江戸から続く料亭の文化を、現代に開く

いわき市平大町の割烹料亭「正月荘」の女将をしております、鈴木華奈子と申します。江戸末期から250年続いてきた正月荘の「コロナ後」の未来を見据え、このたび、屋外に新たに料亭ガーデン」を新設するためクラウドファンディングにチャレンジいたしました。よろしくお願いいたします。



正月荘は、江戸末期、磐城平藩主内藤家の時代に、浜街道の馬宿として開業した料亭です。古くから地元の皆さまにご愛顧いただき、お祝いや歓送迎会、ご会食などおもてなしの場としてご利用いただいております。馬宿から旅籠(はたご)、料理旅館、そして割烹料亭へと業態を少しずつ変えながら、この平の地で商売を続けてまいりました。

このたびのコロナ禍では、大変大きな打撃を受けました。飲食店が感染源であるかような報道も続きました。第五波が落ち着いた現在もなお、少人数での会食が推奨されております。かつてのような業態での営業だけでは難しい状態となり、現在、新しい店づくりを模索しているところです。

この2年間、女将として、料亭とは、飲食業とはどうあるべきかをずっと考えてきました。そこで出た答えは、これまでの業態に縛られることなく、新しい時代のおもてなしを探ろうということでした。江戸末期から250年もの間、正月荘は、その時代時代のニーズ、お客様からの声を聞き、少しずつ業態を変えることで暖簾を守ってきました。今回も、それに習おうと思っています。


屋外に建設予定の料亭ガーデン。石畳への作品制作も始まりました

そこで、これまで料亭という場所に距離を感じていた方も気軽に飲食を楽しんでもらえるよう、庭園を一部改装し、屋外でのお食事を楽しんでいただける「料亭ガーデン」のような飲食スペースを作ることにしました。外であれば密を気にせず飲食を楽しめますし、料亭の雰囲気も感じながら、気持ちよく飲食や交流を楽しんでいただけるのではないかと思います。

その屋外スペースの工事費用の一部をご支援いただきたいと考え、クラウドファンディングにチャレンジいたしました。このあと、正月荘のこれまでの歩みや、プロジェクトへの思いを詳しく説明いたします。どうぞ最後までお読みいただき、ご支援いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。


城下町、随一の料亭として

正月荘の始まりは、江戸時代に遡ります。そのころ平藩では、治安維持のために城下町の出入り口に木戸をつくり、荷物や荷馬の通行を制限していました。外部から来た人は町内に宿泊しますが、荷馬は木戸の外に預ける必要があったそうです。その木戸の近く、玄関にしめ縄を施し、軽食として餅を提供した馬宿が正月荘の始まりだと言われております。

しめ縄は、その内側を神聖な場所として外部と区切る役割があります。また、お餅は正月に神様に捧げる神聖なものです。このため馬宿は「お正月さま」とよばれ、平の町民に親しまれたそうです。その後、旅籠や料亭へと業態を変え、呼び名も「正月さま」から「正月屋」、「正月荘」と変遷し、この地で営業を続けてまいりました。代々、私ども鈴木家が営業を引き継いでまいり、私で10代目となります。


平の大町にある正月荘。宿泊のできる割烹料亭です

いわき市は、藩政のころからさまざまな産業が興り、中でも平は城下町でもありましたので、本当にさまざまな人たちがやってきました。古くから続く農林業や水産業だけでなく、かつては石炭産業の一大拠点でもありました。現在も、製造業やエネルギー産業などが集積しております。お客様の多様なニーズに応えるため、その時代にあったサービスを提供してまいりました。

料理はできるかぎり地元の食材を使い、既製品は一切使っておりません。出汁や小さな小鉢からすべて板前たちが手づくりしています。食材や調理法は、婚礼や結納、七五三や節句、ご長寿のお祝いなど目的に合わせてアレンジします。また、お部屋や廊下に飾った花や掛け軸、アート作品などにもひとつひとつに意味を込め、おもてなしの空間をつくっております。


日本の伝統建築を活かした内装。落ち着きのある和の空間に皆様をお迎えしております

コース料理の一例。すべて板前たちの手づくりです

提供している日本酒の一例。十四代、新政、而今といった県外の銘酒も取り揃えています

また、近年は日本酒の提供やペアリングに力を入れてきました。特に福島は日本一の酒どころですし、全国の魅力的な地酒を味わっていただきたいんです。そこで正月荘では、お酒のスペシャリストである「酒匠(さかしょう)」がいる唯一の料亭です。

この酒匠は、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会が認定している資格で、ひとことで言えば「日本酒と焼酎のテイスティングの専門家」を指します。この酒匠を中心に、マネージャーや仲居もお料理に合うお酒をお客様のお好みをお伺いした上でご提供しております。

酒匠がいることでお店の信頼性が高まり、入手困難な地酒も独自のルートで仕入れられるようになりました。また、社員の意識も高まり、飲み物の担当だけでなく食事を配膳するスタッフも、かなり地酒に詳しくなっています。定期的に開催してきた日本酒イベントなどもあってか、地酒を楽しみにいらっしゃるお客様も増えてきました。


スタッフが座席を周り地酒の楽しみ方をレクチャーいたします

ある日のご縁席での一例。入手困難なお酒も楽しめます

飛び込み営業から積み上げたキャリア

若い頃は「正月荘の娘」としか認識してもらえないことに悩んだ時期もありました。学校でも地域でも、どこに行っても「正月荘の娘」。だからずっとサラリーマンに憧れていたんです。大学を卒業後、しばらくは東京で働いていました。

キャリアの第一歩は、事務機器の飛び込み営業でした。東京のど真ん中で飛び込み営業ができるようになれば他の仕事はなんだってできると思っていました。銀座のオフィスビルが営業先でしたので、ライバルも多く、営業先から下に見られ、怒鳴られたり、灰皿を投げられたりなんてこともよくありました。でも、辛いところを経験しておけば、いつ料亭に戻っても大丈夫だと思って現場で経験を積みました。


社長秘書として働いてきたキャリアを仕事に生かしています

その後、人材派遣の会社の立ち上げ、社長秘書としてキャリアを積みました。秘書時代に、社長とともにさまざまな人たちと交流できたことは、とても大きな経験になりました。普段会えないような方々と会食するうちに、おもてなしのなんたるかを現場で学ぶことができましたし、人材育成や事業立ち上げなどの経験は、女将としての仕事に直結している気がします。

あの頃の飛び込み営業に比べれば、新しい商品の売り込みも、日々の営業も、そこまで大変だとは感じません。自分たちの商品には自信を持っていますし、スタッフたちとも楽しくアイデアを出し合うことができていると感じます。まったく畑違いの業界から実家に戻ってきましたが、次第に、女将として働く手応えを感じられるようになりました。


調理中の料理長と。声を掛け合い、会社の中の風通しをよくすることも女将の仕事です

父もまた、先祖から店を引き継ぎ、時代にあったサービスを提供して来ました

大女将としてお客さまのおもてなしを続ける母も、偉大な存在です
台風19号水害、そしてコロナ禍

正月荘に戻って今年で12年目になりますが、この3年近くは苦境の連続でした。2019年の秋の台風19号水害では、市内の広い範囲が被害を受け、平の浄水場も被災しました。水の供給がストップするなど店の営業が難しくなり、宴会などがすべてキャンセルになりました。それでもなんとか立て直し、2020年はいい年にしよう、そう思っていた矢先、新型コロナウイルスの感染拡大が始まります。

お店が営業できない時期も続きましたが、今できることをやるしかないと思い、いろいろなことをやりました。マスクの品切れが続いた時期は、みんなで布を買ってきてマスクを作り、幼稚園に寄付しました。ぼーっとしてるのではなく、誰かのために役に立ちたい。みんなが喜んでくれるかな・・・。そんな思いでした。幼稚園の子どもたちからマスクのお礼の手紙をいただいたときは、思わず涙しました。


社員でつくった手づくりのマスク

手巻き寿司セットは大変好評でした

辛い状況下でも、いま何ができるだろうか。とにかく一歩ずつ前に進もう。できることやろう。そんな雰囲気でスタッフとミーティングをし、店を守ってきました。どこも出られないなら、家で食べられる「手巻き寿司セット」をつくって売ってみよう。酢めしもネタもこちらで作ればママも楽ちんだね、だからうちで買ってくれたらいいよね。そんなふうにみんなでアイデアを出し合いました。いま思えば、困難があったからこそ出てきたアイデアもあると思うんです。

コロナウイルスを恨むような気持ちはありません。ロナが悪かったわけではないと思うんです。社員一丸となるきっかけや、新しいことを社員全員で考え、いろいろな商品やサービスを開発するきっかけになりました。今思えば、どれも正月荘にとって必要なことだったのかもしれません。季節に合わせたテイクアウトのメニューができたり、手巻き寿司セットが生まれたり。コロナがあったことで前に進んだこと、よかったこともあるんじゃないかと思うようになりました。

そこで、はっと思い至りました。歴代の女将たちも、たとえ困難があったとしても、その都度、そこで新しいことを取り入れてきたのではないかと。馬宿から始まった正月荘は、旅籠(はたご)、料理旅館、さらには割烹料亭と、時代にあった業態に変化してきました。勇気を持って変化していくことが、歴史を守ることにもなるのかもしれない。そうして考えるうち、「座敷に上がらないでも楽しめる料亭」というアイデアが生まれました。


料亭と地域をつなぐ場

いま、構想しているのが「料亭ガーデン」です。敷地内の池のそばにある石畳の場所にテラス席を作り、少人数でも楽しめるようなスペースを作りたいと思っています。「少人数」であることは感染防止のガイドラインにも合いますし、外での飲食は密を避けることもできます。

大人数で会食というより、気心知れた友人や先輩とカジュアルに飲みたいという方が増えてきました。料理もカジュアルなものにし、料亭の雰囲気を楽しんでもらえたら、次は中の部屋を使ってみようと、そんな方も出てくるかもしれません。そうして「料亭の一歩手前」のところ、料亭と地域をつなぐような場所を作ってみようと考えています。


ロビーの外側にある庭園に、料亭ガーデンを作る予定です

市内のグラフィックデザイナーとともに場づくりを始めています

また、現在、いわき市内で活動するグラフィックデザイナーに依頼し、ガーデンのデッキにシンボリックなアート作品を描いてもらう予定になっています。思わず写真におさめたくなるようなデザインにすることで、地域の皆さんの交流を作りたいと考えています。まちづくりや食に関わる人たちの交流拠点のような場所に、育てていきたいです。

この「料亭ガーデン」のアイデアに対して、皆さんからのご支援を頂戴できればと考えています。具体的には、工事費用(80万円)、デザイン費用(20万円)などに使わせていただきます。スケジュールは以下の通りです。

 2022年1月 設計
 2022年2月 デザイナーによるペインティング
 2022年3月 モニターの皆さまへのサービス開始
 2022年4月 サービス開始

リターンは、正月荘でお使いいただけるお食事券や、各種宴会プランなどを用意しました。コロナ禍でしばらく正月荘へお越し頂けなかった皆さん。ぜひ今回のクラウドファンディングを機にまた、当店へ足をお運びいただければと思っております。皆さまのお越しをお待ちしております。

また、若い世代の、まだ一度も料亭に足を運んだことのない方向けにも料亭ガーデンモニタープランや、はじめての料亭コースプラン用意しました。普段よりもお得にコース料理を楽しめるプランです。若いお客様にも料亭ってこんな場所なんだと、ちょっとでも感じてもらえたらと思っています。このほか、酒匠と一緒にとことん日本酒について語り合いながらお酒を飲めるプランなどもご用意しました。

コロナ禍は、新しい時代の料亭をつくるチャンスなのかもしれません。いわきでもっとも長い歴史のある料亭を次の世代の人たちへ引き継いでいくためにも、変化を恐れず、皆さまのお力も借りながら、コロナ後を見据えた新しい料亭をつくっていきたいと思っています。ご支援、よろしくお願いいたします。機会がありましたら、ぜひ正月荘へも足をお運びください。


【企業・ひと・技 応援ファンドとは?】

いわき市、いわき産学官ネットワーク、いわき信用組合、いわき商工会議所などが連携し、次世代に継承していく技術やサービス、商品を持つ事業者や、新型コロナウイルスを乗り越えるための新しいビジネスモデルを構築し、市民の安全・安心に取り組む事業者をサポートするために企画されたものです。新しい時代に、残したい・伝えたい。そんな企業を、ぜひ、みんなの力で支えましょう。応援よろしくお願いいたします。(事務局・いわき商工会議所 創業・承継委員会)

■特定商取引に関する記載
・販売事業者名:有限会社正月荘
・代表者名:鈴木 泰寿
・事業者の所在地:〒970-8026 福島県いわき市平字大町33
・事業者の電話番号:0246-23-3104
・送料:送料込み
・対価以外に必要な費用:プロジェクトページ、リターンに記載のとおり
・ソフトウェアに係る取引である場合のソフトウェアの動作環境:該当なし
・その他記載事項:プロジェクトページ、リターン記載欄、共通記載欄(https://camp-fire.jp/legal )をご確認ください


  • 2022/01/20 07:25

    この度は沢山の皆様のお気持ちありがとうございます。お忙しい中URLにアクセスしていただき、ご支援までいただきましてありがとうございました。感謝感謝です。残り4日間 最後までどうぞよろしくお願いします。そして、新たなサービスや新たなお料理に取り組めますように努力していこうと思っております。

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