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さて、本日から3回に渡りグランドピアノのオーバーホールとは、具体的にどのようなものなのか、恩師から譲り受けたピアノを例にご紹介させて頂きたいと思います。
少し長い文章になりますが、グランドピアノの構造に興味がある方やこれから修理を検討されている方など、たくさんの方にお読み頂けましたら嬉しいです。
私自身、ピアノに携わる仕事をしていながら、ピアノそのものについての知識が乏しく…
今回のプロジェクトをきっかけに、改めてグランドピアノの構造やオーバーホールというのはどのようなものなのか、ということを調べてみました。
オーバーホールとは・・・
大まかに言うと、ピアノを工房に預けて分解し、弦、ハンマー、フェルトなどの部品を新しいものに交換して、再度組み立てる、ピアノの大掛かりな修理のことです。
しかし一口にオーバーホールといっても、修理をする内容はそれぞれのピアノによって変わっていきます。
今回、私が恩師から譲り受けたピアノに必要な修理は大きく分けて3つ。
①弦の張り替え
②ハンマーの交換
③鍵盤内部部品交換
本日は上記のうちの①弦の張り替えについてご紹介します。
まず、グランドピアノの弦というのは一つの音に対し3本の弦が張られ、その弦を羊の毛で出来たハンマーで打つことにより音がなります。
(リターンとしてお届けするキーホルダーはこのハンマー部品を使用し、作成します。)
グランドピアノに張られている弦の張力は非常に強く、それをハンマーで打っているので、弦には相当な負荷がかかっています。長く弾かれているピアノはそれだけハンマーで弦を打っているので、弦の力が弱まり弦が切れてしまうということが起きます。
弦が切れると、当然通常のピアノの音色は響きません。
ピアノの弦は一つの音に3本の弦が張られていることから、3本のうちの一本弦が切れてしまうと、3本で支えていたものが2本になりこの2本の弦にかかる負担が大きく、その他の弦のも切れやすくなってしまいます。
(弦の数は最低音に近くなるにつれ、2本、1本と弦の数が少なくなります。)
(私が江東区の教室で使用しているピアノの弦が切れた時の写真です。)
また、置かれていた環境により弦が錆びてしまっている場合にも、弦の張り替えが必要となります。夏季、高温多湿となる日本の気候では、長期間弾かれていないピアノはどんどん錆がすすんでしまうのです。そしてこの錆が原因で、弦が切れてしまったり、錆により音に伸びがなくしまい、音色が悪くなってしまったり。
写真だとわかりにくいかもしれませんが本来、弦の色は銀ですが茶色くなっている部分がたくさんあります。実際は、もっと広範囲にわたり色が変わってしまっています。
恩師から譲り受けたピアノは上記の条件に当てはまってしまい、弦を交換することは必須だと調律の方から伝えられました。
・長年多くの人に弾かれてきたピアノ
→ハンマーで弦を多く打っているため、弦が弱くなっている
・恩師が亡くなられてから10数年、長期間に渡り弾かれていない
→錆が進んでしまい弦が切れやすく、また音色が良くない
グランドピアノに張られている弦は230本前後。
この弦全てを交換するために、ピアノを工房に預け、現在張られている弦を全て取り、
新しいものに交換をします。弦交換にかかる費用だけで数十万。
このプロジェクトを多くの人に知ってもらい、
たくさんの方に私の想いが伝わる事を願っています。
長い文章になりましたが、最後までお読み頂きありがとうございました。
次回は、「②ハンマーもの交換」についてご紹介させて頂きます。
恩師から譲り受けた現在のピアノの音色です。
このページで紹介した、弦の劣化と次回お話するハンマーが磨耗していることから、
音の細かなニュアンスや音色の幅が乏しいですが、このピアノをオーバーホールをした際、
どんな音色を奏でてくれるか、ご想像しながらお聴きいただけましたら幸いです。
白熊杏梨