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日本の森林は増えてる?減ってる?
今日は私の研究活動の対象となっている日本の森林について簡単に説明したいと思います。突然ですが、日本の森林は増えているか、減っているかご存じでしょうか?令和元年度の林業白書(林野庁)によると、森林面積はほぼ横ばい、森林蓄積は1966年と比べ約3倍に増加しています。森林蓄積とは樹木の体積の総量のことで、丸太がどれぐらい取れるかといったイメージです。下の図で説明すると、上から見た面積は同じでも、太い木の地域と細い木の地域とでは取れる丸太の量は異なります。そのため、森林の増減を表す際には、面積だけでなくこの森林蓄積を利用することもあるのです。
その森林蓄積が増えていると聞いて意外に思った方も多いかもしれません。おそらく森林破壊のニュースが話題に上がっているからだと思います。しかし、そのようなトピックの大半は海外のもので、国内では戦後から増加が続いています。特に戦後一気に広がった針葉樹人工林では、幹が木材生産に十分な太さまで育ち、まさに今、収穫期を迎えているのです。つまり戦後植えられた苗木が大木になることで森林面積は変わらなくとも、森林蓄積が増加したと言えます。
では、戦前はどうなのか?疑問に思いますよね。「戦前ならきっと豊かな森が広がっていたに違いない。」そう考える方も多いと思います。しかし意外なことに、戦前から見ても現在の森林蓄積は増加しているのです。中には有史以来最大の森林蓄積量だと考えている方もいらっしゃいます。実際、飛鳥時代には既に伐採禁止令が出されるほど利用が進んでいたという記録もあります(※1)。では、戦前の日本の森林はどのような状態だったのでしょうか。
禿山が多かった戦前の日本
実は戦前の日本では、建材はもちろん薪炭材などの燃料としても、樹木が非常に重要な位置を占めており、現在よりも頻繁に山林が利用されていました。その結果、過度に利用された人里周辺の山々は、禿山が目立つ状態だったと言います。実際の写真は林野庁のページでも紹介されているので是非ご覧ください。しかし、段々と利用と保全のバランスを保つ思想が生まれはじめたことに加え、森林火災など大規模に森林が消失するような撹乱が減少し、現在のような豊かな森林資源が造り上げられました。
森林の内訳
このような経緯で回復した日本の森林は現在国土のおよそ2/3、67%を占めており、そのうち40%が人工林となっております。こう聞くと「人工林って意外に少ないな」、と感じる方もいるかもしれませんが、この値は1020万haになり、実に北海道と四国を足し合わせた面積になります。北海道と四国に人がせっせと一本ずつ木を植えていったと考えると、いかに途方もない作業だったかが分かるかと思います。
さらに人工林の樹種について内訳を見てみると、最大の面積を誇っているのがスギで44%、次いでヒノキ25%となっています。この2種で半分以上が占められているわけです。そしてこの針葉樹人工林が僕の研究の対象となります。
これが日本の森林の概観です。これらの森林には様々な機能があり、森林の種類によって持っている機能が異なります。そのため、どの地域でどの機能を重視するのかによって必要とされる森林はことなってくるのです。次回はこの森林が持つ機能についてご紹介したいと思います。
※1:1994, 丸山岩三, 奈良時代の奈良盆地とその周辺諸国の森林状態の変化, 水利科学1994 年 38 巻 3 号 p. 95-116