美術作家・俳優の遠藤麻衣さんから、2つの質問にお答えする形で、 メッセージをいただきました。遠藤さん、ありがとうございます。
AUFでは、フリーランスのアーティストやスタッフを一人でも多く支援するため、寄付を集めております。みなさまのご支援、応援、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
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・遠藤さんにとっての、アーティストとは、芸術文化とは何ですか?
芸術文化は、発表、鑑賞、保存、研究、教育、制作、運営など異なる目的を有する個人や集団が、自由に活動することでその価値を発揮すると捉えています。
私は俳優・美術家として、自分の身体を用いながら、パフォーマンスや演劇、映像、ドローイングなどいろいろな媒体を用いて表現しています。どこで制作し、発表するかについても作品ごとに変わります。例えば、自分の結婚式を演劇祭の演目として発表した「アイ・アム・ノット・フェミニスト!」では、ゲーテインスティトゥート東京の屋上、地下駐車場、居住スペースを作品発表場所として使用させていただきました。作品が実現するまでには、いろいろな方との共同や交渉が不可欠です。場所のリサーチを重ねたり、予算を工面したり、人との共同の結果です。また、毎回の制作過程では、思いもよらない事件や出会いがあり、それらは最終的には作品として現れてこないことも多いですし、あるいは全然別の形の作品へと繋がることもあります。私にとってアートの活動で大事な点は、目的と結果が直線的に結びついているものではなく、流動的で多様性が包括されていることです。
また、Multiple Spirits(マルスピ)というクィア系アートジンの編集部の一人として、言論の場所を作る活動もしています。最近はウィーンのVBKÖにて、雑誌やマンガを通した異文化交流に焦点を当てて、歴史的資料と現代美術の展示を企画しました。現代の芸術文化を考えることは同時に、過去との繋がりを発見して、未来を想像することでもあります。
・遠藤さんや周囲の芸術文化関係者の方々が今回、コロナで困ったことは何ですか?
やはり、発表の機会が失われてしまったことです。私も3月から5月に出演予定していた演劇が1年延期になりました。収入にも影響があります。また、演劇やパフォーマンスのように人が集まることが大事な芸術の、本質的な部分が自粛されたことで表現のあり方そのものに問いを投げかけられたように感じました。一方、非常事態宣言下で自宅待機を要請されたことで、自宅で行う制作や、パソコンを用いたネットでのミーティング、調べ物など、今まで以上に濃密に行えるようになっている仕事があることも感じています。周囲の芸術文化関係者の中では、移動時間がなくなり、仕事に集中できるようになり質が向上したと話すことも多いです。今までが忙しすぎた、と。何事も速さを求められ、忙しさから逃れられない状況に疑問を感じることができたのはコロナの副産物だと思いますが、それが非常事態宣言解除あとの日常に生かせるのかどうかも気になっています。
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<プロフィール>
遠藤麻衣(えんどう まい) 美術作家・俳優
1984年生まれ。俳優、美術家。演劇、映像、写真などのメディアを複合的に組み合わせて作品を制作している。近年の主な発表に《When It Waxes and Wanes》(VBKÖ, 2020)、《パンゲア・オン・ザ・スクリーン》(2020)、《Stilllive》(Goethe-Institut Tokyo、2019)、《コンテンポラリーへびんぽじゃじゃりの引退》(hym、2018)、《アイ・アム・ノット・フェミニスト!》(Goethe-Institut Tokyo、2017)、「MOTアニュアル2016 キセイノセイキ」(東京都現代美術館、2016)。また、最近の出演に指輪ホテル「バタイユのバスローブ」(2019)、岸井大輔「始末をかく」(2013~2018)など。丸山美佳と「Multiple Spirits(マルスピ)」(2018-)を創刊。http://maiendo.net