映画を作ることは「世界をつくること」だとつくづく思います。いや、思い知らされました。1965年が舞台、そしてモチーフがサンカという、2つの虚構を前提にシナリオを書いてしまったので、今回は特に・・・。しかし書くのは自由ですから!
まず衣装。本当に悩みました。撮影前日まで悩みました。上の写真、省三の衣装は、藤布という靭皮繊維です。厳密には違うのですが、麻のようなゴワゴワした質感を想像していただければ分かりやすいと思います。私たちが普段着ているのは、ほぼ木綿です。なのでサンカのワイルドさと異質さがより出たのではないかと思っています。
そしてハナさんの衣装。
サンカを調べると、残っている写真において女性は絣(かすり)を着ている率が高いです。
それを再現したわけではないのですが、色々試していくうちに、やはりこれが一番しっくりきました。薄い赤も入り、可愛らしさも残しつつ、格好良くワイルドに。
撮影前日の都内でのテスト撮影。二着目の服と髪型がこの時に決まりました。
この映りを見た時思わず「よし!!」と言いました。思惑通りの雰囲気が小向さんからにじみ出ていたからです。
そして小道具です。サンカは「マキリ」という独特の両刃包丁を使っていたと言われています。やはり「マキリ」がないと説得力が出ません。しかしもちろん、売っていません。
なので、沖縄の鍛冶屋さんに特注で作ってもらいました。本当に本当に素晴らしい鍛冶屋さんです。マキリのこともご存知で、こんなにもいいものを作ってくれました。もちろん、本当に切れます。こんな野趣に富んだ刃物を作れる人は、この方だけだと思っています。ぜひ見て欲しいです。すごいんです。(カニマン鍛治工房)これも劇中に少し登場します。
しかし、これはほんのほんの一部です。美術、装飾、衣装、小道具そして人間。すべて説得力を持ち初めて映画の土台が成立するのだと、近頃になってつくづく思います。プロの技の結集です。私以外、凄かったなあと・・・。