2020/01/31 18:36

みなさんこんにちは!プロジェクトオーナーの熊谷です。

今日でクラウドファンディング公開から5日目となりました。早いものですね…

昨日は島で一番大きな病院に行きました。島全体で何人がHIV治療を受けていて、今現在予測されているHIVに感染している人のうち、どれくらいがHIV治療を受けていて、どれくらいが受けていないのか、また、どの地域で治療を受けている人が多いのか、などを調べるためです。パートナーのケビンはずっとここにいるので島の全体像や問題がどれほど深刻なのかわかると思うのですが、僕のように来て4か月少しのものが問題をしっかり理解しようとするには実際に足を運んで、数字や経験談をもとにデータを集めるしかありません。

島の薬剤師さんとお話中…

この病院からデータをもらった結果、予測されるHIVに感染している人のうち、40.4%の人がHIV治療を受けていると判明しました。これはつまり、残りの約60%の患者は未だHIV治療を受けずにいる、ということです。

治療を受けずに体内のHIV量を抑えることができなければ、性的接触を通じて感染拡大を招いてしまうこともありえますし、最終的にAIDSを発症し死に至ることも考えられます。

ちなみに、ここではHIVテストも、HIVの治療を受けることも、すべて無料です。テストを受けて陽性だとわかれば、近隣のHIV治療を受けられる病院やそれに準ずる場所に搬送され、カウンセリングやほかの性感染症の可能性はないかなどの手続きを経て、HIV治療を無料で受けることができます。

ではなぜ、残り60%の人々は、自分のステータス(陽性か陰性か)を知らずに、言い換えれば、テストを受けずにいるのでしょうか。いくつか要因は考えられますが、ここではスティグマと呼ばれるHIVの差別や偏見について紹介したいと思います。

スティグマとは?

stigma

【名】

  1. 〔社会的な〕烙印、汚名、不名誉のしるし[証拠]◆【複】stigmas

-英次郎 on the Web より

スティグマとは、この英語の意味にもあるように、汚名を着せられ、いわれのない差別や偏見を着せられてしまうことを意味します。HIVと戦うということは、この社会的な差別や偏見とどう戦うかを意味していると言っても過言ではないかもしれません。

正しい知識がないと、間違った情報が広まってしまいます。

「HIVは手を握ると感染する」

「食器を使いまわすとHIVが移ってしまう」

「触ると移る」

そんな声を、僕は昨日病院に行ったときに聞いたような気がしました。パートナーのケビンは長年この島で保健ソーシャルワーカーとして働いているため、住民からもよく知られています。用事を済ませて帰ろうとしたところ、一人の女性がケビンのもとに駆け寄ってきました。二人はしばらく現地語で会話をすると、また、と言って歩みを別にしました。

「何を話していたの?」と僕が聞くと、

「彼女はHIVの患者で治療を受けているんだけど、誰かが彼女がHIV陽性だと言いふらしたらしいんだ。そのせいで、彼女の子どもが学校でいじめを受けているらしいから、今から警察のところに言って報告するよ。」

スティグマの向かう先は、患者本人だけではありません。その子どもや、家族にだって向かうこともある、と思い知らされた一面でした。

以前、ケビンと一緒にHIV患者へのインタビューを少し行ったことがあります。「今まで、差別や偏見にHIVだからという理由でさらされたことがあるか」と聞くと、いくつかあるという回答をいただきました。

家族から食べ物を分けてもらえなくなった。新しい夫と家族から避けられた。(ここでは、夫が亡くなった際に、女性が夫の兄弟のもとに嫁ぐという習慣があります)など、悲しい話を耳にしました。

海外に長期間住んでいると、いわれのないことを理不尽に言われることもあります。「チンチョンチャン!!チャイナ!!」と馬鹿にされたり、「ろっ骨が折れて治療費7000円必要だから」と友達に言われて家に行ってみたら、ピンピンしていて、問いただすとニヤニヤされながらごまかされたり。僕は学生で、あげるほどのお金もないのに。ムズング(白人)がみんなお金もちなわけではないのに。

もちろん、HIVのスティグマと比べられるものではありませんが、「正しい知識さえあれば相手を傷つけずに済むのに」という経験は僕も嫌と言うほどしてきました。みなさんもきっと、人生のどこかで経験したことがあるのではないかと思います。嫌な気持になりますよね。

スティグマと戦うために

この点において、重要なのは正しい知識を得ることです。手を握っただけでは移らない。食器の使いまわしでは移らない。HIVの友達を持つことは、そうでない友達を持つことと何も変わらない。感染したとしても、テストを受けて治療を受ければHIVは不治の病ではない。

私たちのプロジェクトの性教育では、スティグマを無くすべくそうした適切な知識を教えていきます。

「HIVは下記のものを通じては移りません」という図

しかしながら、現実問題HIV陽性と分かってしまうとスティグマを受けてしまう可能性も否定できません。そのため、もう一つのプロジェクトのネットカフェでは、診察カードを導入し、利用者全員にテストを受けてもらいますが、誰が受けたか、誰が陽性で陰性なのか、カードの情報からはわからないように名前は記さず匿名番号を記しこちらで管理します。

差別や偏見のない世界

世界は差別や偏見で溢れています。海外に住んでいなくても、日本でだってそうです。「男だから強くなきゃ」「女だから家にいろ」「若者はこう」「年寄りはこう」「韓国人はこう」。そしてそれは、認識していたとしても私たちの心の隙間にすっと入り込んでしまいます。でも、自分の偏見が正される瞬間や経験を経て、差別や偏見のない世界を創っていくことはきっとできます。いわれのない言葉を投げかけられて傷つくようなことが無くなりますようにと、僕たちのプロジェクトを通じて一人でも心の傷つく人がいなくなってくれればいいなと、そう願っています。


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