<プロローグ:2006夏>
「お兄ぃ、川で仕事なんかないぞ」
「こんな川で漁師の未来なんてあるわけないっ」
身近な水辺でいつも魚を追いかけていた少年時代。その後、水産学を履修し社会にでる1歩を地元の内水面漁業で踏み出そうとした瞬間でした。希望に満ちていた当時22歳の僕にとって、長良川の偉大な漁師が放ったこの言葉は、あれから10年以上が経った今でも忘れられないほどの衝撃を当時の僕に与えました。表に向けられた「清流」が抱くイメージとは対照的に、現場で生きる生産者の暮らしは本当に厳しいものがありました。
あれから10年…
2017年。
清流が結んだ人の繋がりや、水辺のポテンシャルを実感するほど長良川の川面でたくさんのお仕事をさせていただきました。僕のライフワークである川漁から派生した様々な仕事は、決して個で得た仕事ではありません。今回のクラウドファンディングに関わっていただいた皆さまが仕事を創出してくださったと受け止めています。
各社新聞、雑誌、東京のテレビ局訪問、ラジオ出演。NHKさんでは密着ドキュメンタリー番組を制作してくださり中部7県に向けて岐阜の川風景や鮎漁の様子を広く発信させていただきました。今月はTBS系列のテレビドラマにも水夫役で出演させていただき、俳優【竹中直人】さん演じる【織田信長】を戦国から平成の世に僕の舟でお運びいたしました。
漁業者としての本業をおろそかにする事はできませんので上記と並行して早朝の卸売市場、昼間の漁船ツアー、夜間の鮎漁を今も実施しています。返礼品にご用意いたしました「長良川漁船ツアー」は昨年実績を大きく上回るお客様に舟に遊びに来てもらい、地元誌が発行する本では「岐阜でするべき10のこと」のNo.4に選出されました!
9月1日に無事にオープンしました川文化の交流拠点にも多くの方々が足を運んでくださり、これまでインターネットに依存していた販売形態からもっと身近にもっと地元に還元できる天然鮎の対面販売を少しずつですが実現できるようになりました。おかげで調理直後の家庭の味を、この拠点でお客様にお届けできています。
ただ、不安要素もあります。僕の体がひとつなので川仕事がある場合は拠点であるお店を休業しなければいけません。ちょうど昨日、10月15日で長良川の鵜飼が閉幕しました。しかし、僕たち漁業者はここからが正念場。11月末までめいっぱい鮎を獲ります。どれくらい獲るかというと、これから来たるオフシーズン(12月~5月)に向けて6ヶ月分の在庫を確保する気持ちで漁に臨みます。
そして本日10月16日はモクズガニ解禁日!「上海蟹」(正式名:チュウゴクモクズガニ)の日本版ともいわれる稀少な日本のモクズガニは、長良川中流域では今から1ヶ月(~11月中旬くらいまで)しか漁獲できません。
漁業者としての生き残りを賭けた新しい挑戦が始まりました。人が居ない、仕組みがない中での手探り運転ですが、踏ん張る覚悟です。まだまだ皆様にはご迷惑をおかけしそうで、お店の不定期営業が11月末まで続きます。
また重要な事として、返礼品の発送が予定よりも大幅に遅れています。通常の商取引であればクレームや信用を失う事態に繋がってもおかしくない状態です。それなのに反対に皆さまから励ましのお言葉を頂戴し、誠に恐縮な思いです。体を壊さないでね…と、会う方々みんなに心配してもらいながら返礼品の発送準備を進めさせていただいております。
多くのヒトの力でここまで辿り着いたにもかかわらず、自分からヒトに頼ったり、ヒトに物事を投げることが下手くそな僕です。最後まできちんと努めあげたいので、もう少しだけ見守っててください。
本プロジェクトにかける想いのせいか、自身、人生初の体重40kg代に突入しています。それでも今回のプロジェクトが完了するまでは、もう少しだけ走らせてくださいっ!弱音を吐いたとき「待ってました!」と支えてくれる人たちが傍に大勢いることを知っています。そんな仲間の広がりが生まれたことに心から感謝しています。
支援者の方々へひとりずつ、個別にメッセージをお送りさせていただきます。
船長:平工顕太郎