2021/08/01 20:18


令和2年9月25日 (金)
会場:曹洞宗 義峰山 宝昌寺
https://www.facebook.com/houshouji

「勧進キャラバン」の報告がしばらく空いてしまい申し訳ありません。
ここから改めて、昨年から続けているキャラバンの報告を再開したいと思います。
前回は活動報告56[第16回目]のキャラバン会場、山形県鶴岡市にある玉川寺の報告でした。

第17回目のイベント会場は、秋田県山本郡藤里町にある「宝昌寺(ほうしょうじ)」です。住職の新川泰道さんは、同じ曹洞宗の佐藤良規さん(岩手県安楽寺)からの紹介で、事前にオンラインで何度か話を進めさせてもらいました。

当日は山形県から向かうことを伝えていたので、道中にある大仏を教えてもらい、立ち寄ることに。

長谷寺

赤田の大仏


赤田の大仏

「秋田県立大学」を横目に、山へ山へと道を進めていくと、「赤田の大仏」という看板が見えてきました。境内に車をとめると、歴史を感じさせる立派なお堂があります。扉は閉まっていたのですが、事前に「自由に開けて良い」と聞かされていたので、ゆっくりと開けてみました、、。すると、すぐ目の前に大きな観音様が! 扉を開けてすぐに現れるので、自然に見上げてしまう迫力です。金色の体と豪華な装飾のせいもあり、しばらく立ちすくんでしまいました。

像の後ろにも沢山の古い仏像が安置してあり、どれも立派な姿なのでしばらく鑑賞していると、車の音が聞こえました。外へ出てみると、住職らしき方が帰ってきたようです。挨拶をしようと歩きかけた途端、「こっちに来ないで〜!」と叫んでいます。「あぁ、やはり警戒されているんだな。」と思ったのですが、どうやら逆のようです。ご住職、実は昨日から熱があるみたいで、「自分に近寄っちゃダメ」と、むしろこちらに気を使ってくれていました。

残念ながら今回はお話を聞くことはできなかったのですが、何度でも拝みに来たくなる大仏でした。改めてご挨拶に伺いたいと思います。

「赤田の大仏」(十一面観世音菩薩立像)
長谷寺  秋田県由利本荘市赤田字上田表115
https://yurihonjo-kanko.jp/yrdb/akatadaibutu/


本堂前に駐車


さて、本日のメインイベントはこれからです。
この日はキャラバンでも珍しく雨の道中、イベントは夕方スタートを予定していたので、午後に秋田県に到着。山形県から別ルートで向かっていた前田さんとバイナルマンは、道中で綺麗な写真をいくつか撮ってくれていました。そのうちの水平線を一枚。

宝昌寺の新川住職と共に、明日のイベント会場になる本宮寺の住職、佐藤善廣さんが傘をもって迎えてくれました。お寺に着いてまず行うのが、キャラバンカーの駐車位置を決めることです。この日は雨が強かったので、本堂入口のギリギリまで寄せて停めさせてもらいました。

本堂に入ると、もう見慣れたアルコール消毒。
そしてこのお寺には、手作りの可愛いアマビエがいらっしゃいました。勧進仏像の横に並んでもらいます。

しばらくすると、大きなワゴン車が到着。
中から出て来たのは、岩手県宮城県でお世話になった佐藤良規さんと杉浦恵一さんです。二人とも子供連れで参加しに来てくれました。冒頭でも触れましたが、今日のお寺の新川泰道さんも、明日のお寺の佐藤善廣さんも、良規さんからの紹介でした。東北でイベント会場を探していることを伝えたら、すぐにお二人に繋いでくれました。お陰様で、その後もオンラインでやりとりを進めながら準備をすることができました。

本堂入口に感染対策

手作りのアマビエ


法要と対談

この日の法要は、なんと僧侶5名で行いました。新川住職には「堂行(どうあん)」、佐藤善廣さんには「維那(いのう)」をお願いし、僕が「導師(どうし)」を行って、佐藤良規さんにも参加してもらいました。

そして、法要直前にサプライズゲストが登場。同じ秋田県に住む「同安居(どうあんご)」の櫻田元康(げんこう)さんが急遽手伝いにきてくれました。元康さんとは永平寺の修行仲間です。しかも、ただの修行仲間ではなく、同じ日に修行に入った10名の内の1人。修行の同期は100名ほどいるのですが、基本は10名1セットのままで修行が進んでいきます。つまり修行時代は、毎日毎日、彼の横で大きなイビキと寝返りに悩まされ続けた。そんな親密な仲です。

元康さんには太鼓を叩く役をお願いしました。曹洞宗では普段あまり太鼓を叩かないのですが、「祈祷」という祈りや願いをする法要の時には、この太鼓が重要な役割を担います。

「堂行(どうあん)」 木魚や(けいす)という鐘を鳴らす役
「維那(いのう)」 お経や回向を読む役
「導師(どうし)」 法要の中心的な役
「同安居(どうあんご)」 修行期間の同期


5人の僧侶による「祈祷法要」を終え、対談に入ります。
対談は、いつものように僕と前田さん、新川住職、そしてせっかく駆けつけてくれた元康さんにも入ってもらいました。ちなみに元康さんは修行時代に様々な伝説をもっているのですが、(本人の希望で)その点には触れられなかったのが心残りです。

対談ではまず、ここも他と同様に、お葬式や法要が延期/縮小している状況を聞かせてもらいました。田舎になればなるほど、県外から人が来ることに抵抗がある。感染そのものが怖いのではなく、自らが感染源になってしまうことが怖い。この話は、本当に多くの土地から聞こえてきた言葉です。

新川住職は、「奈良時代に行基が全国をまわったという歴史になぞらえて、現代にも全国をまわる。その姿勢に関心を抱いた。」と話してくださいました。一方で、行基の時代と現代が違うのは、宗教的な事物に対する抵抗感。それを「アート」というものを関わらせる事によって補完する。そんな新たな関係性がこのプロジェクトの面白さだと、そんな話にもなりました。

この当時(2020年9月)は、第2波がおさまってきた頃です。対談の様子を見返すと、まだまだメディアの情報も人伝の情報も定まらず、それぞれの考えや立場を探っている心境が窺えます。

杉浦親子

新川住職


白神山地

法要中には、駆けつけてくれた杉浦家の子供たちが「願い」を紙に書いて貼り付けてくれました。法要後には、新川住職がコロナの影響で開催できなかったコンサートのチラシを貼り付けてくれました。

雨のせいもあり、イベントが終わる頃には、外はもう真っ暗。
住職に用意していただいた藤里町唯一のホテルへ、それぞれの車で向かいます。法要に参加してくれた佐藤家族と杉浦家族も同じホテルに宿泊。立派なホテルに到着すると、子供たちは無我夢中で走りまわっています。感染対策を十分にとった上で、皆さんと一緒に夕飯をご馳走になりました。

新川住職が聞かせてくれたのは「白神山地(しらかみさんち)」のお話。この秋田県藤里町は、1993年に日本初の世界遺産に登録された「白神山地」にあり、世界最大級のブナ原生林が広がる山々に囲まれています。ちなみに、日本にある世界遺産の多くは法隆寺/姫路城/原爆ドームといった「世界[文化]遺産」であり、「世界[自然]遺産」となると、白神山地の他には、屋久島、知床、小笠原諸島しかありません。そんな手つかずの自然が豊富な藤里町には、鉄道の駅もコンビニもありません。一方で、観光地としては人気があるため、世界遺産登録時にできたのが、今日宿泊するホテルなのだそうです。

興味深かったのは、青森県との関係。この「白神山地」は、秋田県と青森県を跨いで広大な範囲に分布しているのですが、青森県民の声が大きいためか、秋田県民の控えめな性格のためか、「白神山地=青森」と思われてしまうことが多いらしいのです(笑)。新川住職は、「いつも良いところは青森が持っていく。」と苦笑まじりに語っていました。近年、藤里町では新たに「南白神の里」といったフレーズを使い出しているようです。
https://www.fujisato.info/minamishirakami-map/

雄大な白神山地の麓で、たまった旅の疲れをとることができました。


風間天心