バラエティロードの目玉である「野点(のだて)」を行なっているアーティスト、きむらとしろうじんじんさんにお話を聞いてきました。(全3回)◆自己紹介をお願いします!みなさんはじめまして。きむらとしろうじんじんと言います。京都に住んでるんですが、「野点」という現場をいろんな土地で開いて歩くのを本業にしてます。「野点」というのは、簡単に言うと「陶芸お抹茶屋台」です。「素焼き」というちょっと硬くなるところまで焼いてある器と、「釉(うわぐすり)」という焼くとガラス質になる絵具と、お茶碗を焼く窯(かま)を積んだリヤカーをひいて、路上や公園や河原や、たまに人の家の庭先なんかも、いろんな場所に行って、その場で立ち寄ってくれた人が色付けしたお茶碗を、その場で焼いちゃう。ちょっと温度が低い焼き物で、焼いた後最後に水にジュっとつけて、冷まして洗えばその場で使えるので、その日その時その場で焼きあがったお茶碗で、その場の風景を眺めたり、感じたりしながらお茶を飲んでもらえる。そういう場を開いて全国を回る。それを「野点」と呼んで、ずっとやっています。◆なぜ山谷(さんや)で野点?山谷で野点をすることになったのは、実はとてもひょんなことからで…以前、東京の別な場所でやろうとしていた野点が色んなことがあって頓挫してしまったことがあったんです。お茶碗ひいたり釉準備したりしていたなかで一つ現場が減る、というのは、経済的にも、精神的にもつらいことでした。野点を支えにして生きているので、とにかく現場をやりたいと思って、谷中のおかってのメンバーに相談したんです。そしたら、谷中のおかってメンバーの知り合い経由で山友会の油井さんと繋がって、山谷でやることになりました。そんなご縁もあったのですが、僕自身の気持ちもありますね。おかってからその話が来た時、「それは大ネタやね!」って言ったんです。(笑)「大ネタ」って言ったってことは、僕の中では山谷でやりたいって気持ちがずっとあったんだと思います。というのも、近頃どんどんどんどん、「路上」というものがなくなっているなぁと感じていたからですね。
どんな思いでバラエティロードに関わっているのか、「谷中のおかって」のディレクターを務める、ちょりさんこと富塚絵美さんにお話を聞きました!◆自己紹介をお願いします。谷中のおかっての企画のディレクションをしています、富塚絵美です。アートイベントの企画・運営を通じて、多様な人々が集う場を作ることを仕事にしています。◆ バラエティロードではどんな役回りをしていますか?この企画は、じんじんさんという希有なアーティストの「野点」という作品/行為の余白の魅力を最大限に活かして、じんじんさんと共にみんなで豊かな風景をつくるプロジェクトです。本番当日そこに訪れた人も含めて、みんなでどんな風景を作れるかが醍醐味なわけですが、私は、その本番にどんな人々がどんな感じで作業したり人を迎えたりしていたら素敵かな、とイメージし続ける役回りです。当日は、自分も参加者として、その構成員、キャストの一人になるわけですが、それまでの日々では、どうしたらより良い風景になるか考え、その為にできることがあれば思いつく限りを仲間に伝え、自分なりにベストをつくすことを自分に課しています。一つの方向性に向かうというよりは、バラエティロードという企画をみんなの妄想というか「こんな感じだったら素敵だな」というイメージをを投げ込む場として捉えていて、参加者それぞれがそれぞれの感性や発想を大事にして能動的に関わっていくことで生まれる、丸く収まる場というよりは、むくむくと育ち続ける丸まるしてプリップリな状態、いい香りのフルーツが混じったサラダみたいな状況を目指して現場の演出家をしています。◆バラエティロードを山谷で始めたのはなぜですか?山谷には、独特な路上の文化があると思うんです。山谷の路上を行き交う人々の持っている空気感がなによりの証拠で、山谷には独特の時間感覚、他人との距離感、言葉の交わし方、路上での振る舞い方、がある気がするんです。それが私にとって魅力的で、なんか安心するんです。嘘がなくて、謙虚で、チャーミングで、ちょっぴり切なくて、でも諦めてる訳じゃない。とにかく魅力があるから、またここに来たくなるし、この風景と関係している自分が自分にとって必要なんだとおもいます。だから、この企画を続けているし、この魅力を地域の人や訪れる人々、参加してくれる人々と分かち合いたいんです。◆今年のバラエティロードへの期待今年の『アートの寄せ場』っていうキーワードは、すごく大きいと思っていて。アートって言葉はついてるけど、「何がアートか」ってことは全く現場で気にしてない。見せる側と、受け手側みたいな立場が当日あるわけじゃないと思うんだよね。やってない時間とかに、手伝いに回っていたりお客さんになっていたり、支援者に変わっていたり。人が集まって、自然なリズムで1日過ごしていると、なんとなくお互いにお互いを励ましあって、お互いに無視しあって(笑)、お互いに笑いあってみたいな、集えば大丈夫って感じが、起きているっていう... 主催者側のチームとしては、その中でみんなが安心安全に楽しめるように、気を配る。それしか気にしていないような。でも、そういう緩やかな場を作ることによって、普段は話せないような会話が、いろんなところで、きっと起きてるし。本音だったらいいわけでもないんだけどね。めちゃくちゃかっこつけてずっと嘘ついてても、そういう人がいてもいいと思うから(笑)。素直な居方_その人が何か社会的な立場を演じているわけじゃなく、その人がその人としていてみる_をすると、ほとんどの人は自分がどういていいかわかんなくなるんだけど、それも含めて、なんとなくそのままいてみるみたいな経験を、おじさんたちも通りすがりの人も、そこの地域に住んでる人も、一緒にみんな、なんとなくできたらいいかなと思っていて。一人一人が抱えてる孤独だったり、ひとりひとり向き合ってる日常とかも、なんか類似点がたくさん見えてくるだろうし。初めて会ったけど、案外すごい昔から仲間だったなぁ、みたいな意識が芽生えたりもする...ようなことに、期待をしている(笑)。分かりづらいけど...(笑)今までは、そこまでの場は狙えなかったと思うんだよね。自分たちでやることで精いっぱいというか。初めての仲間初めての場所で、自分がその場にどうやって関わるかを考えるだけでも大変だった。今年は、なんとなく「バラエティロード」っていう場が続いていくイメージがある中で、何もしなくてもそこにはいられるような気がして。他のイベントだと、何かを提供する側が、_例えばフリーマーケットだとお店を出す側が、場所をとって、余白が減っていくようなイメージがあるんだけど、バラエティロードの場合は、何かをしようとする人がいればいるほど、余白が増える。何かをやったほうが、みんながなんでもなくなっていくというか(笑) 分かりやすく「何があるねぇ、へー」じゃないからこそ、今年は、みんなが自分がやることをやることに精一杯じゃなく、持ち込んだものによって、みんなのコミュニケーションがすごい活性化したりすることが、楽しめるといいかな。自分が出したものがどう受け取られるか、とか、自分が何を表現したいのかとかにいっぱいいっぱいになんないで、実現した先に、「何やってんだよおまえ~」っておっさんたちに突っ込まれたり、まちの人たちに「なんでこんなことしてるんですか」って目で見られたり、も含めて、楽しむ。みたいなね。(笑) そういうズレを楽しめること、寄せ集まるってそういうことだと思うんだよね。趣味嗜好が違う、生活圏が違う、日常の習慣が違う人たちが、なにか身体的に反応せざるを得ないような距離に寄せ集まってきたときに起こる出来事っていうのは、すごく想像を越えるし、複雑すぎて、何が起こるとはっきりは言えないんだけど。普段は起こりそうで普段絶対起きないことが起きるというか、そういう場は、夢みたいな風景のような気がして。「何にも起きてないのに夢みたいな日だったなぁ」みたいな(笑) 今年は、「アートの寄せ場」で、「集まったらなんかよかった」、みたいな。そういう場にしたいなぁ、という期待が、あります。◆文化出見世とは? やるとほんとにおもしろいから、文化出見世はとにかくみんな出したほうがいい。そういうなんてことがないものが寄せ集まったときにはすごい力を発揮するというか。寄せ集まった風景が、ほんとに私は大好きだから、そういう場を作ってるんだけど。ほんと、文化出見世を一言でいうの難しいな... アートもそうだけど、やりたいことをやればいいって文字化されると、なんか違うな、って思うんだよね。もちろん、やりたいことじゃなきゃやんないんだけど。やりたいことをやるって、それだけの説明にしかなってないっていうか。普段やれないことをやるっていうのもちょっと違うし。誰に頼まれなくても誰も期待してなくてもやりたい、もしくは誰からも褒められなくてもやりたい(笑)、みたいに、「やりたい」の中にもたくさんフィルターがあると思うんだよね。自分のやりたいことの中で、褒められなくてよくて、見返りを求めなくて、でもやりたいことを探すのって、すごい大変な作業だと思う。そのかわり、普段だったら「そんな事やんないほうがめんどくさくないし」ってやんないんだけど、バラエティロードに行って、大西とかじんじんさんが、機嫌よく、やんなくてもいいのに何であんなことやってんだろ、みたいな人のこと見たら、ちょっと自分もやっちゃおうかなって思えるっていうのが、プロのアーティストの魔力っていうか。やんなくてもいいんだけどやったほうが案外幸せなんじゃないか、って思わせてくれるような力が、パフォーマーにはあるからね。そういう人たちの力を借りつつ、便乗してできるっていうのが、バラエティロードの魅力だと思うんだよね。個人で勝負するって大変なことだけど、そうじゃなくて、生半可な気持ちでやっていいっていうのが、バラエティロードの魅力だし可能性で。ちょっとやってみたいけど、勇気ないけど、言い訳いっぱいしていいんならやっちゃお(笑)、くらいの気持ちでやっていいっていうのが、そこがバラエティロードの魅力なんじゃないかなと思う。一言で全然言えないけど、文化出見世の魅力には何年かかけて、みんなも向き合ってみてほしい。 そういう魅力のある企画です。◆ちょりさんの文化出見世「路上写真展」について教えてください。 最近の自分が一番気に入っている写真や、この一年で一番印象に残っている写真を、みなさんに呼びかけて集めました。とにかく、身近にある写真、携帯にとり溜めてる日常的な写真でもいいので、これだ!という一枚を選んで送ってもらう。そしてそれを選んだ理由をみなさんに聞いています。それらを私が、「路上写真展」として、バラエティロードに来る方たちにお披露目します。とっても味わい深いんですよ。ほんとに。写真見ただけじゃわからないんですけど、私の解説聞いたらみんなその真実にぶったまげること間違いなし。是非見にきてほしいです。今回は、小さなプロジェクターとわたしの手作りスクリーンを使って、写真パフォーマンスみたいなかんじでやるのでお楽しみに☆◆クラウドファンディングで支援してくださる方々に、メッセージをお願いします! 現場で一緒にごたごたすることはできないけれど、こういう出来事が世の中にあってもいいんじゃないかと思える人がいたら、こういう”お金”っていう支援を通して、この出来事に参加してほしい。参加っていうのは、たくさんの想像力を支援することになるし、私たちも支援には、”お金”ってことじゃなく、そこに、応援してくれた人のぬくもりとか、人の気配とかをすごく感じるもので。それはすごく人を動かすし私たちも動かすから、現場を変えるものだと思うんだよね。エネルギーとして。だから、「お金だけ渡しても...」って感覚じゃなくて、お金を渡すってことは、その場の人たちをすごく励ますし勇気づけるし、現場のクオリティが変わるってことに確信をもって、ぜひ支援してほしいと、思います。楽しいし、もちろん、見に来れたら一番いいけど、見に行けない、っていう関係性も、結構いいと思ってて。行きたいけど行けない場所がずっとある人生も、悪くないと思うほうだから、支援するか迷ったり、行こうか迷ったりってことがあったらとりあえず支援してください、って言いたい。分かんないけど、きっと楽しくなるっていうか。今後、応援してくれた人たちは仲間になっていくっていう気持ちが、私にはあるから。その人たちと一緒に作ったって思うので。贅沢だけど、「お金困ってるみたいだからあげよう」ってことよりは、「そんなに時間ないけど参加しよ」って気持ちで、参加していただけたら嬉しいです。
こんにちは!一般社団法人谷中のおかって代表の渡邉梨恵子です。みなさまの温かな支援、ありがとうございます!活動の励みになっております!さて、「バラエティロードSANYA 2019」を主催する<谷中のおかって>ってどんな人たちが活動しているの?という方もいらっしゃると思いますので、簡単にメンバー構成をご紹介します。<谷中のおかって>は、代表の私(渡邉)とアートディレクターの富塚絵美、ダンサーの大西健太郎をはじめとする社会人のメンバーと、大学でアートマネジメントを学ぶ学生のメンバーが一緒にアートイベントの企画・運営・サポートを行っています。これから活動報告でご紹介していくインタビュー記事は、企画を担当する学生のメンバーが、「バラエティロードSANYA」にかける思いなどを関係者にインタビューしたものです。ぜひご一読いただき、企画に参加・ご協力いただけますと幸いです。