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プロジェクトオーナーの手数料の負担は一切なく、支援者さまからのご協力費(12%+税)により運営しています。

こんにちは。「Prison Arts Connections:刑務所アート展」を企画している風間勇助です。「刑務所とアート」という領域をテーマとする研究者で、また、こうした活動を推進する実践家です。

プロジェクト発起人の風間勇助

「刑務所アート展」は、全国各地の刑務所で服役する受刑者からアート作品を募集して企画展を開き、審査員および展示会場やWebギャラリーで作品を観た人のコメントを、応募した受刑者に返すことで、「壁」で隔てられた刑務所の内と外の交流をつくりだすプロジェクトです。


「第1回刑務所アート展」を2023年2月に初めて開催し、全国の受刑者から文芸作品を公募して展示したほか、2人の死刑囚の絵を展示しました。

第1回刑務所アート展の展示会場。テーブルにエッセイや詩などの投稿作品、壁面に絵画作品を飾っている

昨年度の開催概要 

*取材記事 「『刑務所アート展』3/5まで開催 受刑者52人が獄中から作品を応募」(弁護士JPニュース、2023.02.25) 


みなさんは、「刑務所」とはどんな場所だと思いますか?

「受刑者」と聞いて、いったいどのような人々をイメージしますか?


罪を犯し、法のもとに裁かれ、刑務所で服役する人たちは、もちろんその行為に対する償い・更生の責任を負うことになりますが、私たちと同じ一人の人間であり、刑務所に入るに至った経緯や背景もさまざまです。服役中の日々、どんなことを考え、誰に何を伝えたいと思い、どんな表現をするかも、もちろん、受刑者一人ひとり異なります。刑期を終えて出所した後にも、一人ひとり違った人生が待っています。


しかし、刑務所という、制度的・物理的な「壁」によって、また、罪を犯した人に対する差別や偏見といった心理的な「壁」によって、お互いの姿が見えにくくなっていると思います。


アートには、こうした「壁」を越えてさまざまな人々をつなぎ、司法の場やマスメディアとは異なる仕方で、犯罪やその回復をめぐるコミュニケーションを可能にする力があります。


一人ひとりの受刑者にとって、表現行為がどんな意味を持つのか。刑務所の中の表現環境とはどのようなものなのか。加害者家族・被害者家族はどのような思いを抱え、双方に現状どのような支援や課題があるのか。加害/被害を超えた対話の可能性はあるのか。単に受刑者の作品を集めて展示するだけではなく、作品の募集から展示に至るプロセスで、こうしたさまざまなテーマについて、当事者・支援者・研究者で対話を重ねてきました。


「刑務所アート展」の開催と、作品への応募を通して生まれるコミュニケーションが、受刑者にとっては社会とのつながりを感じる契機となり、塀の外にいる私たちにとっても、刑務所やそこに生きる人々について想像を巡らす機会になると考え、昨年度に続き第2回の展示を実現したいと思います。


今回、クラウドファンディングに挑戦するのは、以下3つの取り組みに必要な資金を集めるためです。


①2024年3月「第2回刑務所アート展」の開催  ②カタログやグッズ、Webギャラリーといった、展覧会会期に限定されない持続的なコミュニケーション媒体の制作  ③この活動を10年、20年と継続していくための運営基盤づくり(法人設立、事務局や寄付会員制度など)


目標金額は250万円。ぜひ、ご支援のほどお願いいたします。


以下では、なぜ刑務所という領域においてアートが重要なのか、国内外の事例と、これまでの活動の中で考えてきたことを通して、お伝えしたいと思います。


アートは再犯率を低下させる?

「第1回刑務所アート展」の展示風景

アメリカやヨーロッパでは、刑務所でアート・プログラムを行うことは珍しくなく、専門的な非営利組織も多くあります。


かの有名な刑務所映画の名作『ショーシャンクの空に』の主役であった俳優のティム・ロビンスは、実際の刑務所で演劇のワークショップを行う活動 「Actors’ Gang Prison Project」を行っています。再犯率の低下や違反行為の減少などの効果も指摘されています。


※参考記事:”名作「ショーシャンクの空に」には続きがあった!? ティム・ロビンスが仕掛ける社会貢献、刑務所ドラマの第二章とは?”(一般社団法人インプロ即興コメディ協会) 


アートプログラムが、再犯を防ぐ、犯罪からの離脱を促す効果があるといった実証研究は多く存在します。私も研究を進める中においては、刑務所にアートを持ち込む理由として、この「再犯防止」というのが説得材料になるだろうと思います。


刑務作業が必須でなくなる「新たな拘禁刑」が議論されている現在、日本でもアート・プログラムが教育として取り組まれる可能性はゼロではありません。実際、少年院においては情操教育として表現活動が行われる例は少なくありません。


しかし、それだけではなく、私はアートの「つなぐ」という役割についても考えてきました。


アートが、塀を越えた「対話」の媒介となる

私が今の活動のモデルにしているのは、イギリスの慈善団体Koestler Arts(ケストラー・アーツ)です。この団体は、Koestler Awardというイギリス全土の被収容者を対象とした大規模な公募展を毎年開催しています。英語ではありますが、字幕付きの紹介動画があります。



もう60年もの歴史があるのが驚きです。またその規模も大きく、毎年イギリス全土の3,500人以上の応募者から、7,000以上の作品のエントリーがあります。応募作品には、約100人の専門の審査員によって約2,000もの賞が授与され、イギリス最大の芸術センターであるサウスバンクセンターに展示されます。


Koestler Artsがこの取り組みにおいて重視しているのは、応募作品への「フィードバック」だといいます。日本でも行われている文芸作品コンクールは、受刑者から応募された作品に対して銅賞・銀賞・金賞という賞を用意し、受賞者には選評も送られているようですが、Koestler Artsは受賞作品に限らず応募作品の95%に対してフィードバックを返しています。表現は、誰かとのコミュニケーションとなって初めて意味をもつと考えているからです。


2010年には、犯罪の被害者グループが受刑者の作品をキュレーションして展示をつくるという取り組みも行われました。サウスバンクセンターの専門家によるレクチャーで、被害者の方にキュレーションを学んでもらい、展示をつくる作品を選定していきます。直接の加害/被害の関係性にある相手とは限りませんが、参加者が作品を選んでいる様子が以下の動画でも見られます。

この対話の場をもたらしていくこの過程が重要なのだろうと思います。



発表=コミュニケーションの機会がない日本の状況

日本でも、刑務所や拘置所にいる人が表現活動に取り組む環境はあります。参加できる受刑者は非常に限られるものの、クラブ活動の中には俳句クラブや短歌クラブ、吹奏楽クラブをもつ刑務所もあります。しかし、私がインタビューをした刑務官の方が課題に感じていたのは、発表の機会がなかなかないことでした。


裁判が始まった京都アニメーション事件の被告人の青葉真司も小説を書いていたといいます。そのことについて、犯罪学者の浜井浩一さんは次のように書いています。


”刑務所では同じ服で同じものを食べる。動作時限はすべて定められ、そこでは自由も自発的行動も許されません。人として尊重されていると思う機会はほとんどありません。日本の刑罰はそれを奪うことで反省を求めるのです。「ここに二度と戻りたいと思うな。ちゃんと懲りて反省しろ」との思想が染みついています。

今回の事件の被疑者はこうした環境下で、小説を書くことで自尊感情を維持し、自分自身を保とうと努力していたのかもしれません。それ自体はポジティブなことですが…。一般論ですが、拘禁状態の中で、ひとりで創作したものに関しては、「すごくいいモノを書いた」と思い込んでしまう傾向があります。”

「踏みとどまれる社会を」京アニ事件きっかけに考える 龍谷大教授インタビュー


拘禁状態のなか、日常においてもコミュニケーションが大きく制限される中で、ひとりでに表現活動に取り組むことは、精神の安定や自尊感情の維持に重要ですが、やはりそれが誰かに届いて反応が返ってくるという「コミュニケーション」につながらなければ、妄想がふくらむだけになってしまいます。コミュニケーション不全の状態で出所してきた人々を、社会にいる私たちとは異なる理解不可能な他者=犯罪者とみなして、孤立・孤独に追いつめることは、場合によっては再び罪を犯さざるを得ない状況へと追い込むことになります。


「第1回刑務所アート展」の展示風景。展示作品を読む来場者

   

やがては社会に復帰し、同じ社会で共に生きていく(すでに共に生きている)人々だからこそ、この社会で起こった犯罪や暴力、そこからの修復や回復に社会が向き合う場を、小さくてもつくっていくことを願い、このプロジェクトを進めています。


なぜ「刑務所アート」なのか?

「受刑者アート」(あるいはアウトサイダー・アート)ではなく「刑務所アート」と呼んでいるのも、社会における刑務所という場所、制度のもとで表現があることについて想像力をもちながら考えていくためです。


アメリカでは、受刑者の過剰収容や大量投獄を問うかたちで、刑務所アートの展覧会《Marking Time: Art in the Age of Mass Incarceration》がMoMA PS1で開かれました。その展覧会の紹介を、映画『プリズン・サークル』の監督としても知られる坂上香さんが記事を書いています。


”フリートウッドは、監獄アートは「アウトサイダーアート」と呼ばれることが多いが、実際にはその逆だと指摘する。「時を刻むということ 大量投獄時代におけるアート」展で展示された作品は、すべて刑罰制度と人々の関係に関わるものであり、アメリカ社会と投獄との関係を可視化していると。”

「回復/修復に向かう表現 美術館で語り合う大量投獄の時代」

坂上香・ドキュメンタリー映画監督


フリートウッドは、刑務所アートが人々の関係性のうえで成り立っていることを強調します。それは、受刑者とアートプログラムの講師との関係性や、作品の素材を手にいれるための刑務官との関係(交渉)、作品を家族にギフトとして贈るといった関係性や、彼らの作品が展示され人々の間で刑務所と社会の関係性が問い直されることも含まれます。


昨年度の第1回展示会でも、作品展示に加え、「刑務所アート」に関わる様々な法的・社会的制約について紹介しました(刑務所による検閲、使用できる道具の制限など)。


検閲印


「第1回刑務所アート展」の展示風景


「第1回刑務所アート展」の展示風景

私たちは、刑務所の中から届く表現を通して壁の向こうの人々を想像することができます。人は誰でも加害者にも被害者にもなり得て、誰かを傷つけてしまう経験、傷つけられる経験は大小問わずあると思います。その経験の先も人は生きていかなければなりません。そのとき、塀の向こうからの表現や、回復・修復を目指そうとする活動がこの社会に存在することの意味があると考えています。


昨年の活動、展示を振り返って
「第1回刑務所アート展」の展示風景


応募者の受刑者から届いた手紙

「私は日頃から短歌を集めたり詠んだりしているのですが、なかなか発表の場や周囲の人と語ることがないので、今回このような機会、場には嬉しく思います。…『大切な時間』というテーマでしたが、私は“過去”の大切な時間ばかりが思い出されました。今回の文芸コンクールを通して、私は服役している“今”と、これからも服役していく“未来”により向き合わなくてはならないと感じました。」


「社会でなかなか自己表現ができず(間違った表現ばかりでした)、自分がどうしたいのか、どう想っているのか、自分自身分からずに来ましたが、こうゆう機会があると、自分の感情が素直に作品に出るので、新しい自分にも出会えたりします。どうゆう評価が頂けるかわかりませんが、きっとやってみるのが大事なのだと改めて思いました。」


応募した受刑者のご家族からの手紙

「私は、応募者の母親です。現在収監されている息子に代わって応募作品を送付させていただきました。この企画をWebで知り、文章を書くことが好きな息子に勧めました。最初はあまり気乗りしていない素振りでしたが、ほどなく突然原稿が送られてきました。作品の説明を読んで、本当は最初から応募してみたいと思っていたのではないかと感じました。また、短時間の面会や手紙では、なかなか伺い知ることのできない、息子の前向きな本音を知る機会ともなり、本当に励まされました。息子同様、このような機会をいただけたことに、心より感謝申し上げます。」


対話の場に参加した出所者の方から

「元受刑者とかの当事者が集まるイベントで、アートの分野の人と関わる経験があまりなくて、どんなイベントかわからないままに楽しそうだったので参加したのですが、アーティストの人って何がいいかというと、自分ひとりで何かをやってそれが楽しいみたいな過ごし方ができるんですよね。自分にはそれが無いなと思って。自分はカトリックの信徒でもあり、お祈りなどもして心の平穏は得ているんですけど、最近はそれだけじゃ足りないなって思ったりしてて。

刑務所の人たちもそうですが、社会で相手にされずに落ち込んでも、自分一人で自分の機嫌がとれるような何かがあると、他の犯罪にいかないような気がしました。」


来場者の感想

来場者のアンケート。びっしり書き込んでくださいました


「時間をかけてつくっているのがよくわかる作品が多かった」


「(受刑者であることを感じさせない素朴さに対して)いったい何をして塀の向こうに行ってしまったのか、逆に気になる。」


「お人柄がそれぞれに表現されており、『そんなことがあったのか』『大変だったな』と、一人ひとりと会話をしているような気持ちで見ることができました。」 


「(受刑者は)思っていた以上に普通の人たちだなという印象と、思っていた以上に刑務所にはさまざまな制限がある環境であることを初めて知りました。」


「この展示を見るまでは、犯罪者というのは怖い存在だと思っていましたが、作品を見ていると心温まるものもありました。」 


「全体的に色鮮やかな作品が多いと感じました。もっと暗いイメージがありました。しかし、率直に感動できない戸惑いがあります。きっと犯罪者=悪という思いが拭えないからです。」    


被害者遺族の方からの感想

「自分も事故の直後は許せない気持ちでいっぱいでした。それでも時間が経ってくると少し変わってくる思いもあって...。加害者の相手はまだ刑務所にいるのですが、最近会ってみたいという気持ちが少しあったりします。他の家族は会うなんてまだ考えられない状況だと思うのですが、加害者や犯罪をした人がどういう気持ちでいるのか知りたくて展示に来てみて、たくさんいろんなものを知ることができて、本当に貴重な展示でした。」


受刑者たちの表現が、被害者の方を再び傷つけるのではないか。そのことは、社会からも起きうる反応であり、私も常に「こんな展覧会をやっても大丈夫なのかな」と不安を感じながら、考えてきました。


その中で、原田正治さんに出会いました。原田さんは、自身の弟さんを保険金目当てで殺害された被害者ご遺族の方です。加害者である長谷川敏彦さんと面会した経験を著書『弟を殺した彼と、僕。』(ポプラ社、2004年)に綴っています。長谷川敏彦さんが生前に原田さんに向けて送っていた絵を、この著書に書かれていたことや原田さんへのインタビューをもとに、前回の刑務所アート展において展示させてもらいました。

加害者との対話を望む被害者遺族の方もいる。それは、事件直後には難しいことでも、時間が経ってから、変わってくる思いや考えがある(実際、原田さんが長谷川さんに会うことになったのは事件から10年後です)。これは、司法の仕組みの中では扱うことのできないものです。


またそれは、マスコミが事件直後の過熱報道の中で固定化してしまう被害者遺族像とも異なります。そもそも、事件は個別に大きく異なるものであり、一括りにはできないものです。


表現やアートといった活動は、個別に異なるものに目を向け、長い時間の中で変わる思いや考えに丁寧に寄り添い、マスコミとは異なる方法で社会が一緒に向き合う場をもたらすと考えます。


第2回刑務所アート展の概要

作品テーマ:「私の大切な時間」または「日常」(&自由作品も可)

募集作品ジャンル:詩、短歌、俳句、川柳、小説、エッセイ、絵画、マンガ、書、フォント、その他(演劇の脚本やお笑いのコント台本など)

※刑務所内では、筆記用具や紙など、受刑者が使える道具も非常に限られており、そうした制約の中でも可能なジャンルを設定して募集しています。

募集期間:2023年8月〜2024年1月

展示会期:2024年3月22日(金)〜3月30日(土)の予定です

展示会場:東京都足立区北千住にあるギャラリー「BUoY」

2023年8月に作品募集の案内を出し、すでに70以上の作品が送られてきています。


作品の募集にあたっては、全国約800名の受刑者と文通を行うNPO法人マザーハウスをはじめ、当プロジェクトで繋がりのある支援団体の協力のもと、各地の刑務所に応募用紙をお送りしました。


各作品ジャンルで活躍されるアーティストの方々に審査員となっていただき、2024年2月に審査会を行う予定です。


受賞作品に限らず全ての応募作品を展示会場およびWebギャラリーに展示するほか、全作品を収録したカタログ、一部の作品を選定・デザインしたポストカード、マグカップ等のグッズを販売します。審査員および来場者のコメント・感想は、運営事務局で集計し、作品を応募した受刑者にフィードバックします。


支援金の使い道とリターンについて

今回のクラウドファンディングでは、目標金額を250万円に設定してご支援を集め、以下の目的に使用します。 


・第2回刑務所アート展の開催費(会場費、設営費、什器など)  ・作品カタログおよび投稿作品をデザインしたグッズの制作費  ・ギャラリー機能を備えたウェブサイトの制作費  ・3年目以降の持続可能な運営体制づくりのための諸経費(法人登記、寄付会員制度の立ち上げ、事務局・広報人件費など)  ・リターン制作・実施に伴う諸経費


支援金額に応じて、活動報告書の送付、オンライン、オフラインでの活動報告会へのご招待、カタログやグッズ送付などのリターンを設けております。 


 今回の挑戦に共感いただけた方は、ご無理のない範囲でけっこうですので、どうぞご支援をよろしくお願いいたします。 


※本プロジェクトはCAMPFIRE for Social Goodが適用され、支援額に別途手数料(12%+税)が加算されて引き落とされる形になります。こちらのページをご確認のうえ、ご支援いただければ幸いです。


運営メンバー

風間勇助

運営メンバー:風間勇助

<略歴>

1991年静岡生まれ。奈良県立大学地域創造学部講師。

東京藝術大学にてアートプロジェクトの実践を通したアートマネジメントを学び、卒業後に民間シンクタンクにおいて文化庁委託事業を中心とした調査研究業務に従事。退職後、東京大学大学院文化資源学研究室において、「刑務所と芸術」を研究テーマにアートマネジメントの観点から、刑務所(矯正施設)の内と外との対話の回路をどのようにつくっていくことができるのかについて研究と実践を重ねる。この社会で埋もれてしまうかもしれない小さな声に、どのように寄り添い社会に表現としてコミュニケーションを生み出せるのかを考えている。


鈴木悠平
運営メンバー:鈴木悠平

<略歴>

1987年生まれ。インターミディエイター®

東日本大震災後の地域コミュニティの回復と仕事づくり、学ぶことや働くことに障害のある人や家族を支援する企業での現場支援や研究開発、メディア運営等を経験したのち独立、2020年に株式会社閒を設立。医療的ケアニーズや重度障害のある人たち、罪を犯して刑務所に入った人や出所した人たち、精神疾患や依存症のある人たちなどのリカバリーや自立生活に向けた支援に携わりながら、「生活を創造する」知と実践の創出・展開に取り組む。

<このプロジェクトへの思い>

私もたくさん間違えてたくさん傷つけてきました。これからもまた間違うかもしれません。痛みと向き合い引き受ける責任が当事者一人ひとりにはあり、しかしその孤独な責任を果たすためには、他者と繋がり、対話することが、どうしても必要なのです。アートは、その矛盾を可能にする、か細い糸です。他の誰でもない自分自身の物語を懸命に紡ごうとしている、今にもちぎれそうで頼りない糸たちに、あなたの持っている糸をかけて、ほんのひととき、支えてくださいませんか。


大森かずえ

運営メンバー:大森かずえ

<略歴>

岡山生まれ。東京学芸大学、卒業。画号「大森かずえ」美術家として活動。

幼少期から、水墨画を描く母の影響を受け、毎日絵を描いて過ごす。

大学時代に自ら企画運営をし、積極的に個展やグループ展のディレクションをこなすが、24歳の頃、病気治療で記憶を消されて、2週間意識不明に陥る。また、後遺症で全身に麻痺が残り、一時は絵が全く描けなくなるが、とにかく描きたい一心でリハビリを経て、1枚の油絵を制作。その絵が第34回近美春季展にて大賞を受賞する(現在、病気は完治)。

現在は、制作活動と並行し、アート作品を生かすためのデザインやキュレーション、ディレクションも手がけるマルチプレイヤー。


<このプロジェクトへの思い>

昔から深く自分の探究に籠る性格だった為、他人との関わりに様々な疑問がありました。

自分の興味あること以外に興味のある人との交流を、極端に避けて生きてきた幼少時代を経て、人と想いを共有できる喜び、想いのすれ違いからの心の痛みを知り、少しずつ人間らしくなったような気がします。アートと向き合う意外に生きる意味を見出せなかった私は、それ故に多くの人を傷つけてきたと思います。

「ちゃんと想いを伝える」

そんな当然な事もコミュニケーションが取れないとできません。

刑務所アートは、現代の日本において異なるコミュニティで生きる人たちとの新しい形のコミュニケーションツールだと思います。

様々な社会通念や情報、問題があったとしても、アートは誰しもの心を覗き合うことを可能にするものだと、私は信じています。

心の交流に、ほんの少し力をお貸し頂けましたら、幸いです。


杉田曠機(すぎたこうき)運営メンバー:杉田曠機(すぎたこうき)

<略歴>

1983年3月宮崎県生。鹿児島大学工学部卒。在学中に、書道家としてそのキャリアを始め、国内外へ展開。世界的ブランドやホテル、アメリカの美術館、神社仏閣、大手企業へも作品やデザインを収めた。国際的な展示会やイベントにも多く出演。2013年のニューヨークでの個展以降、美術史をベースに模索。絵画や彫刻など、表現媒体に広がりを見せる。2023年にSUGRを立ち上げ、アートやクリエイション、テクノロジーを通じて、文化を探究している。

<このプロジェクトへの思い>

刑務所アートの取り組みを最初に聞いた際、とても意義のあるプロジェクトだと感じました。参画させていただけたことに心から感謝申し上げます。

私自身、学生時代から社会とアートの関係性に注目し、戦争や貧困、ジェンダーなどの社会問題のリサーチを行なっていました。紛争地帯では少年兵の問題もあり、子供の頃から人を殺すしかない環境で、それが当たり前として育った子たちもいます。

日本でも家庭環境や地域によっては、犯罪を犯してしまう人は少なからずいます。私たちが思っている以上に、物事の要因は複雑です。

刑務所アート展を通じて、彼らが紡ぐ作品とぜひ対話されてみてください。何を感じるのか。そのコミュニケーションから新たな観点が生まれることと思います。

「刑務所アート」が、日本でさらに認知され発展していくためにも、皆様のご協力が必要です。ぜひ、ご支援ください。


黒木萌(くろぎもえ)
運営メンバー:黒木萌(くろぎもえ)

<略歴>

大阪大学卒業。延岡市出身、在住。精神科訪問看護を運営する企業の広報チームの仕事や、地元の子育て支援センターで事務を担うほか、定時制高校で国語の講師をしている。また通信制大学で社会福祉士取得に向け勉強中。すべての人が「ありのまま」の自分を愛し、安心して暮らせる多彩でジェンダーギャップのない社会の実現をめざす一般社団法人「ハウリング」の理事も務める。

<このプロジェクトへの思い>

芸術家の父のもとに育ち、アートは幼いころから身近にありました。成長するにつれて、日常生活を送るなかでだれかを傷つけたりだれかに傷つけられたりすることがあり、少しずつ身近な加害や被害について考えるようになりました。だから刑務所もアートも、わたしの日常からそう遠くない地続きのものとしてあって、それなのに刑務所はわたしたち塀の外にいる人間からすると通常あまりにも遠い隔たったところです。

しかし塀の中にいる人たちも当然ながら生身の肉体と感情をもった人間です。人は人との対話を必要とします。他者とのコミュニケーションがあってこそ、感じ考え、自分を掘り下げ、他者を知り社会を知り、回復に向かっていったり日々を生きていったりすることができます。

このプロジェクトは、塀の外と内とで断絶されたコミュニケーションの回路をつなぎ直す営みだとわたしは考えています。その回路として、だれしもの側にアートがあったなら。たとえ塀の中にいて使える画材が限られていても。そうした制約の中から、いったいどんな作品が生まれてくるのでしょうか。それを通してわたしたちはどのようなコミュニケーションができるでしょうか。

みなさんにも共にこの試みを楽しんでもらえたら幸いです。


どうぞ、ご支援よろしくお願いいたします。


募集方式について

本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。

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