2018/06/06 13:10
日本で唯一、明治~昭和初期の甲斐絹生地サンプル数百枚のアーカイブを所蔵する山梨県産業技術センター富士技術支援センターの五十嵐主任研究員から、甲斐絹と今回の商品の関わりについてのコメントをもらいました。
日本の物産は「結城」や「塩沢」など土地と名前が結びついていることが多く、どこで作られたかがブランド価値を持っていた時代がありました。「甲斐絹」という名は、現代では馴染みがありませんが、明治・大正期には大人から子どもにまで染み渡って知られている言葉でした。
しかし、戦後の流通形態の変化によって織物産地は下請け工程を担うことになり、産地の名前が表に出ることはなくなりました。現代では、ファッションを楽しむ人達でさえも産地の名を知らないことは珍しくありません。
他方で、クラウドファンディングは近年、造り手と消費者がダイレクトに価値をやりとり、共有できる手段として広がりを見せています。消費者は再び、かつての人々と同じように産地や造り手、物産そのものに思いを馳せ、取り組みを応援することができるようになりました。今回の起案を通じて、より多くの人に現代の「甲斐絹」が広まっていってほしいと願っています。
うちわと扇子、どちらも最小の力でほしい風が起こります。風も気持ち良いのですが、仰ぐ際に手で感じる空気の抵抗感も心地よいですね。風を起こすという機能的な用途だけでなく、甲斐絹特有の透け感も絶妙です。透けるほど薄くてしかも糸が高密度という甲斐絹の特色が生かされていると感じます。
うちわも甲斐絹も「軽いのにしっかりしている」という共通点があり、同じ要素をもつ2つものがそれぞれの進化を歩む中で出会ったと考えると、感慨深いものがあります。また、通常は平面的に使われる事が多い甲斐絹が、扇子の凹凸によって新しい表情を見せているところにも注目してほしいと思います。光沢や質感、柄の出方など、一つの美しさの表現として楽しむことができます。