みなさん、こんにちは! IST広報チームです。
昨年中はたくさんの方に応援、ご支援いただき心から感謝いたします。2020年も、どうぞよろしくお願いいたします。
12月29日から1月3日の間で打上げを予定していたMOMO5号機が、機体トラブルのため打上げ延期となったこと、まずはこれまで応援いただいたみなさま、スポンサーのみなさま、年末年始の打上げに向けてご協力をいただいた地域や漁業関係・航空関係など多くのみなさま、打上げを楽しみしてくださったみなさまにお詫び申し上げます。
今回の活動報告では、年末年始の打上げ期間の間に発生したトラブルやその対策について、ご報告したいと思います。
▼1月2日(木)インターステラテクノロジズ MOMO5号機打上げ延期に関する記者会見
https://www.youtube.com/watch?v=oxb31l7pQWs
※より詳しく事実をお伝えするために、1月3日の公開時の文章の一部に修正をさせていただきました。また、1月1日に起きた不具合については現在も原因究明中です。今後の進展については、後日改めて報告させていただきます。
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29日打上げの延期について
MOMO5号機は12月29日5:15-7:40のウィンドウでの打上げを目指し準備していましたが、その準備の中で3つの不具合が発生しました。
①ヘリウムガスの圧力上昇
燃料と液体酸素を、燃焼室へ押し込むためのヘリウムガスの設定圧が、定めていた範囲より上昇しました。考えられる原因としては、想定よりも外気温が低かったことがあげられます。機体内温度が想定以上に変化してしまいその影響を受けたと考えられるため、機体内が外気温に十分近くなったタイミングで29日のうちに機体を寝かせて再度調圧作業を行いました。
②指令所と機体の通信経路のうちの一つにトラブル
打上げ指令所と機体の間の通信は幾つかの経路で行っていますが、補助経路の一つ(地上設備側の有線通信経路)に時々通信ができなくなるトラブルが発生しました。この通信経路は飛行前の準備中に利用するもので、飛行中の安全には影響しないものでしたが、万全を期して打上げに臨むため打上げ判断を一時保留しました。他の不具合とも合わせて延期判断がなされた後,原因は指令所内に設置された一本のケーブルの不良と判明し、同ケーブルを交換しました。また、念のためにランチャ上にある通信部品交換や、通信経路の冗長系強化も行いました。
③窒素ガスの漏れ
29日打上げの直接の延期原因となったのは、窒素ガスの漏れです。上記トラブルに対応している間に、窒素ガスが漏れるトラブルが発生しました。配管からの窒素ガスの漏れで、計測している窒素の一次圧(レギュレーターの上流側の圧力)が、規定値より下がっていることがわかりました。窒素ガスはバルブの駆動用に使っており、ロケットの初期動作にこのバルブを使用しています。バルブが動作しないことでロケットエンジンが始動できなくなる恐れがありました。配管の窒素ガスの系統の部品の交換とリーク(漏れ)チェックの作業が必要となるため、その日のうちの対策が難しく、翌日以降の打ち上げを決定しました。
元旦1月1日の打上げを目指すも・・・
30、31日については上空の風速が規定値よりも強く、打上げを断念。元旦の打上げを目指しました。
途中まで順調だった打上げ準備でしたが、液体酸素を充填しはじめたタイミングで機体に搭載している電子機器に不具合が起こりました。
ロケットには、機体の上部から下部まであちこちに分散して多数の電子機器が搭載されています。その間はCANバスという通信経路で結ばれていて、制御用コンピュータがいろいろなセンサを読んだりバルブを開閉したりするようになっています。この通信経路にエラー(データ化け)が断続的に発生する現象が起こりました。全ての電子機器が正常動作している場合には、そうしたエラーは一切起こりません。
このCANバスには、飛行前の機体準備や飛行中の姿勢制御に使われる系統と、飛行後の分析用に地上へ送るデータを収集する系統の、2つがあります。今回エラーが検出されたのは前者でした。すぐに危険が発生するようなエラー発生状態ではありませんでしたが、もしエラーが酷くなれば飛行の安全に影響が及びますし、電子機器に何らかの不具合が潜んでいる兆候でもあります。このため、原因究明と対策のために、1月1日の打上げの延期を決定しました。
液体酸素と燃料を抜いたあと機体を寝かせて組み立て棟まで戻し、外装を開けて電子機器を確認しました。極寒の外気温のうえに、さらに-190℃近くもある液体酸素の充填で温度が下がり始めた状態で発生した不具合でしたので、低温がエラーの原因である可能性があります。そこで、厳密ではありませんが短時間で状況を模擬するためドライアイス(-78℃ほど)を使った冷却試験を行うとともに、ケーブルに不良箇所がないか目視チェックも行いました。
現地でできる究明を行ないましたが、1月2日の昼時点で原因究明ができず、また飛行安全に関わる部分のトラブルでしたため、準備も含めると3日までのウィンドウでの打ち上げが難しくなり、今回の打上げは延期することといたしました。
冬の打上げの難しさ
1月7日現在、完全な原因の特定に至っておらず、すべての原因が北海道の冬ならではの外気温の低さに起因するものとは言い切れません。しかしその可能性は否定はできず、ロケットの打上げの難しさを実感しております。
今回も本番の前にフルドレスリハーサル(燃料と液体酸素を充填し点火以外のすべての流れを実施するテスト)を2回行なっておりますが、問題は発生しておりませんでした。
ISTのミッションは「世界一低価格で、手軽なロケットをつくること」。低価格なロケットを高頻度に打上げ、誰もが宇宙に手が届く未来を目指しています。そのため、通年を通してロケットの打上げを行えることが、とても重要なポイントでもあります。今回のトラブルに関してしっかりと原因究明と対策を行うことで、オールシーズン打上げ可能な機体や体制づくりを進めることができると考えております。
ただ、今回は年末年始の打上げということで、非常に多くの方にご協力、調整いただいたうえでの延期となってしまったこと、心から申し訳なく思っております。応援してくださったみなさま、スポンサーのみなさま、クラウドファンディングでご支援いただいたみなさまのご期待に沿うことができず、残念な気持ちでいっぱいです。
次回の打上げについては、原因究明や平行して進めるZEROの開発状況、また関係各所との調整を行なったうえで、改めて決定したいと思います。
みなさまには引き続き、応援いただけますと幸いです。今後ともよろしくお願いいたします!!