2020/09/29 12:00

まいど。NPO法人Reジョブ大阪の中の人です(笑)

このクラウドファンディングは、高次脳機能障害や失語症のある方たちが出演したり実行委員になったりして文化祭を開こう!というイベント資金の一部を集めるためのものです。

またまたお叱りを受けそうなタイトルですが、まあ、聞いてください。今年の4月25日は「失語症の日」が認定されて最初の失語症の日でした。実はこのアイディアは私が発案者。高次脳機能障害もそうなんですが「失語症」もなかなかマイナーな障害なんですね。「社会問題は深刻な順番ではなく知られた順に解決されていく」という言葉があります。例えば、私の子どものころにはなかった言葉に「認知症」があります。50年前、同じような症状を私は「ぼけ」と呼んでいました。そして何の対策も取られておらず、単純に奥さんやお嫁さんが困っていました。これが、「認知症」と名前が付くほど、核家族化、地方の過疎化、少子高齢化社会の中で「有名」というか「身近な問題」となり、解決せねば!という方向に向かったわけです。だったら、50万人以上もいるのにほとんど知られていない「失語症」も有名になったら皆が動く、社会が動く、そうなっていくのでは?と気づきました。その一つが「記念日プロジェクト」でした。


3人で5万ずつ出しても制定できた

認定料は15万。もちろん審査はありますが、記念日を作るだけなら費用は、例えばリジョブの理事3人が5万ずつ出せばできます。ちょっとキツイですけどね(笑) でもそれではだめ。多くの人に知ってもらって、それから支援してもらおう。そう思った私たちはクラウドファンディングを始めました。結果、108人から78万円の資金を集めることができ、認定料だけでなく、4月25日失語症の日のイベント運営、そして、リターンを出してくれた当事者の方たちにお礼もできました。また余った資金は来年度以降の「失語症の日」のためにも使えます。そして実際のイベントは、コロナウィルス感染予防の為に、オンラインで行ったのですが、のべ1,620名の方に動画を見ていただけました。当初想定していた、東京会場100人、大阪会場100人、合計200人を大きく上回る数の方の参加。また「この障害を知らなかった」という多くの方に知ってもらうこととなりました。今回のクラウドファンディングでも、失語症に関わる人はもちろん、「知らなかった」人に知ってもらえる機会となりますように。


よくしゃべる失語症の人もいる

私は、失語症のことをきちんと知るまで、例えば、ショックで言葉が出なくなる症状のことだと思っていたんですね。それは「失声症」。失語症は決して声が出なくなるのではなく、「話す」分野で言えば、ことばがうまく出て来なかったり、コミュニケーションのためにうまく使えない状態。言語聴覚士による言語訓練などのリハビリをすることで改善していくのです。そして、私の知人で「よくしゃべる失語症」の人もいます。この人の場合は「話す」ことに関しては、日常会話ならほとんど不自由はないとこちらが思えるほどなのですが「読む」「書く」ができないとのことでした。そうすると、私たちが日常しているコミュニケーションの手段である、メールなどがまったくもって難しくなるでしょう。


笑顔が多い。意思疎通支援事業で思ったこと

そんな中、全国で失語症者の為の意思疎通支援事業が始まりました。たとえて言えば、聴覚障害者でいう「手話通訳さん」にあたる人を育てようという事業です。私もさっそく受講しました。講義12時間、実習28時間、合計40時間の長い、結構大変な講習でした。でも実習では色々な失語症の方と会うことができました。その中で私が感じたのは、不自由な中でも笑顔が多いということです。今の私と逆です。私は自由なのにいつもパソコン仕事が多くて目が疲れていて眉間にしわがよっています。言葉を思い出せなくて「あー、もう、言葉がでない。やになっちゃう!」と笑う人、「松嶋さん、早口、分からないよ」と笑う人、「メニュー、全然読めない」と笑う人。とても不思議な感覚でした。知識レベルも高くて、物も良く知っていて、思いやりもあって。でも、それが言葉でできない。それはどんなにか不自由でしょう。でも笑っている人が多いんです。生きる強さのようなものを、いつも私は感じます。もちろんコミュニケーションに挫折して引きこもっている人もいます。「失語症の日?そんな記念日なんていらない。放っておいてくれ」と言う人もいます。

しかし高齢化社会の日本、介護する人も介護される人も年を取っていきます。障害者の子どもと認知症の親という組み合わせも多くなったそうです。私は、そういう人たちにこそ支援が必要だと思っていて、そのために、積極的な当事者が活動している今の現状を、もっともっと支えていきたいと思っています。


当事者の手記

今回のクラウドファンディングで本を2冊だしている吉村さん。彼の手記は一般の人にとって少し読みにくいかもしれません。でも、出版社を経営する方が「当事者の人にはいい本だよ」と言っていました。実際に失語症のある方ご本人に会うのが一番良いのですが、このコロナ禍、なかなかそういうわけにもいきません。そういう時、当事者の書いた本を読んでみるというのも、障害理解のひとつとなるのではないでしょうか。

ほなまた。