日本にはたくさんの離島があり、離島経済新聞サイトによれば、沖縄だけでも49の有人離島があるということです。その中でなぜ多良間島なのか。
わたしが最初に多良間島を知ったのは、淡水レンズということばによってでした。
多良間島は隆起サンゴ礁の島で、琉球石灰岩からなっています。そのために水の確保に苦労してきました。しかし近年、地中に大量の淡水が隠れていることがわかってきたのです。岩の割れ目にしみ込んで存在する淡水は、凸レンズのような断面を持っているので「淡水レンズ」と呼ばれ、この貴重な淡水資源をいかにうまく汲み上げて利用するかが研究されています。わたしが多良間島を知ったのは、淡水レンズのある島としてなのでした。
それから風水集落です。琉球王国の時代に、風水の影響を受けて形成された集落が沖縄には残っていますが、多良間の集落はその代表的なもののひとつと言っていいと思います。集落の構造じたいが歴史的な遺産なのです。
さらにいくつもの伝統的な祭祀の存在があります。「八月踊り」が有名ですが、その他にもいくつもの祭祀が伝承されています。そのほとんどが観光化されていません。
多良間島を描くにあたっては、この島をテーマとする本を探しましたが、発見することはできませんでした。ネットで調べてみても情報はわずか。旅行したひとたちのブログを読むと、「この島にはなにもない」「なにもないのが魅力」というような表現が目立ちます。しかし、わたしはそうは思いませんでした。事前にちょっと調べてみただけで、今述べたような興味深い事実がわかってきたからです。
この島はおもしろいに違いない。そう思って、まずは図書館通いからはじめましたが、予感は当たっていました。いろんな資料や文献を読むだけで、1年半が過ぎていきました。・・・