
今回は、衣装の袖の部分を修復しました。
修復作業を進めていて気になったのが、袖の付け根の作りです。
肩の後ろ側には折り返しが何本も入った「プリーツ」が描かれていますが、前側にはそのような表現がありません。
「なぜ後ろだけにプリーツがあるのだろう?」
そう思って調べてみたところ、マウリッツハイス美術館のブログに興味深い解説がありました。
それによると、この衣装は白いシャツの上に当時流行していたジャケットを着せ、その袖には「インセット・スリーブ(はめ込み袖)」が採用されているそうです。そして、肩の後ろ側に見える平行な線は「カートリッジ・プリーツ」と呼ばれる装飾とのことでした。
また、青と黄色のターバンは当時の日常着ではなく、異国風の人物像「トローニー」を演出するための衣装だったと考えられています。
文章だけではなかなかイメージが湧かなかったので、フェルメールの他の作品も調べてみました。
すると、『手紙を読む青衣の女』では、この作品とよく似た袖の形を見ることができます。
また、『女主人と召使い(Mistress and Maid)』では毛皮付きの上着が描かれていますが、ファーを除いた袖の仕立てはどこか共通する印象を受けます。
、『女主人と召使い(Mistress and Maid)』(部分)
『真珠の耳飾りの少女』では、人物は胸から上だけが描かれているため、衣装全体が大きく注目されることはありません。
それでも、この肩のプリーツが加わることで衣装に立体感が生まれ、青いターバンとともに異国的な雰囲気をより印象深いものにしているように感じます。
修復を始めるまでは見過ごしていた小さな部分でしたが、細部を観察していくほどに、フェルメールの衣装表現の巧みさにも目を奪われます。




