はじめに・ご挨拶
はじめまして!山谷(さんや)の路上を舞台としたアートプロジェクト「バラエティロードSANYA」事務局の「一般社団法人 谷中のおかって」(http://okatte.info/)です。
私たちは、東京都台東区の谷中地域を拠点に各地でアートイベントの企画・運営・サポートを行っています。
突然ですが、みなさんは普段どのような人と出会いますか?
職場や学校が同じだったり、趣味が同じだったり、考え方が似ていたり、年齢が近かったり…。
何かの共通項がある人や、自分と似通った人と出会うことが多いのではないでしょうか。
一方で、年の離れた人、趣味や価値観が違う人など共通項がない人や、想像もつかないような人生を歩んできた人と出会うことは、よほどのきっかけがないと難しいですよね…。
でも、違いを超えて出会い、共存することは、人間社会にとっては、実はとても大切なことなのではないでしょうか。
多様性を受け止める町、山谷
「山谷」という地域をご存知でしょうか?「山谷」とは、東京都台東区北部と荒川区南部にまたがる簡易宿所(ドヤ)の集まる地域です。大阪・釜ヶ崎、横浜・寿町と並ぶ「三大ドヤ街」と呼ばれることや、高度経済成長期に日雇い労働者が多く集まった地域として知られています。
現在、山谷地域のドヤには生活保護を受給しながら暮らしている方や、安宿を求める外国人観光客などが宿泊するなど、さまざまな人々が集まっています。
※参考:「山谷地域の変化」(NPO法人 山友会 公式ブログ)
この地域で活動する「NPO法人 山友会」と出会ったことをきっかけにして、「バラエティロードSANYA」は企画されました。
※NPO法人 山友会…山谷地域において、ホームレス状態にある方をはじめ生活困窮状態にある方に、無料診療、生活相談・支援、炊き出し・アウトリーチ実施、居場所・生きがいづくりなどの支援活動を行っている団体。
私たちは、山友会との出会いをとおして、初めて山谷を訪れました。
路上生活を送る人、ドヤ暮らしの人、この町で商売を営む人、神社の宮司さん、生まれも育ちもこの町で激動の歴史を目の当たりにしてきた人、さまざまな人たちと出会いました。
なかには複雑な事情があって路上生活をされている方や、ドヤ暮らしをされている方もいます。
一筋縄ではいかなかった人生を受け止め、常識に翻弄されずに一日一日を生きる方。
「あんたどこから来たの?珍しいね?」と、見ず知らずの私たちに気軽に声をかけ、私たちの無意識にある自他の境界線を易々と超えてくるけれど、不思議と嫌な感じのしない方。
こちらが困っていれば、「何かできることはないか」と寄り添って考えてくれる方。
そして、よそ者であるはずの自分たちを、いつの間にかこの町を彩る雑多さのひとつにしていくこの町の包容力。
こんなにも魅力のあるこの町で、豊かな人間性あふれるこの町の人たちと、この町の人一人ひとりに秘められた「文化的な時間」を一緒に表現していきたい。そして、その一つひとつを共存させる空間を形にしていきたいと思いました。
バラエティロードSANYA
アーティストやパフォーマー、この企画の関わってくれる山谷の人たちの「思い付き/妄想」を軸に、その直感を大切に形にしていき「文化出見世」として路上に持ち寄る。
そして、「文化出見世」での表現活動をきっかけにして、予期せぬ出会いや交流を楽しみ、味わう。
そんな場が「バラエティロードSANYA」です。
この企画は2015年からスタートしました。
山谷で暮らしている方、山谷でさまざまな活動を行っている方、この企画に関わってくれた方たちと毎年少しずつ関係性を深めながら取り組んできました。
路上で暮らしている方も、そうでない方も。さまざまな生きづらさやハンディキャップを抱えた方も。そして、老若男女問わず。
さまざまな違いや垣根を超えて、誰もがその場で起きた出来事と漂う雰囲気、出会いと交流を楽しみ、一個人と生き生きと過ごせる時間。
こうした寛容な時間を生み出すこの企画を、“町の祭り”のように、この地域にとって愛し、愛される恒例行事のようなものをして育んでいきたいと願っています。
今年のテーマは「アートの寄せ場」!
アートの寄せ場とは、自分を表現し誰かとつながる場。魅力的なものたちが集まる場です。
アーティストだけでなく、偶然通りがかった人まで。路上に繰り広げられる「文化出見世」に引き寄せられた人達が、アートの力によって自分の個性が解放され、評価されて不思議と自信が湧いてきたリ、出会った人から思いがけないアドバイスがもらえたり、見ず知らずの人と意気投合してみたり。
そして、私たちが本当に大切にしなくてはならないことだけど、忘れ去られがちな人間の魅力や価値に気付かされたり…。
路上に人が集い、なんとなく対話が生まれ、訪れる人たちの間に新たな関係性と魅力がつくられていく。
そんな風景を思い描いています。
5年目を迎えた「バラエティロードSANYA」。みんなで創り上げ、格段にパワーアップした「アートの寄せ場」に進化します。乞うご期待!
2019年 第5回開催!今年の文化出見世は…
・毎年恒例、バラエティロードSANYAの目玉!アーティストきむらとしろうじんじんによる「野点」
世界にひとつ、自分だけのお茶碗で、おしゃべりしながらお抹茶を楽しむ優雅なひと時。お茶碗をつくりながら、作業に没頭してみたり、周りにいる人となんとなく話してみたり。各々のペースでゆったり過ごせる、そんな場になっています。
きむらとしろうじんじん プロフィール
1967年新潟県生まれ。京都府在住。1994年京都市立芸術大学大学院工芸専攻陶磁器修了。1995年移動式の陶芸お抹茶屋台「野点(のだて)」をスタート。路上・空き地・公園など、これまで300カ所を越える様々な土地・風景の中で実施している。
・ダンサー大西健太郎による一風変わった⁉詩の朗読レッスン
突然路上で始まるレッスン。稽古場からは芳醇な果実と紅茶の香りが…?アーティストと共に自分らしい表現を見つけられる文化出見世です。(写真:2018年に実施したパフォーマンスの様子)
大西健太郎(おおにしけんたろう)プロフィール
ダンサー。1985年生まれ。東京藝術大学大学院先端芸術表現科修了後、東京・谷中界隈を活動拠点とする。その場所・ひと・習慣の魅力と出会い「こころがおどる」ことを求めつづけるパフォーマー。2011年よりこども創作教室〈ぐるぐるミックス〉ファシリテーター、統括ディレクターを務める。板橋区立小茂根福祉園にて他者との共同創作によってつくり出す参加型パフォーマンス〈「お」ダンス プロジェクト〉を展開。2018年南米エクアドルにて「TURN-LA TOLA」の参加アーティストとして、地域住民と共同パフォーマンス〈El Azabiro de La Tola〉の公演をおこなう。
・「#路上が好き、#sanyatokyo」
路上で過ぎていく何気ない日常の中にある、たくさんの魅力。その一瞬を写真で切り取って、路上に飾る。#をつけて投稿してみる。当日現場に来れない人でも、インターネットを通してバラエティロードを彩る一員になれます。様々な人の視点を並べて、新たなまちの魅力を発見してみましょう。
・「路上ステージ」
路上に置かれたステージ。そこでは漫才にカラオケ、ギター演奏など、ジャンルを問わずパフォーマンスを受け付けます。通りすがる人みんなが観客で、みんなが参加できる特別ステージ!普段の生活では発表する場がなかなかないものを思いきってやってみませんか?今まで知らなかった自分に出会えるかもしれません。
このような文化出見世を通して、その場に集った人々の間に出会いと対話が生まれることをねらいにしています。
※プログラムは天候等の条件により、変更になる場合がございます。
実施スケジュール
■バラエティロードSANYA2019 企画説明会
2019年8月11日(日・祝)13:30~16:00
本番に向けて、関係者をはじめ、地域の方、企画に興味のある方を対象に企画説明会を行います。
会場:台東区清川区民館(台東区清川1-23-8)
定員:30名程度
参加費:無料
■スタッフ説明会
2019年10月25日(金)夕方ごろ(予定)
バラエティロードのスタッフ希望者を対象に、企画概要や当日の作業内容をお伝えします。
会場:台東区清川区民館(台東区清川1-23-8)(予定)
定員:30名程度
参加費:無料
■イベント本番!「バラエティロードSANYA 2019」
2019年10月27日(日)
時間: 11時頃~日暮れまで
※小雨決行・荒天の場合は清川区民館にて一部プログラムのみ開催予定
会場:玉姫稲荷神社横道路(台東区清川2-13-20)
対象:誰でも参加可能
参加費:無料 ※「野点」のみ有料
「谷中のおかって」について
<谷中のおかって>は、2010年東京都やアーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)との共催により、様々なアート企画を通じて谷中エリアにおける文化拠点形成事業に取り組んできました。路上や街なかでの企画が多いのが特徴の一つです。
若手表現者と地域の魅力的な人・場所とコラボレーションし、オリジナルのパフォーマンスが街のあちこち繰り広げられるツアー形式のパフォーマンス公演「谷中妄想ツァー!!」(2009-2011年)や、汐入公園を舞台に、アーティストをはじめ、プロアマ問わず自分が心からやってみたかったことを表現として持ち寄り、それらが同時多発的に繰り広げられる場を参加者も一緒に楽しむ、ピクニック形式のパフォーマンス公演「威風DoDo」(2015年)などを展開してきました。また、幼児を対象とした創作教室「ぐるぐるミックス」(2011年-現在)や社会的、身体的障害を持った方々と協働したプロジェクトなどにも取り組んできました。
写真:「威風DoDo」(2015年)
写真: こども創作教室《ぐるぐるミックス》
年齢や所属、背景、身体的な差異などさまざまな違いを超えて、人々が集える場を、アート企画を通じて実現することを目指しています。
ささやかでも生き生きとした表現を各々が持ちより、自由な気配の中で来場者も次第に心が解放されていく、そのような場を「バラエティロードSANYA」でも作っていきたいと考えています。
資金の使い道
より充実した企画になるよう、文化出見世の制作費、広報費、会場費などとして使用させていただきます。
最後に…
様々な人と交流することで、自分とは違う価値観、文化、生き方に触れる。
その違いを受け入れ、受け入れてもらう。そして、ひとりの個人として存在する。
そんな場を、私たちと一緒につくりませんか?
ご支援よろしくお願いいたします!
※本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。
最新の活動報告
もっと見る参加アーティスト・大西健太郎 インタビュー
2019/10/31 17:54今回は、谷中のおかってのメンバーでもあり、アーティストとして活動している大西さんにお話を聞きました!毎年バラエティロードを盛り上げてくださる大西さんは、どんな思いでバラエティロードに関わっているのでしょうか?◆自己紹介をお願いします普段はダンスやパフォーマンスを、アーティストの活動としてやっています。ダンスと言っても、特定のテクニックを訓練してきているわけではなくて、「踊りというものが、どうやって生まれるのか」ということに興味を持っています。例えば今やっている活動には、子供創作教室や福祉施設との共同の活動がありますが、それぞれの相手との関わり合いの中で生まれてくる出来事を引き出してくるということを大事にしています。 今年のバラエティロードでは、『詩の朗読茶席「スパンキングキャンディー」』という文化出見世を考えました。◆バラエティロードとの関係 バラエティロードには、立ち上げの2015年から毎年関わっています。最初の年は、じんじんさんの野点が中心でした。次の年からは、まちの人や山友会の人たちと関わる中で感じた「路上でこんなことが起こったら面白そうだな」という予感を、野点の裾野に広げていく取り組みが、”バラエティロード”という呼び方で、始まりました。そのとき自分には、”路上カラオケ”というアイデアがありました。そこには、電気が通っていないマイクと、歌に合わせて即興で演奏ができる人がいて、あとはビール瓶の空き箱の上に板を乗せただけのステージを用意しました。◆何故、路上でカラオケを...? 山谷のまちと僕の最初の出会いは、山友会の油井さんにまちを案内してもらったときでした。油井さんが道ゆく先々で声をかけられていました。「今日どうしたの」とか、「いつもありがとう」とか。油井さんも僕に、「変わった人でしょ」とか、「面白い人なんだよ、ああ見えて」とか、道にいる人を紹介してくれました。でも、その人が何者であるかとか、名前がなんだとかとは言われなかったし、気にもならなかったんです。それがすごく面白いなと思いました。自分が、まちで見る人たちからの目線で「私が何者であるか」が問われずに声をかけられるというところに、人懐っこさや愉快な気分を感じました。思わずそっちの方へふらっと寄っていきたくなる”甘み”みたいなものがあることを感じました。同時に、何者であるか問われないということは、「お前何しに来たんだ」っていう、自分の立ち振る舞いや「人のなり」を見られている”厳しさ”・”渋さ”もありました。だから、自分が道に立とうとした時に、「嬉しいとか面白いとか、心が動いているってことでしか、道に立っちゃいけないな」と思いました。「バラエティロードは面白いんだ、ちょっと寄ってってよ」という姿勢で道に立ちたいからこそ、路上でカラオケしてみたいな、と思いました。道でカラオケしたらあのおじさんたち来るかな、なんて考えたりもして。名付けずに自分がどう道に立つか、妄想をしたときに僕の頭の中で膨らんでいった風景が、”路上カラオケ”という形になりました。◆人の視線から感じる”渋さ”や”甘み”、という言葉から、文化出見世のフレーバーティーを連想したのですが、何か関係しているんですか。 関係大有りです。(笑) 何度かバラエティロードをやりながら、僕が山友会の人たちに、より踏み込んで、お話しながら感じたことなんですけれど。おじさんたちと喋ってると、その人の人生がギュッと詰まった格言みたいなのを、ボソっと言ったりするんです。例えば、「人生70年、自由行動で生きてきたから」、とかね。そういう、頭だけじゃ追いつけない重みのある言葉を、向こうが投げかけてきているな、ということにすごく興味を持ちました。渋みや苦味、甘みが両立する味わいを持っていて、言葉の世界にしかない魅力がじわっと時間をかけて身体に浸み込む感じでした。「うっ、重っ」とか、「何?このザワザワ感」とか、言葉にはできないけれど心では感じること、身体の中に湧き起こってしまったことは、 「踊り」としか捉えられないような事柄だと思っています。そういうことが、この人たちとの間にきっとある、というところに、すごく心惹かれました。おじさんたちの言葉の背景や周りに広がる風景を、身体の中の出来事として味わうものにしたいなと考えて、この出見世をやることにしました。おじさんたちが言葉につけた味をフレーバーティーにして飲みながら、おじさんたちが言葉を口ずさんだ時の、身体からの言葉の出方を”フリ”としてお客さんに写していくものです。味とフリの両方が合わさったとき、自分と山友会ではない第三者の身体の間で、おじさんたちの言葉が見てみたかった踊りの風景になるかもしれない、という予感がありました。◆文化出見世やリターンの品のフレーバーティーは、どんな味わいですか? 意外と、シンプルな味です。...って言ったら魅力がないかもしれませんが... おじさんの中に、差し歯の人がいたんです。差し歯の粘着剤の味が混ざっちゃうから、あんまり複雑な味って分かんないんだよね、って言われたこともありました。でも、それはすごく重要だと思っています。ある意味、その人の身体に刻まれた履歴が味覚を通して現れているのだから、よっぽど複雑で、色んな味が織り込まれてた方がいいんじゃないかと思っていた。でも、おじさんたちと作業をしたら、シンプルで鋭くて、重みがあり、四の五の言わせない味わいの中に、爽やかさもある…そんな、お茶ができました。自分が最初道端で声をかけられた時に感じた、風通しの良さみたいなものに似ている気がします。それだけじゃなくて、名言と共に醸し出させるものだから、フレーバーティーの方をぐちゃぐちゃいじらないで、名言の持っているフレーバーとさらにブレンドすることに、情熱を注ぎました。◆バラエティロードの名付け親は大西さんだということですが、何故バラエティロードと名付けたのですか? 名付けたつもりはないんだけどね。「バラエティロード」というのは、企画が始まる前におかってのメンバーそれぞれが持っていた、バラエティロードに対する予感が折り重なる部分で、出てきた言葉に過ぎなくて。たまたまタイトルの素材になっただけで、”名付け”じゃないんです。これは、バラエティロードにとってはすごい大事だと思っています。 最初の山谷の話に戻るけど、「あなた何者?どこから来たの?何してる人?」って、おじさんたちは絶対聞かない。そこに、お互いに踏み込んじゃいけないという敬意みたいなものがあると思う。例えば、あるときこんなことも言ってて。「ひとりひとり、しょってる荷物が違うからさ」って。距離感みたいなものを、お互いに意識しているし、そこがキモだと思う。何者かって決めた瞬間にそこの文脈が決まって、バラエティじゃなくなっちゃう。何者かわかんないもの同士が、それぞれの言いたいこと言ってるからこそ様々な声かけが突発的に起こるんですよね。 普通は、「自分が何者か」っていう看板を建てたら、社会に対してそこが正面になります。でも、山谷では看板が無いから、おじさんが思いもよらないところから、「うっ」とか言ってつついてくる。そういうスリルや、何者でもないままでいられるような風通しのよさや、つつかれるってこともあるし、励まされることもあるし、ちょっと戒められることもある。でも、一定の距離もあって、 そこは優しさなんだと思います。向こうにそういうつもりがあるかは分からないけど、こっちはそういう気持ちになれる。叩かれるけど、甘みがあるっていうことです。今改めて、道で何が起こったらいいか言葉にすると、『スパンキングキャンディー』になるんです。◆今年のバラエティロードに特に期待していることはなんですか?今年は、色んな文化出見世が出るといいなと思ってます。道で何が行われているかっていうのが、一つの視界に入りきらないほど。色んな「スパンキングキャンディー」が行われているっていうことも含まれると思うし、その場その場での偶然みたいなこともあるかもしれない。そういう偶然とかスパンキングとかを引き起こすには、何か仕掛けなきゃいけないし、そこに何か魅力がなきゃいけないと思う。今回こちらからの仕掛けは、今までの倍くらい多くて、ちいさなものから大きなものまでいろいろあるけど、それはすごくいいなと思っています。それが楽しみにしてることです。去年色々やってみたけど、「もっとだな」って思った。だから今回、小さなものも、雑多にやるっていう。細かいものも含めて、『雑多にやる』っていうことができたらいいんじゃないかなと思っています。◆クラウドファンディングで支援してくださっている方、もしくは、これから支援しようかどうか迷っている方に対してのメッセージをお願いします。 支援していただいたお金は、野点だったり、文化出見世だったりという、名付けられない魅力の予感みたいなものや、社会的にこれがいいと価値づけられていないことに使われるから、支援してくださる方にとって分かりやすい意味での「見返り」は、ないかもと思うんです。僕はね(笑) 。ただそのお金によって、雑多な魅力の予感が、文化出見世という形やある仕掛けとして現れて、スパンキングキャンディーみたいな出来事が起こる風景をつくることには、責任を持ちます。立派なモニュメントが建つわけではないので、この日が終わったら瞬く間に消えてしまうものかもしれないけど、その日一瞬路上に立ち上がるかもしれないスパンキングキャンディーを... むしろ、支援者のほうがスパンキングしていくつもりで、支援してほしいなぁと思います。◆支援する方がスパンキングキャンディーを受けることはないのですか?それがリターンです。それはもちろん、楽しみにしてもらっていいです。 もっと見る
協力者・油井和徳さん インタビュー : 第2回
2019/10/31 07:25私たちが山谷に出会うきっかけとなった方、山友会の油井さんに、バラエティロードの可能性や期待することについて伺いました!(最終回)◆これからの「バラエティロード」の可能性多様なつながりが生まれたり、地域に寛容な時間が流れたり、文化が生まれたりするバラエティロードの取り組みが、地域の人々にとって必要とされ、愛されるものになっていったらいいな、という気持ちがあります。そこに至るまでには、本当に長い道のりなのかもしれないけれども、地道に続けていけたらいいですよね。5年間続けてきて、私たちもいろいろな出会いや気付きがありました。これからも、新しい出会いや気付きが訪れることを楽しみにしています。何にせよ、じんじんさんがいないとできない、谷中のおかってさんがいないとできない、山友会がいないとできない、ということじゃなくて、そのどこかが欠けていたとしても、この取り組みの意義を共有してくれた、この地域の人たちが「そろそろ今年もやろうよ」なんて言って自然と集まって、「今年はどんなことをしようか」って言って、そこで普段はあまり関わりがなかった人同士が、関係を深めることできたり、お互いの理解を深めたりできてくるといいなと思っています。「継続は力なり」ですね。◆ここまで続けてみて見えたことはありますか?そうですね…。何かが劇的に変わったということはないんですけどね(笑)。でも、山友会のおじさんたちが、「今年もじんじんさん来んだろ」「おかっての人たち来んだろ」って言って、楽しみにしてるんだなっていうのはよくわかりますね。年に一度の楽しみがある、また会いたいと思える人がいるって、いいですよね。私は、バラエディロードの企画段階から関わってくれている山友会のおじさんたちの人生を、確実に豊かなものにしてくれていると思っています。文化出見世を通して、初めて出会った人や、普段は話すこともない人とつながりができたり、自分の企画に対して良いも悪いも評価されて、自信を感じたり、そうでなかったり、というのは、山友会だけの空間ではできないことですしね。それと、バラエディロードでの空間をとおして山友会のおじさんたちに生まれた地域の人同士つながりが、お互いを支え合う、身近にいる孤立して辛い想いをしている人に手を差し伸べられるような力に発展していったらいいなとも思っています。山友会の活動は、もはや、手伝ってくれるおじさん達の存在なくしては成り立ちません。山友会を訪れたホームレス状態にある方たちなど社会から孤立し辛い想いをした人たちをスタッフ、ボランティアさんと一緒になって受け入れ、手を差し伸べようと、それぞれに得手不得手なことがあるにせよ、自分なりにできることをしてくれています。それが、山友会に懐の深い雰囲気をつくり出してくれているんです。そうしたことが、山友会というコミュニティにだけで完結してしまうんじゃなく、ご近所さんの間とか、同じアパートやドヤの人同士とか、日常の暮らしに密接した場や関係性の中にも広まっていけたらいいなと思っているんですが、そのためには日常には起きえない出会いのきっかけが必要だと思うんですよね。そのきっかけを感じさせるバラエディロードでの景色は、そんなことも考えさせてくれます。◆今年のバラエティロードは?毎年のこの話題が出るんですけど、一緒にやってくれるおじさん達って「今年はこうしてやるぞ!」っていうのが、あんまりないじゃないですか(笑)。毎年毎年、何か変化があったり、想定外のことが起きたりしても、それはそれとして受け入れてくれていると感じてます。私もおじさん達に対して「今年はこうなってくれ!」みたいな気持ちはあんまりなくて。おじさん達に、どのような出会いがあって、どのように交流が生まれるのか。そして、それがそれぞれのおじさん達にとってどのようなことを感じさせるのだろうか、先々どのような意味を持ってくるのだろうか、ということを楽しみにしている。そんな感じです。というのも、スタッフが「今年はこうしようよ」って言ってしまうとね…。普段から、手伝ってくれるおじさん達とはなるべく対等な関係として一緒にやっていきたいなという気持ちはあるんですけど、彼らからすれば「助けてくれる存在」であったり、「助けてくれた存在」であったりする感覚は、どうしてもぬぐい切れないと思うので、「スタッフの人がそういうなら、そうしようかな。そうするのがいいのかな」って考えちゃうと思うんですよね。それを、このバラエティロードの場面まで持ち込みたくないなという気持ちがあって。だから、「今年もじんじんさんが来るって!」「おかっての人たちが来るって!」という程度におじさん達には声をかけて、集まってもらうようにしています。じんじんさんやおかっての皆さんと「今年はどうしよっか」と妄想を繰り広げ、期待を膨らませて準備しているのをときには温かく見守り、ときには影ながら応援しつつ、どんなことが起きるんだろうと楽しみにする立場でいたいなって思っています。◆支援してくださる方々に一言!私はパフォーマーやアーティストとか、アートのことを専門にしている人間ではないから、この取り組みにどれほどのアート的な価値があるのかはわからないんですけど、バラエティロードっていろいろな表現が展示されたり、発表されたりしているけれど、美術館なんかの展示みたいに展示そのものが鑑賞されることを期待された規則正しい空間ではないじゃないですか。有象無象な表現をきっかけに、いろいろな人が路上に集まるから、いろいろなことが起きる。でも、不思議と包容力のあるやさしい雰囲気というか、ちょっとした摩擦や不協和音みたいのがありはするんだけども、そんなこともかき消してしまうような寛容な空気が流れている。その雰囲気や時間を共有した人は何となくわかるのかもしれないけれども、まず、こんなにもわかりづらいようなことに共感してくれたことに本当に感謝しています。共感してくださった方々とも一緒に、このバラエティロードがつくりあげているんだなって思っています。それと、こういうわかりづらいけども大切にしたいなっていうことに共感してくれる人がいるって、本当に素晴らしいことだと思うんですよね。世の中捨てたもんじゃないなっていうか、孤立した人々とつながりや居場所をつくっていくという目に見えづらいものを追求している私たちからすると、この取り組みに共感してご支援してくださった皆さんの存在が励みになります。まして、閉塞感の漂う世の中ですからね…、ご支援くださった皆さんの存在は、現代社会にとっての希望だと思います。本当に、本当に、ご支援ありがとうございます! もっと見る
協力者・油井和徳さん インタビュー : 第1回
2019/10/31 03:31私たちが山谷に出会うきっかけとなった方、山友会の油井さんにお話を聞いてきました!(全2回)毎年私たちに協力してくださっている油井さんですが、どんな思いでバラエティロードに関わってくださってるのでしょうか?◆山友会とは?山谷地域で、社会的に孤立していることなどで生活困窮状態にある人たちの支援活動を行っています。具体的には、無料診療所の運営、生活相談、地域生活の見守り、炊き出し・アウトリーチ(路上生活をされている方への訪問活動)、事務所へ来所した方への昼食の提供、ケア付き宿泊施設の運営を行っています。また、支援を通して関わりをもった方たちが、地域の中で孤立せずに自分の存在を認められる居場所と、自身の生きがいとなるような社会的な役割を手にすることを目的に、主体的かつ持続的に参加できる居場所づくりや生きがいづくりをサポートする「居場所・生きがいづくりプロジェクト」を行っています。さらに、活動を通して関わりのあった方の多くは身寄りがなく、いわゆる無縁仏となってしまうことから、亡くなった後もつながりが途絶えないようにと、関わりがあった方のためのお墓を運営しています。ほかにも、「山谷・アート・プロジェクト」という、山谷や路上で暮らしている方が、自身の身の回りのこと、そして暮らしている街を写真で記録する取り組みを行っています。この取り組みは、アート(写真)という手法で自身を表現し、変わりゆく東京、そして山谷という街を記録して残し、幅広い世代に伝えることを目的にしています。そして、プロジェクトに参加している方たちは、写真というアート活動を通して、社会とのつながりを感じることができます。このように、路上生活をされている方など社会的に孤立した方たちに幅広い支援活動を通して、つながりとコミュニティをつくっています。◆山友会からみた「バラエティロード」はどういう場?谷中のおかっての方からじんじんさんの野点を山谷でやりたいと相談されたことがきっかけで、この企画が始まったんですよね。最初は、「うまくいくのかな…」と心配だったり、僕自身もアートに詳しいわけではないので「これって何か意味があるのかな…」と思っていたりしました。でも、じんじんさんと会ったり、谷中のおかっての皆さんとも会って話を聞いていくうちに「面白そうだな」と感じるようになりました。他人に危害を与えるわけでもないですし(笑)。はじめて山谷で野点をやったときは、山友会の活動を手伝ってくれるおじさん※に声をかけたら何人かが手伝ってくれました。ほかにも「ちょっと顔出してみようかな」という方もいました。※おじさん…山友会を訪れる年配の路上生活者の方や元ホームレスの方のことを、山友会では親しみを込めて「おじさん」と呼んでいる。本番の日にも、じんじんさんが路肩でドラァグクイーンの恰好をして、お茶をたてたり、お茶碗を焼いてたりするのを通りがかりに見かけた知り合いのおじさんも「何やってるの?」と、顔を出してくれました。それに、手伝ってくれたおじさんたちが、お茶碗を洗ったりとか、交通整理をしたりとか、それぞれに役割をもって活躍している姿を見て、普段山友会で見ている姿とはまた別の生き生きした表情があるのに気付きました。こうして普段とは違った形で活躍できる場や、野点に集まった人たちとつながれる場があるのはいいなと思って、翌年からは「バラエティロード山谷」として、一緒に企画段階から関わるようになりました。谷中のおかってさんやじんじんさんという、この町の日常にいない人がやってきて、一緒にこのイベントを行うことで、普段は起きないことが起きたり、つながりを持つ機会がない人がつながったりすることがあると思っています。そして、それをこの町の人と一緒にやるおことができたら、きっと面白いだろうなと思ったんです。山友会の活動に協力してくれているおじさんたちと一緒にやることで、その友達や知り合いのおじさんたちも、バラエティロードに訪れてくれるかもしれないし、ひょっとすると一緒に手伝ってくれるのかもしれない。それに、バラエティロードは山友会と関係のある人たちだけが集まるわけじゃないですよね。僕らが中心になってやってしまうと、山友会と関係のあるおじさんたち、つまりホームレス状態にある方やそれを経験してきた方、そして山友会の活動に協力してくれるボランティアさんや、ホームレス問題の最中におかれた方やそれに関心のある方の密度が高い集まりになると思うんですよね。それはそれで、意味があることかもしれないけれど、山友会の日常の連続でしかないし、語弊があるかもしれないけれど、何だか閉ざされてしまって、多様なつながりが生まれない気がして。じんじんさん、谷中のおかっての人たちという非日常の存在が中心となってくれることで、その関係の人たちも集まる、そして、バラエティロードに何気なく立ち寄った地域の方たちも集まることで、新しい交流が生まれる。そうなったらいいなって思って。それで、実際に野点やバラエティロードをやってみたら、子供連れの人が来てくれて、その子供をおじさんがあやしてたり、文化出見世に人形づくりや自作の射的を出展したおじさんが子供と一緒に遊んでたり。子供でなくとも、おじさん達が自分たちで考えて準備して出展したものに対して「これ何?」「どうやって作ったの?」というように関心を持ってくれた人と会話がはじまるですよね。こうして、おじさんたちの人間関係に彩りが加えられることが起きているのかなと思います。◆油井さんから見た「バラエディロード」の魅力は?多くの人たちにとっては、家族という「血縁」のほかに、同じ地域に住んでいることをきっかけにしたつながりである「地縁」、同じ仕事をしている、同じ職場であることをきっかけにしたつながりである「社縁」というのが、日常の暮らしのあるつながりやコミュニティなのだと思いますが、バラエディロードをきっかけに生まれるつながりは、そのどれにも拠らないつながり方ですよね。血縁も、地縁も、社縁も自分の存在が証明されるような強力な帰属意識を与えてくれたり、ときにその縁をきっかけにしたつながりの中で支え合う力を発動させてくれたりしますが、その反面、何かの事情で誰かを傷つけてしまったり、排除してしまったりする力が働いてしまうことや、時には、人によっては窮屈に、憂鬱に感じてしまうようなしがらみが存在することもあります。だからこそ、日常に密接に存在する血縁や地縁、社縁に捉われない多様なつながりの形があることが大切だと思っています。とくに、地域で孤立しがちな方は、血縁、地縁、社縁からさまざまな事情で遠ざかってしまった方が多いわけじゃないですか。そうした方にとっては、人とのつながりを感じられるきっかけになるのかもしれないし、それをきっかけに何かのコミュニティに参加できて、困ったときに誰かに助けを求めることができるようになるのかもしれない。そう考えると、社会から孤立した方々のことを考える私たちにとっても、バラエディロードの生み出す多様なつながりの形は、本当に魅力的だし、可能性を感じますよね。私たちも、血縁、地縁、社縁という代表的なつながりの形やコミュニティにとらわれないつながりやコミュニティをつくろうと取り組んでいますが、活動上、「困ったときに支援をする」ことがそのきっかけになることが多いことから逃れるのは難しくなってしまいます。それはそれで、社会から孤立した方々にとってのつながりやコミュニティのあり方の一つではあるんでしょうし、誰かとの関係において「支援する/支援される」関係が瞬間的に訪れるのは悪いことではないとは思うんですけどね。でも、どうしても同じような苦労を経験した方々が多いという、同質性が強いコミュニティになりがちだったり、それがその人の日常の中でのウェイトが大きかったりするのは、「誰かに助けてもらっている」という負い目のようなものを日常的に意識させてしまって、あまり健全ではないと思うんですよね。その意味で、孤立した状況から支援につながった方にとっても、この負い目から少しでも自由になるきっかけになるのかもしれないなと思っています。 もっと見る
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