エンタメ領域特化型クラファン
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※7/13 樋口真嗣監督のインタビュー動画をアップしました。

はじめまして

バリュープラス アーカイヴ プロジェクトです。
この度は昭和特撮フィルムを後世に残したい!というこのプロジェクトに興味を持っていただきありがとうございます!

 私たちはビデオテープやフィルム、制作資料といった、コンテンツ業界の貴重な資産を守るお手伝いをしています。
2022年、東京都現代美術館で開催された「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」に参加し、井上氏の遺した膨大なデザイン画や図面のデジタル化に協力しました。

 そして今回、昭和の時代を彩った制作会社「ピー・プロダクション」が手掛けた特撮作品のポジフィルムが発掘されました!

「ピー・プロダクション」の特撮作品は放送から50周年を迎え、フィルムの劣化や褪色が始まる時期が近づいています。
 今日まで保管されてきたスチール写真のポジフィルム(リバーサルフィルム)約2000枚をデジタル化し、後世に残すべくアーカイヴするとともに、作品やヒーローたちに再び光を当てることを目指すプロジェクトです!


プロジェクトの内容

 

 本プロジェクトは、制作会社「ピー・プロダクション」(以下「ピープロ」)が手掛けた特撮テレビ番組のうち、『快傑ライオン丸』『風雲ライオン丸』『鉄人タイガーセブン』『電人ザボーガー』以上4作品のスチール写真のポジフィルム約2000枚分をデジタル化し、アーカイヴとして後世に残すことを目的としています。

 かつて子ども向け雑誌「冒険王」を出版し、ピープロ作品を掲載していた秋田書店で、上記4作品のスチール写真(いわゆる「特写スチール」)のポジフィルムが約2000枚、所有・保管されてきました。
 これらは雑誌掲載用として撮影され、残されたフィルムの状態も良く、非常に精細な形でキャラクターたちや撮影現場の様子が記録されています。
 ピープロ作品は残っている写真が決して多いわけではなく、これだけの量が発見されるのは今回が最初で最後の機会かもしれません。

 これらのフィルムは、昔日のヒーローたちを魅力的に写し取っているだけではなく、作品の撮影当時の状況を記録した大変貴重な資料でもあります。しかしフィルムは遠くない将来に劣化する運命にあり、後世に残していくにはスキャンによるデジタル化が急務です。
そうした作業に必要な資金を調達するために、本プロジェクトが始動しました。


アニメ特撮アーカイブ機構 ミニチュアプロップ修復師:原口智生さん
今回発見されたポジフィルムについて、それぞれの作品や当時の思い出、デジタル化の大切さを語っていただきました。


【フィルムや関連資料の保存、デジタル化の意義とは?】

 本プロジェクトでデジタル化を目指すピープロ特撮作品の現存する写真資料は、紙にプリントされたものではなく、カメラに収め、撮影後に現像されたフィルムそのものになります。
 今日における「写真」は、撮影機材がスマホであれカメラであれ、デジタルデータで保存されることが一般的です。
撮影された写真を扱う際も、画像のデータをオンラインや記録メディア上で受け渡したり、ディスプレイで確認したりすることが多くあります。
しかしそうしたデジタル環境が整う以前、写真はフィルムに記録・保存されていました。

 フィルムで記録された画像(あるいは映像)は、意外にも膨大な情報量を保持しています。適切な形でデジタル化することで、多様な形で活用することが可能となります。
 近年は、特に映像の分野で、フィルムで撮影された過去の作品を高解像度でデジタル化したり、レストア(修復)したりすることによって、よりハイスペックな形式で作品を鑑賞できるということも珍しくなくなってきました。
 特撮の分野で言えば4K版『ウルトラセブン』や「ゴジラ」、「大魔神」シリーズなどが挙げられますが、これらは大容量のデータ処理が可能になったデジタル技術の進歩だけではなく、元々フィルムに記録されていた色彩やディティールなどの多くの画像情報があってこそ実現したプロジェクトだと言えます。

 2010年代以降、日本ではアニメ・特撮分野における制作資料の保存や利活用を目指す活動が徐々に根付いてきました。
写真資料もまた、撮影現場の様子や作品の制作過程を分析・研究するための一級資料として位置づけられ、各作品の写真集も多く出版されてきています。
それらを可能にしたのも、貴重な写真資料が保存され、デジタル化されてきた成果です。

 しかしフィルムはその性質上、時間経過とともに物質が劣化し、記録情報が失われることが避けられません。高温多湿な場所など保存状況によっては変形したり、ガスやカビが発生してしまったり、最悪の場合は融解し、写っている画像そのものが消失してしまうこともあります。
 こうしたフィルム資料を保存するための早急な手段のひとつは、スキャンなどによるデジタル化です。これが実現すれば、仮にフィルムが劣化や火災などの事故によって物理的に喪失してしまったとしても、そのフィルムに残されていた情報自体は別の形で保存することができ、劣化を伴わない半永久的なアーカイヴも可能となります。

 また、仮にフィルムが劣化した状態のものであれば現物やデータ上でのレストア(修復や補正)作業が必要となり、これにはフィルムを取扱う技術や、その性質の知識が必須となります。
 数十年後にはロストテクノロジーともなりかねない職人技も、今ならばその灯は残っており、適切な作業を行えば撮影当時の情報を限りなく引き出すことも可能です。
 さらにこうしたフィルムによる写真資料を一般に公開する際にもデジタルデータは不可欠であり、これがなされることで写真資料は初めて自身に秘められた価値を発揮することができるのです。

ライオン丸、タイガージョー、タイガーセブン、大門豊、ザボーガー……日本特撮史にその名を刻んだ彼らの雄姿を、これらからの未来に残すために。どうか、皆様の力をお貸し下さい!


特撮美術監督:三池敏夫さん
作り手ならではの視点からポジフィルムをご覧いただき、未来に向けて残す活動の重要さについて語っていただきました。


【リターン品について】

ご支援いただいた皆様に、デジタルパンフレットをお届けします。
今回デジタル化するフィルムの内容から、多くの書籍/雑誌で執筆するタルカスの五十嵐浩司氏によるピープロ解説テキストなど、見ごたえある内容に仕上げたいと思っております。
内容については下記を予定しています。

~デジタルパンフレット掲載予定内容~
・今回のプロジェクトの経緯について
・ピープロ解説テキスト 執筆:五十嵐浩司(タルカス)
・各作品の紹介
・デジタル化したフィルムの画像を一部掲載
・Twitter投票にて一番人気を獲得したフィルムの画像
・スタッフ、関係者クレジット
・ご支援いただいた方々のお名前クレジット

ブロマイドコースでは、今回デジタル化したポジフィルムの中から、MonoMax「ビームス特撮部」連載中の久芳俊夫氏が16枚をセレクトしました。
また、その他のリターン品には「マンガート ビームス」とコラボして、フィルムをプリントしたTシャツやトートバッグ、さらにはブロマイドを作品ごとに収納して飾れるオリジナルのフォトアルバムをご用意しています。

【5月26日リターン追加】
私たちは「井上泰幸展」のアーカイヴ業務に参加し、まず膨大な資料のリストアップを行いました。
実際にスキャンをする前の、このリストアップ作業に膨大な時間を要しました。
今回のデジタル化でも、スキャン作業の前に全てのフィルムを調査し、リストを作成する必要があります。
このフィルム調査/リストアップ作業に参加できる権利を、新たなリターンとして追加します!
まずは、合計2000枚弱のフィルムに、一枚一枚通し番号を付与します。
(この通し番号がデジタル化した画像のファイル名になります)
次に、文献などを参考に写っているキャラクターや話数を特定し、リストに記載していきます。
この作業にご参加いただけるリターンは、限定20名様を募集します。
3~4名ほどに分かれていただき、東京都内のフィルム保管場所で複数回の調査を実施します。
資料でも特定のしにくい内容は、貴方の記憶が頼りになるかもしれません。

そして5名様限定のコースでは、実際にフィルムを保管している場所(東京都内)までお越しいただき、じっくりご覧いただきながら「あなただけの1枚」をブロマイドにできるコースとなっております。

【マンガート ビームスとは】

マンガやアニメのみならず、ゲーム、アイドル、演劇、テレビなど、ポップカルチャーやエンタテインメントを対象に、ものづくりやブランディングを幅広く手掛けるプロジェクト。ポップカルチャー全方位において、BEAMSが培ってきた独自の目線で編集する様々な企画で、アーティストやクリエイターが作品に込めた熱量や興奮を、広く発信していきます。


【資金の使い道】

・ポジフィルムスキャン(デジタル化)作業費…約70万円
・フィルム輸送費、調査費等…約90万円
・リターン品制作費、発送費等…約250万円
・CAMPFIRE手数料…約90万円


【今後のスケジュール】

2023年7月17日 募集終了
2023年9月中旬 デジタル化作業
2023年10月下旬 リターン品発送予定
2023年11月以降 デジタル化した画像の利活用を企画検討 


【本プロジェクトページをご覧いただいた皆様へのお願い】

このプロジェクトは、All-or-Nothing方式です。
期限内に目標金額を達成した場合にのみ、集まった金額がファンディングされます。
目標を達成しなかった場合、全てのご支援はキャンセル扱いとなり、デジタル化を実行することはできません。
フィルムの劣化や褪色が進む前にデジタル化する最後のチャンスです。
どうか皆さんのお力を貸してください!
※もし本企画にご賛同いただき、有意義なアクションだと感じていただけた方は、ぜひ周囲の方に本プロジェクトのことを広めていただけますと大変嬉しく思います。



「ピー・プロダクション」とは?

 戦後まもなくから1950年代にかけて人気漫画家として活躍したうしおそうじ(本名・鷺巣富雄)が、60年に設立した映像製作会社が「ピー・プロダクション(P-Production)」です。戦前は東宝に線画係として勤務した経歴のあるうしおは、ピープロをアニメ、実写、そして特撮と多ジャンルを股にかけて活動する制作会社に成長させました。

 60年代前半は、主に企業PR映画や劇映画の作画合成を請け負い、日本初の70ミリ映画『釈迦』(61)、巨匠・川島雄三の代表作『しとやかな獣』(62)などに参加しました。うしおにとって東宝時代の恩師である「特撮の神様」円谷英二からも依頼を受け、『キングコング対ゴジラ』(62)にも作画合成で協力しています。

 64年には、初の自社制作となるテレビアニメ『0戦はやと』を制作しました。同年にはうしおの旧知だった手塚治虫からの依頼を受けて、日本最初の本格連続テレビアニメ『鉄腕アトム』(63~64)の後半放送分を下請け制作しています。

 66年には、ピープロ初の特撮テレビ番組にして日本最初の連続カラー特撮番組でもある『マグマ大使』を制作し、初代『ウルトラマン』と共に第一次怪獣ブームを牽引しました。翌67年には『怪獣王子』の企画・特撮パートを担当し、自社でもパイロットフィルム『豹マン』『ゴケミドロ』などを企画・制作しました。『ゴケミドロ』は翌68年に松竹が『吸血鬼ゴケミドロ』として映画化し、特撮パートをピープロが担当しました。他にも『時代活劇シリーズ 風』でも特撮を担当しています。

 71年に特撮番組『宇宙猿人ゴリ』を制作しました。この作品は『宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン』『スペクトルマン』と改題しつつ人気を博し、『帰ってきたウルトラマン』『仮面ライダー』と共に第二次怪獣ブームや変身ブームを代表する作品となりました。

 翌72年、時代劇と特撮ヒーローを融合させた『快傑ライオン丸』を、翌73年には後番組として、西部劇要素も取り込んだ『風雲ライオン丸』を制作しました。さらに74年にかけて『鉄人タイガーセブン』を制作し、『豹マン』以来のネコ科をモチーフとした特撮ヒーロー作品を作り続けました。これらの作品はハードな作風や『快傑ライオン丸』に登場したタイガージョーをはじめとするキャラクター性、大河ドラマ的な要素を持ったドラマ性の高さなどが今日でも評価を受けています。

 74年には特撮番組『電人ザボーガー』を制作しました。人間とロボットのコンビをメインに据えて、アクション要素やメカニック描写が充実したヒーローアクション活劇を展開しています。この作品も玩具の売り上げなどが好調で、成功を収めました。そして75年に5分間の帯番組『冒険ロックバット』を制作しましたが、これを最後にピープロはテレビ番組の制作が途絶えました。

 80年に特撮作品『シルバージャガー』のパイロットフィルムを制作するも企画としては実現せず、以降はアトラクション運営を中心に活動を続けました。その後、2004年にうしおそうじが死去。06年には『快傑ライオン丸』のリメイクとして深夜特撮番組『ライオン丸G』が放送し、11年には『電人ザボーガー』が劇場用映画としてリメイクされて公開されました。ピープロは原作や企画、監修としてそれぞれに関わり、以降も作品の制作は行っていません。

 現在、ピープロ作品は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(21)、『シン・仮面ライダー』(23)などの庵野秀明が代表を務めている株式会社カラーが著作権を管理しています。そしてうしおの実子であり、「エヴァンゲリオン」シリーズなどで音楽を担当している音楽家・鷺巣詩郎が、現在のピープロの社長を務めています。


「冒険王」とは?

 1949年から83年にかけて秋田書店が発行していた漫画雑誌です。子ども向け漫画の連載で非常に人気を博し、70年代以降は変身ヒーローブームの時流に合わせて、特撮・アニメ作品の掲載もスタートしました。「仮面ライダー」シリーズやそのほかの東映作品、そして『スペクトルマン』や『快傑ライオン丸』をはじめとするピープロ作品など、多くの特撮作品が特集・紹介されました。映像を繰り返し視聴することが容易な現在と違い、当時のテレビ番組に関する情報は紙媒体以外に常時参照できるものがなく、こうした雑誌展開が特撮文化・子ども文化に与える影響は絶大でした。

 これらの特撮作品は漫画版も多く連載され、ピープロ作品では一峰大二による『宇宙猿人ゴリ(スペクトルマン)』『快傑ライオン丸』『風雲ライオン丸』『電人ザボーガー』などがありました。アニメ作品でも桜多吾作の作画による『マジンガーZ』などの「マジンガー」シリーズ、松本零士による『宇宙戦艦ヤマト』など、当時の話題作を広くカバーしていました。

 本プロジェクトでデジタル化を目指すピープロ特撮4作品のポジフィルムは、この「冒険王」に掲載するために撮影されたスチール写真です。「冒険王」自体は83年に誌名を「TVアニメマガジン」に変更後、翌84年に残念ながら休刊となりましたが、フィルムは保管されていたのです。


作品紹介
『快傑ライオン丸』

1972年4月1日~73年4月7日放送。全54話。

 戦国時代の日本で、妖術を操る「大魔王ゴースン」が日本征服を企む中、日本最高の忍者である果心居士は、その弟子である若き戦士・獅子丸に「金砂地の太刀」を授け、ゴースン打倒を託す。ゴースンの放った刺客によって果心居士は倒れるが、獅子丸は太刀の力で「忍法獅子変化」し、ライオン丸へと変身。迫りくる刺客たちを、同じ果心居士の弟子である沙織と小助と共に撃退し、ゴースンを倒すために戦う。

 『スペクトルマン』で人気を博したピープロが、その次回作として制作した特撮時代劇。うしおそうじが『豹マン』などで温めてきたネコ科ヒーローの最初の到達点がこのライオン丸である。その強烈なビジュアルと本格的な時代劇アクションの融合は、従来の特撮番組には無い圧倒的な個性となった。

 しかしこの作品最大の魅力は、なんといってもインパクト抜群のキャラクターたちであろう。主人公側のライオン丸に変身する獅子丸や沙織、小助といった人間のキャラクターもさることながら、悪役であるゴースン怪人たちの存在感は絶大だった。一見すると忘れられないビジュアルやモチーフの組み合わせ、それぞれ多彩な性格や信条を持つその豊かなキャラクター性は、今日の目線から見ても唯一無二の特長である。その決定版が、日本特撮史に残る名キャラクターである虎錠之介/タイガージョーだった。彼の登場をきっかけに、連続ドラマとしての精度も高まっていき、当時の特撮ヒーロー番組としては類を見ない見事な完成度のストーリーを展開した。

 本プロジェクトでも、多くのキャラクターたちを克明に写したスチールが多数発掘されている。完成映像における優れた構図を彷彿とさせるような画で撮られたものもあり、一枚の写真として美しい写真が多い。


『風雲ライオン丸』

1973年4月14日~73年9月29日放送。全25話。

 戦国時代、西日本の地下に潜伏するマントル一族は、日本征服を果たすべく各地で人々を襲っていた。若き忍者・弾獅子丸は、マントル一族に殺された兄の影之進の復讐を果たすべく、父から伝授された秘術・ロケット変身でライオン丸に変身。道中で出会った志乃・三吉の姉弟と共に、戦いと復讐の旅へと向かう。

 『快傑ライオン丸』のヒットを受けて後番組として制作された、2作目の「ライオン丸」。主人公である「弾」獅子丸は、前作の獅子丸とは別人という設定である。第9話に前作のライオン丸が登場し武器を授けたり、第11話からレギュラーキャラクターとして前作のライバルである虎錠之介/タイガージョーに酷似した弟の虎錠之進/タイガージョーJr.が登場したりと、『快傑』との繋がりも無くはないが、「精神的続編」といった表現が適切だろう。

 舞台設定など『快傑』と同様に時代劇としての要素は踏襲しつつも、近代兵器の登場や「ロケット」を使用した変身など、時代劇に囚われない自由なスタイルが特徴の作品だ。主題歌や、志乃と三吉の乗る幌馬車「ビックリ号」、獅子丸の着用するポンチョ、そして『快傑』以上に極めてハードな作風など、特にマカロニウエスタンの要素が色濃く注入されている。前作ほどの人気は得られず全25話で終了したが、容赦なく殺される登場人物や、獅子丸を襲う葛藤の数々、そして主人公の勝利に終わるもののビターな後味を残す結末など、ヒーローをとことん追い詰めた容赦のない展開の数々は忘れがたく、根強いファンも多い。

 残されたポジフィルムの数は特に膨大で、キャラクターの詳細のみならず、撮影の様子、殺陣の一部始終など多岐にわたる。


『鉄人タイガーセブン』

1973年10月6日~74年3月30日放送。全26話。

 サハラ砂漠で考古学調査を行っていた滝川博士。彼の息子である滝川剛は、ムー原人によって殺害されてしまう。父によって人工心臓SPを埋め込まれて甦り、お守りのペンダントを託された剛だったが、調査隊が封印を解いたムー原人たちの手によって今度は父を殺されてしまった。人類への復讐と地上制覇を企むムー原人に対し、剛はペンダントの力で鉄人タイガーセブンへと変身する力を身につけており、父の仇を討つためにムー原人と戦うことを決意する。剛を襲う過酷な戦いの火蓋が切って落とされた。

 3作目となったピープロのネコ科ヒーロー。今作は舞台を現代に移し、オートレーサーを目指していた主人公、タイガーセブンのまたがるオートバイ・スパーク号など、比較的キャッチーな設定で作られている。しかしこの作品の何よりの特徴は、前番組の『風雲』以上のハードなストーリー展開であろう。悪役のムー原人が醸し出す怪奇性も相まって、シリアスさで言えばピープロ特撮でも屈指の内容である。

 主人公の剛はタイガーセブンであることを支援者の高井戸博士以外に隠しているが、それによる不信や疑惑によって、特にレギュラーキャラクターの北川史郎とことあるごとに衝突。剛に好意を寄せる女性は原人に殺され、以降の剛は形見のスカーフを纏うことになる。他にも、これでもかと主人公を追い詰め、試す展開が連続する。第23話で、コールタール原人を発見し、変身のために剛がスパーク号から飛びあがったところ、無人のスパーク号が少年を轢いてしまう展開は今も語り草である。最終二部作の展開も驚きの一言である。

 ヒーローものの「お約束」を逆手に取り、ヒーロー自身の根幹をとことん揺さぶるストーリーの数々は、放送当時はそこまで人気は得られずに全26話で終了してしまったものの、現代の視点で見ても非常に挑戦的だ。ネコ科のビジュアルと共にハード路線を追求するピープロ特撮ヒーローは、この『タイガーセブン』で一つの到達点を迎えた。

 残されたポジフィルムには、第1話のアクションシーンやスパーク号の三面写真など貴重な資料写真が目白押し。また本編の撮影ではなく撮影会と思しき一幕を写した写真群には、NG版のギル太子のマスクなどが確認でき、完成映像とはまた違ったイメージの『タイガーセブン』を目のあたりにすることができる。


『電人ザボーガー』

1974年4月6日~75年9月28日放送。全52話。

 秘密刑事としての訓練を終えて日本に帰国した大門豊。彼の父はあらゆるものをサイボーグとして生き返らせる新エネルギー「ダイモニウム」を開発した大門博士だが、犯罪組織Σ(シグマ)団によって殺害されてしまった。怒りに燃える豊は、父によって体内に埋め込まれた電極回路の力と、父の残したロボット・電人ザボーガーによって、Σ団の繰り出すサイボーグやメカアニマルたちに立ち向かう。

 5分間の帯番組だった『冒険ロックバット』(75)を除くと、昭和期にピープロが制作した最後のテレビ特撮番組。制作協力に友映が入り、主要スタッフにも外部の人材が多く、それまでのピープロ作品と比べるとスタンダードなヒーロー作品の色も感じさせる作品である。第39話からは副題に「電人ザボーガー対恐竜軍団シリーズ」が付き、敵組織もΣ団に代わって恐竜軍団が登場、レギュラーキャラクターも一部交代した。

 主役が、人間の大門豊・ロボットのザボーガーのコンビであることがまず斬新である。豊は演じる山口暁の熱演がひときわ目立ち、空手アクションのダイナミックさは群を抜いている。ザボーガーもバイク形態であるマシーンザボーガーに変形したり、体の各所から小型メカを内蔵したりと個性抜群。「恐竜軍団」編以降は別のオートバイであるマシーン・バッハと合体しストロングザボーガーへと強化された。豊にとってはただのロボットを超えたまさに「相棒」で、人間に接するのと変わらない態度でザボーガーと共に戦い続けた。ザボーガーもどこか人間臭い身振りが可愛らしく、このコンビは絶大な魅力を誇っていた。

 もはや伝統ともいえるピープロ特撮の魅力ある悪役はこの『ザボーガー』でも健在で、多様なロボット・サイボーグが次々登場する。特にΣ団のレギュラーキャラクターであるミスボーグはこれまた演じる藤山律子の熱演が素晴らしく、インパクト絶大な退場劇もあって今もなお人気が高い。リメイク版の映画で、このミスボーグがヒロインとして据えられていたのも納得である。中盤から登場するライバルキャラクター・秋月玄も存在感のある名悪役で、孤児の少女によって悪の道から抜け出す結末など、驚きの展開も用意された。

 『ザボーガー』のポジフィルムは数こそやや少ないものの、Σ団の各キャラクターやロボット・サイボーグとの特写、ザボーガーのメカニックなど要所がばっちり写されている。そして何より、山口暁が演じる大門豊の、超人的生身アクションの数々も克明に記録されており、ファン必見である。

(文・馬場裕也)


本プロジェクトの実施に際し、もし当時「冒険王」で本作品の写真を撮影されたカメラマンの方がいらっしゃいましたら、「メッセージを送る」からご一報いただけますと幸いです。


©ピープロダクション

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