2013/06/14 15:56
大学に行ってもコンプレックスは続き、自分自身は幸せでも健康でもないのに、誰かを助けたくて海外に足を運んで支援活動をし、どこか矛盾した生活をしていました。「なんだか生きにくいなぁ」と思ってたから世の中が平和になってほしいと思ったのでしょうか。  そんな中、池谷に来るとごはんが本当においしくて、いつもつい食べ過ぎてしまいました。「あぁまた東京戻ったらダイエットしなきゃ」とつぶやいたとき、村の人が「なんでダイエットするの?いまのままでもいいのに」と言いました。そのときは「そうは言っても…」という気持ちでした。 けれど何度も通ううちに、本当に採れたての作物は心の底から沸き起こるくらいの大地の力を感じて、そんな力を私はお裾分けしてもらい、自分のエネルギーにしているんだと気付きました。  長い時間をかけて形成された池谷のブナの原生林は、沈黙の冬から顔をほころばせ、腐葉土、湧き水、生物…私たちには計算も造形もできない仕組みの中で、豊かな土壌と水はゆっくり大地を巡ります。作物たちはそれを栄養に、風に吹かれ、何度も星を見送り、何度も太陽を迎え、草刈りをする村人とともに、太陽にも炙られます。作物のその小さな体には、長い物語と、沢山の風景が詰まっています。そして時期、季節、部位によって味や調理法も違う野菜や山菜たちを前にして、彼らが饒舌に語りかけてくるのが分かるようになりました。  「そうだった、私が食に苦しんでいるときに、日本の隅っこの山奥で、こんな私の食を支えてくれている人達がいたんだ」。  そして、「丸々してかわいらしいから可奈子なんだ」「太い指?いっぱい働いてる手じゃないか」「いつも笑ってるからいいんだよ」というのを刷り込まれてくると、本当にやっと今の自分を好きになってきました。  ここの作物を食べることで心から沸き起こる温かさは、人にも自然・作物にも優しくさせてくれます。口から入るものは、それに対する向き合い方を変えてくれました。野菜を食べよう=野菜ジュースではなく、ごろんとした作物に手をかけ丁寧に暮らすこと、丁寧に向き合うこと、きちんと選ぶこと、力のある旬のものを食べること…その積み重ねはやはり考え方も変えてくれます。