血圧は1日の間に高くなったり低くなったりしています。通常は目覚めている日中は血圧が高くなり、寝ている夜間は血圧が下がります。高所では寝ている間の血圧が下がりにくくなるということが報告されています。登山は有酸素運動の一種であり、生活習慣病の運動療法としても良い方法ですが、運動中は血圧が高くなるため、特に高血圧の方には注意が必要です。登山行動中を通じて血圧がどのように変化するかは十分わかっていないため、日本最高所である富士山で登山中の血圧変動を調べることは、高血圧を含む生活習慣病の方の登山が安全に実施できるかどうかにつながります。我々は富士登山中の血圧を携帯型自動血圧計(TM-2441: A&D社製)で計測する研究を行っています。本機器は血圧だけでなく、気温・気圧・活動度も計測することができます。計測の結果、日常生活と比べると高所滞在中は夜間の血圧が下がりにくく、昼間の血圧は活動量に関連していることが明らかになりました。高所滞在中は低気圧、寒冷などの環境要因、自律神経の異常などから心血管系のはたらきが日常生活中と違っていると考えられます。我々は血圧変化に影響する因子として、自律神経の変化に注目して研究を続けています。