こんにちは。
早稲田祭野外演劇企画「enpou主催 並行ロミオとジュリエット」にて役者を務めている金森悠介と申します。
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現役早大生の舞台役者である竹内遼と、企画サークル「リンクス」元代表の新宅司がタッグを組み、野外演劇に初挑戦。
舞台は早稲田大学構内にある格式高い建物「早稲田演劇博物館」、通称エンパクである。一見、異色に見える彼ら二人がなぜ、タッグを組むことになったのか、そしてなぜ「enpou」を立ち上げ「並行 ロミオとジュリエット」という演目を上演するに至ったのか。
イチ役者である私は、純粋な興味本位として彼らに突然、「インタビューをしても良いだろうか」と申し出た。
本記事では、前編・後編の2回にわたり、竹内、新宅の二人へのインタビュー内容をお届けする。畑違いの二人の出会い、企画を通すまでの泥臭さ、彼ら二人が考える課題感とは。
早稲田祭野外演劇企画「enpou」第一回公演「並行 ロミオとジュリエット」に少しでも興味のある方、全然興味ない方、はたまた、偶然エンパクの前を通り掛かるであろうお客さんにも読んでいただきたい。
インタビュイー
竹内遼(enpou代表/脚本演出、写真左)、新宅司(enpou 総合制作プロデューサー、写真右)
インタビュアー
金森悠介(「家のカギ」所属/enpou 出演役者)
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シェイクスピア劇『コリオレイナス』で共演。性格の相反する二人が意気投合するまで
ーーenpouの稽古をこれまでやってきて、どんな心境かな?
竹内
本番2週間くらい前になり、ようやく全容が見えてきましたね。新宅と2人で最初作っていた時のイメージ像が想像通りになってきたという感じ。 そして、「この舞台、すごいものを作ってるなぁ」という高揚感みたいなのが、稽古をしている中で出てきて。それはとても良い手応えだなと。
新宅
最初は不安だった部分が大きかったよね。早稲田祭で、演劇をやる、しかも演劇博物館(以下、エンパク)を使うという。2人で1から企画を作るということも実は初めてだし。
ーー二人は、今回が初めましてなんだっけ?
新宅
いや、竹内とは今年1月に行ったシェイクスピア劇『コリオレイナス』という舞台で一緒に役者をやっていて。俺は元々役者というよりかは、所属していたリンクスという企画サークルでプロデューサーというか、代表として企画や組織を作るという立場だった 。その経験を竹内が買ってくれて「早稲田祭でイベントをやりたいと思っているんだけど新宅やらないか?」と誘ってくれた。タッグを組んだのはこれが初めてだから、その不安は凄かったねぇ。
ーー初めて会った時、お互いの第一印象はどうだった?
新宅
誇張なしで、竹内はめちゃめちゃうるさかった(笑)
オーディションの時もそうだったし稽古の時も。
竹内
騒いでいたんじゃないですよ(笑) 芝居がうるさかったんです。
僕はプロとしてやっているから、西川さん(文学座で演出家を務める西川信廣さん)という人に目をつけて頂きたいなと。ということは、この舞台を良いものにしないといけない。経験者が少ない現場の中で、どうやったら周りのモチベーションを上げることができるか、それが役者としてどう出来るかを考えた結果、まずは仲良くなることだなと。みんなが初めの頃周りの様子を伺っている時に、俺は本音を話しまくって自己開示をしたんです。 そうしたら周りの役者も安心して、自分を出してくれるようになった。
ーー意図してうるさくしていたんだね。竹内から見て新宅の印象は?
竹内
大人ぶっているという感じ。腹立つなぁと思っていた(笑)
ーー信頼をするようになったきっかけは、何があったのかな?
竹内
僕自身が役者としての悩みを持っていた時、稽古後に毎回飲み会に行っていたんです。それに新宅は毎回来てくれていて、知見のある新宅は親身に相談に乗ってくれた。
新宅
参加率高いのが俺と竹内だったんだよね。飲み会もそうだし準備とか諸々。 一緒にいる時間が長く、お互いに『コリオレイナス』という舞台にものすごく力を入れていたから、信頼し合うことができたんだと思う。
竹内
本番も含めて良い舞台だったと思っていて。カーテンコールがラスト2回あったんですよ。(カーテンコールが終わったら普通)1回ハケきるじゃないですか。そしたら、ハケた後も拍手が続いていて、やばい戻れ戻れみたいな。(笑) 全ステージ、満席ですごく反響がありました。
ーーなんで、そんなに良い舞台になったんだろうね。
新宅
もちろん演出家の西川さんの力あってこそというのもあるんだけど、それだけでもないなと。例えば、竹内は技量も高く、みんなのこともどんどん引っ張っていて。それを見て、俺も役者としての経験は浅かったけど頑張ろうと本気になれたし、それだけじゃなくて(自分が得意とする)制作面でできることは色々やった。小屋入り中、集合より早くに来て楽屋を片付けたり、小道具準備したりね。そうしたことが、結果的に座組の一体感を産んだのかもしれない。
ーーなるほどねえ。今のenpouのメンバーで、『コリオレイナス』で一緒だった人とかいるの?
新宅
瀬川(劇団木霊・瀬川花乃子)とか、久保井(S&D所属・久保井美呼)とか、中野寛太とか。制作でいうと、金井さん(プロデューサー補佐・金井ゆりか)と、山辺さん(アートワーク・山辺美帆)も。
ーー瀬川もなんだ。あの子、良いよね。声がめちゃくちゃ好き。
竹内
瀬川良いっすよね。僕も彼女の声、めっちゃ好き。
早稲田祭野外演劇企画「enpou」の立ち上げ経緯
新宅
まぁ、こんな感じのメンバーで『コリオレイナス』はやっていたんだよね。あれがお遊び程度で終わっていたら、こうはならなかったと思う。あの舞台がすごく良かったから、またやりたいよねという風になった。来年も、『コリオレイナス』の第三回公演の予定があるんだけど、その代表は俺がやる予定で。
それまでは暇だから、「何かないかなぁ」と思っていたら竹内から5月くらいに「早稲田祭で、演劇博物館(エンパク)の前で演劇がやりたい」とLINEで連絡が来た。
いやぁ、LINE 見た瞬間に、「これはできないだろ。面倒臭いことになる。」と思った。というのも、イベント事に関しては知識があるから、これはすごく面倒臭い作業があるだろうと見た瞬間にわかった。でも、ひとまずは竹内と話をすることにして。
それで、(enpouの参加者で、『コリオレイナス』にも参加していた)久保井の家で3人で話をすることに。「これをやれば、早稲田祭にてエンパクの前で演劇を上演することができるであろう」と思えるように、事前資料を3日で用意した。その上で「面倒臭いことになるだろうけど、やる?」と3人で話をした。結局やる方向で決まって、いろんな方法を活用してエンパク前のストリート部分を確保した。
ーー新宅の実行力、半端じゃないな...。
竹内
その後は、エンパクの担当者の方に直接会いに行って交渉しに行こうと。「企画書とかありますか?」と聞かれたから、「あ!あります。明日の朝までに送ります!」と言ったんです。まだ何もなかったんだけど。 その日は徹夜して、僕は脚本を1から書いて、一方で新宅は企画書を1から書いた(笑)。
新宅
役者20人の予定とか書いていたけど、その時はまだ誰も集まっていなかったんだよね。
本当にただ希望だけ並べて書いて出したんだけど、そのやる気に結構好印象をもらえて。その後もまぁ結構問題はあって(笑)。当然早稲田祭の運営とかとも色々と手続きは必要で、長い期間と労力をかけてなんとか正式な許可をとることができた。実のところそれも結構最近のことなんだよね。
ーーなるほどねぇ。作品内容はどうして、今の形になったのかな??
竹内
脚本は何回も書き直しました。
新宅
最初は、衣装とかで面白くしようとしていて。白塗りとか、和メイクにして歌舞伎っぽくやろうとしていたんだよね。
竹内
坪内逍遥が書いた『ロミオとジュリエット』の訳が、歌舞伎を感じたからね。視覚的に面白く表現する方が良いかなと当初は思っていたんだけど、自分としてもどこか納得のいかない部分もあって。
それで、早稲田祭で、エンパクを舞台にして『ロミオとジュリエット』をやる意味は何だろうと、もう一度考えてみることにしたんです。その中で気づいたのが、「早稲田祭の中で、演劇サークルの知名度は圧倒的に低い、特に広報面が弱い」ということ。
ここで少しでも演劇というものに興味を持ってもらえたら、 早稲田小劇場どらま館とかにも足を運んでもらえるんじゃないかと思ったんです。
ーー早稲田に「演劇」をもっと広めるために、その一歩として野外演劇をやりたいと思ったんだね。
竹内
そうですね。(新宅に向かって)何で、今のサークルの話との二重構造ってことになったんだっけ?
新宅
エンパクの舞台と、その前のストリートという二つの場所があることに対して、ちゃんと考えた。そこで、エンパクの舞台と、ストリートの前で別の話をやろうと。
竹内
あ、思い出したわ。早稲田祭運営実行委員会(通称 運スタ)とかと 、演劇サークルって、分断がすごいなと感じていて。演劇サークル自体も閉鎖的だし。もっと自由なはずなのに、それっておかしくないかと。そういうことに僕らが不満を持っているから、舞台を二重構造にして、コミュニティ自体の分断を視覚的に表現しないかという経緯があったんです。
新宅
それに加えて、一人二役という構造。これが、野外演劇でもお客さんに伝わるシンプルな面白さとして、担保できるんじゃないかと思った。それが決まってから、思い描いているものが全て表現できるとなり、企画がどんどん動き出して。竹内が思い描いているコミュニティからの脱却、コミュニティの崩壊とかのアイデアも全部うわっと出てきた。
竹内
それが『ロミオとジュリエット』のモンタギュー家とキャピュレット家の対立というものに左右されてしまった「ロミオ」と「ジュリエット」という、「コミュニティ」に重きをおいた新しい解釈をできるのではと思った。愛とか死ぬではない、別の解釈を提示できたんじゃないかと思っている。
新宅
あの時の興奮は凄まじいものだった。そこから脚本もどんどん走り出して。
まぁ、ここからがまた大変だったんだけどね(笑)
(【後編】に続く)
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◉日程
・11/3(土)
午前の部 10:20〜 午後の部 15:20〜
・11/4(日)
午前の部 10:00〜 午後の部 13:30〜
※公演時間は約30分強を予定しています。
◉会場
早稲田大学演劇博物館正面舞台および前スペース
◉チケット料金
無料
◉出演者
佐藤才哉
宮部大駿(早稲田大学演劇研究会所属)
小崎実希子
白詩佳
金森悠介(「家のカギ」所属)
西村創
中野寛太
久保井美呼(S&D所属)
山口海香(早稲田大学演劇研究会所属)
絹川鈴(早稲田大学演劇研究会所属)
杉本茉由
北原葵(早稲田大学演劇研究会所属)
石澤直(seiren musical project所属)
佐野芹奈(早稲田大学演劇研究会所属)
瀬川花乃子(劇団木霊所属)