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映画『宮城野』インターナショナル版を制作! 歌舞伎や浮世絵とともに世界へ届けたい

毬谷友子をヒロインに、片岡愛之助が主演を務めた映画『宮城野』は、日本が誇る伝統文化を凝縮した、他に類を見ない作品です。完成から12年……古びるどころか輝きを増していると確信し、新たに英語字幕をつけて『宮城野』を海外へ配信するプロジェクトを立ち上げました。どうか温かいご支援をお願いいたします。

現在の支援総額

726,001

60%

目標金額は1,200,000円

支援者数

88

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2020/09/09に募集を開始し、 88人の支援により 726,001円の資金を集め、 2020/10/29に募集を終了しました

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現在の支援総額

726,001

60%達成

終了

目標金額1,200,000

支援者数88

このプロジェクトは、2020/09/09に募集を開始し、 88人の支援により 726,001円の資金を集め、 2020/10/29に募集を終了しました

毬谷友子をヒロインに、片岡愛之助が主演を務めた映画『宮城野』は、日本が誇る伝統文化を凝縮した、他に類を見ない作品です。完成から12年……古びるどころか輝きを増していると確信し、新たに英語字幕をつけて『宮城野』を海外へ配信するプロジェクトを立ち上げました。どうか温かいご支援をお願いいたします。

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#英語字幕 の付いた活動報告

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監督によるインターナショナル版ができるまで、「其の一」「其の二」の続きです。***当初の予定は、ボイド眞理子先生による完訳の予定を2~3月、途中の3月初旬からクラウドファンディングをはじめて世の中にPRして、4~5月に小川アヤ氏による英語字幕作成、6~7月ぐらいには完成するつもりでした。ところが、まさかのコロナ禍……小川さんの住むニューヨークは3月23日にロックダウンになってしまいました。プロジェクトの延期も考えました。中止が頭よぎったこともありました。悩んだ揚げ句、クラウドファンディングは無期延期とするが、そのほかは各自が無理のない範囲で少しずつでも進めていくことにしました。物事には勢いがあって、もし止めてしまったらもう再開はないだろう、とそんな思いから苦渋の決断でした。ニューヨークはそのような状況でしたので、スケジュール的には時間が掛かりましたが、小川氏はご自身の生活と仕事との折り合いを付けながら作業を進めてくれました。小川氏とも何度も議論を重ねましたが、一番苦労したのは映像の翻訳字幕のフォーマットです。・文字数は1秒17~20文字・1行40文字(42~43までは許容)で・1枚あたり2行以内このような英字の字数制限をはじめ、厳しいルールが多いのです。日本語は漢字という表意文字がありますが、英語は表音文字なので、どこまで削るか、その闘いになります。映像翻訳は80%伝わればいい方、というのがよく分かりました。三者間で作業中の一部(Z列まで使っています)時に、ボイド先生を交えて議論する機会がありました。メールでのやりとりだったんですが、日本語だと、お二人ともどうも窮屈そうで、私が「英語で構いませんよ」と言いだしたら、どちらも一気に饒舌になりました。久々にどっぷり英語に浸かった日々でした(笑)内容についてとても面白い議論があったのですが、一つだけご紹介します。矢太郎:(三味線を手にして宮城野に突き出して)そら、こいつぁ酔狂だ。弾けたら、お前の絵を描いてやる<第1稿>Here you are, ya crazy drunk.If you can play this, I’ll paint an ukiyo-e of you.日本語の台詞は主語が省略されていますし、主述関係もよく分かりません。「こいつ=酔狂」にいたっては、指示語が何を指しているのか、酔狂という単語は解読不能ですよね(苦笑)「酔狂」は「お互い酔っ払ったノリで酒の席のいい加減な約束をするぞ」という意図なんです。こういうのは、どういう意図をもって監督が演出したか、それをお伝えしないと翻訳字幕に収めることができませんよね。結果、このようになりました。<決定稿>All right, let's make a drunken deal.If you can play this, I'll paint a portrait of you.“drunken deal”(酒に酔った取引)なんて絶妙な翻訳ですよね。9月が終わり、ようやく字幕作成が終わりました。英語字幕の最終チェックを終えたボイド先生は「非の打ちどころのない『作品』に仕上がっております。どうぞご安心ください」と太鼓判を押してくれました。「非の打ち所がない」ってなかなか言わないし、聞かないですよね? 一生の中で数回出るか出ないかのような気がします。ただでさえ難しい作業の上、コロナ禍という未曾有の事態、ここまでたどり着けたことに心より感謝いたしております。そして、折に触れて相談に乗ってくれた方にも御礼申し上げます。英語字幕は無事完成し、現在は、それを映像と同期させる作業や変換作業を行っております。11月上旬にはすべて完成し、プレミア上映にはキッチリご覧になれるはずです!映画『宮城野』監督 山﨑達璽


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英語字幕制作で【シナリオ翻訳】を担当していただいた上智大学名誉教授・ボイド眞理子先生より、メッセージをいただきました。***Having translated Seiichi Yashiro's The Courtesan Miyagino (1966) for Half a Century of Japanese Theater Vol. VIII edited by the Japan Playwrights Association, I was deeply interested in Director Tatsuji Yamazaki's film version, which featured Yashiro's actor-daughter as Miyagino, the hooker with a heart of gold.I was delighted to find that the director had cut his way through the linear structure of the original, shattering time. Furthermore, he re-styled some sets into pseudo-kabuki, photo-shoot, or pop-up papercraft, with black-clad assistants lurking in the corners.It has been a great challenge, pleasure, and honor to translate The Two Portraits of Miyagino. Mari BoydProfessor Emeritus, Sophia University(日本語訳)私は、矢代静一の戯曲『宮城野』(1966)を翻訳したこともあって、矢代の愛娘が、慈悲深い心を持つ主人公・宮城野を演じる山﨑達璽監督の映画版に深く興味を持ちました。山﨑監督はこの映画で、オリジナルの戯曲が持つ直線的な時間構造を壊すことで新境地を切り拓いています。さらに、監督は黒衣を片隅に忍ばせ、それは歌舞伎を模したり、静的な構図だったり、飛び出る紙細工(立版古)などの斬新な表現技法を用いており、とても感銘を受けました。非常に大きな挑戦となりましたが、このたび、映画版『宮城野』(英語題“Two Portraits of Miyagino”)の翻訳に携わることができ、誠に光栄に存じます。上智大学名誉教授 ボイド真理子


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監督によるインターナショナル版ができるまで、「其の一」の続きです。***通常の映像翻訳は、まず日本語の台詞を抜き出してリストにして、そこから翻訳字幕を作っていきます。しかし、映画『宮城野』は内容が内容だけに、もっと緻密な作業が必要だとの認識で、ボイド眞理子先生に依頼したという経緯でした。まずボイド先生が、ト書きも含めて台本の全文を訳して、その「完訳台本」を作ります。それをベースに英語字幕を作るという作業工程です。後者には、NYブルックリンで活躍する演出家・小川アヤ氏が担当することになりました。翻訳字幕は「80%伝えられるか伝えられないか」という字数制限との闘いがあり、実際の制作現場で活動している人の方が適任だとの判断からです。ボイド先生と小川氏は数年にわたって一緒に翻訳の仕事をされています。このように圧倒的な手間暇が掛かりますが、やるならとことんというのが私の信念であり、この作品への執念です。2月、プロジェクトの準備が整い、まずはボイド先生による完訳が始まりました。その作業は「これはこれで売り物になる」と先生がおっしゃるように、とても緻密なものでした。いろんな議論がありましたが、その一つをご紹介します。たびたび登場する「ニセ絵」。  直感的には“fake”と訳してしまいそうなところですが、いろいろ話し合って“copy”と訳してもらいました。原作では「似せ絵」と書かれているのですが、それは単に「肖像画」を意味するので、原作者との認識の違いと思われます。私たちが脚本を書く際には、当初は「贋作」という字を当てようと思いましたが、結果、カタカナで「ニセ絵」としました。矢太郎の描いた絵は、写楽の筆を写した「代作」であり、やがてそれ自体が「真作」に成り代わるからです。“copy”に至った訳ですが、これには私の中に三島由紀夫の『文化防衛論』(1969年初刊)の裏打ちがありました。要約すると、【日本文化は、「オリジナルとコピーの弁別」を持たない。伊勢神宮の20年毎の式年造営のように、いわばコピーに「オリジナルの生命」が託され、「コピー自体がオリジナルになる」のである】日本文化の有り様を的確に捉えた解釈だと私は考えています。このような議論から、エピローグの台詞は以下のように訳されました。<日本語> 本物とニセ物の境なんてものぁ、とっくのとうに消えてなくなっちまった。 写楽そのものが、洒落臭え戯れ言よ ↓<英訳> The border between origin and copy disappeared long ago.  Sharaku himself has become an impertinent joke.4月下旬、ボイド先生による完訳が完了しました。別の言語から作品を解釈するのは、非常に客観的な視点が加わり、新たな発見が沢山ありました。それは矢代戯曲へのより深い理解につながり、自分の作品を見つめ直すきっかけになりました。続いて、小川氏による英語字幕の作成に入っていくはずだったんですが――(其の三へ続く)映画『宮城野』監督 山﨑達璽


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本プロジェクトの第一の目標は、映画『宮城野』のインターナショナル版を完成させることです。映画の意図を損なわずに世界中の方々に届けたい、と英語字幕にも徹底的にこだわって、作業が進行中なんです。そんなインターナショナル制作過程を、山﨑監督に綴ってもらいます。***国内での『宮城野』のデジタル配信がスタートしたのは昨年の秋でした。どんなものか?とは思っていたんですが、ちょくちょくSNSにレビューが上がるようになり、年末に集計が来てびっくり!予想をはるかにしのぐ視聴回数だったんです。正直、Blu-rayやDVDの売り上げ枚数なんて比じゃないぐらい……その時、フツフツと沸き上がってきたのが海外展開への野望です。その昔は映画を海外に広めるのは非常にハードルが高かったんです。VHSにしろDVDにしろ「モノ」を動かすのは手間が掛かるからです。それが、デジタル配信だと一足飛びで視聴者に届けられます。これは革命的だと言えますね。さて、このプロジェクトでまず考えなければならないのは翻訳です。本作を外国語に翻訳して字幕を付けることはこれまでにやっています。最初は2008年の編集中です。この時は、映画祭へのエントリーのための英語字幕を作りました。ただ、あくまで審査用なので、こだわった翻訳、こなれた翻訳かというと、そこまではいきませんでした。時間もなかったことですし、あくまで大意が掴める程度でした。誤訳もあったと思います。この英語字幕についてはその後、世に出ることはありませんでした。次いで、2009年11月、フィレンツェ日本映画祭のためのイタリア語翻訳です。これは、イタリア人翻訳家のイザベラ・ディオニシオさんが手掛けてくれました。ヴェネツィア大学で日本語を学び、2005年に来日。お茶の水女子大学大学院修士課程(比較社会文化学日本語日本文学コース)修了、というまぶしいキャリアが語るように、超・日本文学オタク!私にはイタリア語は分かりませんが、現地では評判がよく、観客からの質問を聞いていても内容をしっかりと理解してくれていると思いました。イザベラの著書『平安女子は、みんな必死で恋してた イタリア人がハマった日本の古典』(淡交社)海外への足がかりとしては英語訳を作るのがベストですが、改めてそれを誰に頼むか?です。英語の映像翻訳が出来る人は多くいますし、信頼のおける業者もあります。しかし、この映画の翻訳は非常に難易度の高い作業になります。劇作家・矢代静一による意味深長な言い回しや軽妙洒脱な江戸ことば、さらには歴史的な背景や絵画の知識が求められるからです。実際そんな人材はいるのかと……これは大きな課題でした。そんな折、日本劇作家協会による英訳戯曲集『HALF A CENTURY OF JAPANESE THEATER VIII: 1950s』に戯曲『宮城野』(66)の英語訳が収められてることを知りました。『HALF A CENTURY OF JAPANESE THEATER VIII: 1950s』(紀伊國屋書店刊)翻訳者は上智大学名誉教授のボイド眞理子先生。映画監督になって何がよかったか?と言われると、すかさず「会いたい人に会えること」と答えるんですが、ボイド先生にも直ぐにつながることができ、まずは映像をご覧いただくことになりました――年が明け、ボイド先生からレスがありました。「濃密な雰囲気、江戸の暗がり。浮世絵や歌舞伎の舞台装置を思わせる背景や紙細工の人物も使われ、サプライズを交えながらの味わいのある傑作です。是非英訳に協力したいと思います」ご快諾をいただきました。ここまでが、コロナ禍なんて思いもよらなかった平和な日々の出来事です。(其の二へ続く)映画『宮城野』監督 山﨑達璽