村楽の東(アズマ)と申します。主に地域プロジェクトの立上げを仕事としている、地域再生プロデューサーとして北は北海道、南は徳島まで活動しています。
▲愛犬の“地域おこし協力犬”メイプルと旅しています
今回は福島原発20km圏内の川内村で、むらの誇りを取り戻していくプロジェクトを立ち上げます。是非多くの皆様のご協力と、ご関心をいただきたいと考えております。
お年寄りから川内村の歴史を聞き書きし、アーカイブを残したい!
▲天山まつりにおいて演舞される西山獅子舞
古くは坂上田村麻呂の征伐、明治政府による山林差し押さえ、そして東日本大震災による原発事故、、阿武隈地方は中央集権と戦い、虐げられてきた歴史が存在します。私たちが教科書で習う正史とは別に、敗れざる者たちがさらなる発展を果たした野史が、川内村には口伝として伝承されています。
1873年地租改正の際に政府によって村民たちの入会地であった共有林が差し押さえられ、国有地に編入されました。数々の犠牲を伴う行政訴訟によって、1910年に山林を引き戻すことに成功しました。この村有林を新しいむらづくりの根幹と位置付け、全国消費の約50%もの木炭を生産する「炭焼き日本一の村」となったのです。
▲川内村公有林引戻し運動の資料(村役場保存)
震災によって川内村からは若い世代を中心に流出が続き、都市部で新しい暮らしを始めている人たちもいます。川内村の不撓不屈なアイデンティティが若者たちへと受け継がれ再び復興へと向かっていくために、その歴史をきちんと編纂し表現していきたいと考えています。
歴史アーカイブを紙芝居や映像として表現し、多くの人々に知ってもらいたい!
現在、川内村の村民が通った保育園の跡地をリノベーションして、むらのビジターセンター兼ゲストハウスとして開かれた場にしていくプロジェクトが進んでいます。
▲福島大学の学生たちと地域住民のワークショップの様子
老若男女、年齢や職業や国籍に捉われない多様な人々に集まってもらうために、まずは川内村の成り立ちについて知ってもらうコンテンツが必要です。
▲天山文庫は村人たちの寄進と労働奉仕によって建てられた
また村内には天山文庫という、詩人・草野心平の蔵書が納められた場所があります。毎年夏には「天山祭り」が開催され、むらの伝統芸能や民謡が唄われます。むらに眠るこれらコンテンツをITなどを活用した映像や多言語によって広く公開し、みちのくにおける東西文明の交わる地=天山として、東北と関東の植生が交わる豊かな自然環境とともに体験してもらえる地域づくりを進めていきます!
歴史アーカイブを表現することでむらの誇りを取り戻すきっかけにしたい!
震災発生時に約3000人程度いた村の人口に対し、完全帰村している人は1000人に満たない程度です。川内村の村民というアイデンティティとは何か、むらに住んでいることが決してその要件ではなくなっている状況下において、再び川内村としての連帯を取り戻すためには「むらの誇り」を呼び起こす必要があります。
▲子どもたちにも伝統芸能を紡いでいきたい
「炭焼き日本一の村」「国を相手に山林を取り戻した」といったお年寄りから聞こえる様々な話は、中央集権体制に対する辺境の振る舞いという点において、現代社会に生きる私たちにとっても非常に参考になります。これら口述伝承をアーカイブすることによって訪れる人たちにむらの暮らしを知ってもらいたい。そう考えています。
▲森の奥にある平伏沼は天然記念物モリアオガエルの繁殖地
▲村内には至るところに清流が引き込まれ、生活に使われる
また米・そばをはじめとした農作物、あるいは豊かな自然環境が育む山菜やキノコといった食文化を継承するとともに、炭焼き体験や最新鋭の太陽光、小水力、バイオマスといったエネルギー自給の取組みについても体験プログラムをつくっていきたいです。
旧保育園をリノベーションした蝉鳴寮(セミナリオ)をオープンしたい!
2016年の1年間をかけて、むらの歴史をアーカイブしていくとともに、ビジターセンターとしての旧保育園リノベーション計画をとりまとめていきます。2017年はリノベーションを実行し、蝉鳴寮をリニューアルオープンするとともに、むらで体験できるようなコンテンツを取りまとめて情報発信していきます。
▲むらの保育園として、村長や多くの卒業生の想い出が残る蝉鳴寮外装
▲モダンな雰囲気の蝉鳴寮の内装には、隈研吾氏が制作した柱もある
スケジュール
2016年 「川内村民俗伝承アーカイブプログラム」(当事業)実施
2016年4月~12月 蝉鳴寮リノベーション計画を策定
2017年 蝉鳴寮リノベーション開始
集まった支援の用途とその内訳
当事業においては、福島県のサポート事業により100万円の助成が行なわれます。自主財源分の50万円については、クラウドファンディングによって調達することで経済的のみならず関心を持つ方々を増やしていくための広報予算として、川内村の魅力をお伝えしていくために使っていきます。
映像制作費=20万円
広報用ホームページ・チラシ制作=20万円
事務経費・リターン品送付=10万円
近隣のために尽くす人は、同時に人類のために尽くしている。/ガンジー
「私の考える村の自治とは、自らの存続に必要なものを近隣に頼らないが、依存が必要な他の多くのものについては互いに頼り合う完全な共和政体だ」とは、マハトマ・ガンジーの言葉です。
食やエネルギー、そしてその地域のアイデンティティといった私たちの暮らしを支える要素を自らの手もとに引き寄せることは、真の民主主義を被災地である福島から実現することだと考えています。大量生産大量消費の時代からいち早く脱却し、物質的豊かさの次の段階へといち早く移行していく生き様こそが、日本が世界の未来に対して貢献できることなのではないでしょうか。
私はこの国の未来の希望を、多くの人々が絶望が支配していると考えているこの福島の場所に見つけました。是非とも皆様にこのむらの宝物が持つ可能性を知っていただき、自らの暮らし方を変えるきっかけにしてもらいたいと考えています。皆様のご協力をお待ちしております。
起案者情報
【団体名】一般社団法人村楽
【代表者】東 大史
【facebook】https://www.facebook.com/sonraku/
【Twitter】https://twitter.com/taishibrian
最新の活動報告
もっと見る炭窯のつくり方
2016/02/22 19:55私たちが何気なく使っている木炭ですが、いったいどのように作られているのでしょうか。今回は炭窯をつくるところから、師匠に習うことができましたので公開していきます。 今回は師匠がずっと炭焼きを続けられてきた窯の土台が残っており、そこを活用する形でつくっていきます。土台は石組みのしっかりしたもので、底の部分に砂利を敷いてキッチリと水平状態にします。そしてそこの上に土を盛っていきます。川内村のこの地域の土は炭焼きに最適と言われており、適度な粘り気と乾燥しても崩れない強さを備えています。 床に当たる部分の土を詰めて固めたら、そこに炭にする木を並べていきます。この木の並べ方によって炭窯の形が決まるので、大きなものと小さなものを上手く組み合わせる必要があります。 木を並べた上に土を盛って、炭窯の天井をつくっていきます。このまま焼くことによって天井が固まり、炭を取り出しても炭窯として完成するわけですね。土は木でつくった杵で叩きまくることで固めていきます。叩き方が甘いと、そこにヒビが入って中から煙が漏れたり、空気が入って内部の木がどんどん燃えてしまう原因となりますから注意が必要です。 土が固まった窯は、ある程度水分を含んでいるために濃い色をしていますが、炭焼きをしている間に水分は飛んでいき、次第に明るい色になっていきます。 形が決まったら、炭の出し入れをする口を開けます。ここから火を焚くことで炭窯の内部の温度を上げていき、木から水分を飛ばしていくわけですね。 炭窯のつくり方は以上の通りになります。次回は実際の炭焼きの様子についてレポートしますね。お楽しみに! もっと見る避難と定住
2016/02/21 11:43川内村を含む福島県浜通り地方では、震災から5年が経っても未だに10万人もの人々が避難生活を送っています。そしてそれは地震や津波という自然災害が原因ではなく、原発事故という人災の影響である事実をどれだけの人が認識しているでしょうか。 住民票人口と国勢調査人口の違い これら浜通りの自治体においては、住民票登録してある人口(≒震災前の人口)と国勢調査の人口(≒現在の定住人口)に大きな差異が生まれています。国勢調査は戸別に訪問したりアンケートに回答したりする実態調査ですので、よりリアルな状況が見て取れます。 浪江町、双葉町、大熊町、富岡町は依然として全町避難指示となっているため国勢調査人口は0となっています。また放射性物質の飛散が多かった飯館村、葛尾村もまだ住民帰還は始まっていません。一方で川内村や田村市、川俣町といったあまり放射性物質が観測されていない地域では帰還が本格的に始まっていると言えます。 原発避難、住民票残したまま定住多数 復興計画に影響も 東京電力福島第一原発事故で避難を強いられた人々が避難先で、新居を構える動きが加速している。事故から5年がたとうとし、安心して暮らしたい人が増えている。だが、ふるさとへの思いや、自治体からの助成を受けられなくなる都合などで、住民票を残したままの人も多い。復興計画に影響する可能性もある。 <朝日新聞デジタル>記事より抜粋 定住とは何か、を問いかけた震災 現在、日本全国の自治体が地方創生にまつわる総合戦略を策定し、定住人口=住民票を移してくれる人々を増やしていこうと考えています。しかしながら同じ日本国内において、住民票を置く場所とは違う自治体に住んでいる住民が存在する事実は、ある意味ダブルスタンダードと呼べるでしょう。 その地域に定住しているという意味は何なのかを再定義する時期に差し掛かっているとも考えられます。最近は二拠点居住や遠距離通勤といったライフスタイルも出てきており、決して住民票を置くことが定住しているとは言えないケースも増えています。 それよりも地域を維持していくための自治的活動への参画であったり、美しい風景や土地に対する愛着を醸成して住み続けたいと思う気持ちをどのように高めていくか、そういった形には見えない部分を大切にしていきたいですね。 もっと見る福島から、みらいへの手紙
2016/02/18 19:06東日本大震災からもうすぐ5年、「もう5年」と捉えるか「まだ5年」と捉えるかは人それぞれかと思いますが、日を追うごとに私たちの日常生活の話題に上ることは減っていっているように思います。あの時に感じた不安や恐怖、あるいは世の中が変わるのではないかという予感も、記憶とともにどんどん薄れていってしまっています。 「みらいへの手紙」―福島の現状を描いたアニメ 今回、東日本大震災後の福島の現状を伝える実話を基にした短編ドキュメンタリーアニメ「みらいへの手紙~この道の途中から~」が公開されました。この5年間に福島県内で起こった様々なエピソードをオムニバス形式で10本のストーリーとしてまとめたもので、そこにはもちろんモデルとなった実在する人たちが存在しています。 <iframe width="560" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/8GEv8rQt3h4" frameborder="0" allowfullscreen></iframe> 川内村が舞台となっている作品は以下の2本、それぞれがじんわりと温かい気持ちにさせてくれるエピソードとなっています。是非ご覧ください! 「福ちゃんがやってきた」 「ちかちゃんの卒業」 美談でも悲劇でもなく、等身大の暮らしがそこにあってそれが急激に変化したという現実。そこに対して気持ちの面で追いついていない人々がほとんどなのだと思います。本人が語ると重苦しくなってしまう話でも、アニメ化することによってコミカルかつ俯瞰して描くことが可能となっています。 ナレーションを担当するのは、福島県出身でドラマなどでも注目されるディーン・フジオカさん。自らの記憶の中にある福島での暮らしを思い出しながら、それぞれのストーリーのイントロダクションを読み上げています。 人間はそんなにヤワじゃない。 私たちはどうしても、復興や地方創生といった言葉の裏には、同情や貢献といったある種の上から目線を抱いてしまいがちです。でも一度でも福島の人々の暮らしに触れてみると、そんな偉そうな言葉が肩透かしを食らうような日常を送られていることに気づきます。人間はそんなに軟弱じゃないし、ある種の鈍感さによって私たちの気持ちが豊かに守られているという生きていく強さを実感できる機会を、今後もつくっていきたいと思います。 もっと見る