”『食べる通信』を埼玉でやる”と言ってなかったら、きっと私はこの親子には会っていなかったでしょう。
写真は、去る6月24日、ポタジェのPRキャラバンに協力してくださった「まえしぼファーム」の高野さん親子。
「埼玉農家の今を語る!父&息子のリアルトーク」の様子を捉えた一場面。
さいたま市桜区の米農家として、元禄時代から16代続く高野家の水田も、父・博明さん(68歳)の代になると、専業ではやっていけない状況になり、やむなくサラリーマンをやりながらの兼業農家へ。
「本音を言えば、息子には継がせたくない。農業では食っていけないから。」と語る博明さん。
長男・次男も農業は継いでいない。
「じゃあ、ご先祖様から16代守り抜いてきたあの水田を自分の代で見捨てるのか?」
「いや、それもできない…」と言葉は続く。
高野さん親子の場合は、たまたま3男・智司さん(22歳)が農業に興味を持ってくれた。まだ学生だが、父が働けなくなる前までに、その英知を吸収したいと言う。
その智司さんも、父親が週末農業をやっていたのを見てきたつもりだが、田んぼで働く父の姿をホントの意味で見るようになったのは、実はつい最近。自分が農業に関心を持つようになってから。
家族を養うために、なんでも新しいことにチャレンジしてきたと語る父を見る目は、グッとくるものがある。
埼玉の田んぼはこうしてなんとか、次の世代に引き継がれるのだなと考えると、その一場面に立ち会えたのは実に感慨深い。
このように書くと、農家って大変だなとか、農業ってきついんだねとかって思ってしまうかもしれないが、そうはならないのがこの親子。実際は大変だろうということも、実に楽しそうに話すのだ。智司さんも生き生きとしている父の後ろ姿を見たからこそ、農業に興味を持ったに違いない。
こんなに楽しそうに働く人が作った米が、美味くないわけがない!
会場となったコミュニティ食堂「そらいろ」にて、博明さんの米で作ったおにぎりをいただいたが、いや~、これが美味しいのなんのって。目の前で話を聞いたからなおさらです。
(あとで値段を見たところ、ブランド米にも拘わらず、普段私が買っているお米より同額くらいか少し安いくらい。)
こんな話を目の前で聞き、父と子の大事な一場面に立ち会ったら、そりゃぁ、智司さんが作ったお米も食べてみたいと思うのが人情です。そのためにはちゃんと地元の消費者が、高野さんから適正な価格で買って応援するのはとても大事なこと。
読んで、食べて、「つくる人」と「食べる人」を繋ぐのが、『食べる通信』の真骨頂。
自力でこんな生産者を見つけようと思っても、至難の業です。
そして、家で米を噛みしめる度に高野さん親子の表情が浮かぶ。
『ポタジェ~食べる通信from埼玉~』は、生産者との新しい関係をつくる唯一無二のメディアです。
このような機会を継続して提供できるよう、ぜひ応援をお願い致します。