去る8月27日、無事に製作一振り目の焼入れを阿蘇神社御神前にて執行いたしました。心配いたしました天気も嘘のような好天に恵まれ無事行えましたこと、祈っていただいた皆様のおかげと思っております。当日昼過ぎから焼き刃土を仕上げた刀身に塗り自然乾燥させました。うっかり撮り忘れてしまいましたので、その状態の写真はありませんが…
焼入れは、鋼の一定の温度まで加熱し急冷することで硬くなる特性を利用し、刃を硬くする工程です。
焼き刃土の薄いところは急速に冷やされて硬くなり、厚く塗られているところはゆっくりと冷えるので柔らかさが保たれます。
その硬度差によって、研ぐと刃紋が浮き上がってきます。
約800度くらいまで熱して水で急冷しますが、この両者の温度が非常に重要で、 刀身の温度を色で見分けるため日没後行います。水につけた瞬間刃部は急冷され硬い組織になり、 棟側はゆっくりと冷やされ縮んでいくので反りが生まれます。
そのため通常どの程度反るか計算して伏せさせ、焼入れして丁度良くなるようにしますが、大太刀の場合は自重で変形しやすいため、異常に反りが出たり全く反りが出なかったりとなかなか難しいです。焼入れ時点で約3キロありましたので通常の刀三振り分程になります。
まず、乾かした刀身を焼柄という鉄製の柄を取り付けます。ナカゴもかなり高温になるため直接つかめませんし、手持ちも悪いため長さを延長して扱いやすくします。
次に、刀身全体を火であぶり予熱しながら焼き刃土を焼き固めます。
折を見て良く熾った炭の中に差し入れ、刀身をむらなく赤めていきます。
程よく赤んだら、一気に水の中へ差し入れます。
焼が入ったら硬くなっていますが、欠けなどが起きにくいよう粘りを持たせるために180-200度程度まで再加熱してアイを取ります。
このときは手で水を弾き掛けて、その蒸発音で温度を測ります。
通常は徐冷しますが、当日は奉献するために水につけて冷やしました。
無事終了です。
今後も来年の奉納に向けて引き続き製作を行って参りますが、よりよいものが奉納できるよう、より精進したいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
また彫刻などの作業に入りましたら、阿蘇神社境内の一角をお借りして奉納作業などを検討しております。今後日取りが決まりましたら改めてご連絡いたします。
蛍丸伝説プロジェクト実行委員会 福留裕晃