表記について、与謝蕪村筆の『寒山拾得図』の復原・複製の襖絵が完成し、妙法寺本堂に奉安いたしました。
去る令和元(2019)年11月18日~令和2(2020)年1月10日までクラウドファンディングを立ち上げましたところ、150万円を超えるご支援を賜ることができ、加えて檀信徒の皆様からのご寄付を併せ、この度、『寒山拾得図』本堂奉安プロジェクトを無事に円成することができました。皆様のご支援について改めて御礼申し上げます。本当に有難うございました。
◎クラウドファンディングサイト https://camp-fire.jp/projects/view/208171
御礼とご報告とし、ご都合がよろしければ、ご来山下さり、ご高覧下されば幸いでございます。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。合掌
記
- 1.妙法寺と与謝蕪村
俳人画家・与謝蕪村(1716~1784)が江戸時代中期の明和年間に讃岐・香川を訪れ、その際、妙法寺(丸亀市富屋町)に逗留。その際に描かれた『蘇鉄図・そてつず』『寒山拾得図・かんざんじっとくず』等の6作品が残っており、国の重要文化財に指定されています。このようなゆかりから妙法寺は別名「蕪村寺・ぶそんでら」といわれています。
- 2.『寒山拾得図』への落書き・破損事故と昭和58年の修復
昭和43年、心ない者の仕業により『蘇鉄図』と『寒山拾得図』は、黒の油性マジックで落書きされました。特に『寒山拾得図』は、「寒山」のお顔が破られてしまい損失、「拾得」のお顔は目の部分に黒の油性マジックで落書きされました。
その後、『蘇鉄図』『寒山拾得図』を初めとする所蔵の6作品が昭和46年6月22日付で国の重要文化財に指定されました。この際には、この加筆を消すという条件がありましたが、それでも美術的文化財としての価値を損なうものではないという判断があったといいます。
昭和58年、名古屋市の整古堂・武智光春表具師の職人技により『蘇鉄図』及び『寒山拾得図』の「拾得」の顔のマジックは除去作業が行われました。『蘇鉄図』と『寒山拾得図』はこのような奇跡的修復を経た墨画で、この文化財修復の模様はNHKのドキュメンタリー番組『名画復元~表具師執念の技~』〔昭和58(1983)年11月23日放送〕として放映されました。
- 3.妙法寺と東京文化財研究所の共同研究事業
『寒山拾得図』のうち、「寒山」のお顔が破損し、当て紙をして補修されている状態となっておりました。複製襖を制作して本堂に奉安するにしても、墨絵の中心である人物の顔が欠けた状態では、蕪村翁にも申し訳なく感じておりました。
令和2年2月、東京国立博物館の鷲頭桂学芸員(当時)に「寒山拾得図」の破損前の写真がどこかに残っていないかご相談しましたところ、独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所(旧:東京国立文化財研究所、東京都台東区)に昭和34(1959)年撮影のモノクロ写真とネガフィルムがあることが判明しました。つまり破損前の「寒山」のお顔が判明したのです。
令和3(2021)年4月より東京文化財研究所と協議し、妙法寺と東京文化財研究所の共同研究事業として『寒山拾得図』の復元襖を制作する事業を行うこととなりました。
令和3(2021)年8月の調査で撮影された超高解像度のデジタル写真と、昭和34年に撮影されたモノクロ写真を活用して、東京文化財研究所内において復原作業が行われました。
すなわち「寒山」のお顔をデジタル技術で補い、まさに蕪村が描いた往時の『寒山拾得図』が生き生きとよみがえりました。
- 4.瀬戸内海放送(KSB)での報道
地元民放である瀬戸内海放送がTVニュースで11月23日に報道されました。この模様をYouTubeでご覧になれます。
https://www.youtube.com/watch?v=u781PNjHtIQ
- 5.寒山拾得図について
- 今般、妙法寺本堂に奉安された与謝蕪村筆『寒山拾得図』(妙法寺所蔵、復原・複製)の襖4面の寸法は各縦197cm、各横139.1cmという大襖。写真の左が寒山(巻物を持つ)、右が拾得(箒を持つ)。通常二人がペアで描かれるので『寒山拾得図』という。寒山と拾得は中国唐代の僧で、天台山国清寺の豊干の弟子。寒山が文殊菩薩の、拾得が普賢菩薩の化身と称された。蓬髪、破衣をまとい、風狂に生きた二人の生活態度は、『寒山詩集』などに伝えられ、禅の画題となった。『寒山拾得図』は北宋時代から描かれ、日本でも多くの画家が描き、与謝蕪村、曾我蕭白などの作品がある。
以上