表紙であっても本文であっても
文章に添えられた絵は
意味や価値をもってしまいます。
「本から生まれるものは愛」の
最初の表紙案はこのようなものでした。
絵柄にあるダンスとハートは
強い意味とメッセージをもっています。
それらは男女の愛を謳い
ダンスをすることで
その喜びと永遠性が祝福される
多くの人はこのように解釈するはずです。
実際この絵は本文の情景でもありました。
最後のシーンの結婚式で
若い男女がこのように踊るのです。
結婚式シーンの描写としては
決して悪くはありません。
しかし「本から生まれるものは愛」の愛は
ハートやダンスで表現できるものなのか。
私たちの疑問はここにありました。
この躊躇は絵本を作るときに
常に私たちの頭を悩ますものです。
愛のような抽象的な概念も
だれにでもわかるように表現するには
具体的な事物(ハート・ダンス)の助けを
借りなければなりません。
しかし具体的な事物は
地上的な意味や価値をもってしまい
愛の抽象性(天上性)が損なわれるという
矛盾に私たちは直面せざるを得ないのです。
私たちはせめてハートを捨て
別の方法で抽象度をもつ愛を
表現できる方法を探すことにしたのです。
木田 拓雄