ごあいさつ

はじめまして、カンボジアの真ん中・コンポントムという町で、そこに暮らす人と訪れる人と一緒に旅をつくるNapura-worksという事業をやってきました吉川舞です。


この州にあるカンボジア国内第3番目の世界遺産サンボー・プレイ・クック遺跡群とその周辺の農村を舞台に、まるで親戚の家を訪ねるように村に滞在し、「普通の日々」のなかにちょっとお邪魔させてもらう旅を提案しています。

世界遺産から5分の村のなか 

暮らし方、生き方を考えるとき、他の誰かの普通の暮らしがヒントになる。
ひとりでウンウン考えるより、ポンと飛び込んでみたら、出会いがあり、発見がある。

新型コロナになる前から、私たちはそんな旅をこのカンボジアの田舎からお届けしていました。

そして2020年、コロナの影響でさらに多くの人たちが「これまで」を改めて見つめ、それぞれにとって心地よい「これからのかたち」をつくろうとしている。

コンポントムの広い空は心にちょっと「余白」をくれる

その過程でどんどん発揮されていく、本来のその人たちの中にある輝きに出会うのが嬉しくて。
この地域の普通の暮らしと素敵な人たちと一緒に、旅を通じてそのお手伝いをするのが私たちの役割だと思っていました。

そんなとき、一番近くで一緒に仕事をし「お客さん以上友達未満」で歩んできたコンポントム唯一のヴィラホテルがコロナで廃業することに。

サンボー・プレイ・クック遺跡と村がエベレストの山の頂だとしたら、このホテルはそこにアタックするベースキャンプのような場所。

ここがなくなったら、山の頂へのハードルが、もっと上がってしまう・・。
悩んだ末に、このホテルの事業を引き継ぐことを決めました。
(決めるまでの葛藤はこちらに。長編3部作なので、半身浴や眠すぎる通勤電車のお供にぜひ)

勤続10年以上の、地元出身のスタッフたちと一緒に、今まで私たちが出会ったこの地域の素敵なひと・もの・ことと訪れる人をつなぐ、町の拠点として再出発したいと考えています。

ホテルを支えてきたスタッフたち みんなの明るさに元気をもらうここを訪れる人も、地域の人たちも、スタッフも、私たちもみんなが「それぞれのこれから」という山を登る途中で、出会ったり、休憩したり、応援しあったりできる場所としてのホテル。

このクラウドファンディングを通じて私たちを応援してくださる全ての方に、ホテルの日々の日常をお伝えするコミュニティへと、季節ごとに皆さんと「ホテルの今」を語り合い、相談したり、ときには力を貸してもらったりする機会にお誘いします。

それぞれにとって心地よい距離感で、この世界的に変化していく期間を一緒に歩いていく関係をつくりたい、と準備しています。

ぜひ皆さんに、新たな出発の「仲間」になっていただけると嬉しいです。


サンボープレイクック遺跡群とコンポントムはこんな場所

サンボーはクメール語でゆたかな、プレイは森を意味します。

今のサンボーはその名の通り、農村地帯の真ん中にゆたかな森が広がります。そしてその森の中を歩いていくと煉瓦でつくられた1400年前の寺院たちがひとつ、またひとつとその姿を表します。

カンボジアといえば!皆さんがよく知るアンコールワットが建造されたのは12世紀。日本で言うと平安から鎌倉時代に移る頃のお話。そこからさらに500年ほど遡った7世紀、ここには王の都がありました。インドや中国、近隣の国と交流しながらゆたかな文化が花開き、国の基礎が築かれていった場所。日本の奈良のようなところです。

それから1400年、現在のこの場所には人の暮らしとそれを支える自然、そして古代の遺跡が融合する不思議な世界があります。

木々のざわめきや鳥たちの声を聞きながら森を歩いていくと、木立の間から遺跡が現れる。
遺跡をしばし眺めていると、後ろからチリンチリン。鈴の音とともに放牧された牛たちが通りかかる。
そんな現代の古代の距離が近い場所。

そして、この遺跡の周りの農村には、人と自然がつながりあって生きる暮らしが今もあります。

遺跡の森は子どもたちの遊び場

実はここが、私にとっては、人生1番の衝撃との出会いの場所でもあります。

出会いのストーリーはこれまた長いので、詳しくは改めて活動報告で紹介しようと思いますが、
「途上国であるカンボジアから学ぶことはアンコールワットくらいしかない」と思っていた頭でっかち大学生だった当時の私は、この場所にきてつながりのなかで暮らす人たちの生きる力に圧倒されました。

まさに鼻先をガッツーンとやられるような価値観のちゃぶ台返し。
人が生きるとは、どういうことなんだろう。
古代から今まで、人間はどうやって生きてきたんだろう。
というそれからの人生に大きく影響を与える問いを、この場所でもらいました。

それが原体験になり、カンボジアに通い続け、大学を卒業後すぐに移住することを選び、今に至ります。

そして2017年。サンボー・プレイ・クック遺跡群は世界遺産に登録されました。
それまで10年以上にわたり、行政、研究機関、地域が協力して、地域の人たちが観光の担い手になることを目指して準備をしてきたので、規模は小さいもののホームステイやコミュニティガイドの仕組みがあり、この地域にきたら、この人たちに会ってほしい!と思う、素敵な人たちがいます。

コミュニティガイドのみなさん、生まれも育ちも遺跡の近くの村

大きく大きくから、小さく小さくの旅へ

遺跡と観光の間で働くなかで、ずっと「観光」の形に変化を起こしたいと思っていました。
観光のつくり方はひとつじゃない。
その地域の、その町のかたちに合わせた、それぞれのやり方がある。
本当にその地域に活力が満ちるかたちは何か。


「あなたの普通の1日が、誰かにとってはとっても特別。」
観光学を教えるある教授の一言。
16年前の9月、私がカンボジアに最初に出会ったときの体験が、まさにそれでした。

2004年 村を案内してくれる地元の高校生チームのみんな

ただ、村の中を一緒に歩く。

見たことのない生垣の植物をみんなが説明してくれる。

「え、これ食べられるの?!」

向こうから牛たちが歩いてくる。

「え、どの牛が自分の牛か、顔を見たらわかるの?!」

村の小さなコーヒースタンドで、色とりどりの“何か“が入ったお鍋。

「え、これスイーツなの?!」

なんで家の床板に隙間が・・?

「下から風が入ってきて、気持ちいいんだよ。寝てごらん、わかるから」

地域の暮らしの中にこそ、一生記憶にのこる出会いがある。
地域の、普通の姿に、最高の輝きがある。
人と人とが出会ったとき、そこに喜びが生まれる。

そんな瞬間を、地域を訪れる人と地域で迎える人の間に、小さく、たくさんつくりたい。
それがきっと、地域の力になっていく。

おばちゃんの帽子を借りて、稲刈りに参戦 

その思いが高じて、2015年、サンボー・プレイ・クック遺跡群から車で30分のコンポントムの町に小さな旅行会社を立ち上げました。

実は、コンポントムの町は観光という点ではほぼ無名。サンボー・プレイ・クック遺跡群が首都から3時間、アンコールワットのあるシェムリアップから2時間という立地の良さゆえに、日帰りまたは通過型で遺跡だけを訪れるのが一般的。素通りされちゃうコンポントムの町は、カンボジアの人たちでも「通ったことはあるけど・・」という反応。そのため、ここを本拠地にしている旅行会社は2020年現在でも、私たちNapura-worksだけとのこと。


新型コロナの静けさの中で

地域の人たちとのご縁の中で、小さくはじめた旅づくりがだんだんと実りはじめた2019年。

2泊3日でコンポントムにじっくり滞在するのが私たちの届ける旅の定番になり、その時間のなかで生まれるテーマも多彩に。

食べること。

伝統食をお母さんに習う 魚を捌くところから

手を動かしてつくること。

訪れる人たちにとっては、自分たちの暮らしにもつながるヒントが生まれる。
迎える人にとっては、訪れる人たちが喜んでくれることが喜びになる。

このあたたかいエネルギーの対流を少しずつ広げて行きたい。
右肩上がりの直線ではなく、ゆるやかに広がる波紋のように。

と、静かに気合を入れていた2020年。
新型コロナが世界を覆い、“旅“そのものができない事態に。

それでもカンボジアは感染者が少なく、国外から来るのは難しいけれど、国内は移動できるという状況のなかで今まで国の外にむいていた人々の関心が、一気にカンボジア国内に向きはじめました。

今こそ、この国にある“普通の暮らしの美しさ“に出会ってもらうチャンス!
「なんにもない」と言われてしまう、このコンポントムの持つ暮らしのゆたかさを感じてもらう旅を提案しよう!としていた矢先。

この町の一番大事な仲間であるSambor Village ホテルがコロナで廃業することに。
村でホームステイは心のハードルが高いという方に、必ずおすすめしていたこの町での私たちの旅の拠点が・・。


旅は人がつくるもの

このホテルをお勧めしていた理由の一つは、緑に囲まれた美しい庭と心落ち着く空間が、村の空気とつながっているから。
町に滞在していても(30kmくらい離れてます)村での出会いの余韻を大事にできるから。

森の中を探検するようなホテルの敷地 いろいろな生き物が登場する


もう一つの理由は、いつも元気に声をかけてくれる笑顔がすてきなスタッフたち。
スタッフはみんな地元出身 夫婦で働くスタッフも

子供たちがお客様のときは全力で遊んでくれたり。
マニュアルではない、そのひとからにじみ出るお客様との関わり方。そして町で一番多くの国外からのお客さんを受け入れ続けてきた経験。

ここがなくなってしまったら、この人たちがいなくなってしまったら・・。
この町から新しい旅を発信する核になる一つの場を失ってしまう。

「あなたが続けてくれるなら、私たちはここに残る。」
この5年、旅行会社とホテルという関係のちょっと内側でお互いを見てきたマネージャが言いました。
コロナで最小限のチームになった少数精鋭のメンバーたち。

この人たちがいるのなら、この先の状況がどうなるかわからいないけど、思い入れのある私たちで、やってみよう。
そう決めました。


維持ではなく、新たな出発

今までこのホテルが守ってきた空間とスタッフたちが支えてきた土台の上に、人と人がつながる体験をのせていく。
このホテルが核になって、遺跡へ、村へ、地域のさらに奥へと、出会いの扉が次々に開く。

いつかこの光のなかにたくさんの素敵な“あの人“たちが集まって、それぞれの輝きが、お互いを、そして周りを照らしていく。

通過するだけだったこの町が「また来たい、もっと居たい場所」になる。

コロナの期間にはカンボジア国内の方々と。
そしていつか再び国を超えて旅ができるようになった時には、今回クラウドファンディングを通じて仲間になっていただいた皆さんの顔が、ひとつ、またひとつとその光の輪の中に加わっていく。

そうして、ここに関わるみんなのこれからがいろどりゆたかになる。
そんな未来を、今、この場所で思い描いています。


資金の使い道・実施スケジュール

・ホテルの修繕・改修費用

ホテルは動かし続けることで保たれる。
お部屋にお客様が入ると風が通り、風とともにエネルギーが吹き込まれる。コロナの影響でお休みしていた4ヶ月(しかも一番管理が大変な雨季に!)の影響と、これまでホテルが歩いて来た12年の歴史がいろんなところに現れて、補修・改築が必要です。また、2021年初めにホテル前の道路が拡張されることが決まり、門と塀と植栽の移動・再設置が必要になります。

・コロナ期間の運営資金

国外からの観光が実質成立していない現在、これまでの海外から旅行でくる方から、カンボジア人の都市部で働くご家族や国内在住の外国籍の方々を、新しいお客様としてお迎えしたいと考えています。新しいお客様との関係をつくっていく間に、この場所を支えるためのスタッフ給与、家賃、光熱費などの月々の運営費の一部に利用します。

・ホテルからひろがる体験の準備と提案

泊まれる場所としてのこのホテルのサービスに、コンポントムを通して暮らしの魅力に出会う体験を加えていきたいと考えています。今まで私たちが担ってきた体験の提供をチームで支える体制づくりが必要です。これまでホテルを支えてくれていたスタッフたちとの情報・体験の共有、新たに町で体験を提供してくれるガイドの育成、紹介する媒体の開発など体験を提供するための準備費用として利用します。

修繕・改装費用 100万円

運営資金補助費用 200万円

体験準備・育成・提案費用 80万円

リターン費用20万円


スケジュール
2020年9・10月 設備の修繕
2020年11月ソフトオープン
2020年12月オンラインでのリターンのお届け開始
2021年01月グランドオープン・第一回サンボービレッジナイト


リターンについて

カシューナッツ、名物・揚げコオロギ、完熟マンゴー、ライムの塩漬け、お母さんたちが作ったかご。コンポントムからお届けしたいものはたくさんあるけれど、コロナの影響で日本ーカンボジア間の郵便が不安定、かつどれも鮮度が大事な一品です。
そして、これから先コロナの様子がどうなるか、誰にも読めない今だから、そんな状況でこそ応援いただいた皆さんからの資金は、できるだけこの場所のために残しておきたい。

なので、リターンは可能な限り、現地に来て体験してもらえることと、オンラインで届けられるものを用意しました。詳しくはそれぞれのリターンの詳細欄にてお伝えしますが、私たちが届けたい地域の素敵な人たちとの出会いを、ちょっとだけ感じてもらえたらうれしいです。

そして、応援していただいたすべての方に、下記の2つのご招待がついています!

■サンボービレッジナイトへのお誘い

サンボービレッジナイトとは、“みんなの知恵をお借りするオンラインの夜会“です。
「ホテルの今」について仲間になってくれた皆さまとお話をするオンライン座談会を行います。Sambor Village Hotelとオンラインでつなぎながらスタッフやそのときどきのホテルのリアルな今の様子を紹介したり、「ここにこんなことがあったら素敵だな~」とか「こんなことやってみたら?手伝えるよ!」という“みんなの知恵“をお借りしたりする時間にしたいと思っています。
※2021年の1年間、3ヶ月に1回実施予定。

オンラインコミュニティ「日々のビレッジ」へのお誘い

オンラインコミュニティ「日々のビレッジ」は海の向こうにあるSambor Villageホテルの日々をお裾分けするプライベートコミュニティです。ホテルや村で起こる出来事やスタッフたちのストーリーなど、日々の小さな出来事やあれこれをリアルタイムでお伝えしていきます。
この日常のお裾分けを通じて、皆さんの日常にもコンポントムの風をお届けできたらと。
サンボービレッジナイトをはじめとした企画やイベントもこちらでお伝えしていきます。
※コミュニティへのURLはリターンのお礼メールにてお送りします。


*本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。


最後に

ここまでの、長い長い物語を読んでいただいてありがとうございます。

コロナを機に、オンライン・オフラインでいろいろな地域の方や首都プノンペンにお住まいのカンボジア人の方々と話すうちに、今私たちが抱えている課題は国を問わず、人種を問わず特に都市部で働き、生きる人たちに共通するものだと思うようになりました。

その課題の核には、「自分とそのまわりにあるものとのつながり」があると感じています。

かつて人間がずっと積み重ねてきた「つながりのなかにある暮らし」の片鱗が当たり前に存在していることの価値。でも、意外にその地に生き、その中にいる人たちは自分たちが持つ当たり前のすごさに気がついていなかったりします。

そして、それに気がつくきっかけは、地域の外からきた人たちが素直に驚いたり、すごいと言ったり、感動したりする、興味津々で聞いてくれたりする、その姿そのものなのです。

地域に滞在することは、訪れる人にも迎える人にも発見をくれる。
いつもよりちょっと心が動く瞬間をくれる。
それが、それぞれのこれからの未来をちょっと生きやすくするヒントになったりする。

実際に滞在していただける日はまだ少し先かもしれませんが、それまでゆるやかなつながりを持ちながら、このホテルを訪れる人と、今回仲間になってくれる皆さんと私たちスタッフと、みんなでこのホテルを育てていく。

このホテルに滞在する時だけでなく、それまでの過程でも「自分とその周りにあるものとのつながり」を感じることができ、そこにみんなで分かち合う喜びが生まれると信じています。

これからの新しい旅を、どうぞよろしくお願いいたします。

吉川 舞


  • 2020/12/16 08:40

    みなさん、おはようございます。怒涛のというか、感無量のクラウドファンディング期間を終え、目標を大きく上回る仲間への名乗りと資金の応援をいただき、ほっとしたと同時に、これからも丁寧に丁寧に進んでいきたい、という思いを新たにしています。そして、この期間に仲間になったり、応援したり、シェアしていただ...

  • 2020/12/14 11:37

    こちらの活動報告は支援者限定の公開です。

  • 2020/12/12 23:28

    もう、残すところ1時間。このプロジェクトの期間が終わってしまうというのが、本当に寂しいと感じています。まだ何が終わったわけでもなく、むしろこれからに続いていくための期間だったんだけど、それでもかつてのお客さん、大学や高校の同級生たち、カンボジア仲間、幼なじみ、お世話になった先輩後輩の皆さんと、...

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