早川の山の暮らしから学んだこと
はじめまして。
山梨県早川町で、古民家一棟貸しの宿「月夜見山荘」と手打ち蕎麦と山の食「おすくに」を営む鞍打大輔、佳子です。このページをご覧くださり、誠にありがとうございます。以下に、今回応援いただきたい私たちのプロジェクトの概要を説明いたします。
早川町は、南アルプスの急峻な山と深い谷に囲まれた、人口約800人の日本で最も人口の少ない町です。町内には36の集落があり、山の斜面や川沿いに点在し、人の暮らしはいつも山と隣り合わせにあります。

私たちが早川町に移り住んだのは、今から30年ほど前のことです。移住後、この土地で暮らす中で、狩猟採集、斜面地での農業、集落総出で行う道づくり、せぎや水源の維持管理などに関わってきました。
また日本上流文化圏研究所での仕事を通して、早川の先輩方からたくさんの話を聞かせてもらったり、実際に山へ連れて行ってもらったり、作業に参加させてもらったりする中で、焼畑や炭焼き、郷土料理や保存食づくりなど、山ならではの暮らしぶりについてもたくさん教えてもらってきました。
そこで感じたのは、山の暮らしは、自然と折り合いながら暮らすための知恵と技術、そして工夫に溢れているということです。草を刈り、畑を耕し、山道や水源を見て、山菜やきのこ、川魚や獣を得るために山へ入る。畑が鳥や獣に荒らされれば、できる限り守りながら、必要な時にはその命も暮らしの中に受け止める。日々、仕事や生活のために山と関わることが、人の暮らしと自然の間にある境界を保つ営みとなっていました。

しかし、時代の変化とともに、暮らしの中で山と関わる機会は少しずつ減ってきました。山村の過疎化、高齢化の流れの中で、人と自然の境界は、奥山から里山へ、そして集落の周辺へと近づき、さらには集落までもが自然に飲み込まれつつあるのを感じます。
山で暮らす人が減り、草に覆われた空き家が増え、家のすぐそばまで鹿や猿、猪が出てくるのは日常茶飯事です。熊の目撃情報も、増加傾向にあります。自然の回復力は人の想定を遥かに超え、早川町よりもさらに都市近郊の甲府盆地周縁部でも、鹿による農作物の被害や熊の目撃情報が頻繁に発生し始めているのが何よりの証拠ではないかと感じています。
今後、人の生活領域への自然の侵食をどこでどのように食い止めていくのか。これは人々の生活の安全、農業生産、はたまた国土の保全を考える上で大きな課題となってくるでしょう。ただ、言えることは、山と関わり、自然を見る目を養い、自然の動きを理解し対応していくことの中からしか、本質的な解決策は見つからないということです。そのためにも、私たちは山や自然との関わりを、もう一度暮らしの中に取り戻していくところから始めたいと考えています。


暮らしの中に山との関わりを取り戻す
私たちは2019年に、古民家一棟貸しの宿「月夜見山荘」と、手打ち蕎麦と山の食の店「おすくに」を開業しました。囲炉裏の火、山の静けさ、満天の星空、鳥の声、そして山菜、川魚、きのこ、鹿や猪、手打ち蕎麦。宿泊や食事を通じて、山の暮らしの豊かさを感じていただくことを大切にしてきました。

同時に、月夜見山荘とおすくには、私たち自身が山に入る理由を保つための仕事でもあります。春には山菜を採り、夏には川魚を釣り、秋にはきのこを探し、冬には獣を獲り、その命を食へとつなぐ。山に入ることで料理が生まれ、宿での時間が豊かになり、お客さんに伝えられるものが増えていきます。
私たちにとって、山に入ることは楽しみであり、仕事であり、この土地で暮らし続けるために欠かせない営みになりました。(日々の暮らしの様子はSNSなどで発信しています)
幸い、月夜見山荘やおすくにを訪れてくださる方の中には、「この土地の暮らしをもっと深く知りたい」「自分も少し関わってみたい」と感じてくださる方がいます。この地には、同じように山に入り、山の恵みや厳しさと向き合いながら暮らす仲間たちもいます。
こうした人たちと一緒に山へ行き、持ち帰ったものを料理し、分かち合いながら、活用の知恵や技術を学ぶ。それぞれがこの山で実現したいことを語り合い、ときには一緒に形にしていく。私たちの次の夢は、こうした時間を積み重ねながら、「山と関わりながら楽しく暮らす仲間を増やしていく」ことになりました。


実践、交流、学びの拠点となる「山の共同よろず小屋」
しかし、山の暮らしに関心があっても、一人で山に入ったり、地域の人に教わったり、道具や場所をそろえて実践したりするのは簡単ではありません。
今回のプロジェクトでは、そうした人たちが山の暮らしに一歩踏み込み、安心して学び、手を動かし、また山へ帰って来るための入口となる「山の共同よろず小屋」(以下「よろず小屋」)を建設します。

かつて山の家々には、季節ごとの仕事や暮らしの営みを受け止める、小さな農作業小屋(納屋)がありました。そこで道具を直し、収穫した豆や穀類を広げ、山菜を保存し、味噌を仕込む。そんな素朴で実用的な作業場です。
そして集落には、水車小屋、豆腐小屋、共同水場、共同の釜場など、みんなが共同で使う小屋や場もありました。隣近所が集まり、手を動かし、技術を伝え、世間話をする開かれた場所です。
私たちがつくりたい「よろず小屋」は、元々山の暮らしの中に当たり前にあった、この二つの小屋をイメージした建物です。
宿泊で来られたお客様や地域の仲間、山の暮らしに関心のある人たちと一緒に山へ行き、持ち帰ったものを料理し、分かち合う。畑で採れたものを選別して保存食に変えたり、みんなで集まって味噌を仕込んだり餅をついたりする。それぞれの夢や得意なことを語り合い学び合う。季節や仕事、人の集まりに応じて姿を変える、素朴で実用的な場所を目指します。
場所は「おすくに」と同じ敷地内です。既存の母屋を解体し、その跡地に、床面積49.6㎡、約15坪の小さな木造平屋を新築します。中心には、下処理、煮炊き、仕込み、道具の手入れなどに使える土間スペースを設け、蕎麦打ちスペースとバックヤード、また山の暮らしに関係する書籍を並べる本棚を備える計画です。

小屋の完成後は、周囲の畑、野山と連動しながら、次の4つの実践を続けていきます。
1. 狩猟採集に関する体験会
山菜採り、きのこ採り、渓流釣り、狩猟などを通じて、山にある資源を学び、狩猟採集の技術とともに、食材の活用方法を学びます。
2. 保存食、食品加工に関する体験会
蕎麦打ちなどの郷土料理づくり、味噌仕込みや豆腐づくり、乾物や漬物などの保存食づくりを通じて、山の食文化の知恵と技術を学びます。
3. 山や周辺環境の手入れに関する体験会
畑仕事、山道やせぎの手入れ、石積みの修復など、集落まわりの環境整備活動を定期的に実施していきます。
4. 講演会、上映会など
全国各地の山の暮らしの実践者から話を聞いたり、全国各地の山の暮らしの記録や映像を上映したり、みんなで語り合い学び合う集まりを定期的に開催していきます。
宿泊者や蕎麦屋のリピーター、学生、移住希望者、この地で暮らす人、地域の仕事に関わる人、日本各地の田舎で同じ課題に向き合う人、都市に暮らしながら山との関わりを探す人にも開かれた場にし、「よろず小屋」を、山の暮らしの楽しさと厳しさを受け止め、人から人へ知恵や技術を手渡し、仲間を増やしていく場として育てていきたいと考えています。



資金の使い道
今回のプロジェクトの総額は約2,000万円を想定しており、うち既存のための解体、および施設の設計に関する部分は自己資金で行います。そして、クラウドファンディングでは、建物の建設に関わる資金の支援をお願いしたく、ファーストゴールを1,000万円、セカンドゴールを1,500万円と設定します。
1,500万円を達成できた場合は、現在計画している規模で、十分な土間スペース、蕎麦打ちスペース、バックヤード、必要な設備や什器を備えた「よろず小屋」を整えます。
ファーストゴールのみの達成となった場合は、金融機関からの借入、または建物の規模や仕様を見直すなどして、山の暮らしを学び、実践する場としての核を守り、小さくても確かな形で立ち上げます。
ご支援金は、建築工事費、電気・給排水などの設備工事費を中心に、什器・備品、記録・広報制作、リターン準備、CAMPFIRE手数料等に大切に使わせていただきます。
完成後は、活動報告、見学会、体験会などを通じて、「よろず小屋」の歩みを共有していきます。山と関わる楽しみ、喜びを、今の時代に合った形でつくっていく。この小屋を、その拠点として、皆様と一緒に育てていきたいと考えています。
どうか、「よろず小屋」の建設と、そこでの取り組みへの共感とご支援をよろしくお願いいたします。




