こんにちは、川野辺菜月です。
当プロジェクト公開から5日が経ちましたので、ご報告に上がりました。
5日目現在、22名のパトロン様からご支援を賜り、合計金額356,000円、達成率62%になりました。プロジェクト公開期間の折り返し地点で目指していたところに、早くも到達してしまいました・・・一重にご協力くださった皆様のおかげです。心より御礼申し上げます。今後は停滞期に入ると思いますが、終了までじわりじわりと伸びて行ってくれることを期待します。
さて、初日の投稿で申し上げた<試作モニタリング企画>ですが、写真家をやっている大学の後輩がありがたくもご協力くださるとのことで、決行することをご報告致します。また、Cクレリックシャツの伸びが思ったより悪く、もしかしたらどのようなものかイメージしづらい方が多いのではと思い、撮影はこちらのアイテムを使用することにしました。また男性のご支援者が少ないので、男性モデルを起用してイメージをお伝えできればとの狙いもあります。この企画は5月に入った頃に活動報告として公開予定です。
このような企画や、私自身がアパレル関係の方にお声かけしていくことでも、より様々な方に当プロジェクトのことを広めてまいりますので、引き続き皆様のご支援・ご協力をお願い申し上げます。
ここから先は縫製の小話になります。「小話」と申しながらかなりマニアックで長くなりますので、お時間のある方・興味のある方はどうぞご覧になってください。
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私はいつも縫製の資材を買うときに、京都市役所近くの「ヨシミ」様にお世話になっております。(HPはこちら)そちらの店主ヨシミ様が、とても服作りに詳しい方なのです。いつもほんの少しの買い物をしては、小一時間ほど縫製の理論について教えをいただいています。その様々な教えのほとんどは、前職の高級婦人服工場でも教えてもらえなかったことばかりです。
ここでは、つい先日お教えいただいたポケット作りのこだわりについてお話させていただきます。
まずこちら、箱ポケットといいます。箱のように四角い飾り口布(くちぬの)をつけた、ジャケットやコートに頻用されるものです。
まず原則として、口布(ポケットの開き口に用いる布)が表から見たときにピシッと張っていることです。しかし張りすぎて身頃にくっつきすぎていても困ります。ポケットは手がすんなり入らなければなりません。そこで、
口布がほんの少し浮いているのがお分かりでしょうか。平置きして、口布のあまり部分をつまむとこのようになります。
この浮き分が約2mm。この2mmが手を入れやすいポケットの秘訣です。逆に2mm以上浮いてしまっても「ブサイク(byヨシミ様)」なことになってしまいます。
次に片玉縁(かたたまぶち)フラップポケットです。フラップとは雨蓋(あまぶた)のこと、片玉縁とはポケットの切り口の片方(下側)にだけ口布(玉縁布とも言います)を巻きつけて仕上げた仕様のことです。下はフラップをめくった図になります。
こちら何の変哲も無いフラップポケットをボディ(マネキンのようなもの)に貼り付けた図です。しかし、多くの量産品がやっているであろう機械付け(ポケットはパーツを機械にセットして自動で縫うことが多いです)ですと、おそらくこのようになります。
フラップがほんの少しはねてしまっています。これらは平置きするとその違いが一目瞭然になります。
左が前者、右が後者を平置きした図になります。「何の変哲も無い」フラップが、平置きするとかなり丸みを帯びて浮いています(ヨシミ様には「浮きすぎ!ブサイク!」と言われかねないので後日また添削していただきます・・・)。逆に平置きでは一見フラットでうまく付いているように見える後者は、はねてしまいます。
なぜでしょう。それは人体がほぼ曲面で構成されているからです。服は平置きするものではなく、人体に着せるものです。特にジャケットはその側面が強く、いかに人体を包み込み・シルエットを出すかが肝になってきます。平置きで美しいフラップポケットを作っても、着せたときには身体に添ってくれません。逆に、平置きしても丸みを忘れないような作りをして初めて、着た時に服と身体が寄り添うことができるのです。
(前者のフラップをまくってみても、なおフラップの両端は内側への丸みを忘れません)
また平置きをした状態でフラップをまくると、玉縁がこのように現れます。
ポケット口布(玉縁布)の下辺、矢印の付近が微妙に凹んでいるのかわかりますでしょうか。ポケット口の端と端を結んだ直線(図中の赤い線)の中央部を3mm凹ませています。これも人体という曲面に着せたときにポケット付け線が美しく見えるポイントになります。
以上、様々なポケットにまつわるこだわりをお話しましたが、これらはどれも必要か不要かで言えば、正直全く必須のものではありません。ですから、高級婦人服工場でも平置きで美しいポケットが日々生産されています。しかし、服を作るときに<人体>を忘れてはなりません。「服作りに正解はなし」といえど、身体と服の調和が取れてこそ本当の「素敵」が作られると私は思います。私はそこを目指したいです。機械のように精緻に、しかし身体への愛情を忘れずに。プロジェクト本文で語った「作り手の意地」とは、少なくとも私にとってはこのようなことです。
以上、縫製のこだわりのお話でした。まだまだ不慣れなお見苦しい試作品を掲載しましたが、このような試作と実践を積み重ね、腕を磨いてまいりたいと思います。長々とお付き合いくださり、ありがとうございました。