タスリマ(15歳)は小学校5年生の11歳の時に、ダッカで働き始めました。
バングラデシュでは小学校は5年生までであり、最後に卒業試験があります。タスリマはこの試験のあと1教科を残して、ダッカに出てきてしまったため、小学校の卒業資格をもっていません。 村での彼女はとても成績が良く勉強が大好きでした。この先も勉強をがんばるんだと期待を膨らませ、卒業試験では各科目、順調に受けていました。 明日で最後の1科目という日、両親にダッカで働きに出るように、と突然言われました。卒業試験をすべて受けてからにしてほしいと頼みましたが、明日ダッカに連れていく、と言われ聞いてもらえませんでした。
ダッカに出てきたタスリマは、笑顔をすっかり失ってしまいました。雇い主やその子どもたちに「あなたはなぜ笑わないの?」といつも聞かれたと、言います。 働き始めて3年ほど経ったとき、近くで働く少女たちに勉強をさせてくれるセンターが始まったことを知りました。センターの先生は雇い主に説明するために家に来てくれました。 しかし、雇い主の家には小さな子がいて、両親ともが働いているため子守りが必要だからセンターに通わせるわけにはいかない、となかなか許しを得られませんでした。
しかし彼女が勉強したいという気持ちの強さに心を打たれたセンターの先生は、何度も雇い主の家に行ってセンターに来る時間をつくってくれるよう頼みました。ついにセンターに行くことを許してくれ、タスリマは毎日2時間センターに行って勉強することができるようになりました。 センターに行けば、同世代の友だちがいて、勉強ができることが嬉しくてたまらない。タスリマに笑顔が戻ってきました。その勉強への熱意を見て、センターの先生は雇い主に彼女を学校に行かせてあげてほしいとお願いに行きました。同時に近くの学校と話をしたところ、7年生への編入を認めてもらうことができました。
雇い主は週1日であれば、と学校に行くことを認めてくれ、ますますタスリマはやる気を出しました。週1回しか授業には出席できないものの、それを認めてくれた雇い主に感謝して、使用人としての仕事はもちろん手を抜かずしっかりやり、仕事を終えた夜に毎日勉強をしています。 彼女の理解力の高さとやる気に驚いた学校の先生は、無償で彼女のために補習授業をしてくれるようになりました。その結果、週1回しか学校に来れていないのにも関わらず、クラスで2位の成績を納め、先生も友だちもみな驚いています。 今、センターではチャイルドリーダーとして、先生のサポートをし、他の子たちに勉強を教えてあげている自信に満ち溢れた現在の彼女の姿から、そんな辛い思いをしてきたとは想像できません。
彼女の並外れた勉強への意欲と努力、その花が開くことを、これからもどうぞ見守ってください。そしてすべての子どもたちが学校に通い、勉強する機会を得られるようになる社会を、どうか一緒に作ってください。