ヤマナシ織物産地の一番の課題:機屋番匠の後継者不足
みなさん、「機屋番匠(はたやばんしょう)」という仕事をご存知でしょうか?
名前を聞いただけでピンと来る方はほとんどいらっしゃらないと思います。機屋番匠とは布を織るハタオリ機の解体構築、修理メンテナンスを専門に行う機械工のこと。と書いても分かりづらいかもしれませんので仕事の様子をおさめた動画をつくりました。ご覧ください。
今、やまなしの織物産地でもっとも差し迫った課題がこの職人たちの高齢化です。現在、地域で仕事を請け負っている方は2名のみ。いずれも70歳を超えています。もしかしたらあと数年のうちにこの仕事はなくなってしまうかもしれません。
地域で活動する中で工場の方々へ「今、もっとも困っていることは何でしょうか?」と尋ねてまわると、もっとも多く答えとして返ってくるのは「彼らがいなくなってしまう」ということでした。
どうにかしなくてはいけないと多くの機屋さんが感じているこの仕事を継承していくには、仕事を学ぶ気持ちを持った人と学ぶ機会が必要です。
今、地域には、この仕事に興味を持つ若者や学ぶ機会があるなら参加したいと考えている工場の職人たちがいます。機屋番匠さん監修のもと、その方々が実際に織機の解体や構築を体験できる機会があれば、と思いついたのがこのプロジェクトのきっかけです。そして、その様子を展示として一般の人にも見てもらったり触れてもらうことで、仕事を知ってもらい、興味を持ってくれる人がさらに現れるかもしれない。
企画展「織り機につどう」は、今、織り機につどっている人たちへの事業継承の機会であり、仕事を紹介し織り機につどう人を募るための企画展です。
しかし、展示を開催するためには大きな織機を会場に運搬・設置しなくてはなりません。この資金100万円をクラウドファンディングで募集させていただきます。
企画者について
はじめまして。「
装いの庭」の藤枝大裕(ふじえだひろやす)と申します。この度はプロジェクトをご覧いただきありがとうございます。
山梨県の郡内地域は古くから続く織物の産地です。そこでは今さまざまな動きがあって近年はD&DEPARTMENTからは「日本で一番元気な繊維産地」と呼ばれたりもしています。このプロジェクトもその中のひとつです。
私は、山梨県の郡内地域を中心に繊維に関係するイベントの企画と運営を行っています。もともとは服飾専門学校を卒業後、撚糸メーカーに入社し、衣料用の糸の開発、営業をしていました。仕事を覚えていく中で業界の構造に思うところがあり退職。まったく異業種のイベント・メディアの編集に携わります。今は、それらの経験を活かし、テキスタイル・ファッション産業を自分なりの切り口で盛り上げる企画を実現するべく活動しています。
展示の内容
企画展「織り機につどう」では、機屋番匠さんにお願いし、ギャラリースペースの中に2台の織機を設置します。1台は織機を使ったインスタレーションに、もう1台は機屋への就職を考えている若者や織機の構造を改めて勉強したい機屋さんが触って解体と構築を行うデモンストレーションに使用します。運営の都合上、デモンストレーションへの参加は地域の事業者限定とさせていただきますが、見学はどなたでも自由に行っていただけます。
インスタレーションでは、織機の記憶をテーマに躯体や織機のパーツを再構成した演出を考えています。構成を担当する久米岬から出てきたのは、四方から伸びた糸が織り機に集まって円をつくるというアイデアでした。このために使う糸はコンセプトに共感をしてくださった石川県の織機パーツメーカー「
モリモト」さまより協賛をいただき、織機で使われる「通じ糸」を使用します。
また、準備工程に使われる機械も数種運び入れ、触れたり、作業を体験できるようなワークショップを行います。こちらは会場にお越しいただければどなたでも自由にご参加いただけます。
織機のパーツを使ったアート作品の販売や映像作品の上映も行い、さまざまな観点から織物の仕事とそこに集まった人々を紹介します。
関わってくれる職人と若者たちをご紹介します
機屋番匠さんと、今、織機に興味を持ち、工場で働いていたり、働こうとしている若者。そして、今回の展示を一緒につくってもらうチームメンバーをご紹介します。
渡邊徳重さん
富士吉田市で活動する機屋番匠の一人。世界を股にかける織機のスペシャリスト。
舟久保晴基さん
都内IT企業からUターン。ほぐしおりの傘を製造販売する・舟久保織物で働きはじめるホープ。フィリピンからの語学留学よりただいま帰国。
藤崎仁美さん
富士吉田出身の音楽バンド・フジファブリックと富士吉田の織物に魅せられて愛知から富士吉田に移り住んだハタジョ。有名ミュージシャンや芸能人も御用達の宮下織物でデザイナーズファブリックを織りつけている。
用元歩夢さん
金襴緞子の織物工場・光織物で働く富士吉田出身の青年。地元の環境を愛し、地域ならではの仕事を考え伝統産業に身を投じた。
森口理緒さん
富士吉田の繊維産業活性化地域おこし協力隊。工場や機械が大好きなものづくりガール。繊維業界のあらゆる方向からひっぱりだこの宝。
sarasaさん(ロゴデザイン)
河口湖在住のカリグラフィーアーティスト。
もともと"書く"ことが好きだったことから、カリグラフィーの持つ手書き文字の美しさや奥深さに惹かれこの世界に入る。自由なスタイルのモダンカリグラフィーを得意とし、ロゴ制作や自身の描くイラストと合わせた作品制作をしている。
山口明宏さん(アート・ディレクション)
神奈川県生まれ。東京を中心に活動する写真家。主な被写体は花と人、そこに含まれる景色。自身が関わる全てを写真機で記録し、それを元に作品を制作している。座右の銘「伝える事の全てが作品」
久米岬さん(会場構成)愛知県生まれ。東京を中心に活動する建築家。住宅・店舗・展示会場構成等を手がける。周辺環境やコンテクストから『そこに在るべき建築』を模索し続けている。
協賛企業さま
MORIMOTO CO., LTD
ガイドボード、目板、ハーネス、スプリング、ヘルドなどのジャカード向けパーツを製造販売しております。
お客様の要求に応じてコンプリートハーネスも一式販売します。織物をされていらっしゃるみなさまからのご連絡をお待ちしております。
【支援金の使いみち】
支援金は織機の解体と運搬、構築をする費用に当てさせていただきます。
冒頭の動画にもあるように織機はとても重く大きいものです。特殊な器具を駆使して分解し、クレーンを用意して運び出さなくてはいけません。長く使われてきた場合がほとんどで油やホコリが溜まっているため、パーツを細かく分解し、洗浄もする必要があります。織機を1台蘇らせるためには少なくないコストと労力が掛かります。
展示の開催にあたっては、FUJIHIMUROの運営母体であるふじよしだ定住促進センターから委託されている企画費用50万円を資金として使用します。しかし、残念ながらそれだけでは足りません。ものづくりの現場の仕事の認知と後継者育成のため、不足分について、みなさまのご支援をいただけましたら幸いです。
織り機の移動に伴う費用 95万円
展示備品の購入 10万円
広告制作費 15万円
会場設計・施工費 10万円
クラウドファンディング手数料など 20万円
合計 150万円
なお、今回の展示で運び入れた2台の織機は終了後、山梨県産業技術センター・富士技術センターに運び入れ、地域の若手職人の勉強のために使われる予定です。多くのご支援をいただいた分についてはふじよしだ定住促進センターの行っている繊維産業インターンシッププロジェクト・ハタオリマチルーキーズの活動資金などにあて、産業の活性・若手育成の取り組みのために大切に使用させていただきます。
実行スケジュール
2019年12月上旬〜 廃業した織物工場より織機の運び出し・分解して洗浄
2020年1月下旬〜 FUJIHIMUROへ運搬・展示に向け組み立て開始
2月3日〜6日 展示設営
2月7日〜 展示開始
さいごに
・生業にしたいと思う若者
・若手のために織機を入れたいという想いを持つ機屋さん
・たまたま見つかった織機
これらの条件が揃うことはほとんどありえない、貴重な一瞬だと思っています。それこそ映画を一本撮れそうなくらいのドキュメンタリーです。そんな想いからプロローグムービーを作成しました。最後にぜひご覧ください。
この瞬間をできるだけ多くの人に見てもらうためにもあたたかなご支援とご協力をどうぞよろしくお願いします。
展示企画概要
タイトル:織り機につどう
開催期間:2020年2月7日(金)〜3月29日(日)
時間:10:00〜17:00
入場料:無料
休館日:火・水・木
場所:FUJIHIMURO
山梨県富士吉田市富士見1-1-5
企画:装いの庭
会場構成:久米岬
広報・制作:山口明宏
主催:富士吉田織物協同組合
協力:ふじよしだ定住促進センター
後援:富士吉田市
音楽:「LOOM」by田辺玄・森ゆに