学校訪問レポート続編(2/9午後)
和光学園に続き、2月9日午後には稲城市立平尾小学校を訪問しました。
以下にゼミ生が3人がまとめてくれたレポートをお届けします。
学校訪問レポート「平尾小学校」(←PDF版へ)
1はじめに
2017年2月9日(木)に行ったフィールドワークでは、午前中に和光高校を見学させて頂き、午後には稲城市立平尾小学校でiPadを利用したクロスカリキュラム型の授業についての学びの時間を持つことができました。
平尾小学校では、まず1年生の教室を見学させて頂きました。貼り出されている掲示物や教室の備品、教材などを手がかりに、1年1組担任の野中美幸先生に平尾小学校の現状を教えて頂きました。
他学年の授業も終わった15時45分からは、平尾小学校の授業実践の勉強会の場に参加させて頂きました。テーマは「豊かな言語生活を開く国語教育の創造~主体的・協働的な課題追究活動としての単元学習の開発~」で、iPadを活用した国語科・生活科・図工科のクロスカリキュラムの授業実践について知ることができました。実践報告の内容は以下の通りです。
2iPadを利用したクロスカリキュラム型の授業実践 (野中美幸先生)
【 単元名 】
「ようこそ、わたしのさくひんてんへ」
―「大すきな チャボ」の制作過程をスライドショーで紹介しよう―
(対象:小学1年生)
【 単元の特徴 】
1、行事と関連付けた国語科、生活科・図工科のクロスカリキュラム
→生活科での生き物とのふれあい体験を基にして国語科の「書く」学習(絵日記を書く)、図工科の作品作りにつなげた学習を行った。さらに、自分の作品について紹介するという「話す」学習を行った(ロイロノートスクールを使って自分の作品を紹介する音声入りスライドショーを作成)。
※実の場の設定による目的意識・相手意識の明確化
→作成やスライドショーを作品展で公開するということ(目的意識)をあらかじめ言っておくことで、子どもたちにお客さんがいること(相手意識)を確認させることができ、主体的な学びにも繋がる。
2、「話すこと・聞くこと」の学習ツールとしてタブレットを使用
→音声入りスライドショーの作成を通して「話す」力の向上を目指す。
3、自己評価・相互評価を用いた学習
→ロイロノートスクールでは録音や再生を簡単に行うことができる。話したことをすぐにフィードバックできるため、自己評価・相互評価につながる。また、修正すべき点に気づいて繰り返し録音することで、話す技術が向上したり、グループでの教え合い・学び合いにも活かされる。
録音+再生の後にアドバイスをし、その後再録音することが、児童の「話す力」の向上に繋がる。
【 単元の目標 】
作品の制作過程や工夫した点などを分かりやすく話すことができる。
グループで話し合い、分担を決めたり、話す内容や話し方を教え合ったりできる。
【 付けたい力 】
観察・体験したことを順序よく捉える力
分かったこと・感じたことを言葉や文章で表現する力
伝えたいことを分かりやすく話す力
【 おおまかな単元計画 】
生活科+国語科(1時間)
→チャボと遊び、絵日記を書く。
図工科+国語科(7時間)
→チャボの絵を描き(6時間)、工夫したことを図工日記に書く(⅓×3時間)。
国語科(9時間+練習4時間)
→・図工日記を書く。
・ロイロノートに慣れるための練習。
・作品を説明するための原稿を書く。
・スライドショーの作成。
・スライドショーの鑑賞・交流。
【 iPadの使い方についての留意点 】
渡してしまってからでは収拾がつかないため、簡単な約束をしてからiPadを渡す。
→「タイマーが鳴ったら黙って手を上げる」、「机の上から持ち上げたりしない」、「持って立ち歩いたりしない」、「机と机の間には置かないで机の真ん中に置く」、「使うアプリはロイロだけ」など。
iPadを持つ「班長さん」は週替りでローテーションする(4人で1台使用)。
→強制的に順番で役割がつくことで均等にiPadが回る。
→得意な子だけ積極的に操作して、他の子は見ているだけということがなくなる。
【 児童の反応 】
初めは自分達でスライドが作れるのか、iPadが操作できるのか不安そうにしていた。しかしある児童が「iPadなんて大きな携帯のようなものだよ」と発言すると不安が取り除かれたようだった。
児童たちは録音した自身の声を聞くのが恥ずかしく、最初はためらいがちだったものの、クラス全員で活動することによって恥じらいもなくなり、積極的に自分たちで録音するようになっていった。
ローマ字を習っていないため、ローマ字入力はできなかったが、手で文字を書いたり、絵日記を写真に撮ったりしてスライドを作っていった。
【 成果 】
教え合いながらスライドショーを作ることで、1年生なりの学び合いができた。
[録音→再生]することで話し方の自己評価・相互評価がすぐにできるため、分かりやすく話そうという意識が高まり、話し方が上達した。
繰り返し録音でき、成功体験が自信・意欲的に繋がった。
話すことが苦手な子でも安心。
ルーブリック評価により、学習の目当てが明確になった。
【 課題 】
原稿を読むことになりがちであった。今後は自分の言葉で話せる力をつけることが必要。
【 他の先生からの意見 】
授業にICTを活用することはこれから絶対必要になる。しかし、デメリットも考えなければならない。
→どのようなデメリットがあると考えられるだろうか?
→遊んでしまう。
→これはICTとは関係ないのでは?
通常の授業でも遊んでしまう子は集中できていない。
→メリットが多く、デメリットはこれと言ってないのでは?ただし、ICT取り入れるまでが大変。
→教員の意識の問題か。
【 その他(野中美幸先生のお話から) 】
協働的に学ぶことで、教師が正解を教えるのではなく、仲間から学ぶことができる。
→自分で学ぶ・仲間と学ぶ
国語を他の教科と関連づけ、毎時国語の学習であることを理解させることで、常に言葉を使うことを意識させることが大切。
→意識しないと、やっていることは同じでもクロスカリキュラムにならない。
教科・領域の奪い合いはおかしい。大事なのは児童にどんな力をつけさせたいか。
クロスカリキュラムは小学校だと柔軟に対応できる。中学校では教科ごとすり合わせが必要になる。
3おわりに(見学者の感想)
小学1年生にとって言葉の学習は重要であり、どの教科においても、言葉を学んでいるという意識を持たせることは大事であると改めて感じた。クロスカリキュラムは、教科担任制ではなく、すべて1人の担任が教えるという小学校の先生だからこそ行えるものでもあり、教科に限らず、いろんな角度から学びを深めていくことは児童にとってとても有意義な活動であるように思った。
小学校という場所に入るのが久しぶりだったため、何もかもが新鮮に見えた。ホワイトボードを使った役割分担表、机の配置の仕方、掲示物の位置など、子どもの状況に合わせて様々な工夫がされていることが分かった。子どもにとって過ごしやすい・学習しやすい環境を整えることはとても大切だと感じた。
発達障害をもった児童もいるということで、さまざまな工夫が授業や教室デザインに施されていることがわかった。協同的な学びを通して自分以外の児童とコミュニケーションをとることができるだけでなく、教えあったり学びあったりするなかで自分とは違う考えをもった児童を理解できるようになると思った。