劇作家・演出家・小説家の市原佐都子さんより、質問に答える形でメッセージをいただきました!市原さん、ありがとうございます。本質的な、そして、前向きなお言葉をいただきました。みなさま、ぜひ今後とも、応援・ご支援どうぞよろしくお願い申し上げます。
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市原さんにとっての、アーティストとは、芸術文化とは何ですか?
私の作品は身体の生理現象や、人間と異種の動物の交配などを描いていたりします。それは過激な表現がしたいためではなく私なりに裏付けを持ち、そして観客へ説得力を持った表現にしたいと考えた結果ですが、観客の中には生理的な嫌悪感を持つ人もいます。しかしだからと言って、目先にある観客の理解や快感ばかり求めていてはその先にあるかもしれない価値へ手を伸ばすことはできません。芸術は多様であり、誰かにとっての毒は誰かにとっての特効薬であったりします。アーティストとして「私は社会にとって必要な存在である」ということを言うようになるまで時間がかかりました。それは世の中にある「私のようなアーティストのことを不要だ」と感じている視線を感じてです。しかし、それはその視線を内面化していることになりますし、自分の居場所を守るためにも「私はアーティストです」「世の中に必要な存在です」と言っていかなければと思っています。
・市原さんが今回、コロナで困ったことは何ですか?
4月から三か月ミュンヘンへ滞在し新作を現地の劇場へ書き下ろすはずでしたが、その仕事は日本にいながら進めることになりました。当初、ミュンヘンに行くため日本の家を引き払う予定だったので、急遽国内で引っ越しをしなければいけなくなりコロナ禍のなかでの物件探しや引っ越しは大変でした。 8月に台北のフェスティバルで公演するはずでしたが、海外演目をフェスティバルが招聘できなくなり、公演がキャンセルとなり収入が減ることになりました。しかし、仮に公演があっても、稽古場も閉鎖されている今の状況では十分な準備が日本でできていたかわからず、良いものを見せられるか不安を持っていたでしょう。
・市原さんが今後、やっていきたいことがあれば、ぜひ教えてください。
いまはオンラインで過去作品『妖精の問題』の再演をする予定です。過去に書いた言葉たちが現在の状況で聞くとまた違った意味を持ち、それは現在の私達の姿を教えてくれることになります。新型コロナの影響が深刻になり、咄嗟にできることを考え、過去作品のオンライン再演をしてみている現在ですが、今後は新作を書きたいです。この特殊な状況だからこそ沸き上がるもの、そして捉えられることあります。この経験を作品に昇華できればと思っています。
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<プロフィール>
市原佐都子(いちはら さとこ) 劇作家・演出家・小説家
1988年生まれ。演劇ユニットQ主宰。人間の行動や身体にまつわる生理、その違和感を独自の言語センスと身体感覚で捉えた劇作、演出を行う。2011年、『虫』で第11回AAF戯曲賞受賞。2019年、小説集『マミトの天使』早川書房より出版。あいちトリエンナーレ2019パフォーミングアーツプログラム『バッコスの信女 ― ホルスタインの雌』上演。本作で第64回岸田國士戯曲賞受賞。公益財団法人セゾン文化財団フェロー。
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