2017/05/14 10:42

全ての人とわかり合うことができる。私たちは一つになれる。

そんな言葉が大っ嫌いだ。

一つにされてたまるか。全て自分のことをわかられてたまるか。

福岡の妄想拠点・Ground Moleの理念では、私たちの思考の独立性を「保証」し、それらを面白がってみるところにあります。

 

 

老若男女ありとあらゆるコミュニケーションの壁を乗り越えることを目標にしている成増学園。

ただ、僕自身これらの活動を始めようとか立ち上げようとか思った理由はあくまでも離れる力を身につけるためのものであって、わかりあえない人とわかりあうためではありません。

そもそも、成増学園の諸活動は人同士で完全にわかり合うことそのものが不可能であるという前提から始まっています。

 
【わかりあえないこと】


どうしてわかりあえないのかというと、私たち全員が同じ体験をしてきたわけではないし、私たち全員が同じ感性をもっているわけでもなく、同じ倫理観を持っているわけではないからです。

例えば、お肉嫌いな人のお話を聞くと、なんとなくそれがわかる気がします。
お肉嫌いの多くの人の話を聞いてみると、みんな「実際に動物が肉にされる様子を見てしまった」であったり、「ちゃんと捌いているところを見てしまった」であったり、それらの肉が生きている状態と肉になっている状態の間にあるものを見てしまったことにあります。
ただ、このことを他の人に言ったところで、その人がお肉を嫌いになることはありませんし、むしろさばくことに興味を持ち始めることになるかもしれません。
しかしながら、場合によってはこの話を聞くだけで、お肉が嫌いになってしまう人もいるのです。

実際に動物がお肉にされてしまう場面を見た人同士ではその衝撃を共有することが可能ですが、見たことがない人にとっては断片的なイメージしかできません。
魚なんかをさばくことに慣れている人にとっては、むしろ「なんだ。当たり前じゃん」と言った具合に全く気にしないかもしれません。

…….と、ここまで書いてみたらわかるだろうと僕は思っています。しかしながら、これでも全く意味がわからない人もいるでしょう。

ただ、お肉の体験にしても人間わかりあうことができないという話にしてもわからない人向けにチューニングする事はできるかもしれませんが、チューニングによって、それらの体験が本来持っていた何かが失われる可能性があるのです。

よって、人に自分がした体験を共有するのは難しいでしょう。

また、あるイベントが人によって楽しかったりそうでなかったりするように、同じ体験をしたとしても同じ感じ方をするとは限らないのです。

 
【感じ方は人それぞれ。だからこそ….】


わかりあえないという前提で話を進めていったほうが楽なのは?

ということで、始まったのが諸取組。

わかりあえないことが前提となっている世界を初めに作った上で、いろいろなことを始めればいいのではないか?と思い、わかりあえない空間を作り出すためのアイスブレイクに全力を注ぐようになっていました。

「どうしてわかりあえないのだろう?」
「どうして自分の話は通じないのだろう?」
「どうしてあの人の意見は気持ち悪いのだろう?」

わかりあえない理由。わかりあいたくない気持ち。
そんな自分の内面、相手の思考なんかを見つめてそれを面白がってみる。

それがGround Moleイベントの根幹にあるものであり、永遠のテーマであるのです!

 
【思考の違いを楽しむことーDRIFTERS】

私たちは常に異なる時間を過ごしています。

同じ国にいても、同じ時代にいても、同じ体験をしていても、そのときそのときでの感じ方に差があります。

ある世界があって、そこにコミュニティが存在しているとしましょう。

もしも、そこにコミュニティの状況を理解しないものが入ってきたとしたら…?

 

多くの人はコミュニティの複雑なルールを押し付けようとするでしょう。

すると、その状況を理解できないもの(以下、漂流者)は嫌気がさしてしまうでしょう。

 

Ground Moleとしては、この漂流者枠に期待している部分があります。

そもそも、どうして漂流者と名付けたのかというと、

平野耕太氏の漫画のドリフターズからです!

 

ざっくり言うと、この漫画は異世界に集まった歴史の偉人たちが行方不明組である漂流者とこの世を恨んで死んだ組である廃棄物に別れて異世界で戦う話です。

その中でこのような言葉があります。

漂流者とはつまり技術の渡来者であると同時に思考の差異者だ
かき回せ 漂流者 世界に「あるべき形」など無い
世界を回せ 漂流者

これは漂流者である織田信長が城壁の攻略をしているときに、ハンニバルのサインから考え出した作戦を現場の那須与一たちに実行させ、漂流者の役割に気づいた時に言われた台詞です。

 

同じ時代に生きていないからこそ、同じ人生を歩んでいないからこそ、その発想の差異から新しいものを生み出す。

 

この面白さこそが、Ground Moleの目指すところです。

そのために、僕ができることは思考の差異が認められる環境、思考の差異を実感できる環境づくりだからこそ、最初のアイスブレイクに全てをかけるのです。

聞いた時点で自分の倫理観にあわなかったとしても、その合わない理由を探求してみることによって、思考の差異を徹底的に考え、その上で新しい何かを生み出していく。

 

これがGround Moleの大きな理念の一つです。