はじめまして、株式会社大島の大嶋幸治と申します。
東京・小金井で、酒類の卸をしております。昭和11年、私の父が小金井の一軒の酒屋から始めた商売で、今年で90年になります。
地酒、本格焼酎、泡盛から世界の銘酒まで、数千品目を扱ってきました。現在は、地酒酒販店や百貨店・生活協同組合等にお酒をお納めするのが本業です。酒類販売管理研修の指定実施団体である一般社団法人酒類政策研究所の会長も務めています。

つまり私は、酒を造る人間ではありません。選んで、届ける側の人間です。

私たちは店にお酒を納めてきました。お客様の顔は、その先にあります。誰がどんな気持ちでその一本を選んだのか、私たちが直接知ることはありません。それが卸という仕事です。
けれど今回だけは、どうしても直接お伝えしたいことがありました。
この酒には、造った男がいます。
その男は、まず土壌にこだわり、芋を育て、また、私、大嶋は麹米にする米にこだわり、焼酎造りをしました。
では、なぜ私が20年以上、加水も調整もせず寝かせてきたのか。
それは、シングルモルトと同じ単式蒸留の焼酎は、長い眠りの中で上品な味へ変わっていくからです。
けれどその価値は、棚に並べて値札を貼るだけでは何ひとつ伝わりません。

だから、はじめてクラウドファンディングという場をお借りすることにしました。一人ひとりに、この酒がどこから来たのかをお話しさせてください。

この酒は、鹿児島から来ました。

2004年、2005年、2009年。
136年以上の歴史ある蔵で仕込まれ、そのままタンクに置かれてきた3銘柄です。
売り先も、値段も、いつ出すのかも決めていませんでした。
ただただ、この酒が仕上がるのを待っていました。20年以上です。
焼酎で、20年以上。
これがどれだけ普通でないことか、酒を知っている方ならすぐ分かると思います。

今でこそ長期熟成という言葉を焼酎でも見かけますが、かつて、焼酎は寝かせる酒ではありませんでした。
蒸留したら、すぐ出す。置いておけばタンクがふさがり、次の仕込みが入りません。倉敷料もかかります。造ったそばから出して、また次を仕込む。そうやって回していく酒でした。
妙な話です。焼酎は、ウイスキーやブランデーと同じ蒸留酒です。向こうは10年、20年と寝かせて、その時間そのものを価値にしている。同じ蒸留酒でありながら、焼酎の世界には時間をかけるという発想がありませんでした。

もちろん、どんな酒でも寝かせればよくなるわけではありません。造りが甘い酒は、20年置けば味がぼやけて終わります。
骨のない酒に、時間は味方をしない。
原料に嘘がなく、雑味の出ない造りをしていて、はじめて熟成が意味を持ちます。何千という酒を見てきて、それだけは分かります。
そして、私が知る中で最も骨のある男の1人が、鹿児島にいました。


原口酒造の原口俊一。肩書きはオーナー杜氏です。
経営者でありながら、仕込みの一切を自分の手で取り仕切る。それだけでも希少な経歴の持ち主ですが、原口さんが本当に違っていたのは、酒ではなく畑から始めていたことでした。
農業生産法人を持ち、焼酎の原料になる芋を自分で作っていたのです。

焼酎の蔵で農地まで抱えている例は、全国でおそらく1〜2%。ワインでいえばフランス・ブルゴーニュのドメーヌの考え方です。土づくりから瓶詰めまで、すべて自分の責任でやる。それを焼酎でやっていた人でした。
芋の品質にもこだわり、大きさは800グラムから1,200グラムのものだけを使いました。それより大きいものは使用しない。

一番いいデンプンが取れるのが、そのサイズだからです。芋は育ちすぎれば中がすかすかになる。原口さんは、その一番いいところだけで仕込みたかった。
ただ量を取るだけなら、大きい芋も使ったほうがいい。目方が出るぶん、造れる焼酎は増えます。それでも原口さんは、焼酎に向かない芋はあえて酒にしませんでした。金儲けには、向いていないのかもしれません。
ただいい酒を造ることにひたむきな、昔ながらの職人。こだわりの人。それが原口俊一という人です。

芋にはこだわった原口さんですが、ひとつだけ、自分の手では揃えられないものがありました。
米です。
芋焼酎は、芋だけでは造れません。麹をつくる米が要ります。焼酎は芋の酒だと思われがちですが、米も同じだけ大事です。芋と米は夫婦のようなもので、どちらが欠けてもいい酒になりません。戦後、米が手に入らない時代に、芋だけで仕込む試みもありました。ただ、私たちがいいと信じてきたのは、芋と米を掛け合わせる方法でした。

芋4トンに対して、米が800キロ。これが黄金比です。
ところが、当時の鹿児島では麹に使える米が思うように穫れませんでした。今でこそ栽培の技術が進み、気候も変わって、鹿児島でも米が穫れるようになりましたが、あの頃は違ったのです。
芋にあれだけこだわった人が、唯一、自分の手の外に出した工程がこれでした。そして、その相手が私でした。
はじめは私のほうから言ったんです。芋にそこまでやるなら、米もこだわろうよ、と。それから毎年、仕込みの時期になると、私が選んだ米を鹿児島へ送りました。

米を選ぶにあたって、私たちは芋との相性をずいぶん話し合いました。産地はどこがいいか、その年の出来はどうか。どうすれば納得のいく焼酎になるのか、旨い焼酎とは何なのか。ただひたすら、議論した日々を、懐かしく思い出します。
芋は原口さんが作り、米は私が選ぶ。この3銘柄は、二人で造った酒でもあります。
そして原口さんは、仕込みを終えるときも、売り先を決めずに置いていきました。私は彼を、商売仲間、取引先と云うより、戦友、同志という言葉でお伝えしたいと思っています。

今回の3銘柄は、原口さんが仕込みから退く終盤の時期のものです。2004年、2005年、2009年。年が飛ぶのは、この時期に仕込んだものの中から、私、大嶋がこれは残すと決めたものだけ置いたからです。
集大成、という言葉を私が使うのは、おこがましいかもしれません。それでも、あれだけ酒造りにこだわった男が最後に手がけた酒です。これを私は最高の形で世に出したい。そう思って、私は原口さんにお願いしました。

「ちょっと寝かせさせてくれ」
当時、出来上がった焼酎をすぐに売らないなど、前例のない話です。それでも原口さんの返事は、ひとことでした。
「いいよ。大嶋さんのお酒、ここに置いとくから」
何年寝かせるかは、何も言及がありませんでした。それは、大嶋が今だと思ったときに出せばいい、という意味だったと思っています。

私は酒を売る人間です。造る人間ではありません。それでも原口さんは、この酒を売る相手としてだけではなく、一緒に造った一人として、私を信頼してくれました。私はそう受け取りました。

3銘柄は、鹿児島の蔵の4トンのタンクに入れられたままでした。このタンクは、簡単には動かせません。中身を上下に入れ替える天地替えもできない。そのまま、同じ蔵のそれぞれの場所でじっと寝かされていました。
私のところへは、年に一度、試飲用の150ccの小瓶が届きました。それを約20回。同じ酒を20年以上かけて飲み続けたことになります。
味が大きく動いたのは、6年から8年のあたりでしょうか。角が取れて、まろやかになる。芋の雑味が引いて、米が前に出てくる。上品な味になっていく、という言い方がいちばん近い。その変化を口で確かめるたびに、この3銘柄はまだ良くなる、という確信を深めていきました。

しかし、3銘柄は同じようには育ちませんでした。
仕込んだときは、3銘柄ともアルコール分は38度前後。それが今は、大和の薫 黒が36.1度。大和の薫 白が30度。そして芋神力が、21.6度。
眠っているあいだに蒸発した分です。造り手はこれを「天使の分け前」と呼びます。天使に渡した分だけ、まろやかさを受け取る。
同じ蔵で、同じように仕込んだのに、渡した量はまるで違いました。しかも芋神力は、3銘柄の中でいちばん新しい2009年の仕込みです。眠っていた時間は、いちばん短い。
なぜ、この一本だけがそこまで天使に渡したのか。
その理由は、蔵にいる「蔵付き酵母菌」が関係あるのか?
柱に、壁に、天井に、何十年と棲み着いた酵母菌。明治23年の創業から、130年以上この建物が育ててきた酵母菌。その中のどこに置かれていたかで、触れる菌も、風の通りも、温度も違います。

つまり、蔵が一本ずつに、別々の眠りの中で熟成をしてきたのです。造り手が決めたのではなく、蔵が決めた。老舗の蔵でなければ、こうはならないと思います。
そして、いちばん多くを天使に渡した芋神力が、いちばん上品な味の酒になりました。
ぜひ、そのままロックで味わっていただきたい。熟練の職人が造り、明治から続く蔵が長い時間をかけて味を育てた。その味を、ぜひあなたに届けたいと思っています。


大和の薫 白|2005年仕込み・白麹・30度
蒸したての芋、蒸した米に白麹で造る「総ハゼ」の米麹。素材そのものの、やわらかく甘い香りが立ちます。21年の熟成がアルコールの荒さを抜き去り、旨味の層と深みだけが残りました。
大和の薫 黒|2004年仕込み・黒麹・36.1度
ウイスキーを思わせる、奥行きのある香り。口に含むとボリュームがあり、飲み応えがあります。22年置いて、この度数です。黒麹の力強さが、角の落ちた状態のまま立っている一本。3銘柄の中でいちばん骨太です。
芋神力|2009年仕込み・黒麹・21.6度
3銘柄の中で、もっとも日本酒に近い一本。芋の雑味が抜けて、米の旨みと調和しています。澄んだ清涼感があり、キリッとした口当たり。王道の黒麹で仕込み、そのうえで蔵にいちばん多くを預けた結果がこれです。
ラベルの字は、芋神力を私が、大和の薫の白と黒を私の姉が書きました。私の字はあそびの要素が強く、姉の字は正統派の字です。それぞれの焼酎の味を最も表すラベルとなったと思っています。
飲み方
ロックをおすすめします。 20年以上の熟成を経た酒は、水で薄める必要がありません。氷が溶けていくあいだに香りが開いていくのを、そのまま味わっていただきたい。

もちろん水割りや、お湯割りでも構いません。
合わせる料理は、和食ならまず外しません。懐石から寿司、焼き鳥まで、幅広く合わせていただけます。もちろん、洋食でも、出汁がベースにあるフレンチなどは相性がいいと思います。香りが優しいので、チーズなど個性の強い料理でも上手に受け止めてくれるはずです。


焼酎を寝かせているという話をすると、「寝かせれば寝かすほど、良くなるのか」とよく聞かれます。
答えは、Noです。
熟成にはピークがあります。それを過ぎると、角が取れるどころか、個性そのものが消えていきます。まろやかを通り越して、没個性になる。何の酒だか分からなくなります。
年に一度の利き酒を20回続けてきて、今が一番まろやかで、かつ特徴が残っているところだと判断しました。あと数年置けば、この3銘柄の違いすら分からなくなるかもしれない。

だから今なんです。待ったから出すのではありません。酒を品評し、販売し、勧め続けてきた私が、今が飲み頃だと判断したから出します。
この味わいには、どんな焼酎愛好家の厳しいレビューにも耐えられる自信があります。

長年かけて焼酎造りに心血を注いだ杜氏が最後に造り上げた焼酎、目利きを極めてきたと自負する私が自信を持ってお勧めする今回の古酒は、特に次のような方に飲んでいただきたいと思っています。
① 芋焼酎に一言ある方へ

原料から造りまで、判断していただく材料はすべてこのページに書きました。そのうえで、3銘柄を並べて確かめていただきたい。麹の違い、蔵付き菌の違い、天使に渡した量の違いが、そのまま3銘柄の差になっています。
おすすめのリターン
一升瓶 三銘柄飲み比べ 3本|22,500円
三銘柄飲み比べ 720ml×3本|11,250円
一升瓶 大和の薫 黒 1本|8,500円
② いつも芋焼酎を飲んでいる、恩人への贈り物に

家で毎晩、芋焼酎を飲んでいる。そういうお父様やお世話になった方などに何を贈るか、迷われている方へ。
20年以上寝かせた芋焼酎は、そもそも棚に並びません。飲み慣れた方ほど、一口で「これは違う」と分かります。目新しさではなく、中身で驚かせられる一本です。
おすすめのリターン
三銘柄ギフト(化粧箱入り)720ml×3本|13,000円
白黒飲み比べ 720ml×2本|8,000円
一升瓶 大和の薫 黒 1本|8,500円
③ 生まれた年の酒を、贈りたい方へ

ワインやウイスキーでは、生まれ年のものを探して贈る文化があります。日本の酒でも、それができます。
大和の薫 黒は2004年、白は2005年、芋神力は2009年。その年に仕込まれて、そのまま熟成期間を過ごしてきました。
なお、瓶に詰めたあとは、タンクのように味は変わりません。冷暗所で新聞紙に包み、立てて置いていただければ、その味のまま待っていてくれます。2009年生まれのお子様には、20歳を迎える日まで、ご家庭で預かっていただくという楽しみ方もできます。
おすすめのリターン
一升瓶 大和の薫 黒(2004年)1本|8,500円
一升瓶 大和の薫 白(2005年)1本|7,500円
一升瓶 芋神力(2009年)1本|6,500円

全18種をご用意しました。一升瓶(1.8L)と720ml、飲み比べセット、化粧箱入りのギフト、飲食店様向けの6本箱まで揃えています。詳細は本ページ下部のリターン一覧をご覧ください。
在庫には限りがあります。 いずれも熟成された酒ですので、追加で造ることはできません。無くなり次第、終了です。
※20歳未満の方はご購入いただけません。
※お酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。

2026年10月中旬|クラウドファンディング公開
2026年11月末|クラウドファンディング終了
2026年12月〜2027年1月|順次発送
※発送時期は変更となる場合がございます。
<募集方式について> 本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。


私は子どもの頃から、父の店の店先に立っていました。
小学生の時分には、味噌を頼まれた通りの重さで一度に量れるようになりました。500グラムと言われれば、500グラム。一升瓶を3本まとめて紐で結ぶのも、一人前にこなしていました。
大人になってからは、蔵を回りました。11月から3月、仕込みの時期に、年に30軒。それを20年続けました。朝に行って、挨拶をして帰ってくるだけでは、その蔵の中身は分かりません。泊まって、蔵人と一緒に飲む。そこで初めて、その人たちがどんな酒を造っているのかが見えてきます。

私は工場を持ちません。造る設備を持たないメーカーでいい、というのが私の考えです。造る人がいて、選ぶ人がいて、届ける人がいて、一本の酒になる。原口さんとの20数年は、まさにその形でした。
父から継いだこの店が、今年で90年。その手がこの3銘柄を選んで、あなたにお届けします。
最後に、ひとつだけ願いを申し上げます。
20歳を迎えるお祝いに、生まれた年のワインを探す方がいます。ウイスキーを贈る方もいます。それはそれで、いい文化だと思います。
ただ、少し欲を言えば、日本の酒でもそれができたらいい、と私は思っています。2004年、2005年、2009年。この3銘柄は、その年に仕込まれて、そのまま熟成期間を過ごしてきました。外国の酒に、負けるものではありません。
そういう飲み方が焼酎でも当たり前になったら、と願っています。歳をとった酒屋の、小さな望みです。

日本で真剣に酒を造り続けた本物の杜氏、原口俊一の最後の焼酎は、ここにしかありません。あなたの記憶に残り続ける一本となるよう、精一杯お届けします。
どうぞ、皆さまのお力をお貸しください。
株式会社大島 代表取締役 大嶋 幸治
酒類販売管理者標識
販売場の名称及び所在地:株式会社大島 東京都小金井市本町1-11-3
酒類販売管理者の氏名:越部 佳郎
酒類販売管理研修受講年月日:2025年10月29日
次回研修の受講期限:2028年10月28日
研修実施団体名:一般社団法人 酒類政策研究所
最新の活動報告
もっと見る
「ちょっと寝かせさせてくれ」から20年。クラウドファンディングが始まりました
2026/10/20 16:55株式会社大島の大嶋幸治です。10月19日の朝8時、クラウドファンディングを公開いたしました。公開してすぐにご支援くださった皆さま、本当にありがとうございます。卸の私たちは、いつもはお店にお酒を納めるところまでが仕事です。お客様の顔は、その先にあります。今回初めて、どなたがこの酒を選んでくださったのかを自分の目で見ることができました。早割の「大和の薫 白・黒 飲み比べ」を選んでくださった方、そして三銘柄を一升瓶で2本ずつ揃えてくださった方。画面に表示されたお名前を見て、胸が熱くなりました。改めて、この酒の始まりの話をさせてください。20数年前、鹿児島の杜氏・原口俊一さんに、私はこう頼みました。「ちょっと寝かせさせてくれ」出来上がった焼酎をすぐに売らないなど、当時は前例のない話です。それでも原口さんの返事は、ひとことでした。「いいよ。大嶋さんのお酒、ここに置いとくから」何年寝かせるかは、何も言われませんでした。大嶋が今だと思ったときに出せばいい、という意味だったと思っています。その「今」が、このクラウドファンディングです。早割の白・黒飲み比べ(6,800円)は、残り78セットです。四合瓶2本なので、まずは味を確かめてみたいという方にちょうどいい量です。焼酎好きのお知り合いがいらっしゃいましたら、このページを教えていただけると、とても嬉しいです。11月30日まで、どうぞよろしくお願いいたします。株式会社大島 代表取締役 大嶋幸治 もっと見る




コメント
もっと見る