■はじめに・ご挨拶

皆さんこんにちは!北アルプス三俣山荘と水晶小屋を経営しております伊藤圭と申します。昨年は一昨年から進行中の伊藤新道復活プロジェクトに多大なご支援を頂きありがとうございました。お陰様で大きな進展がありましたが、プロジェクトが大きくまだ完成に至っておりません。今年も完成を目指して再びクラウドファンディングに挑戦します。応援よろしくお願いいたします!

■三俣山荘のご紹介

三俣⼭荘は北アルプスの最深部、三俣蓮華岳と⽇本百名⼭の鷲⽻岳との鞍部に建つ⼭⼩屋です。近くに黒部源流があり、展望⾷堂から望む槍ヶ岳の景⾊が有名で、サイフォンコー ヒーは36年前から名物です。当⼭⼩屋も2020年から続く新型コロナウイルスの影響で厳しい状況が続いていますが、この伊藤新道復活プロジェクトが、北アルプスに”密度の高い自然体験”ができる新しいプレイフィールドを創出するとともに、北アルプスの”持続可能な環境保全の在り方に役立つ仕組みづくり”の取り組みとなるプロジェクトと位置付けています。

■第1回クラウドファンディング

2022-05-31から2022-08-13の期間で実施した「【北アルプスのラストフロンティア】伊藤新道 復活プロジェクト」では、974人の皆様のご支援により、予想を遥かに上回る13,576,100円の資金を調達することができました。心より感謝申し上げます。

昨年度のクラウドファンディング

私たちの喜びも束の間…ここである事故が起きてしまいました。


■集中豪雨で第一吊り橋が大きく損壊、工期の遅れと資金不足に陥った本プロジェクト

昨年、本プロジェクトで掲げた目標は、第二吊り橋、第三吊り橋の架橋、ガンダム岩へのタラップの設置、30メートルの水平桟道の設置でしたが、2022年8月17日の記録的な集中豪雨で2021d年に架けた第一吊り橋が大きく破損するという事故に見舞われ、その修繕から工事開始となりました。改めて水位が5メートルも上がるという自然の脅威を思い知らされる良い機会となり、その後の吊り橋の架ける位置の見直し等につながりましたが、これによって工期の遅れと資金不足に陥り、水平桟道の設置が不可能になりました。

2022年8月18日の朝の集中豪雨で起きた鉄砲水により、2021年に架橋した第一吊り橋が損壊

■ご支援いただいた資金による成果

昨年皆様よりご支援いただいた資金によるプロジェクトの進行状況は以下の通りです。

1. 2022年8月17日に鉄砲水により損壊した第一吊り橋の補修  2022年9月16日

最大の増水を3メートルと見込んで架橋した第一吊り橋でしたが、8月17日に10年に一度の災害とはいえ4メートルほどの鉄砲水にあい、あえなく損壊。オリジナルの吊り橋が水面より7メートルに架かっていたことを思うと、当時の架橋が余程慎重な調査と予測に基づいたものだったことが偲ばれます。

踏板のレベルを限界まで上げて復旧しました。


2. 第二吊り橋(旧第三吊り橋)架橋 2022年10月1日~3日第一吊り橋の損壊を踏まえ、オリジナルより1m近く高い位置に架橋しました。素材も湯又渓谷一帯に浮遊する硫化水素による腐食を意識して、出来る限りステンレス製とし、美しい吊り橋となりました。真ん中から見下ろす激流は中々の迫力です。


3. 第三吊り橋(旧第五吊り橋) 2023年10月12日 、13日道中一の絶景を誇る硫黄尾根噴気地帯直近にある第三吊り橋ですが、やはり濃度の高い硫化水素に対して、ステンレスとドブ付けされたヒノキを使用し、揺れの少ない立派な吊り橋となりました。


4. ガンダム岩タラップ設置昨年重大事故が発生し、通過の仕方によっては危険の伴うガンダム岩にタラップを設置し、気を付けて通行すれば水量の多い日でも通過できるようになりました。


■今回の募集で実現したいこと

今年の本プロジェクトにおいての目標ですが「峠の茶屋」に避難小屋を建築することです。
この避難小屋は河川部から稜線にとりつく箇所にあり、工程全体の丁度半分に位置します。伊藤新道は全長10㎞と長く、またその工程の多くが渓谷の中であるため、もしもの時に通信出来ない場所も少なくありません。

それ故この避難小屋の必要性は

1.急激な増水や鉄砲水で河川部に入るのが危険な時の緊急避難
2.想定外の疲労やケガ等で三俣、湯俣への到着が困難となった時のビバーグ
3.山小屋から往復での登山道整備が困難な箇所での整備の拠点
4.登山道整備の資材置き場

です。この避難小屋が完成すれば、伊藤新道踏破のリスクが大幅に減少し晴れて「伊藤新道開通」といえます。


■避難小屋

伊藤新道の工程の丁度中間に位置する「峠の茶屋」に避難小屋を建築します。これによって増水時や鉄砲水が出たときの緊急避難、何らかの理由により上下の山小屋に到達できなくなった時のビバーグが可能になり、より安全に伊藤新道を利用することが出来るようになります。また山小屋から往復が困難な箇所の登山道整備の拠点としても利用します。

・板倉造り工法を採用した木造建築の建物
・高床式で資材や登山道整備用品を格納
・屋根には可能な限りソーラーパネルを設置し 自然再生可能エネルギーで電源確保


※支援額が施工費を上回った場合は太陽光パネルの設置費用に充てます。


■スラブ桟道について

昨年予定されていたスラブ桟道の設置は、第一吊り橋の損壊による工期遅れと資金不足のため実施できませんでした。そこで今年改めて、8月20日(日)の伊藤新道の正式開通に間に合うように設置工事を行いました。施工費用は弊社が負担し、合計¥3,960,000の費用が発生しました。今回のクラウドファンディングの主要な目的は避難小屋の設置ですが、皆様のご支援の一部をスラブ桟道の建設費用に充てさせていただくことも予定しております。

1956年の該当エリア|三俣山荘用材を運ぶ歩荷達



■スケジュール


2023年5月
・湯俣山荘今年度工事着工
・第一吊り橋までの登山道をさらに整備し、初心者でも吊り橋見学できるようにする

2023年7月
・水平桟道完成
・避難小屋着工
・稜線部登山道整備
・看板設置、マーキング

2023年8月
・伊藤新道本開通
・クラウドファンディング実施

2024年7月
・避難小屋完成


■応援者

高橋庄太郎

アウトドアライター 

僕が初めて伊藤新道を歩いたときの想い出が、三俣山荘で作っていただいたお弁当を“茶屋”と呼ばれる場所で味わったこと。実際には茶屋があるわけではなく、「茶屋がありそうだよね」「あったら便利だよね」という場所ですが、ともあれそこから眺める湯俣川が作り出す絶景がすばらしかった!
同時に、ここに茶屋ならぬ避難小屋があれば安全に伊藤新道に挑戦できるとも思っていましたが、とうとうこれから本格的にプロジェクトが始動するわけです。避難小屋なので気軽に泊まれるわけではありませんが、のんびりと風景を眺めながら休憩するのにも使えるでしょうし、スラブに水平桟道まで取り付けられれば、ますます伊藤新道の安全度が増していき、多くの人が通れるようになるはずです。これは絶対に実現させなければなりませんよ! 


上田瑠偉

プロ山岳アスリート 

昨年初めて伊藤新道を歩きましたが、これまで登ってきた山々とは違う絶景が広がっており、まさに「秘境」でした。地元・大町市の山にこんなに素晴らしい景色があることをより多くの人に知ってもらい、見てもらいたいというのが私の願いです。

このプロジェクトはそんな私の想いも実現してくれるプロジェクトです。私自身もこのプロジェクトの一助になればと思い、自身のブランド「Ruy」の売上の一部を伊藤新道復興のために寄付しています。皆さんの支援が自分たちが登る登山道を復活させると思うとワクワクしませんか?多くの支援を宜しくお願い致します。


■伊藤新道OPENING FESTIVAL ゆまキャン2023を開催

2023年8月19日(土)~20日(日)に高瀬渓谷湯俣にて「伊藤新道OPENING FESTIVAL ゆまキャン2023」を開催しました。アウトドアフィールドの未来を見据える、国内外のギアブランド、カリスマショップ、アスリートを迎えて実施した本イベントには、2日間で400人が参加し大盛況のうちに幕を閉じました。伊藤新道の本格開通を皆さんとお祝いできたことは私たちにとっても特別な瞬間だったように思います。

このフェスティバルの趣旨は、北アルプスのゲートウェイとしてだけではなく、気軽に訪れる事ができ、尚且つ温泉や原生林に囲まれた湯俣のアウトドアフィールドとしての可能性と、伊藤新道の遊び方を、変わりゆくアウトドアアクティビティの多様な目線から作り上げていく事にありましたが、フェスティバル後に伊藤新道に出発していくハイカーも多く、北アルプスに久しく現れなかった新しいフィールドの出現に多くの人が熱狂し、伊藤新道への期待値の高さを実感いたしました。



■伊藤新道について


まるでアドベンチャー映画のワンシーンを切り取ったかのような、
あなたの冒険心を掻き立てる、北アルプスの最後の秘境ルート

現代において北アルプスの「ラストフロンティア」と評される、この高瀬渓谷源流部の伊藤新道。
湯俣を起点する伊藤新道は、その自然と景観要素で「01.渓谷」「02.絶景」「03.原生林」「04.ハイキング」の4セクションで構成されています。

火山性ガスの硫黄な臭気の中、ときにはカモシカが命を落とし、見事な湯俣ブルーの渓流にはその温泉成分から魚も住んでいません。そんな美しき死の世界にも近い景色の中、繰り返す渡渉、ルートファインディング。現代では体験できない、冒険心と興奮があなたを待ち受けています。

伊藤新道の再開通+
あらゆる自然体験ができる類いまれなルートの実現

2023年現在、アウトドアアクティビティーの多様化、人々が自然に求める精神性もレジャー志向からより密度の高い自然体験へとシフトしてきています。伊藤新道の復活においては、その特異な景観、火山・温泉、原生林等を活かして、より冒険的で発見に満ちた自然体験ができるフィールド作りと、同時に利用者全員で保全できる仕組み作りを目指します。

新しい伊藤新道のコンセプト

1.    道自体の歴史や自然体験を楽しむことができるトレイル 
2.    ルートファインディングによるセクションがある
3.    環境インパクトを最小限にするため、工作物の設置を最小限にする
4.    沢歩き経験者以上か、ガイド付きのグレードとする
5.    管理者、利用者、行政全体で保全する

伊藤新道の整備方針

最低限の安全を確保しつつ、不安定な地質をクリアーして登山道の恒久化をめざすということはどういうことなのか、具体的に示したい。


1.オリジナルでは伊藤新道に5本あった吊り橋を、管理の利便性と最低限の安全確保の観点から3本に絞り込む

2.吊り橋以外の徒渉箇所や河原歩きに関しては、通行者のルートファインディングに任せる

3.河川部と稜線部の境界地点にある通称「茶屋」という場所に、徒渉困難時の緊急避難、および登山道整備の資材置き場として避難小屋を設置する

4.湯俣川の水量を観測するカメラを数カ所に設置し、湯俣山荘にてモニタリングし、三俣山荘と共有して登山者にアナウンス。通行可否の目安とする

5.伊藤新道の維持・管理、専属ガイドの教育、ツアーの斡旋を行なう団体を立ち上げる

 

一般登山道というよりは、バリエーションルートに近い冒険性を残した道としての復活となるが、専属ガイドを用意するなど、誰でも訪れられる可能性を残した仕組みを心がけている。

最後に

三俣山荘「山と人と街プロジェクト」

三俣山荘では、山と街が一体となり、双方向に刺激しあい、新しいトレイルカルチャーを創出し、経済的にも環境保全の面でも持続可能な文化圏をつくることを目的とした「北アルプス 山と人と街」プロジェクトを進行しています。伊藤新道の復活は大町、裏銀座エリアに人流を戻すメインコンテンツの一つとして位置づけられています。

□山と人と街プロジェクト
https://kumonodaira.net/project/index.html

大町トレイルタウン構想:三俣山荘図書室2022年1月には、町から山の玄関口でもある信濃大町に、山小屋の発信基地としてブックカフェ「三俣山荘図書室」をオープンし、アウトドアメーカーと協働でワークショップを開催しています。この夏には湯俣を舞台にしたツアーを企画し、「北アルプスの新しい遊び方」また、「環境に対してローインパクトなアウトドアアクティビティー」の在り方を模索新しい登山文化の可能性を模索しています。


□三俣山荘図書室
https://m-toshositu.com | インスタグラム

湯俣山荘の再興

 伊藤新道の廃道を追うようにして休業に追い込まれた湯俣山荘ですが、伊藤新道の復活における整備の拠点として、山と街をつなぐ新しいスタイルを提案する山小屋として現在再建中です。2023年8月のオープンを目指しています。

 また湯俣温泉エリアは、秘湯、噴湯丘をはじめとして、北アルプス各エリアへの多様なるアプローチ、各アウトドアアクティビティーの入門としても多くのポテンシャルを持っています。大町市、晴嵐荘と共働して新たなアウトドアフィールドとして光を当てていきます。

湯俣のポテンシャル

伊藤新道の起点である湯俣は、今までとは異なる北アルプスの歩き方、楽しみ方をもたらす、広大なポテンシャルを秘めています。

湯俣には、伊藤新道の他、北アルプスの裏銀座につながる竹村新道、槍ケ岳につながる宮田新道(現在休道中)があります。今後、宮田新道が復活すれば、北アルプスの大町エリアをフルに使った奥行きのあるトレイルコースを実現することが可能です。また、古地図には湯俣から燕岳に通じる登山道が掲載されています。





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