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“紙は神に通ずる”
棟方志功は出雲民芸紙 紙漉き職人 人間国宝安部栄四郎に初めて会ったときに語っています。
古代から神話の地であり、神在月で知られる出雲大社など、神様やご縁、パワースポットなど神秘的なことに話題は事欠かない出雲地方です。
山々に囲まれ、緑たっぷりの風景、宍道湖の美しい夕陽など、自然が身近でそこにいるだけでその恩恵を十分に受け取れる環境です。
八百万の神様として、自然にあるもの全てを神様と尊び、大切にしています。
松平不昧公から続く、お茶と和菓子の文化など、日本の文化や心を大切にしています。
茶の湯の文化は、多くの窯元を産み、手をかけた美しいものを普段の食器に使うなど、民芸の精神“用の美”日常の使うものの美しさを取り入れて暮らす人が多いです。
特別でないときでもお抹茶をふるまうなど、風流な文化が息づく、そんな土地柄です。
出雲人というのは、控えめです。
自分という軸は持ちながらも、出しゃばらず、“和”を尊ぶそんな精神の人たちです。
几帳面な部分を持ち合わせ、変化をあまり好まず、守ることに長けています。
もちろんすべての人に当てはまるものでもないし、私の主観の部分も大きいとは思いますが。
出雲という場所は、落ち着いた、どこか神秘的で、癒される場所だと思います。
そんな出雲の地で、手漉きによって1枚1枚作られている、出雲民芸紙。
全ての工程に地下水が使われています。
自然に囲まれた作業場。
この土地のエネルギーをたっぷりすっています。
そして、紙の漉き方。
これ、地方によって全然違うのです。
漉き方には型があって、桁と呼ばれる部分の動かし方が違います。
漉く人の人柄や、風土、気候などがその漉き方の違いをうみ、その土地の紙となるのです。
同じ野菜でも、栽培される場所や、栽培者によって味が変わるように。
手作業で、大切に大切に作られている紙。
人の手がかかるから生まれる、優しさを持っています。
それは、家族のために手をかけて作られた食事のように。
一枚一枚の紙は、繊維を傷つけないような工程を経て作られています。
繊維を傷つけていないから生まれるつやと、なめらかさ。
そして原料を混ぜず、雁皮は雁皮、楮は楮、三椏は三椏だけで漉かれた紙は出雲民芸紙の特徴です。
シンプルに、素材を大切に。
“和紙は使われてこそ生きる”とした安部栄四郎さんの言葉どうり、使う人のことも重点に置いて作られています。
たくさんある色も、使う人のために増えていきました。
紙が完成するまで、水場には水神さん、かまどにはかまどの神様、漉き場には紙の神様、各所に神様が祀られ、神様に守られています。
紙は神様に通じる。
神様が宿る紙。
出雲民芸紙はそんな紙です。
いろんな要素を全部含んで、出雲民芸紙。
ここだけの、ここしかない紙。
私はここに生まれ、育ちました。
だから、この和紙はとても手になじむ。
大切にその紙を使っていきたい。
千年、二千年と受け継がれ、歴史に育まれてきた日本の財産である手漉き和紙という日本文化。
伝え、広め、使うことでこの長く続いてきた伝統をつないでいきたい。
私が作品を作り、商品にすることで、もっと身近に手漉き和紙を取り入れてほしい。
触れてほしい、そのやさしさと、癒しの紙に。
まだまだ、出雲民芸紙を未来へつなぐプロジェクトは始まったばかり。
原料を栽培すること、
道具、漉き手、使う人がチームワークを作っていくこと。
これからも出雲民芸紙、手漉き和紙をいろいろな方向から支えていきたいと思います。





