
チャレンジベースは、学生たちにとってもとても大切な居場所です。
特に中高生の居場所という点では、ハートフル・ポートがこれまで大切にしてきたsoil子どもの居場所ネットワーク事業の延長線でもあります。
これから大切にしていきたいことについて、中高生の居場所の担当である、大石にその想いを語ってもらいました。
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中高生の居場所づくりにおける「主体性」のデザイン
―自主性から主体性へ “KIRO” という場の実践から―
1. 「自主性」と「主体性」―似ているようで違う、ふたつの言葉
中高生の居場所づくりに関わる中で、ずっと意識してきた区別があります。「自主性」と「主体 性」です。
自主性とは、すでに用意された枠組みの中で、自分から進んで動くこと。「参加するもしないも 自由」という選択の自由ではありますが、その場自体は誰か(多くの場合は大人)がすでにデザ インし終えています。子どもたちは、その完成品に「参加させてもらう」側にとどまります。
一方、主体性とは、その場そのものを自分たちのものとして引き受け、形づくっていく力のこと です。
参加者ではなく、当事者になること。場を使う側ではなく、場をつくる側に回ることです。
私たちが中高生の居場所づくりで本当に育てたいのは、後者の「主体性」です。
2. なぜ「主体性」を育てたいのか
中高生という時期は、家庭でも学校でもない自分の居場所や役割を模索する時期です。
ここで、 大人が完璧に用意した「居心地のよい場」を提供するだけでは、支援がある間は心地よくても、 その場から離れた瞬間、あるいは支援が終わった瞬間に、何も残らないおそれがあります。
しかし、場をつくる過程そのものに関わり、「自分たちがこの場をつくった」という経験を積ん だ子どもたちは、その後どんな環境に置かれても、「自分たちで場をつくれる」という感覚―― いわば自己効力感を持ち続けることができます。
これは、単に居心地のよい場所を提供すること 以上に、中高生の人生にとって大きな財産になると考えています。
3. 3 年間の子どもの居場所の実践から見えてきたこと
私たちは 2022 年から soil 子どもの居場所ネットワークを運営し、まちに散らばる複数の居場所 をつなげる取り組みを続けてきました。
その 3 年間で出会った子どもたちとの関わりの中で、大事なのは「子どもの数」ではなく、その子一人ひとりに どれだけ寄り添えるかだと実感するようになりました。
この気づきから生まれたのが、中高生専用の居場所「帰宅部のぶしつ」です。そして今回さらに 一歩進めて実践できたのが、新拠点「希望が丘チャレンジベース」に誕生した中高生の居場所 「KIRO」でした。

4. KIRO という場のデザイン―主体性を引き出す仕掛け
KIRO では、「主体性を育てる」というテーマを、名前・つくる過程・関わる人の 3 つの面で具 体的に設計しました。
【名前を、大人が決めなかった】
「KIRO」――希望の「KI」、帰り道にあるから「RO」。この名前は、高校生自身が話し合っ て名付けたものです。名前という、場の一番外側にあるアイデンティティを大人が決めてしまわ なかったことで、子どもたちにとって KIRO は最初から「与えられた場」ではなく「自分たちの 場」になりました。
【場をつくる過程そのものに関わってもらった】
TONKAN(建築系学生の居場所)の施工をきっかけに知り合った高校 1 年生 4 人組は、夏休み の施工にほぼ毎回参加してくれました。彼らなしではチャレンジベースは出来上がらなかった、 と言えるほどです。

空間ができあがってから招かれるのではなく、空間をつくる工程そのものの 当事者になってもらったことは、主体性を育てるうえで大きな意味を持ちます。 この男の子 4 人組は、夏休みの施工を通して TONKAN の学生たちともすっかり仲良くなりまし た。
当事者性は、まず「大人とは違う年上の他者」との関係から育まれ、それが次の当事者性へ とつながっていきます。 この効果は、9 月 7 日の第一回の集まりに早くも表れました。
参加した女の子たちはみな初参加 でしたが、その場を仕切っていたのは、夏休みの施工からずっと関わってきたこの男の子 4 人組 でした。
空間をつくる過程の当事者だった彼らが、今度は場を運営する当事者として、新しく来 た子を自然に迎え入れる――「つくる」から「運営する」へと当事者性が引き継がれていく様子 は、主体性のデザインが機能していることを何より物語っています。

【伴走するのは、少し年上のお兄さん・お姉さん】
KIRO の日々の運営を伴走するのは、TONKAN の大学 1 年生ひろ君(つい最近まで高校生だっ たので年齢が近く話しやすい)、大学 3 年生で代表のりおん君(初対面の子と話すのも、聞き出 すのも、場を盛り上げるのも得意)、大学 2 年生のあいりちゃん(かっこいいお姉さんとして憧 れの存在)。先生でも親でもない、少し年上の「ナナメの関係性」が、上下関係のないフラット な運営体制をつくっています。
5. 9 月 7 日、第一回の集まりが教えてくれたこと
記念すべき第一回の集まりでは、自習をしに来た高校 3 年生の女の子 3 人組、通りがかりで立ち 寄った同級生の女の子 4 人組が、それぞれのペースでこの場に加わりました。真剣に「これから の居場所をどんな場にしたいか」を話し合う時間もあれば、好きなことや行ってみたい場所につ いて、たわいなく盛り上がる時間もありました。 どちらの時間も、大人が用意した「プログラム」ではなく、その場にいた中高生たち自身がつく り出したものです。これこそが、自主性ではなく主体性が育っている状態だと感じています。

6. これからのデザインの方向性 「自主性に任せる」
――すでに用意された場に来るかどうかを自由に選んでもらう、と いう発想だけでなく、
「主体性を育てる」
――中高生自身が場をつくる側に回れるよう、 ハード(空間そのものの施工過程)とソフト(運営を伴走する関係性)の両面から設計していく こと。
これが、私たちがこれからも大切にしていきたい、中高生の居場所づくりにおけるコミュニティデザインの軸です。
主体性を育てた先に思い描いているのは、希望が丘チャレンジベースが、中高生自身の「ゼロイチ」――何もないところから新しいことを生み出す挑戦――を生む場になることです。場に関わるだけでなく、場を通じて自分のやりたいことを形にしていく。
当事者性の先にある「創造」の 経験こそ、この場所が育んでいきたい力だと考えています。 KIRO はまだ始まったばかりの場所です。けれど、名前も、つくる過程も、日々の運営も、中高生自身が担い手であり続けられるよう、これからも伴走していきたいと思います。
応援どうぞよろしくお願いいたします。



