馬から広がる繋がりで里山に生物多様性を取り戻し、霞ヶ浦の再生を目指します!
私たちは、霞ヶ浦再生の輪をさらに広げるために、プロジェクトの一員として馬を迎え入れようと、このクラウドファンディングに挑戦することにしました。
馬と霞ヶ浦の再生が、どうして繋がるの?
皆さんはきっと不思議に思われるでしょう。でも、今の霞ヶ浦の危機的な状況を改善するには、馬と人との協働が不可欠なのです。
はじめまして!アサザ基金の代表理事の飯島博と申します!
特定非営利活動法人アサザ基金は、霞ヶ浦の再生を目指して1995年に設立されました。以来、20年以上にわたり、霞ヶ浦の広大な流域(2200㎢)を覆う取り組みを実現するために、私たちは様々な人々や組織との繋がりを作りながら、取り組みの輪を広げて来ました。これまでに流域の200以上の学校、延べ34万人の市民に参加いただいています。今回は、この取り組みの輪をさらに広げ、霞ヶ浦再生を前に進めるために、クラウドファンディングの提案をさせていただきました。
水源地が次々と失われ危機的状況にある霞ヶ浦
霞ヶ浦流域では、流域各地の水源地が次々と荒廃して、湖の環境に重大な影響を及ぼし始めています。霞ヶ浦の水源地は、谷津田と呼ばれる細く枝分かれした谷間にある田んぼです。田んぼでの米作りは古くから行われ、その水源は谷を囲む森林です。霞ヶ浦流域には谷津田が数多くありますが、今その大半が耕作放棄され荒れ放題になってしまい、霞ヶ浦の水源地としての機能を失いつつあるのです。
時代の流れの中で忘れられていった水源地の大切さ、そこから生まれる豊かさ。
荒廃の原因は、谷津田が谷間にあって田んぼが小さく、ドロ深くて機械化や大規模化が進む現代農業の流れから外れていたことがあります。谷津田の多くは、国の減反政策もあって早くから耕作放棄されてしまったのです。そのため、谷津田の多くは、荒廃し藪になってしまい、かつて見られたメダカや蛍、トンボなどの生き物の多くが姿を消し、湧き水も減ってしまいました。谷津田は生物多様性の宝庫でした。
見捨てられた水源地を再生する取り組みにも限界が、そこで里山に昔いた馬に着目。
このまま水源地谷津田の荒廃を放置すれば、霞ヶ浦の環境が悪化していく一方です。そこで、私たちは2004年から、地域住民や学校、企業、行政などと協働で、谷津田の再生事業に取り組んできました。これまでに、10ヶ所以上の谷津田で活動を行って来ましたが、荒廃している谷津田はまだ数多くあります。これまで主に人力で行ってきた再生作業だけでは限界があります。そこで、かつて農村で人々と共に働いていた馬に着目したのです。
馬たちが歩いて田んぼに戻す、踏み耕で水源地を再生!
私たちが、馬たちにお願いしたい谷津田の再生作業の一つは、踏み耕というものです。馬たちに、草ぼうぼうになってしまった田んぼに入ってもらい、草を食べてもらったり、足で草を踏んで泥の中に埋め込んでもらったりして、段々と田んぼの状態に戻していってもらう作業です。それ以外にも、谷津田の周りの森も手入れがされず藪になっているので、茂り過ぎた下草も馬に食べてもらいます。
まず人が歩いて田んぼに戻してみました。これなら行けるぞ!
実は、この踏み耕を、私たちはすでに試してきました。そして、実際に荒地を田んぼに戻して、米を作ることも成功しています。ただし、踏んで耕したのは、馬ではなく、ボランティアの人達です。ボランティアの人達が毎回何十人も田んぼに入って田んぼに戻してくれました。ボランティアの作業は、毎日できません、でも馬なら毎日のようにやってくれます。踏み耕は、もともと馬や牛によって行われていた伝統農法です。馬が来てくれたら、もっと多くの水源地を再生することができます!
私たちが、このプロジェクトで実現したいことは、
里山に生きる馬から生まれる繋がりの輪を流域全体の水源地へと広げ、霞ヶ浦を再生に導くことです。
今回の取り組みを、将来的には流域各地に広がる水源地再生の広域展開へと繋げ、さらには、霞ヶ浦の水質改善や自然再生を実現する目標を掲げています。日本を代表する湖、霞ヶ浦の再生を実現することは決して簡単なことではありません。しかし、再生に向けて諦めずに地道に歩を進めていくことは、地球環境の改善に向けた希望や展望を示すことにもなると思います。
皆様から私たちの霞ヶ浦再生への歩みに応援を頂ければ幸いです。よろしくお願いします。
【霞ヶ浦の水は、流域に数多くある水源地の里山で生まれます。そこにはかつて里山の生態系の一員としての馬や牛がいました。】
【馬から広がる新たな循環で、霞ヶ浦を水質改善へ!】
●輸入飼料依存が、霞ヶ浦の水質汚濁の原因の一つに。
霞ヶ浦の水質汚濁の原因の一つに、流域外からのリンや窒素などの栄養分の流入があります。化学肥料と共に、海外から輸入されている家畜用飼料も、汚濁原因になっています。流域に外部から入って来た栄養分が霞ヶ浦に集まり蓄積することで、今日の水質汚濁が起きているのです。
循環型に変えていかなければ水質は改善しない。
このような流域外からの栄養分の流入を、流域内で循環する形に変えていかなければなりません。そのような循環を作るモデルを、里山への馬導入によって実現していきます。放牧によって耕作放棄地や森林の草を食べてもらい荒廃を防ぎ、里山の水源地機能や美しい景観、フクロウなど生物多様性を保全します。
「私たちは馬に輸入飼料を使いません」
今霞ヶ浦流域では、耕作放棄地が増え続けています。これらの耕作放棄地を活用すれば、馬の飼料を十分に確保でき、同時に、耕作放棄地を広域で再生できます。再生した後は、アサザ基金が自然農法の畑にしていきます。
再生した谷津田で収穫した稲藁は、馬の床材や飼料にし、馬糞は田畑の肥料に、循環型の農業を、霞ヶ浦流域の水源地に広げていきます。私たちは、地域で取れるものだけを使って馬を育てる方法を開発し、流域各地の水源地への普及を行います。
●馬を使った自然と共存する農業を実践します。
馬による農作業は、機械化農業と違い、そこに棲む生き物達を傷つけません。
踏み耕は、機械で耕すのとは違い、生き物を傷つけずに田んぼを作ることができます。踏み耕で再生した谷津田では、ホタルやトンボ、カエルなどが数多く棲息する様になることも明らかになりました。本物の馬を導入することができれば、踏み耕によって霞ヶ浦水源地谷津田の再生を広範囲に進めていくことができます!それによって、きれいな水と多様な生き物たちを取り戻すことができます!
踏み耕前
踏み耕をするとだんだん田んぼの状態に戻っていきます。
●馬と一緒に未来を感じ未来を創る!新しいホースセラピーを提案します!
乗馬やホースセラピーなど馬との触れ合いや体験の場は増えていますが、私たちは馬との触れ合いを再生していく里山の自然の中に作っていきます。例えば、耕作放棄地で馬に繁茂した草を食べてもらう作業や、森の下草を食べてもらう作業など、人が馬の暮らしの時間の中にゆったりと入るホースセラピーなど、里山の再生事業を生かして様々なメニューを用意していきます。
馬と一緒に里山を霞ヶ浦を再生していくんだ!馬と一緒に未来を創っているんだ!と感じてもらえるような体験プログラムを実施していきます。
(※ホースセラピー等のプログラムに関しては動物取扱業が必要になるため、実施は資格取得後の来年以降を予定しています)
●馬から広がる繋がりで自然と共存する地域コミュニティを作ります。
耕作放棄地を馬と再生した畑での農業体験、収穫物での料理体験(そば打ち、ピザ焼き、餅つき等)、環境学習、収穫物や薪の運搬、森林の手入れ作業体験、田んぼの再生作業(踏み耕体験)など、様々なメニューを用意し、参加者に共に未来を創っているのだというを実感を持ってもらいます。
これらの取り組みには、地元集落の方々にも協力を頂きます。馬を通して、過疎集落に新たな人の繋がりを作り、地域に賑わいを取り戻していきます。私たちは、すでに今回の取り組みの場となる牛久市島田町の集落内で、地元の方々の協力のもと、空き家の古民家カフェやシェアハウスへの改修工事も行なっています。これらの施設を、馬との体験プログラムとリンクさせ内容をより充実させていきます。すでに様々な交流が行われています。地元の方々も、馬が来ることを心待ちにしています!
霞ヶ浦流域各地へ展開していきます!
私たちは、まず二頭の馬から、このプロジェクトを始めます。今回の牛久市島田町での事業をモデルに、人馬一体となった里山再生事業を霞ヶ浦の流域各地へと展開していきます。馬を順次増やしていき、水源地再生のためのコンソーシアムも計画しています。
私たちは次の段階に向け、同じ流域内にある桜川市や鹿嶋市の水源地で、すでに集落の方々と協働事業を進めています。将来は、私たちが26年間の活動で育んできたネットワークを生かして、霞ヶ浦流域の主要な水源地にこの事業を広げ、きれいな水と豊かな自然を送り届け、霞ヶ浦を蘇らせていきたいと思います。
みなさんも、馬たちと一緒に、未来を創っていきませんか!
霞ヶ浦の再生は、簡単ではありません。しかし、私たちは人や地域に新しい繋がりを生み出し続けていくことで、不可能を可能に変えていこうと取り組んできました。私たちは、馬から広がる新たな繋がりを生かして、霞ヶ浦再生への歩みをさらに大きく一歩踏み出していきたいと思います。皆様の参加と協力をお願いします!
馬で流域全体に分散する水源地谷津田を結ぶ!
霞ヶ浦流域を覆う56本の流入河川を、馬と歩き、各河川の水源地谷津田の現状を調査し、踏み耕などの耕作放棄地再生を行い、地元の人たちと保全や再生について話し合う流域馬圏プロジェクトを、将来やってみたいと思っています。流入河川のほとんどは土手なので草を食べさせながら長距離移動できます。2200㎢の広大な霞ヶ浦を馬で自由に移動して多様な人々や地域を結びたい!
迎える馬たちの紹介
迎える予定の馬たちは北海道の大地で待っています。
2021年10月末日までに馬2頭を迎える予定です。
ドサンコ:佐目毛・牝・4歳
アパルーサー:青毛・騙馬・2歳
支援金の用途
馬の購入費、養育費:2頭で約170万円
馬の運送費(北海道から馬運車で運びます):約30万円
厩舎設備建設費:約10万円
馬具購入費:約10万円
手数料等
スケジュールについて
2021年 7月 クラウドファンディング終了
2021年10月末 北海道より茨城県牛久市にあるアサザ基金の古民家に馬が到着
2022年 1月 体験イベントプログラム開始
リターンのご紹介
※本プロジェクトへのご寄付は認定NPO法人アサザ基金への寄付となり、弊団体が寄付金の受付及び領収証発行を行います。このプロジェクトの寄付は寄付金控除の対象になります。「寄附金控除」をお受けいただくためには、確定申告の際に、NPO法人アサザ基金が発行した領収証をもって確定申告をしていただく必要がございます。支援者の住所等はプロジェクト終了後に閲覧可能になりますので、領収書はプロジェクト終了後の8月以降、随時お送り致します。
ご寄付を頂いた方々が参加できる、里山で馬と過ごす体験イベントやプログラムのお知らせをします。
体験イベント・プログラム概要
場所:茨城県牛久市の古民家周辺
実施期間:2022年1月以降随時開催予定
イベント参加による交通費等はリターンに含まれません。
概要:馬のふれあい・お世話体験、馬による再生事業体験・見学、無農薬無化学肥料の農作物を使ったワークショップ等
参加希望多数の場合、一日のイベント人数に制限をかけ、複数の日程に渡りイベントを開催させていただきます。予めご了承ください。
※領収証はCAMPFIREではなく当団体が発行・郵送いたします。
担当スタッフの紹介
初めまして!アサザ基金の野村恭太と申します!馬導入プロジェクトの担当スタッフです。
私は以前、ムツゴロウ動物王国で働いていました。幼い頃から動物王国に憧れ、そこで展開されていた他の生き物との共存・共生、いきものの素晴らしさ、命のぶつかりあい、命の輝きを動物王国から学んできました。今の子どもたちに、私が幼い頃に憧れた動物王国のような場所を作りたいと思っていました。
動物王国で唯一、足りていなかった部分は農業だと思っています。
家畜の育成と農業、両方がそろって、初めて循環の輪が繋がります。
アサザ基金には水源地の再生活動の一環で既に無農薬、無化学肥料の農業が確立しています。
この循環の輪を繋げる第一歩が、今回迎える馬なのです。
産業革命で機械が席巻するまでの数千年の間、人類と共に歩んできた大切な仲間です。
私たちは、自分たちが手がける特別な地域だけで馬が活躍することを望んではいません。
これから必要になるのは理想郷ではなく、それぞれの地域に根付き、社会的、経済的に溶け込む形で、馬が存在できるようにすることです。
つまり、農耕馬文化の再生です。
とても壮大で、容易なことではありません。だからこそ、クラウドファンディングに挑戦していくことを決意したのです。流域の人たち、全国の人たち、多くの企業、人間を巻き込んで、学校教育も含めた社会にも働きかけて、みんなで、環境を、文化を、再構築して行きましょう!
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。
最新の活動報告
もっと見る馬たちを迎えて一カ月になりました。
2021/11/29 16:48皆さんにご支援いただき馬たちを迎えることができてから一カ月が過ぎました。馬たちが到着する直前に飼育担当者が引き継ぎも無く突然姿を消してしまうというハプニングもありましたが、幸いにも新たな協力者を得ることができ、大きな混乱も無く、馬たちには不自由な思いをさせることなく新しい暮らしを送ってもらっています。現在は、元騎手の田村正光さんに指導をいただきながら、スタッフ皆で馬たちのお世話をしています。田村さんからは、日々多くの事を学ばせてもらっています。馬たちの飼育を始めて初めて気づく事も多々ありました。その一つが、寝わらとして大量の藁が必要な事です。それによってアサザ基金の水源地再生事業から出てくる大量の藁が有効活用できる事にもなりました。馬たちは、毎日無農薬の藁をたっぷりと厩に敷いてもらっています。また、使用後の藁を使った堆肥によってアサザの田畑での有機栽培とも繋がりました。飼料も、地元の企業や農家に協力してもらい広大な草原で十分な量の採草をさせてもらっています。休日には、親子連れが馬たちを見に来てくれるなど、少しずつ地域にも変化が見えて来ました。アサザのスタッフが馬たちの事をよく理解し、十分な体制を組む事ができたら、より多くの方たちに馬たちと触れ合ってもらうようにしたいと思います。このような状況ではありますが、ご支援いただいた皆さんには、機会ありましたら、ぜひ馬たちを見に来ていただければと思っています。その際は、ご連絡下さい。いま、新しいスタッフの募集もしていますので、皆さまからご紹介いただける方がいましたら、よろしくお願いします! もっと見る
このプロジェクトにかける思いをエッセイにしてみました。
2021/07/11 19:52別の道を創る〜ゼノンと馬に乗って水の道を巡る旅。 人はなぜ、立ち止まって考えるのか? 一度立ち止まって、考えてみてはどうだろう。よく耳にする言葉だが、不思議に思うことがある。ひとは、なぜ立ち止まって考えるのか。考えるという事と、立ち止まることや動きを止めるということは、どのようにして結び付くのか。絶え間なく動き、変化し続ける現実の中にあって、状況を理解することも、考えをまとめることも、確かに難しい。幾重にも情報が錯綜し、翻弄され迷い続けるよりも、一度立ち止まって、動きを止めて見て、情報を整理してから、考えをまとめてみてはどうか。つまり、動きの中から一度外に出て、状況を客観的に見ながら、考えをまとめてみてはどうかという意味だ。 錨(いかり)を降ろして安心する。 動き変化し続ける現実の外に出ることで、自分が置かれた状況を客観的に見ることができることは確かだ。動きを止めて見ることができれば、物事を構造的に理解でき分かり易くなる。自分は今このような状況に置かれているのだと、自身が納得する根拠を得ることができれば、人は安心する。そのようにして見出した根拠が、世間の認める説明(概念)と一致すれば、尚更安心できる。そのように概念へ落とし込む(固定する)作業のことを、ひとは「考える」と言っているのではないだろうか。概念は、動かない。ひとが動き続ける現実の中にあって、概念とは揺るぎない視点や立場を維持するための錨のようなものかもしれない。 動かないものが、動くように見える。 しかし、概念は、動き変化する現実とは完全に一致はしない。概念が変われば、世界の見方(世界記述)も変わる。世界記述が変われば、概念は刷新される。つまり、パラダイム転換が起こる。動きを止めた世界の見え方は、時代と共に変化する。動くものと動かないものは、一致しない。瞬間瞬間、動きを止めた無数の断片(ビット)に切り分け、それらをコマ送りしていけば、動いているように見える。進歩し続けるデジタル技術は、動かないものを動くように見せる究極の様式かもしれない。デジタルが我々の社会に革新をもたらしたことは事実だが、その根底には動きを止めて現実を捉える様式がある。 古代ギリシアの哲学者ゼノンのパラドクス〜アキレウスは亀に追いつけない 動きを止めて考える思考様式から動くもの(運動)の矛盾を突いたのは、紀元前5世紀頃に活躍した古代ギリシアの哲学者ゼノンだ。ゼノンが提示した「アキウレスは亀に追いつけない」や「飛んでいる矢は止まっている」といった有名なパラドクスに、今も明確な答えを見出すことはできていない。 アリストテレスは、ゼノンを質疑応答により知識を探求する方法(弁証法)を最初に発明した哲学者として紹介しているが、彼のパラドクスは今も人々に質疑応答を促し続けている。 ※ゼノンのパラドクス(俊足のアキレウスは先に出発した亀に追いつけない。なぜならアキレウスが亀に追いついたとき,亀は少し先へ進んでおり,アキレウスがさらにその場所に着いたときには亀はそのまた先へ進んでいて,これが無限に繰り返されるから〉,〈飛んでいる矢は,各瞬間を考えれば静止しているから,運動できない〉などが特に有名。) 思考の中に潜むブラックホール 人類の進歩を支えてきた思考様式には、底無しの穴が潜んでいるではないか。思考の真ん中には、ぽっかりと口を開けた暗黒の穴があるのかもしれない。 私たちの思考の銀河の中心には、ブラックホールがあるのか。あるとしたら、知りたい。その存在を確かめたい。 物理学の最新研究で、ブラックホールと共に取り上げられるのが、ダークマター(暗黒物質)という謎の物質だ。銀河の中心には、このダークマターから形成されたブラックホールが存在する可能性があると考えられている。 ダークマターは、全宇宙の質量の27%を占めているとされる。ところが、一切の光も電波も発しないため見ることができない。まさに、謎の物質だ。しかも、その謎の物質によって、宇宙や私たちの存在が支えてられているというのだから驚きだ。今、この未知の物質の正体を明らかにしようと、世界中の科学者が挑んでいる。 より小さくより深くより広く、宇宙の成り立ちを解明しようとする科学者の探求が日々続けられている。 思考の限界には思考の未来がある。 私たちの思考の銀河にも、このダークマターがあって、私たちの思考を支えているのではないか。人々は、思考のダークマターの存在に気づく事もなく、それに支えられ思考しているのではないか。未知なるものが、思考の銀河全体を支えている。そう考えると、思考の限界というよりも、思考の未来に大きな可能性を感じてしまう。これこそ、マイケル・ポランニーが言った暗黙知の次元かもしれない。(この小文では、暗黙知ではなく、あえてダークマターという言葉を使わせてもらいます。) 動く現実の中で思考し実践するプロジェクト。 未知ということは、思考の外に何かが在るということ。逆にいうと、私たちの思考が何かの外に在るということでもある。つまり、それは動くものの外に在るということだ。その動くものとは、自然である。 自然と共生する社会を創るために、動くものの中で思考し実践したいという思いが、アサザプロジェクトの展開を促し続けてきた。動くものとは、循環し変化し続ける自然であり、人々の日々の暮らしである。だから、私たちは、自然のネットワークに重なる人的社会的ネットワークの構築を目指し様々な取り組みを行なってきた。 閉じることで開くアートで創る新しい社会 自然のネットワークは、動的なネットワークだ。そこには、絶え間ない循環があり、生き物の道、水の道(水系)、風の道など、様々な動く道がある。私は、それらの道と重なり損なわない新しい道を社会に創ることが、自然との共生に結び付くと考えてきた。新しい人、モノ、カネの動き(ビジネスモデル)を創ることも、子ども達と生き物の道を展開する総合学習も、その延長線上にある。それは、人やモノやカネを用いて自然を描くアートだ。 動的である自然のネットワークに重なる人的社会的ネットワークを構築することが、霞ヶ浦を再生に導くことはもちろん、地球上の様々な環境問題を解決に導く王道であると、私は確信している。そのような王道を創るためにも、思考のダークマターという存在を忘れてはならない。ダークマターは、閉じることで開くアートを可能にするからだ。 ベートーヴェンの日記 アートは、創り手が様式の中にひとつの世界(作品)を創ること(閉じること)で、世界に向けてより開いていく行為だと思う。10代後半に読んだベートーヴェンの日記の中に「自分は12音という人間が作った音階(形式)を基に音楽を創造している」といった趣旨の一文があり、はっとさせられた記憶がある。閉じること(表現する覚悟)の意味を知っていたからこそ、彼は宇宙をさえ感じさせる壮大かつ深淵な生の音楽を創ることができたのだと、その時私は思った。彼の音楽は、ダークマターによって満たされている。だから、音楽を超えた普遍的な価値を持つことができたのだと思う。 自然と共生する社会を実現するためには、閉じることで開くアートがあらゆる活動に求められる。それは所謂アートという分野を超えた、より普遍的な意味でのアートである。 ゼノンと馬に乗って別の道を創る。 自然と社会を結ぶ双方向的思考によって動的ネットワークを現実化するために、私たちの社会に新たな道を創る必要がある。つまり今の道とは別の道を、私は先のパラドクスで運動を否定したゼノンと共に、馬に乗って水系を巡りながら創っていきたいと思っている。 自然のネットワーク(水系)を馬と共に動きながら思考する。新たな思考が生成する場としての別の道を、水系(自然のネットワーク)に重ねて創る。それは、霞ヶ浦流域を覆う道路網とは別の動く道になる。広大な流域を隈なく覆う水の道、水系を、人と馬が自由に動くことで、新たな思考と実践を生み出していく。私は、この別の道を既存の道(道路網)と併存させることから、社会を変えていきたいと思う。 流域を覆う毛細血管 霞ヶ浦には大型の流入河川は1本も無い。湖に流れ込む流入河川は全部で56本あるが、みな中小河川だ。それらの流入河川には更に多くの支流が合流している。また、それらの小型河川の上流には数多くの支流、谷津田と呼ばれる樹枝状の谷が台地の奥深くにまで展開している。谷津田は、霞ヶ浦流域に1000以上もある。霞ヶ浦流域は、まさに、毛細血管のような水系に覆われている。そして、それらの谷津田には古くからの集落がある。 つまり、人々が目にする広々とした湖面全体が、霞ヶ浦なのではない。流域に広がる水系を含む全体が、実体としての霞ヶ浦なのだ。その霞ヶ浦は、水面として見える部分の約10倍の大きさ(流域面積約2200㎢)を有している。それを、丸ごと別の道に変え、社会を変える。それが、目標だ。 見えない霞ヶ浦 琵琶湖と違い、入江の多い複雑な形をした霞ヶ浦は、その全体を感じ取ることが難しい。その上、平坦な関東平野の中に位置する霞ヶ浦水系は、山々に周囲を縁取られた琵琶湖水系とは違い、その全体を感じることが困難だ。湖を眺めても、地平線へと吸い込まれ空と一体化してしまう。霞ヶ浦の全体像は、見る事も感じる事も難しい。見えない湖、それが霞ヶ浦だ。 水系を含む霞ヶ浦全体を、感じ取りイメージした社会を創ることこそが、霞ヶ浦再生には不可欠ではないか。霞ヶ浦全体を感じ取ろうとせず、理解しようとせずに、概念に置き換え、部分的理解の寄せ集めで、霞ヶ浦の問題を解決しようとしても、それは不可能だろう。なぜなら、目に見えない霞ヶ浦(ダークマターの湖)を無視し排除しているからだ。 ダークマターの湖を馬と歩く。 実体としての霞ヶ浦と向き合うためには、動きを止めない思考が、つまり、ゼノンを馬に乗せる必要がある。私たちは、馬に乗って水系を巡り様々な人々や地域と交流するプロジェクトを始める。霞ヶ浦の流入河川のそれぞれに、まずは、一級河川と呼ばれる24河川それぞれに駅(うまや)を作り、それぞれの駅を拠点に霞ヶ浦の水源地谷津田の再生を進め、新たな人や物の交流の場を創り水系を通して広げていきたい。そのように道路網とは別の道で社会を覆い、社会を変えていきたい。霞ヶ浦の流入河川には堤防があるが、ほとんどが草の生えた土手だ。土手の上の細い道を通る自動車や人はほとんど無い。水や草や土の匂い、鳥や虫の声、吹き渡る風、移ろう光に包まれながら、この土手道を馬と歩き、別の道を水系全体に広げていきたい。 概念で作られた道とは別の道を創る。 道路網は、自然との対話を失った、まさに概念による道。交通や移動といった概念を基に、机上に引かれた線が、そのまま大地に引かれていく。だから、道路網は水の道や生き物の道や、自然との対話によって育まれてきた道、それら動くものによって創られた道を、容赦なく分断し建設されていく。一度引かれた線は、動かない。動かない線の上を、人や車が慌ただしく行き来する。この様な道に依存していては、社会は自然との共生に向けて舵を切ることはできない。別の道が必要だ。 別の道となる水系は、道路網と異なり絶えず動いている。その道は、動く水によって創られているからだ。動くものが創る水系は、私たちの概念を超えて在る。それは、ダークマターの湖としてある。 2030アジェンダやSDGsなど、人類に迫り来る重大な危機を回避するために、世界中で別の道が模索されている。しかし、別の道に向かうために必要な時間はもうあまりない。私たちは、霞ヶ浦に自然のネットワークに重なる別の道を創ろうとしている。 アキレウスが絶対に追い越せない亀になる。 アサザプロジェクトは、27年前に霞ヶ浦の湖岸(252キロメートル)歩く中から生まれた思考と共に動き始めた。その思考の展開によって、霞ヶ浦の湖岸植生帯を再生する取り組みが、農林水産業や地場産業、企業、教育機関、地方自治体、省庁などによる協働事業として実現していった。しかし、それは、私たちに、湖の中での取り組みには限界があるという事を教えてくれた。この取り組みを通して、私たちは霞ヶ浦という湖が、通常霞ヶ浦と呼ばれる領域(湖面)だけではないという事実を思い知らされた。私たちは、その頃まだ、堤防に縁取られた霞ヶ浦という概念の湖に囚われていた。ダークマターの湖も、水系や流域、あるいは全体という概念の錨によって動きを失っていた、私たちの思考の未だ外にあった。霞ヶ浦を持ち合わせの概念に当て嵌め、思考の枠組みの中に無理やり納め、動きを止めて分析すれば、状況が的確に理解され迅速な対応も可能になるかもしれない、しかし、それは現代のパラドクスの中を疾走するアキレウスに過ぎないのではないか。 27年後の今、私たちは再び動きの中にあって新たな思考を得ようと、未知の領域に迷いこみ楽しんでいる。ダークマターを湛える広大な湖を経巡る旅に、アキレスに絶対に追い抜かれない亀になって、さあ出かけよう! より小さくより深くより広く、私たちの探求と実践は続く。 2021年7月1日 認定NPO法人アサザ基金 代表理事 飯島 博 もっと見る
地元情報誌に掲載されました!
2021/07/03 06:28こんにちは!プロジェクト担当野村きょうたです。今日、7月3日に発行される地元情報誌「エリート情報」に私たちのクラウドファンディングの記事が掲載されました!!私たちの考えや想いに共感を頂けて、掲載に至ることができました。本当にありがとうございます。これから馬が来て、馬耕やイベントが開催されればまた掲載される機会もあるかもしれません。今後のエリート情報にもぜひご注目、ご期待ください!エリート情報社さんのホームページはこちら→エリート情報今日の新聞の折り込みに入っていますのでお見逃しなきよう、お願いいたします。地元じゃないかたも、上記ホームページより今回の7月3日号がご確認できます。ここからさらに支援の輪が広がっていけばいいなと思います。引き続き、よろしくお願いいたします。北海道から馬たちの最新動画が送られてきました。今朝撮りたてほやほやです!のびのびしてとっても気持ち良さそうですね!私は一緒に混ざって体をぶつけ合って遊びたい!って思っちゃいました。馬たちがきてくれるのが楽しみです。 もっと見る
アサザの古民家にワッカとルーを迎えてから、今日でちょうど一年になりました。多くの方々のご支援をいただき無事にこの一年を乗り切ることができました。本当にありがとうございます。 当初の計画通り、馬たちの餌を地元から調達することができました。 これからも、馬たちと一緒に取り組みの輪を霞ヶ浦流域へ広げていきたいと思います。 今後ともよろしくお願いします。