みなさまジュレー!
ジュレー・ラダック代表のスカルマ・ギュルメットです。
この度は多くの方々からクラウドファンディングにご協力いただき、本当にありがとうございました。
明日でプロジェクトは終わってしまいますが、ラダック人の私からこのプロジェクトへの想いとみなさまへの感謝の気持ちを書きたいと思います。ご一読いただけましたら幸いです。
目まぐるしい変化の中にあるラダックでローカリゼーションを促進したい
ラダックはヒマラヤ山脈に囲まれた地域であるため、1970年代に観光地として開かれるまで、その存在すら知られていない場所でした。ラダックの伝統的な暮らしは自給自足的で、環境に優しく、持続可能な暮らしでした。しかし、70年代に観光開発が始まってからラダックは猛烈なスピードで近代化を迎えます。たった30・40年の間にラダックは大きく変わってしまったのです。
世界中どこでもそうですが、現金になる仕事は中心地の都市に集中する傾向があります。ラダックも例外ではなく、今では男性の若者たちが仕事を求めて中心地のレーに移住し、村にはお年寄りと女性と子どもと家畜しかいないようか状況になりつつあります。
今の農村部に住む人々を含め、ラダックの人びとにとって、畑を持って作物を作ることよりもお金があることの方が価値が高いのです。その結果、ラダックでこれまでは考えられなかった貧富の差も始まりつつあります。そして、お金を稼がなくてはいけないというプレッシャーを感じている人たちが増えているのです。
教育の影響も大きいと感じています。子どもたちは学校でラダックの伝統や地域のことではなく、デリーやムンバイなどの大都市に暮らす子どもたちと同じようなことを学びます。そのため、学校での学びは生活に直結せず、教育を受けた子供たちは、直接お金につながらない畑仕事などの村の仕事を嫌がります。皮肉なことですが、教育を受けることで、目先の利益だけを追求するような人間になってしまうのです。
ラダックの中心地レーのマーケットに並ぶものを見てもラダックの変化に気づくことができます。置かれているものは、ラダックで作られたものではなく、そのほとんどがインドや中国、さらにはヨーロッパやアメリカなど何千キロも離れた遠い場所から運ばれてきたものばかりです。こうしたビジネスの展開はますます観光業とローカルな経済を遠ざけます。
たとえ、一番近いインドから運ばれたものであっても、誰が作り、どのように運ばれてきたのかわからなくなっています。自分が食べるもの、着るものがどのように作られたのか、そのプロセスがわからない状況はますます深刻になっています。
こうしたことは人々の健康にも影響します。昔、ラダックにはアレルギーというものがありませんでした。しかし、近年アレルギーを抱えている人たちが増えています。それはラダックの外から運ばれてくるものに含まれる科学的な物質の影響ではないかと考えられます。
目の前の利益を求めてラダックの中心地レーでは観光に関連するビジネスを展開する人たちが増えています。自分の利益を求めるあまり、知らず知らずのうちにラダックの美しい自然や文化を損なってしまっていることにさえ気づくことができないでいるのです。
こうした状況の中で、ラダックのローカルな経済の促進は今まさに必要とされています。ラダックの村に今も残る、持続可能な暮らしや伝統文化はなんとしてでも守らなくてはなりません。今、その価値を見直さなければ、あっという間にグローバル経済の大きな流れに呑み込まれ永遠になくなってしまうでしょう。
ラダックの平和で環境に優しい社会を未来に残すためにローカリゼーションは必要なのです。
私の願いはラダックの伝統的な文化や暮らしがいつまでもこの地球上に残っていてほしいということなのです。
バランスの良い開発のあり方を考える拠点に
いくらラダックの伝統的な暮らしが価値の高いものであったとしても、今のラダックが昔の伝統的な暮らしに100%後戻りすることは不可能です。それに、私も他のラダックの人々もより良い未来を求めていますが、ラダックが完全に昔の姿に戻ることを望んでいるわけではありません。
だからこそ、私たちはバランスのとれた発展のあり方を考えなくてはならないのです。
現在の近代化は極端な形で進んでおり、伝統か開発かの二者択一を迫られているような状況です。近代的な暮らしも、伝統的な暮らしも同等に良い点と悪い点があります。どちらかではなく、それらのバランスを考えることが必要なのです。
今回のプロジェクトである、WALのショップやレストランの建設は、ラダックにおいてバランスの良い開発のあり方を考える拠点になります。ラダックの伝統的な暮らしや文化は失われつつあります。それを保存する場所として、ラダックに伝統的な暮らしを選ぶ選択肢を残したいのです。
伝統文化の保存や持続可能な社会の実現、オーガニック化などさまざまな活動を行っているWALはラダックの中で影響力のある団体です。そのような団体が運営するショップとレストランは今まさに、ラダックに必要なものなのです。
みなさまへ
この度、本プロジェクトにこのようにたくさんのみなさまにご協力いただき、本当に心から感謝しております。みなさまよりいただきましたご支援は、ラダックの持続可能なローカル経済の基盤となります。みなさまと一緒にラダックのローカリゼーションに向けた種を蒔くことができたことを私はとても幸せに思っています。
ショップとカフェレストランの実現に向けて今後も頑張って参りますので引き続きご協力をお願い致します。
ジュレー!
スカルマ・ギュルメット