西田卓司です。
「奇跡の本屋をつくりたい~くすみ書房のオヤジが残したもの」(久住邦晴・ミシマ社)を読みました。
「くすみ書房」という伝説の本屋が札幌にあるっていうのは知っていたんですが。。。「なぜだ?売れない文庫フェア」や「本屋のオヤジのおせっかい」フェアのことも雑誌で読んで知っていたのですが。。。2017年に亡くなられていたなんて。。。
昨日の夕方、ウチノ食堂藤蔵内のAPARTMENT BOOKSに「かえるライブラリー」の隣で出店している新刊書店の「BooKs 風見鶏」さんから購入した「奇跡の本屋をつくりたい」
いつもの大人のホットチョコレート(名前変わった?)を飲みながら読み始めたら止まらなくなって、今朝、読み終わりました。
なんだろう。
このジーンと胸の奥が熱い感じ。
受け取ったタスキがてのひらの上に載っかってる感じ。
「本」「本屋」をキーワードにする者にとって、「駅伝のタスキ」みたいな1冊でした。
久住さん、おれ、奇跡の本屋をつくります!
って宣言したくなるような、
そんな1冊。
「かえるライブラリー」を始める人、「本」をキーワードに何かやりたい人は手に取って読んでいただきたい1冊です。
本書の中で、久住さんの人柄を表す一節があります。(中島孝志さんの解説の中に収録)
~~~ここから引用
「苦しくて、袋小路に入り込んだとき、
本を読むことで心の間口が広がったことが、人生には何度もあった。
大きな海に出るような本との出会いを、地域の大人として何とか応援したい」
~~~ここまで引用
2006年11月20日付の北海道新聞(札幌市内版)。当時いじめ自殺が頻発したことを受けて、久住さんが考えた「本屋のオヤジのおせっかい 君たちを守りたい」という企画の記事。
久住さんは「本屋のオヤジ」だ。
「本屋のオヤジ」でしかない。
そして、できることは、
本を並べるという小さな「おせっかい」でしかない。
あまりにも無力だ。
でも、無力というのは、何もしないということではない。
「本屋のオヤジ」というポジションで、小さな「おせっかい」をする。
それが久住さんの美しさだと思いました。
「かえるライブラリー」や「暗やみ本屋ハックツ」に本を託す。
その行為は本当に無力だ。
届くか届かないか分からない。
紙切れにメッセージを書いて、ビンに入れて、海に流すようなものだ。
それを僕は、
「本屋のオヤジじゃなくても、できるような仕組みをつくりたい」
そう思っています。
「暗やみ本屋ハックツ」の前身であるツルハシブックスの「地下古本コーナーHAKKUTSU」のきっかけは、2002年に不登校の中学3年生の男の子との出会いでした。
お母さんに家庭教師を頼まれたのですが、ずいぶんとおとなしく、話をしない子で、コミュニケーションが取れるか不安でした。
勉強は遅れに遅れていて、受験が迫っていたので、毎日、家に来てもらうようになりました。(当時僕は一軒家にひとりで住んでいました)
すると、だんだんと彼の表情がやわらかくなり、話をするようになってきたのでした。
不思議でした。
僕はその当時、勤めていた地ビール屋さんを退職して、無職だったのです。
「どうして無職の兄ちゃんに、この子は心を開くんだろう?もっと立派な大人が周りにたくさんいるだろう」
そんな問いが生まれました。
いまでもその問いを考えています。
ハックツの仕組みは、その9年後の2011年に思いつきました。しかし、それを思い出したのは、ハックツがオープンして1年が過ぎ、さまざまなメディアに取り上げられるようになってからでした。
「なぜ、このハックツをやろうと思ったのか?」
メディアは「なぜ?」が好きです。ストーリーを知りたいから。
地下室があって、ドラクエ世代だった僕は、地下には宝物があるって思っていたので、宝探しをするような本屋ができないか、と思って。と答えていたのですが、あるとき、気が付きました。
「そういえば、僕、10年前に家庭教師していたとき、地域のいろんな大人と中学生が出会える仕組みがあったらいいのにって思ってました」
つながった瞬間でした。
まあでも、それも、平たく言えば、「本屋のオヤジのおせっかい」なんだなと思います。
「おせっかい」にあふれた本棚、素敵じゃないか。そんな本棚をつくりたいと今も思います。
本屋は無力です。
しかし、僕らはそこに思いを込めることができます。
手紙を託すことができます。
無力だけど美しいと僕は思います。
そんな行為に美しさを感じられる人たちと、一緒に本棚をつくれたら、と強く思います。
あなたも小さな「おせっかい」を始めませんか?