NPO法人ペイン・ヘルスケア・ネットワーク、代表理事の江原です。
活動報告では、NPOスタッフの日々の活動やどげんかせんといかん日本の慢性痛医療の準備状況などについてお知らせしていきます。
『まだ痛くない人が「治らない痛み」を知らない』社会の壁による問題。
本日は、慢性疼痛患者は怠け者と思われていることについてです。
怠け者の病気?
ある講習会で痛みについて講演させていただいた後に、参加者からこんな質問を頂きました。
「先生、線維筋痛症って知っていますか?あの病気は怠けているようにしか見えない。
仕事中辛そうにしていてもお昼休みはぺちゃくちゃしゃべっている。
そんなもんなのでしょうか?すごく困っているんです」
企業の管理業務をしている方からの相談でした。
線維筋痛症とは
線維筋痛症は、アーティストのレディー・ガガも苦しんでいることを公表した、原因不明の慢性疼痛。圧倒的に女性患者が多く腰痛や肩こりを持っている方が、日常生活の中でのふとしたことをきっかけにして全身に痛みを発症します。不眠など同時に起こる症状からストレスを感じ、うつ状態にもなります。日本ではまだあまり認知されていない痛みです。
線維筋痛症の患者さんを担当しましたが、たしかに怠けているように見えなくもない。しかし医療に関わるものとしては、
・ちょっと体を動かしたり触れたりするだけで激痛が走る
・休職、退職を余儀なくされたり、寝たきりになってしまう方もいる
・生活の変化が痛みに影響する
などなど、患者さんの苦しみを知っていますので怠けているなんて思えません。
(改善しよう、今の生活を維持しようと通院していますし)
慢性疼痛は他人に見えない
そんなにつらい痛みなのになんで「怠け者」なのでしょうか?
恐らく、痛みがないとき、痛みが少ない時に比較的元気そうに見えることや、楽しいことをしていると気が紛れて(痛みがなくなったわけじゃないけど)、痛みが気にならない時があるからだと考えます。松葉杖が生活に必要だとか、どこか不自由な感じがあれば痛みにももっと同情するのかもしれません。いや、そんなネガティヴな考え方じゃダメですね。見た目は元気そうでも痛いは痛い。怠けているじゃないんです。
企業側もつらい
社員の病気による休職理由はメンタルヘルスやがんが多いが、慢性疼痛での休職・退職も増えているそうです。休職や退職をすると、補償のためにお金が動くことにもなるため怠け者に見える慢性疼痛にはいいイメージを持っていない、そんな言い分でした。
見えないからこそ「知る」
慢性疼痛は見えません。でも動かしたり触れても痛い、患者さんの言葉を信じることから始まります。信じられるようになるには学ぶこと、知ることが第一です。
どげんかせんといかん日本の慢性痛医療では、医療者-患者が一堂に会して地域のネットワークを作っていきます。そこには医療者間の理解、患者間の理解、そしてそれらを含んだ社会全体の理解が必要です。
是非会を開催し、各地域でムーブメントを起こして痛みを理解し合える社会を作っていきたいと思います。疼痛ゼロの日イベントも回を重ねるごとに、参加者の理解も深まっていてとても良い議論が行われています。
将来の医療や社会のために活動を続けていきます。クラウドファンディングへのご支援も引き続きたいです。
どうぞ宜しくお願いいたします。