こんにちは!
デフフットサル女子日本代表のキャプテンをやらせていただいております岩渕亜依と申します。
この度は、閲覧いただきありがとうございます!
すでに10万人ほどに拡散され、改めてフットサル界のパワーを感じています。10万人、、、みなさまのご協力がなければ成し得なかった数字だと思います。
自分が所属している健聴チームにも、自分がクラファンのことを伝える前に伝わっており、びっくりしました。
本当にありがとうございます。
まだまだたくさんの方に知ってもらいたい。
改めまして、デフフットサルとは。
拙い文章ですが、最後までお付き合いいただけますと幸いです。
【デフフットサル】
デフフットサルとは、「デフ」と「フットサル」を組み合わせた言葉です。
デフ(Deaf)とは、ろう者のことを指す言葉です。
フットサル(Futsal)とは、いわゆる室内サッカーである南米の「サロンフットボール」または英国の「インドアサッカー」を起源とする、基本的には室内で行われる、サッカーに似た競技である。長らく非公式に行われ統一ルールが存在しなかったが、1989年にフットサルも国際サッカー連盟(FIFA)の所管となり、1994年には世界共通の統一ルールをまとめた。(引用:Wikipediaより)
日本におけるフットサル競技人口は、2015年時点で150万人だそうです。(レジャー白書(公益財団法人 日本生産性本部)調べ)
うち、デフサッカー・デフフットサルの競技人口は約200人と言われています。
フットサルのことは『(一般的な)サッカーの小さい版』と簡易的に説明することが多いです。フットサルの場合は、キーパーを入れて5人×2チームから成り立ち、また使用しているボールもサッカーとは異なります。サッカーボールより一回り小さく、重く、弾みにくいです。また、ボールがラインから出たあと再びプレーを始める時、サッカーはスローイン(両手で上からボールを投げ入れる)ですが、フットサルの場合はキックイン(ライン上にボールを置き、蹴り入れる)です。その他にも細かなルールの違いが存在します。
最近はフットサルの流行により目にする機会も多くなったかと思いますが、基本的には室内(体育館など)で行われるスポーツです。
デフ(耳が聞こえない人)がやっているフットサルのことを、デフフットサルといいます。
【デフフットサルと通常のフットサルの違い】
競技上のルールは通常のフットサルとほぼ同じです。
《異なる点》
▪審判は笛とフラッグを併用
▪選手は全員補聴器を外してプレーしなければならない
上記2点のみです。
あまり変わらないことが分かるかと思います。
(↑選手の後ろにいる審判はフラッグを持っています)
ですが。ルールこそほとんど変わりませんが、聴覚で得られる情報が全くないので、選手は視覚的情報のみでのプレーを強いられます。そういった中での対応は通常のフットサルとは大きく変わってきます。
▪相手や味方が走る音が聞こえない
人の気配を感じるのは音が出ているからだと言われています。通常のフットサルでは、その走る音で自分の近くに人がいるのかはたまた遠くにいるのか、見なくても分かるそうです。自分がボールを持っている時に相手が寄せてくるのか何も来ないのか。その判断がろう者は難しいです。
▪聞こえないときの呼ぶ方法
ろう者はピッチ上では全く聞こえません。
ではどうやって呼ぶか?
それは、床ドンドンです。床を強く踏み鳴らします。
ストレッチしているとき。次いくよ!の合図は床ドンドン。
選手が小範囲に点在している状況で集合してほしいとき。集まって!の合図も床ドンドン。
ユニアオカップの時はアップ場が一室で、他のチームも一緒だったので驚かせてしまいました。
その節はすみませんでした笑。
円陣の時も掛け声は床ドンです。
振動から一体感を高め、試合に臨みます。
▪大きなボディランゲージ
視覚的情報が全てになるため、できるだけ視野に入るように大きく身振りをしたり、少しでも視野に入るように移動して位置と角度を変えたりします。
▪後ろから(だけでなく周囲)の声が聞こえない
通常のフットサルでは、声によるやり取りが頻繁に行われています。強いチームは声を積極的に出し、連携プレーを図っています。スポーツをやったことがある方は、声の重要さ、ご存知だと思います。
例えば、交代を呼ぶ。
例えば、守備時の『◯番見てるよ!』
例えば、攻撃時の『後ろいるよ!(パスできるよ!)』
その他にもたくさんのやり取りがピッチ上では行われています。
が、デフフットサルでは選手全員が何も聞こえません。呼んでももちろん聞こえません。
目が合った時。交代してベンチに下がった時。
このぐらいです。がっつりコミュニケーションが取れるのは。
そして自分が見ていても相手が見てくれていなかったらコミュニケーションは成り立ちません。かといって、いちいちその人のところまで肩をたたきに行ってたらたちまち攻められてしまいます。
いかに試合中首を振りながらボールを見続けながら自分のマーク(相手)を見続けながら味方と目を合わせて連携を図ることが、難しくて重要なことがお分かりいただけましたでしょうか。
アイコンタクトが大事だと言われる所以です。
(過去にデフサッカーをテーマとした『アイコンタクト』という映画や本が出ていますので、興味のある方は是非 笑)
▪中でのコミュニケーションの工夫
それでもどうしてもコミュニケーションを取らないといけないシーンもあります。
そんな時には床ドンして呼んだり、ボールがピッチから出た瞬間に駆け寄って少し話したり、ベンチに伝言をお願いしたりなど様々な工夫をしています。
1番はやはり首を振ることで、目が会うたびに「大丈夫?」とか、「見てるよ」とかまめに確認し合うことでできるだけズレをなくそうと努力しています。
声での指示ができない分チームメンバーでのイメージの共有がかなり難しく、もどかしい思いもたくさんしますが、その分ドンピシャなプレーができたときの嬉しさはもう爆発して喜びの舞です。
【選手たちの日常】
デフフットサル選手は北海道から沖縄まで全国各地で活動しています。普段はその地域の健聴チームに入り錬磨しながら1〜2ヶ月に1度の合宿で代表顔合わせをしています。合宿は土日に1泊(もしくは2泊)で全国各地で行われ、その地域で活動しているチームにお願いをし練習試合をさせていただいたり、その修正点を練習したりなど貴重な時間を過ごしています。
これだけでは足りないと、さらに関東メンバーでは個人でも集まれる日を合わせてできるだけ安いところを探して自主練したりしています。
自分たちにできることを、できるだけ。
【デフフットサル選手の現状】
何回か拡散していただけていますが、デフフットサル日本代表活動にかかる費用はほぼ自己負担となっています。宿泊、施設費ももちろんですが移動費も。一時期は助成金のおかげで一部負担でしたが、現在は全額自己負担となっています。
もっと集まってコミュニケーションを取りたい。
集まるためにはお金がかかる。
お金がかかるといずれは圧迫され国際大会・合宿を辞退せざるを得なくなる。(実際そんな人がいます)
やりたいのにできない。
そんなジレンマを抱えながら生活をやりくりしてなんとか集まっているのが現状です。
めちゃくちゃ大変ですよね。
それでもやる理由は何か。
世界一を獲りたいから。
でも自分たちの力じゃなんとか捻出するしかどうしようもなくて、だからみなさんのチカラが必要なんです。
【デフフットサルの歴史】
今回のデフフットサルW杯は第4回目の開催となります。
2007年 第1回 ブルガリア
2011年 第2回 スウェーデン
2015年 第3回 タイ
2019年 第4回 スイス
日本は男女ともにスウェーデン大会から出場しています。
(自分は3回目のタイ大会から出場しています。)
デフリンピック(デフのオリンピック)は歴史が長いのですが、デフフットサルW杯の歴史は意外と短いです。(何せ通常フットサルでさえ1994年に世界共通の統一ルールができるぐらいです)
ちなみに、通常のフットサルのW杯は1989年から開催されており、2020年に第9回目が行われます。
先に出ましたが、デフリンピックというのはご存知でしょうか。
デフリンピックとは、デフのオリンピックです。実は、パラリンピックよりも歴史が古いです。
パラリンピックには、デフの競技がないんです。
デフのみで成り立っているデフリンピックがある。
フットサル競技は、デフリンピック種目には追加されていません。
つまり、デフフットサル競技で世界一を決めるのはW杯のみで、W杯こそが世界最大のイベントなのです。
【2015年デフフットサルW杯】
2015年、第3回デフフットサルW杯がタイで行われました。
私自身は初出場で、世界のフットサルがどういうものかあまりよく分かっていませんでした。
前々大会のスウェーデンW杯では、12カ国中9位。
予選リーグ敗退。
監督はメダルを目指すと合宿中に何度も言っていましたが、正直そのイメージが湧ききっていませんでした。
そんな中迎えたグループリーグ初戦。
相手はロシア。
0-3で敗戦を喫する。
山本監督はいつも通り落ち着いて選手に話をしてくれました。
そして迎えたスペイン戦。
グループからは上位2チームが決勝トーナメントへ行ける。
すでに2勝していたロシアは決勝トーナメントへ。
勝てば決勝トーナメント、引き分けもしくは負ければ予選リーグ敗退。
そんな崖っぷちな戦いの中、4-3で逆転勝利。
チームメイト全員が泣きました。
そして迎えた準々決勝。
相手はイタリアでした。
結果は3-3でPK
PK(1-3)で負けました。
私は最後のキッカーで、外しました。
その後のことは正直あまり覚えていません。
もしこれに勝っていれば。
たらればなんてキリがありませんが。
もしこれに勝っていれば
ベスト4でメダル目の前でした。
あと少しのところで、メダルへの道は途絶えました。
数字では6位と前々回から3位上がっただけですが、
スペインに勝ったこと
イタリアに引き分けたことで
本気でメダルの可能性を感じた大会でした。
この大会を通して、わたしは改めて本気でメダル獲得及び世界一を目指すことを心に決めたのです。
そして
日本に負けたスペインの涙を見、
イタリアの必死の闘志を体で受け、
日本の代表としてこのピッチに立てたことに誇りを感じました。
【最後に】
4年前のチームとはメンバーが半数ほど変わり、新たな顔ぶれとなりました。
頼もしい仲間も増え、力も4年前と比べて確実についていると思います。
いままで練習試合の相手をしてくださったチーム、合宿場所を提供してくださった地域、施設の方々、イベントに来てくださった方々、本当にたくさんの数えきれないほどの方々が関わって応援してくださいました。大勢の方々が構築してこその代表チームで、自分たちだけのチームではないと思っています。
応援してくださってる方々の分まで走り、体を張り、いまできる自分にとって最大限のパフォーマンスをピッチで体現せねばならないと思っています。
こうして大規模なクラファンも始まりプレッシャーもありますが、この先世界一に向けてブレることなく
この最高な仲間たちと
フットサルを楽しんでいきたいと思っています。
フットサルがやりたい。
そして世界一を獲る。
かなり長文になってしまいましたが、
最後までお読みいただきありがとうございました。
デフフットサル女子日本代表 #10 岩渕亜依