西田卓司です。
2018年の研究テーマは、「場のチカラ」でした。
きっかけとして大きかったのは、「チームの力と場のチカラって違うんですか?」って聞いてくれた大学生の一言があったから。もともと、「場づくり」とかっていうキーワードには関心があったのですが。
10月に「場づくり」をタイトルにつけた大学内イベントには、20人以上の大学生がやってきて、「場づくり」はかなり関心の高いキーワードだなあと思いました。
この夏、(株)えぽっくが展開した「チームひきだし」と(公社)中越防災安全推進機構が展開する「にいがたイナカレッジ」で大学生との場づくりを経験してみて、考えたことがあります。
(株)えぽっく「チームひきだし」
にいがたイナカレッジ「集合研修」
場の構成要素は
1 誰とやるか
2 いつやるか
3 どこでやるか
であり、そこに
4 なぜやるか
5 誰のためにやるか
6 何をやるか
7 どのようにやるか
という項目が加わって(6w1h)、「プロジェクト」になるのだということです。
だから、「場のチカラ」を高めるために、チューニング(音合わせ)をしなければならない、というものです。
たとえば、ミーティングの時。会の冒頭にひとりひとりが名前を言い、「最近あったよかったこと」を言います。これは、ワークショップ用語で言えば、「チェックイン」と呼ばれます。「場の中に入る」ためにやるものだからです。
しかし、僕からすれば、これは「チェックイン」ではなく「チューニング」です。
「今日、この人はどんな音が出ているんだろう?」と確かめるためにやっているからです。
予想していなかったことを即興で考え、語る。これによって心が開く、場があたたまる。僕たちはそれを身体的に感じることができます。
1 誰とやるか
2 いつやるか
3 どこでやるか
は、場のチカラの構成要素として非常に重要です。
いま、どんなメンバーとやっているのか?
今日のメンバーの調子はどうなのか?
空間の設定はどうか?会議室より、カフェがいいんじゃないか?
とか、そういうことを考えたり、感じたりして、場のチカラを高めていきます。
その上で、ドラッカーの5つの質問に近いですが、
4 なぜやるか
5 誰のためにやるか
6 何をやるか
7 どのようにやるか
を決めていくことで、僕たちはチームになり、やることはプロジェクトになっていきます。
「続・ゆっくり、いそげ」(影山知明・クルミド出版)
年始に読んだこの本にも、「場が力を持つための5つの条件」が書かれていて、思わずうなりました。その中でも、「主(あるじ)の存在」というところが特にビビっと来ました。それは肩書ではなく、そういう役の人が場にとって必要なのだろうなと。
そして、この本の中に言及されている「場の思想」(清水博・東京大学出版会)を図書館で借り、いま読み進めているところです。
「場の思想」(清水博・東京大学出版会)
!!!って来るようなフレーズがたくさんあります。
その中から少し抜粋します。
~~~ここから引用
人間は即興的に舞台をつくり、その舞台で即興的に「演技」する生き物である。その演技がさらに新しい舞台を生成し、新しい舞台が新しい演技を誘うというように、役者と舞台が循環的に変化をしていくのである。
「構想力」とは、一口に言えば、未来に使われる生活劇場や舞台を想像し、それを設計する能力のことである。すなわち、それは未来への想像力と、場の設計能力(場づくりの能力)が結合した総合的能力といえよう。
人生の「戦略を立てる」とは、人生劇場にあって、未来の生活劇場の舞台を構想し、その構想を進めることである。これに対して生活の「戦術を立てる」とは、生活劇場にあって、その生活の舞台での即興劇の進め方を考えることである。
戦術を立てるときには、自己と場(現在の生活の舞台)は互いに非分離状態になっている。しかし戦略を立てるときには、場の外側に立って場を見ることが必要になるために、自己と場(未来の生活の舞台)とは互いに分離する。
戦略は新しさすなわち創造的であることが命である。もしも不完全なところがあっても、戦術レベルでそれを補うことができる。これにたいして戦術には新しさ(独創性)よりも完全さ(無誤謬性)が強く求められる。
~~~ここまで引用
うわーーーって。
ツルハシブックスの劇場のような本屋ってここから来たんじゃないか?と見入ってしまいます。
人生は即興劇で人と舞台が互いに影響し合いながら、循環的に変化していく。
「構想力」とは、未来を想像し、設計すること。
「戦略」を立てるときには、その場と分離しなければならないが、
「戦術」を建てるときにはそこと非分離(一体化)でなければならない。
おおお!それです、それです。
夏に考えていたのは、まさにそれ。アウトプットを出すのは、「場のチカラ」です。個人は場の中に溶けてしまえばいい。
そして一方で、戦略を立てるためには、場と自分を分離する必要があって、「顧客はだれか?」や「価値は何か?」そして「どんな未来を構想するのか?」を問いかけなければなりません。
それを両方とも可能にする「場」こそが
創造性にあふれた、いいアウトプットを出すのだと思います。
「それって本屋じゃないか?」
最近の僕の弱点は、こういう場の構想を聞くと、それは本屋じゃないか?って思ってしまうことです。
※
クルミドコーヒー影山さんは、当然、それはカフェじゃないか?って思うようです。それはそうですよね。
本屋という「舞台」に溶けて、場の構成員としての役を演じ切る。そこから生まれてくる「ドラマ」がある。それがアウトプットにつながっていく。
一方で、時には、「舞台」を離れ、舞台を社会や時代といった観点からも見つめなおして、未来を構想する、そのために本が並んでいるのし、本を読むのではないかと思います。
「構想力」と「場のチカラ」を繰り返し、「いま」が「未来」になっていく。
そんな空間を日々、生み出せたら、毎日が楽しいなあと思います。