のように温かく、息子はすくすくと育っています。

この環境で子育てをしていて、強く感じることがあります。イサーンの子どもたちが自然の中でのびのびと育つ環境には、都市のどんな教育にも替えられない価値があるということです。土を踏んで、動物と触れ合い、季節を感じながら育つ。そこで培われる感覚や生きる力は、お金では買えないものです。環境や状況は厳しくとも、ここにしかない価値と魅力がある。だからこそ、この村の未来を諦めたくないと思っています。
暮らせば暮らすほど感じるのは、この村の経済的な厳しさでした。自分だけが問題を解決したところで何も変わらない。村人は皆家族のように近い存在だから。そう感じていた私が、まずできることとして始めたのが寺子屋です。

子どもたちが自由に集まれる場所をつくり、外の世界とつながる機会を届けること。寺子屋では、子どもたちの視野を広げ、自分の可能性に気づけるきっかけを届けることができます。でも、進学したい、将来何かに挑戦したいと思ったとき、経済的な問題が直結してきます。どんなに可能性を広げても、親の収入が低ければ、その先の選択肢は狭くなってしまう。
だからこそ、このバナナ農園プロジェクトが必要なのです。親の収入が変われば、子どもたちが将来挑戦できる選択肢が広がる可能性が生まれます。寺子屋で種をまき、バナナ農園で土台をつくる。この2つは、私の中でずっとつながっています。
だから私たち夫婦は、NoiとAuの挑戦に乗ることを決めました。
私たちがバナナ農園を選んだ理由
Au と Noi
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大で、NoiとAu(Noiは夫の幼なじみでAuはその妻)が、勤めていた日本企業の仕事を失いました。故郷に戻りキャッサバ栽培を始めましたが、2年続けても結果は赤字。
転機はYouTubeで見つけた一本の動画でした。キャッサバからバナナに転換した農家への質問
「なぜ変えたのですか?」への答えはシンプルでした。
ー「キャッサバで赤字になったからです。」
笑ってしまうほど、自分たちと同じ理由でした。
そこからバナナ栽培を本格的に調べ始め、県の研修会に参加し、買い付け会社のオーナーとも出会いました。バナナは果実だけでなく、花・葉・茎までほぼすべてを活用できる植物です。果実の販売、苗の販売、副産物の活用、複数の収入の可能性を持つ作物です。
収穫したバナナはKing Fruit Company、7-Eleven、Makro、Lotus'sなどへすでに販売ルートが決まっています。
しかし周りの反応は冷たいものでした。「上手くいくはずがない」。その言葉を何度も聞きました。資金もない。協力者もいない。それでも彼らは諦めませんでした。
そしてたどり着いたのが、私たち夫婦でした。親の収入が変われば、子どもたちの選択肢が変わる。バナナ農園で親の収入を変えていけるかもしれない。その可能性が、私たちの背中を押しました。


私たちは実際に車で片道6時間かけてナコーンラーチャシーマー県を訪問し、苗の供給元であるキングフルーツカンパニーの農園を視察しました。キャッサバからバナナへ転換する農家が実際に増えており、安定した収益を得られるようになっている現実がありました。「この村でも、できる」——そう確信した瞬間でした。
私たちが挑戦すること
このプロジェクトでは2つのことを実現します。
① 8ライ(約12,800㎡/サッカーコート約2面分)のバナナ農園をつくる
ホムトンバナナ(タイの高級香りバナナ)約3,200本を栽培します。収穫したバナナはKing Fruit Company、7-Eleven、Makro、Lotus'sなどへすでに販売ルートが決まっています。
② 村の中で出荷まで完結できる仕組みをつくる
農園内にパッキング施設を設置することで、村の中だけで生産から出荷まで完結できるようになります。
✨そして、この農園を村全体へ広げていくために
まず私たちが農家の土地を3年間借り、水システムなどの設備を整えて農園を立ち上げます。収穫・運営の流れが軌道に乗ったら、整えた環境ごと農家に引き継ぎます。この仕組みによって、初期投資の負担を減らしながらバナナ栽培に挑戦できる農家を、この村で少しずつ増やしていくことができます。
第一弾結果報告+現在の農園準備状況
2026年4月30日をもちまして、クラウドファンディング第一弾が終了いたしました。
支援総額:1,035,000円
支援者数:44名
目標金額の350万円には届きませんでしたが、農園立ち上げに必要な92万円を超えることができました。これにより、予定通りの規模での8ライのバナナ農園立ち上げが可能となりました。ご支援くださった皆さま、本当にありがとうございます。
現在の農園準備状況は以下の通りです。

✔ 竹の支柱を手作りしてコスト削減
水のホースを地面に固定するための支柱は、本来プラスチック製の専用資材を使いますが、この地域では普段から竹の扱いに慣れているため、すぐに手作りすることができました。コストを大幅に削減しています。
✔ 土地整備
元々キャッサバ畑だった土地に、ドロマイト(苦土石灰)と大型トラック2台分の鶏糞を撒き、トラクターで土全体に馴染ませました。バナナ栽培に向けて、土づくりが着実に進んでいます。
✔ 井戸掘り工事完了
4月26日、バナナ農園予定地にて井戸掘り工事(ボーリング工事)を行いました。農園立ち上げで最も費用のかかる工事でしたが、無事に完了しました。
✔ ソーラーパネル設置完了
4月28日、井戸から水を汲み上げるためのソーラーパネルの設置も完了しました。農場エリアには電気が通っていないため、ソーラーパネルが必要です。これにより水システムが整い、バナナの栽培をスムーズに進められる環境が整いました。
第二弾クラウドファンディングについて
農園づくりが動き出しました。しかし、バナナを育て、収穫へと導くためには、ここからも継続的な資金が必要です。
第二弾では、収穫までに必要な肥料代と薬代を集めることを目的としています。
目標金額は100万円。
All-in方式のため、目標に届かなかった場合も、集まった資金でできる限り農園を前に進めてまいります。
リターンについて

このプロジェクトでは、"モノではなく"関わる体験"をお届けします。
バナナの木オーナーになると、タイの農園にあなたの名前のついた木が育ちます。成長の様子は定期的にレポートでお届けし、15,000円以上のプランでは収穫の瞬間にあなたの名前を呼びながら収穫する動画もお届けします。遠く離れていても、この村とつながっていられる体験です。
また、10万円の農園オーナープランでは、あなただけの農園専用動画を特別に制作してお届けします。記念に残る一本です。
第二弾では、全てのオーナープランに "バナナの木 成長記録フォトブック"(デジタル版)が付きます。植え付けから収穫までの成長を写真でまとめてお届けする、第二弾限定の特典です。
リターン一覧
🌱 ちょこっと応援プラン(1,000円)
🌱 応援サポータープラン(3,000円)
🌿 農園サポータープラン(5,000円)
🍌 バナナの木1本オーナープラン(10,000円)
🍌 バナナの木1本オーナー+収穫体験プラン(15,000円)
🌴 バナナの木5本農園オーナー+収穫体験プラン(30,000円)
🌴 バナナの木10本農園オーナー+収穫体験プラン(50,000円)
🌏 バナナの木20本農園オーナー+収穫体験+専用動画プラン(100,000円)
今後の計画について
このプロジェクトは、第二弾で終わりではありません。収穫まで、皆さんと一緒に走り続けます。
🌱バナナの植え付けについて
現在、バナナを植えるための土地整備が着々と進んでいます。植え付けは7月を予定していますが、本格的な雨季に突入すると植え付けのタイミングが難しくなるため、現在苗提供会社と調整中です。早ければ5月中、遅くとも7月頭を予定しています。
5月に植え付けが始まる場合は、支援者の皆さんのバナナの木に順次ネームプレートを取り付けてまいります。あなたの名前のついた木が、この土地に立つ瞬間をぜひ楽しみにしていてください。
収穫までに必要な資金は、クラウドファンディングをはじめあらゆる手段を並行しながら集め続けていきます。
このプロジェクトには、私たちが越えなければならない関門があります。
第一関門:バナナ農園の一つのモデルをつくること
まずはこの農園を収穫まで導き、成功モデルとして確立させること。これが私たちの今最も重要な目標です。
第二関門:各農家へバナナ農園を広げていくこと
一つのモデルができれば、次はこの村の各農家へバナナ栽培を広げていきます。成功した仕組みを引き継ぎながら、この地域全体の農業を変えていくこと。それが私たちの目指す未来です。
まだ長い道のりです。でも、一歩ずつ確実に前に進んでいます。
最後に
今、この村はキャッサバの収穫が終わり、次の収入が入るまでの間、ほぼ収入のない時期を過ごしています。
村人たちは毎日、食べるものを自分で探しに出かけます。山へたけのこやきのこを採りに、川へ魚を獲りに、夜にはカエルを捕まえに。イサーン地方では昔からそうやって自然の恵みと共に生きてきました。その知恵や逞しさは、本当に素晴らしいと思います。
でも今は、食べていくのに精一杯で、それ以上の何かができない状況が続いています。子育てをしている親にとっては特に大変です。子どもに何かを与えてあげたくても、せいぜいお菓子を買ってあげることくらいしかできない。それがこの村の今の現実です。
だからこそ、このプロジェクトを前に進めたい。収入が変われば、できることが変わる。その一歩を、この村からつくりたいと思っています。
タイの小さな村で、毎日この農園のことを考えながら暮らしています。土地が整い、井戸が掘られ、ソーラーパネルが設置されていく。少しずつ形になっていく様子を見るたびに、ここまで支えてくださった皆さんのことを思います。
NoiとAuは今、電気のない農場で寝泊まりしながら、バナナ栽培に向けて土地整備に尽力しています。彼らが持ってきてくれたこのプロジェクトに、私たち夫婦も参戦して、今は4人それぞれができる役割を担いながら、毎日動き続けています。
誰も信じてくれなかった時期を乗り越えて、ここまで来ました。
この挑戦を、どうか一緒に見届けてください。あなたのバナナの木が、この村の未来につながっていきます。
引き続き、応援よろしくお願いいたします。
田中はるな
※本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。




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