2019/06/07 12:51
こんにちは。
階段王になる男渡辺良治です。
 

レース開始は夜明け前

ESTA取得未遂事件という最大の危機を乗り越え(笑)NYに乗り込み、無事にスタートラインに着けることになり一安心。
ですがスタート時間はなんと夜明けの午前5時!!
ロングトレイルレース並みの早さで少々困りましたが、元々時差もあるのでもうどうにでもなれって感じで割り切りました(^_^;)
それに朝早くて大変なのはみんな同じなのだから…。
その大変さを共有しているからか、ホテルから会場へは徒歩でみんなで移動。これから競い合う相手と和気藹々と喋りながら移動するというVWC名物。流石に自分は緊張で口数が少なくなります。
まぁ元々英語喋れないせいもありますが…。
会場に無事到着するとディレクターのデビッド氏に荷物を一旦任せてアップに入ります。
特に荷物置き場や待機場所もなく道端で準備をするというなんともワイルドな状況でしたƪ(˘⌣˘)ʃ
いつもの針シールやテーピング、アスリチューン摂取をなんとか済ませて準備は整った・・・ハズでした。
 

前代未聞の必携装備品?!

しかしここで最大の障害がもう一つ現れました。
それは何かというと…。

元々このレース会場、ワールドトレードセンタービル(WTCビル)はテロの影響で超厳重なセキュリティを敷いています。
その為パスポートなどの身分証明書を身につけていなくてはなりません。
各選手、アームホルダーを着用して走ることに。
(左肩に付いてるのがパスポート入りのアームホルダーです)
これが超曲者でした…Σ(-᷅_-᷄๑)
そもそもパスポートはそこそこ重いんです。他の欧米選手は免許証のようなペラいカードで良いみたいなのですが、自分や立石選手の免許証は当然日本語であり現地の人にはよく分からないということで、パスポートをアームホルダーに入れる必要に迫られました。
ご存知だと思いますが、パスポートは結構大きく(A6くらい?)重量もあります。
 仮にしっかりフィットしていてもそこそこ気になる代物です。
しかもアームホルダー、欧米サイズでかなり大きく自分の腕だと限界まで締めてもやや緩い感じが否めません。
試しに足に付ければいいかも~(笑)なんてやってたらスタッフに「いやいや、ちゃんとココ(腕)にしてよ」とたしなめられましたが、この煩わしさはちょっと問題があるなぁと感じました。

ですが、細かい事を気にしていては集中力が落ちてしまうのでこの際忘れることにしました。
最終的に荷物を役員に預けて身体一つで受付を済ませて、そこからトイレを済まし、更にその先のスタート場所まで連れていかれます。
役員に連れられWTCビルに入ると今度は地下二階まで降ろされまたもや名前チェックを受けてセキュリティゲートを抜けます。
一体何回チェックを受けたのか?というくらい厳重な警備の末たどり着いたスタート位置ではもう既にスタート前のイベントが始まっており役員のおじさま方が盛り上がっています。
時計を見ると4時58分くらい。
本当に5時にスタートするのか半信半疑でしたが、とりあえず並びます。
 

順番はその場のノリで決まる?!


しかしこのスタート順番はめっちゃアバウトで、とりあえず速そうな奴から先に行くというもの。
「とりあえずリョージ先に行っとけよ」みたいなまさかのその場のノリで先頭スタートに(笑)

そして、5時になると役員のおじさま方が
「イェーイ!スタート~~٩(๑ᴗ๑)۶」
という感じで盛り上がります。
「あれ?1分後にスタートなのか?」と訝しげにしていると一人の方がこう笑いかけてきました。
「ヘイ、ユー、行っちゃいなよ(笑)」

「えぇ⁈これでスタートなのかよ⁈、いやって言うか邪魔だから前どいて!」って感じで彼らを押し退けるようにスタートヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3

海外のノリは違うなぁと呆気にとられました。
それでも直ぐに気を取り直し急いでコースや周りの状況の分析開始。
階段は最初の7,8階分くらいは左回りでしたが、直ぐに当初聞いていた右回りに戻ります。→まぁ想定内
段差は程良いし路面も滑ることはなく良好、誇りも少ないように感じます。
抜かす場合は2列になれるくらい幅も広い→いいねイイネ
階数表示は一応ある…けど折り返しが2回の時と4回の時があったり、何故か「8」の表示の後しばらく表示がないと思ったらいきなり「20」にワープしていたりと実にファンタスティック!!(笑)→少し驚くけど想定内(⌒-⌒; )
階数表示が安定しないのは他のレースでもたまにはありますから。いや、本当に色々なレースに出ておいて良かった(笑)
そしてスタート直後からいつものスタートダッシュをかましてくる通常運転のオマールも20階過ぎからペースが落ちて後退し、一人旅の時間へ→想定内(笑)
 

レース中最大の障害はまさかのパスポート!?

体調も悪くない!このままの調子で行こう!と思ったのですが…。
実は少し前からまさかの事態が進行していました。

あれ?なんかさっきから左腕に違和感が…。→アームホルダーが緩んでずり落ちてきている!!
全くの想定外!!Σ(゚д゚lll)
すでに20階手前あたりで一度ズレ落ちたので肩付近にしっかりとはめ直したハズなのですが、30秒も持たずに再びずり落ちてきて今度は前腕部まで落ちてきて完全に宙ぶらりん状態に…。

慌ててもう一度直しましたが、直した矢先からずり落ちてくる始末((((;゚Д゚)))))))
宙ぶらりん状態で手すりから手が離れていると今度は完全に手から離れて足下に落ちるなどもう泣きたい状態.°(ಗдಗ。)°.
ダメ元で右手に着けてみたもののやはりゴムが緩んでいて直ぐにずり落ちるし、右手から落ちたら最悪下のフロアに落ちて拾いに行くと超致命的なタイムロスになるのでやむなく左腕前腕にぶらぶらさせたまま進む事に…。

いや、マジで聞いてないってこんなこと‼️

自分の腕が細すぎたからか何度もずり落ちて、一度床に落ちてしまうこともあり、あまりの煩わしさにフォームと精神が乱されました。
しかしこんな時こそ冷静にいかなくてはと思いなおし、頭をフル回転。
「・・・そうだ、脹脛につければイケるのでは?」
スタート前にふざけて足につけてみたことを思い出し、イチかバチかの決断!
60階付近でタイムと体力を失うのを覚悟で急いで足に付け替えました。
不必要に足を高く上げなくてはならずかなりのエネルギーロスになりましたが、なんとかうまく装着できました。
どうやらさほど装着感も悪くないし、ずり落ちてくることはないようです。
本当に助かったぁ~~ε-(´∀`*)ホッ
 
とりあえずそこからはパスポートの心配は無くなりましたが、完全にペースを狂わされ、70階あたりで足から腕、腰まで全て売り切れ状態。
特に腕を気にしてあれこれ動かしていたので腕の疲労が激しく手すりがうまく掴めませんでした。
本当に苦しかったです…。止まって休んじゃおうかと何度も思いました(-_-;)
苦し紛れに時折手すりを離して走ってみたり足を手で押すパワーハイクを使ってみたり…。
とにかく苦しさを紛らわす為にも色々と試行錯誤しながら登り続けました。
 
70階から先は登っても登っても階数が大して変わっていないような感覚に(-_-;)
90階を過ぎても「あと15階分もあるのか~。」と絶望しかけました。
しかし94階を過ぎ、4,5回ほど踊り場を回って次の階数表示を見ると・・・。
 
「100」という文字が!?
一瞬訳が分からなくなりましたが、流石に階数表示が減ることはないはず!
気持ちを切り替え、一気にラストスパート!
するとさらにラッキーなことに次の階数表示は「102」
しかもスタッフの人がいて外に出るよう指示しています。
「えっ?もうゴールなの?」と若干拍子抜けしましたが、
「もう一本いっとく?」と言われたら嫌なので大人しく指示に従いました(笑)
 
なんとか意識を保ってゴールできました。
ですが、すぐにこうなります(笑)
ゴールシーンはFBのほうに動画でUPされています。
 
 

VWC初優勝ともう一つの人生初の出来事・・・。

ゴール後はいつものようにピクピクトと悶絶し、スタッフに運ばれる始末でした(^-^;
まぁここまではいつも通りなのですが、しばらくして水を飲んだり少し写真撮影をしたりして回復を待ちました。
(同じく日本から参加した立石ゆう子選手も堂々の2位!)
この写真で見てもわかるように目がうつろで頭がクラクラしている状態はなかなか回復しませんでした。
おまけにとうとう吐き気がしてきて、スタッフの方に「Where is restroom?」と聞いて案内してもらうことに。
またここからトイレまでの道のりが長く感じたこと…(ノД`)・゜・。
到着したトイレで速攻嘔吐しました…。
なんだかんだ言ってリアルに吐くまで追い込んだのは今回が初めてでした。
ここまでしないと世界では勝てないんだと思い知らされました。
 

波瀾万丈、だからこそ超絶歓喜!!

でもここまで追い込んだからこそ掴めた勝利だと思うし、それだけ苦しんだからこそ嬉しいんです!!
 
(First Win,inVWC)
表彰式のころにはようやく体調も回復してきました。
その後、すぐにワンワールドトレードセンター展望台を後にし、地下で軽い朝食を食べました。
ここでようやく緊張の糸がほぐれたのか、デビッド氏と少し話をしたときに
「あぁ、俺勝ったんだなぁ」
と実感がわき、思わず涙と嗚咽がこぼれました。
ニューヨークという遠い地にはるばるやってきて、キッツイレースを乗り越えて掴んだ勝利。
そりゃ涙腺崩壊するくらい嬉しいのは当たり前じゃないですか(ノД`)・゜・。
人目を憚らず思いっきり泣いてやりました。
それだけのことを成し遂げたと自負できるし大人になって泣けるほど嬉しい場面を作れるなんてどれだけ幸せなことか…。
こんなに素晴らしい競争相手にも恵まれました。
 

今日の勝利を糧に、更なる飛躍を!

そしてこのレポートを読んでくださっているみなさんの応援があってこそ掴めた勝利だと思います。
本当にありがとうございます!
 
(phyoto by Pedersen)
「真の階段王」を目指す挑戦という過程においては世界シリーズ戦で一つ勝つということはまだ通過点に過ぎません。
ましてや今回は帝王ピーター不在。
はた目から見れば勝って当然と言われるかもしれません。
 
ですが、自分にとって本当に価値ある大きな一勝だったことは間違いありません。
 
この経験をさらに次に活かし、次のワールドシリーズ戦でも再びテッペンを獲れるように更に鍛錬に励みたいと思います!!
 
 
それではまた。
 
渡辺良治