ご報告がたいへん遅くなってしまいました…!2021年11月23日に、第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展が閉幕しました。ビエンナーレ最終日、閉幕間近の日本館のようす。韓国館キュレーターのシン・へウォンさんが送ってくれた映像です5月23日に先行きも十分に見えないなかで開幕したビエンナーレでしたが、夏に入った頃にはヴェネチアの観光客もある程度回復し、日本館の最終的な入館者数も、ふたを開けてみれば前回の2018年とほぼ同じ数字にまで達したようです。(詳しい数字は公表されていないので控えますが、15万人を大幅に超える方々に観ていただきました!)8月には日本から建築家たちが渡航し、当初からの念願だった、ヴェネチアの職人さんたちとのオンサイトでのコラボレーションも実現することができました。活躍してくれたヴェネチアの職人のみなさんビジターが観ているなか、建築家と職人が協働して展覧会のバージョンアップを行いましたビジターの皆さんがより楽しめるように随所にバージョンアップを施しましたが、実際に楽しんでいただいている様子を間近で見られて、とても幸せでした。屋根ベンチで思いっきりくつろぐビジターの皆さん ⒸMusashi Makiyama屋根ベンチに追加したコーヒーテーブルでお茶を点てる猛者も!Instagramの投稿より余った材料を使用して、新作家具もたくさん制作しました。長坂常さんデザインのT字型のスツール。旋盤加工によるシンプルなジョイントで古材を組み合わせるというアイデアで、多種多様なスツールが生まれました ⒸMusashi Makiyama砂山太一さん・木内俊克さんデザインのポリカ波板と古材を組み合わせたスツール。宙に浮いた古材の上に座っているような不思議なデザイン元木大輔さんがアップサイクルしたビニール床。マガジンラックや植木鉢として使えます岩瀬諒子さんデザインのスツール。今回制作した家具のなかで一番人気で、何とか手に入れられないかという問い合わせが相次ぎました ⒸMusashi Makiyama バージョンアップ後の展覧会のようすは、archi.toursというウェブサイトがバーチャルツアーtoとして記録してくれました。ぜひ体験してみてください!https://archi.tours/360/venice-biennale-japan/そして、この年末まで時間がかかってしまいましたが、閉幕後に解体した資材の大部分は、オスロへと送る算段をつけることができました。来年は、日本の木造住宅〈高見澤邸〉の記憶をとどめたコミュニティ施設が、オスロ郊外の集合住宅団地の一角に生まれる予定です。オスロにつくられるコミュニティ施設のイメージ ⒸDDAAまた…こちらも予定していた以上の時間がかかってしまいましたが、資材の一部をようやく日本に送り返すことができました!お待たせしてしまっているアップサイクル・プロダクトをはじめとするリターンは、こちらの資材が日本に届き次第、順次制作を開始し、お届けする予定です。あと少しだけお待ちいただけますと幸いです。荷詰めが終わり、日本へと送られるのを待つクレートそういうわけで、このプロジェクトはまだあと少しだけ続きます。来年もお付き合いいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。それでは、どうぞ良いお年をお迎えください。
第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展がぶじ開幕しました!会期は11月21日までです。コロナ禍での設営にはとても苦労したので、一同感無量です…ただ、まだまだ自由に渡航できる状況ではありませんから、日本館展示では、どこからでも楽しめるウェブサイトも制作しました。少し重いサイトなのですが、ぜひ訪れてお楽しみください!https://vba2020.jp/完成写真も一部公開します。自然と溶けあう美しい写真はアルベルト・ストラーダさんによる撮影です。日本館の外観。日本の普通のブルーシートが広告幕がわりになっていて、「移動によって新しい価値をつくる」このプロジェクトの導入の役目を果たしています。デザインの担当は長坂常さんです ⒸAlbetro Strada日本館の庭園入口に置かれた屋根を転用したベンチ。デザインは元木大輔さん。住宅の「部分」を違ったものへと生まれ変わらせるという試みを、言葉を使わず完璧に説明しています ⒸAlbetro Strada岩瀬諒子さんがデザインしたスクリーン。ヴェネチアへと運んだ住宅で印象的だったエメラルド・グリーンの外壁を再構築したものです ⒸAlbetro Strada 岩瀬さんのスクリーンは内部もたいへん印象的です ⒸAlberto Strada木内俊克さんと砂山太一さんが再構築した住宅の外壁。3Dスキャン技術を使った展示幕はここでの生活の面影を伝えています ⒸAlbetro Strada 館内には使われなかった部材が年代順に並んでいます ⒸAlbetro Strada 壁面にはこの住宅が建てられてからヴェネチアへと旅立つまでの写真も年代順に貼られています。観客はここで住宅が生きた歴史を追体験します ⒸAlbetro Strada 館内を出てスロープと階段を下りると、この住宅で使われていた階段に出会います。こちらのデザインは木内俊克さんと砂山太一さん ⒸAlbetro Strada 展示室の下のピロティは工房に見立てられた展示がされていて、すべての展示物がこの場所で再構築されたものであることを伝えています。この部分は長坂常さんがデザインを担当しました ⒸAlbetro Strada 長坂常さんのアイデアで、一部の古材には旋盤加工が施されていますが、ピロティには加工に失敗した木材も並んでいます ⒸAlberto Strada少しだけでも展示の雰囲気が感じられたでしょうか?すでに多くの海外メディアに好意的に取りあげていただいていますが、今後は国内での紹介もたくさん予定されています。建築家チームでは、なんとか夏には渡航したいと話しています。渡航が実現すれば、そのようすはここでもレポートしたいと思っていますので、ぜひ楽しみにお待ちください!---<Exhibition>Theme | How will we live together?Director | Hashim SarkisVenues | Giardini di Castello, Arsenale, etc.Dates | Saturday, May 22 – Sunday, November 21, 2021Website | http://www.labiennale.org/<The Japan Pavilion>Theme | Co-ownership of Action: Trajectories of ElementsCommissioner | The Japan Foundation (JF)Curator | Kozo KadowakiParticipants | Jo Nagasaka / Ryoko Iwase / Toshikatsu Kiuchi / Taichi Sunayama / Daisuke Motogi / Rikako NagashimaExhibition Construction | TANK, etc.Website | https://vba2020.jp/
前回の活動報告からだいぶ間が空いてしまいました。申し訳ありません…!この間、実にさまざまなことがありました。大きなニュースから順にご報告させていただければと思います。第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展、2021年5月22日開幕!コロナ禍が依然として収束しないなか、どうなることかと危ぶまれていた第17回国際建築展ですが、公式にアナウンスされているとおり、2021年5月22日(土)の開幕が確実な情勢です!とはいえ、もちろん、例年とまったく同じように開催というわけにはいきません。ヴェネチア・ビエンナーレ財団からは、COVID-19対策のプロトコルが届き、これにしたがった展示計画が求められています。しかしビエンナーレ財団は、このプロトコルを用いて、国際映画祭をはじめとする大きなイベントをコロナ禍以後も複数回開催することに成功しており、その実績が大きな自信につながっているようです。よっぽどのことがない限り、5月開幕は揺るがないことでしょう。そういうわけで、日本館展示チームも準備に追われる毎日です。残念ながら設営のためにヴェネチアに行くことは叶わないのですが、現地の職人さんともやりとりできるオンラインの通信システムを構築し、万全の体制を整えて準備を進めています。施工チームは現地の職人さんたちで編成しましたが、みんなやるき満々。施工が始まる直前には、こんな動画を撮って送ってくれました。2021年4月22日より、高田馬場の実験スタジオ「BaBaBa」にて関連展開催!そして、もうひとつ大きなニュースです!東京・高田馬場に新しくオープンするケーススタディスタジオ「BaBaBa」にて、日本館展示の関連展を開催させていただくことになりました!!!展覧会のフライヤー展覧会のタイトルは『Dear Takamizawa House』。ヴェネチアへと運んだ《高見澤邸》のヤン・ヴラノブセキさんによる写真と、ビエンナーレのために建築家たちが日本でつくっているモックアップが展示されます。展覧会の詳細は、プレスリリースをご覧ください。モックアップはいまもつくっている最中ですから、会期中は毎週、制作したものを会場に運び込む予定です。こちらは準備展という位置付けですが、ヴェネチアでの展示のコンセプトを引き継いで、会期中に成長していく展覧会となりそうです。スキーマ建築計画によるモックアップ。オリジナルの工具をつくって古材を旋盤加工していますなお、会場である「BaBaBa」は、日本館展示の協力企業であるアンダーデザイン株式会社さんがオープンされたもの。リノベーションの設計は出展建築家である長坂常さんが率いるスキーマ建築計画ですが、実はリノベーションの工事が始まる前に、解体された高見澤邸の部材などを整理する倉庫として使わせていただいた、思い出深い場所です。「BaBaBa」の外観。リノベーションの設計はスキーマ建築計画です ⒸTakumi Otaアンダーデザインさんは通信インフラの構築などを手がける企業ですが、今回のヴェネチアと東京を結ぶ通信システムも、アンダーデザインさんが準備してくださいました!現地とやりとりしながら施工をすすめているようすも、動画でご紹介できそうです。展覧会の詳細は以下のとおりです。実際の展示の雰囲気が感じられるものになると思いますので、ぜひ足を運んでみてください。◆BaBaBa Exhibition vol.1「Dear Takamizawa House」会期:2021年4月22日(木)-5月30日(日)会場:BaBaBa 東京都新宿区下落合2-5-15 1F時間:12:00-19:00 (土・日・祝 11:00 - 18:00 )主催:アンダーデザイン株式会社協力:第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示チーム→ プレスリリース高見澤邸をオスロへ移動するプロジェクトに大きな前進がありました!ところで、ビエンナーレの会期終了後は、ヴェネチアで展示した《高見澤邸》を、ノルウェーのオスロまで運ぶプロジェクトをすすめていることを以前ご報告しました。このプロジェクトはフィリピン館と一緒に進めているものですが、フィリピン館のみなさんと一緒に、公共の場に置かれるアートを支援する団体であるパブリック・アート・ノルウェーの助成に申し込んだところ、なんと60万クローネ(約780万円)もの助成が決定しました!この金額は、今年のノルウェーでもっとも大きなもので、たいへん名誉なことだと伺いました。オスロに移動した《高見澤邸》のイメージ ⒸDDAAそういうわけで、この一連のプロジェクトはまだまだ終わりそうにありませんが、引き続きご支援いただけますとうれしい限りです!
クラウドファンディングでは、たいへん多くの方々よりご支援をいただきました。支援者数は259名、総額は4,825,888円と、わたしたちの予想を大きく超える結果となり、関係者一同、感謝と感激で打ちふるえております。改めて、ありがとうございました!さて、現在は第一弾のリターンである【オリジナルてぬぐい】と【ブルーシート・グッズ】を準備させていただいているところなのですが、お礼状のデザインなどにもこだわり抜いた結果、予定より時間がかかってしまう事態が生じています…楽しみにしていただいているところ、たいへん申し訳ありませんが、いま少しだけお待ちいただけますと幸いです。お待たせした分、必ず良いものをお届けしますので、どうかご容赦ください。支援者のみなさまには、改めてメールでもご連絡させていただきます。ところで、今回のクラウドファンディングは、さまざまな新しいつながりをいただくきっかけにもなりました。そのひとつが、ブルーシート製造大手の萩原工業さんです。製造過程で生じるブルーシートの端布を活用したアップサイクル・プロダクトにも取り組まれていることなどから意気投合し、先日、倉敷の本社を訪問し、浅野社長にもご挨拶する機会もいただきました!ブルーシートをはじめとする多種多様な製品に興奮を隠せないデザインチームのメンバー萩原工業の本社前にて、浅野社長をはじめ社員のみなさんと記念撮影萩原工業さんにはヴェネチアでの展示にご協力いただくことになりそうですが、アップサイクルの取り組みでもコラボレーションできないか、議論を重ねています。その第一弾となりそうなのが、今回リターンとしてご用意する【ブルーシート・グッズ】です。【ブルーシート・グッズ】は予想以上に多くの方々に選んでいただき、確保しておいた展示検討用のブルーシートのサンプルが足りなくなってしまいそうだったのですが、萩原工業さんに端布のご提供をお願いしたところ、こころよくご了承いただけました!工場見学もさせていただきましたそういうわけで、お届けに少し時間がかかっていますが、準備は着々と進めていますので、あと少しだけ、どうか楽しみにお待ちください! ちなみに、萩原工業さんの本社は海を埋め立てたところにありますが、この地域はもともと湿地だったためイグサの栽培が盛んで、イグサを使ってゴザを編んだのが会社のはじまりなのだそうです。そして戦後になり、そのイグサが化学繊維に置き換わって生まれたのがブルーシートだとのこと。まさにこの展覧会で扱おうとしている戦後の産業構造の変化が感じられるエピソードで、不思議なご縁を感じずにはいられませんでした。
クラウドファンディングは、残り6日というところで目標額に達することができました!ご支援くださったたくさんのみなさま、本当にありがとうございました!!みなさまからいただいたコメントに力づけられ、励まされています。現在は展覧会で使った木材をコミューナルな文化施設へと活用するプロジェクトを進めつつあり、さらなるご支援をいただけますとたいへんありがたい状況です。最後まで全力で走りきりたいと思いますので、どうか引き続きぜひお力添えください!さて、今回はこのプロジェクトについてのご報告です。きっかけは、やはりコロナ禍でした。第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の延期が発表されて以降、各国のキュレーターとの定期的な話し合いを進めていることはすでにご報告しましたが、ここでのやりとりを契機に、フィリピン館のみなさんから共同プロジェクトを持ちかけていただいたのです。フィリピン館とのミーティング風景。左下がコ・キュレーターのアレックス、右下が同じくスダーですフィリピン館のテーマは「Structures of Mutual Support」(助けあいの仕組み)。フィリピンでは伝統的に、住民たちが互いに助けあって農作業をしたり、家屋をつくったりする「バヤニハン」という相互扶助の慣習があります。住民が総出で、家を御神輿のように担いで移築する姿などがたいへん有名ですが、フィリピン館では今回、その精神を引き継いで現代的に展開し、建築家が住民とともにコミュニティのための建物をつくることに挑戦するそうです。フィリピン館が進めている住民参加型の建築設計フィリピン館では展示のため、各国の「バヤニハン」に相当する概念の調査を進めていたのですが、日本には「結」(ゆい)などと呼ばれる相互扶助の仕組みを持った集落があります。これを教えたところ、キュレーターどうしのやりとりがはじまり、わたしたちのプロジェクトにも興味を持ってくれました。最初に誘っていただいたのは、ヴェネチア近くのメストレという街のプロジェクトでした。メストレにはヴェネチアへ働きに出ている方がたくさん住んでおり、観光業やホテル業に従事するフィリピンからの移民コミュニティもあるそうです。フィリピン館はビエンナーレの一環として、そこに住民のための図書館をつくるプロジェクトを進めていたのですが、残念ながらコロナ禍でフィリピン政府も財政的に苦しくなり、このプロジェクトは止まってしまったそうです…しかし、すぐに次のプロジェクトへのお誘いがありました。場所はなんと、ノルウェーはオスロの郊外、スレッテロッカ(Sletteløkka)という街です。ヨーロッパの郊外でよく見られるように、この街にも鉄筋コンクリート造の団地があり、多くの移民たちが暮らしています。しかしここには、住民の集まれる場所もないし、こどもたちが遊べる場所もない。そんな場所に、日本から来た木材を使って、住民がみんなで使える建物を、日本の建築家と一緒につくりたいというのです!木材の輸送コストをはじめ、クリアすべきハードルはたくさんありますが、フィリピンと日本の双方で実現の道を探っているところです。みなさんにも、ぜひこの先の報告ができるといいなと思っています。